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好物のリゾットを食べ、食後のカプチーノ
を飲み終わった頃料理長が現れました。
「いやぁアマル君、久しぶり、よく来てくれたね!」
「料理長(以後Kさん)、お久しぶりです。普段不義理をしていてすみませんでした」
「いやいや」
「びっくりしましたよ、ここ閉めちゃうんですか?」
「そうなんだよ。もう俺も歳だし体がきつくてねッ」
「え?!、おいくつになられたんですか?」
「今年で65だよ」
「ひえ~!もうそうなんですかぁ」
「そうだよ、髪もこんなに白いのでいっぱいだよ」
「・・・(笑)」
「ところでここ閉めてどうされるんですか?」
「しばらくカラダを休めるよッ」
「休めるっていってもズ~っとですか?」
「まッ、これからじっくり考えるよ。まだ店の者の1/3が行き先決まってないんで
そいつらのことが決まってからかな、自分のことは...」
「そうですかぁ...」
「でもKさんこのまま引退、隠居なんてないですよねッ」
「おいおい、まだ働かす気かよ!(笑)」
「だってKさんのストックしてきたこれまでのレシピ(イタリアの名だたる料理人を
30年以上にわたって招聘し日本の料理人に本場(本物)の料理を伝えてきた実績がこの
リストランテにはありました。Kさんはそのとき招聘した伊料理長の通訳兼調理助手も
長年されて来られました)やその料理が食べられなくなることを考えたら悲しいやら
寂しいやらで
...」
「そう言うなよ。(笑)」
「伊の料理人たちが紹介してくれたものは若い奴らもしっかり覚えていったから
みんな自分のものにしてると思うよ。(笑)」
「でも、ここがクローズするのはとっても寂しいッス!
」
「ハハッ、時代だよ」
「えッ
」
「あの3.11以後いろんなものがガラと変わってね。
もう昔のようにこれからはやっていけないなって去年判断したんだよ。
辞めないでくれっていろいろなところから支援の声をもらったんだけど。
アマル君は業界のこと知ってるから話すけど。
十数人の従業員抱えてやってくのはもう大変なんだッ。」
「わかります」
「3.11以降、東北から毎年来ていた修学旅行の団体さんが全部なくなった。
今は少子化でしょ。ちょっと前まで料理学校ほかいろいろな専門学校から
(毎年)半年以上先まで講師依頼がつまってたんだけど、ここ数年で激減。
今じゃ2~3校しか依頼がないよ...。
そこへ来てこの不景気だから、料理の単価を下げてお客に来てもらおうとしても
限界があるからね。昼に赤字を出して夜でカバーなんて今じゃできないよ。
夜に昔のようにしょっちゅう食べに来るお客さんもいなくなってきてね。」
「わかります。このご時世」
その後、あれこれの問題(経営者としての悩みも含め)を話していただきました。
やはり料理人よりサービスのプロ(カメリエーレ)が育たないこと、
「うちでなくちゃ嫌だ!」と懇願して入った若い子が3日で辞めってしまったり
1日で辞めた子もいるとか...etc.
「しかしKさん、今日は貸切ですか?」
「そうなんだよ。今日だけじゃないよ。店じまいをお客さんに連絡してから
12月からほぼ毎日昼も夜も予約のお客さんでいっぱいなんだよ。」
「ひえ~ッ
、すごいですねぇ。」
「なんかなぁ、こんなにうちのこと考えてくれるんなら
もっと早くから毎月足運んで欲しかったよッ(笑)」
「そうですねぇ(笑)。
でも店に入ってから驚いたんだけど年配のお客さんがいっぱいいらっしゃいますね。
というか高齢の方も随分おられて驚きました。」
「そうよ。うちは若い人で40ぐらいだからアマル君も若い方だよ。」
「ひぇ~ッ
、そうですか。」
「系列のT店やK店は20代の若い人もいっぱい来るけど
ここは年配者が多いね。」
「歴史がありますもんねぇ。
」
「そうねぇ。日本でアルデンテなんて言葉を誰も知らない時代からやってたからね。
当時アルデンテ状態で(パスタ)出したらお客から料理を突き返されたからね。(笑)
“これ硬いじゃないか!食えたもんじゃないよこんなもの”ってね(笑)」
「そうですねぇ(笑)」
「今月で閉店なんですよね。寂しいなぁ。」
「○○日が最後だ。最終日は全国からお客さんが来られるし、この店から独立してった子たちや
海外からもイタリアだけでなくスペインからも料理人や知人が駆けつけてくるよ。(笑)」
「そりゃスゴイ!盛大ですねぇ。」
「このフロア(100席余り)で収まらないよ。最後は立ち飲み・立ち食いになるかな?(笑)」
その他、他愛もない話をしながらアマルが20代の時、この店を初めて訪れ
ここで働きたいと申し出、K料理長や本社の社長や役員の方々と面談した時の話題にもなり、
30年近い歳月があっという間に流れたことを互いの顔に増えたシワを確認しながら笑い合うのでした。
「今すぐにはできないけど、いつか小さな店を開ければできたらいいかなとは思ってるんだ。」
「それは素晴らしいですねッ。お店開かれたら絶対伺いますよ。」
「そう。ありがとう。」
「料理長のファンは全国にいっぱいいるから大繁盛間違いなしじゃないですか?」
「いやぁ、もう経営で苦しみたくないからカウンター越しに料理を出すような
小ぢんまりした店で十分なんだよね。(笑)」
「いいですねぇ。(笑)」
そうしてると、これまた30年近くK料理長と同様におつきあいのあるホール長がそばに来て
「アマルさん、お世話になりましたね。」
「いえいえとんでもない。」
「お客さんをいっぱいお連れいただきありがとうございました。
アマルさんがお連れいただいたEさんやSさんはご家族でよくお越しになられますよ。」
「へぇ~、そうなんですかぁ。」
「前職や前々職での忘年会やフロア貸切での宴会大パーティー、忘れられません!
