昭和45年入学組通信

日本大学芸術学部演劇学科同期生の近況情報

田所美惠子 針穴写真展 「一葉に会いたくて」

2007-05-03 09:42:39 | 編集長独り言
実は、樋口一葉をちゃんと読んだのはここ4,5年前のことなのだ。

最初「大つごもり」を読んだが、これがなかなか面白い。
文語文だから声をだして読んだ、するとすごくよく判る、一遍で好きになった。



2004年に集英社新書から出た「樋口一葉『いやだ!』と云ふ」田中優子著、を読んで以来ますます感化され、今は「一葉」の文字があるとどうしても反応してしまうのだ。

で、銀座1丁目にあるポーラ・ミュージアムで開催中の「田所美惠子針穴写真展」に行き、一葉さんに会ってきた。



展覧会は、檜細工師の三浦宏さんが、10分の1、または20分の1の縮尺で制作した江戸期の家屋(つまり一葉の家だったり「たけくらべ」「にごりえ」や「十三夜」の舞台となる家)を田所さんが手製の針穴写真機で撮影した写真を展示したものだ。

会場には三浦さんの制作した家屋も据え置かれていたが、その造りは内部、調度品に至るまで実に緻密に造られいる。
以前、ワカセ君が大学の授業のために制作した民家の模型を思い出した。

そして、展示されている写真を見て、ミニチュアの家なのに、写っているのは現実サイズの家のようだ、と一瞬目を疑った。

最近、現実の建造物をミニチュアのように撮影するカメラもあるが、ミニチュアを撮影してミニチュアを感じさせないカメラなどあるのだろうか。

そんなことを考えていた時、幸運にも、
「それならご本人にお聞きになっては」と作者の田所さんに引き合わせていただいた。

田所さんは「針穴写真」の第一人者として活躍中の方で、お話を伺うと、
針穴写真は、
被写界深度が無限なので、どんな遠近でもピントが合う事、
針穴とフィルム面が近いほど超広角になる事、 により
レンズカメラには難しいミニチュアの狭い内部をも自然な感じで撮影出来るとのことだった。ただし露光時間設定には大層ご苦労されたご様子で、屋外の太陽光撮影ではなく狭いミニチュアの内部を屋内で撮影するとなるとライティングも大変だったろう。



そして針穴写真の独特な味わいのソフトフォーカスとあいまって、素晴らしい一葉さんの住む世界、お力や美登利たちの世界が表れた。
なにしろ障子の向こう側に登場人物が、もしかしたらいるかもしれない、いや居る、といった雰囲気なのだ。

カメラはバンドエイドの缶を使ったお手製。
ただの缶カラじゃない、と思うのだがその針穴カメラだからこそ、カラーではなくモノクロ、シャープでなくソフトフォーカス、微妙な光の加減、木と紙で出来た日本家屋の中に一葉さんの息吹や筆使いを感じさせる素敵な写真を撮影できるのだと気がついた。

開催期間は5月29日まで、ご覧になるようお勧めいたします。

日本針穴写真協会のホームページはこちらです。


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