あのときはOさん(フロアー長の名前)本当によくしていただきありがとうございました。
あのときのこと、あの時の料理・お酒、料理長とのコンビネーション、フロア担当の皆さんの
連携、素晴らしかったぁ。
今でも昔の連中に会うと話題(語り草)になります。(笑)」
「こちらこそ、いい思い出です。」
「Oさんはこれからどうされるんですか?」
「社長から系列店の教育指導係を任されることになりまして、休ませてくれません!(笑)」
「そうですかぁ。それはよかったぁ。
じゃまたお目にかかれますね。(笑)」
「はい。(笑)」
「あまり長居してはお2人休憩できませんね。そろそろ失礼しますね。」
このあとKさんとOさんとアマルの3人でダビンチが描いたスケッチをバックに
記念撮影。
「じゃアマル君、元気で!」
「Kさんもお元気で!お店を出す時には必ず連絡くださいね。」
「ハハハッわかった、わかった。じゃ、また何処かで。(握手)」
K料理長とOホール長に見送られ店の扉を閉めたとき
日本にイタリア料理を紹介し一時代を築いたこのお店で、
多くの人と集い楽しい時間を過ごしたことが走馬灯のように頭を駆け巡り、
今静かに幕を下ろそうとしている姿に一抹の寂しさを隠し得ませんでした。
さようなら、そしてありがとうリストランテIB。
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「いやぁアマル君、久しぶり、よく来てくれたね!」
「料理長(以後Kさん)、お久しぶりです。普段不義理をしていてすみませんでした」
「いやいや」
「びっくりしましたよ、ここ閉めちゃうんですか?」
「そうなんだよ。もう俺も歳だし体がきつくてねッ」
「え?!、おいくつになられたんですか?」
「今年で65だよ」
「ひえ~!もうそうなんですかぁ」
「そうだよ、髪もこんなに白いのでいっぱいだよ」
「・・・(笑)」
「ところでここ閉めてどうされるんですか?」
「しばらくカラダを休めるよッ」
「休めるっていってもズ~っとですか?」
「まッ、これからじっくり考えるよ。まだ店の者の1/3が行き先決まってないんで
そいつらのことが決まってからかな、自分のことは...」
「そうですかぁ...」
「でもKさんこのまま引退、隠居なんてないですよねッ」
「おいおい、まだ働かす気かよ!(笑)」
「だってKさんのストックしてきたこれまでのレシピ(イタリアの名だたる料理人を
30年以上にわたって招聘し日本の料理人に本場(本物)の料理を伝えてきた実績がこの
リストランテにはありました。Kさんはそのとき招聘した伊料理長の通訳兼調理助手も
長年されて来られました)やその料理が食べられなくなることを考えたら悲しいやら
寂しいやらで
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0211.gif)
「そう言うなよ。(笑)」
「伊の料理人たちが紹介してくれたものは若い奴らもしっかり覚えていったから
みんな自分のものにしてると思うよ。(笑)」
「でも、ここがクローズするのはとっても寂しいッス!
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「ハハッ、時代だよ」
「えッ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kuri_3.gif)
「あの3.11以後いろんなものがガラと変わってね。
もう昔のようにこれからはやっていけないなって去年判断したんだよ。
辞めないでくれっていろいろなところから支援の声をもらったんだけど。
アマル君は業界のこと知ってるから話すけど。
十数人の従業員抱えてやってくのはもう大変なんだッ。」
「わかります」
「3.11以降、東北から毎年来ていた修学旅行の団体さんが全部なくなった。
今は少子化でしょ。ちょっと前まで料理学校ほかいろいろな専門学校から
(毎年)半年以上先まで講師依頼がつまってたんだけど、ここ数年で激減。
今じゃ2~3校しか依頼がないよ...。
そこへ来てこの不景気だから、料理の単価を下げてお客に来てもらおうとしても
限界があるからね。昼に赤字を出して夜でカバーなんて今じゃできないよ。
夜に昔のようにしょっちゅう食べに来るお客さんもいなくなってきてね。」
「わかります。このご時世」
その後、あれこれの問題(経営者としての悩みも含め)を話していただきました。
やはり料理人よりサービスのプロ(カメリエーレ)が育たないこと、
「うちでなくちゃ嫌だ!」と懇願して入った若い子が3日で辞めってしまったり
1日で辞めた子もいるとか...etc.
「しかしKさん、今日は貸切ですか?」
「そうなんだよ。今日だけじゃないよ。店じまいをお客さんに連絡してから
12月からほぼ毎日昼も夜も予約のお客さんでいっぱいなんだよ。」
「ひえ~ッ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_hat.gif)
「なんかなぁ、こんなにうちのこと考えてくれるんなら
もっと早くから毎月足運んで欲しかったよッ(笑)」
「そうですねぇ(笑)。
でも店に入ってから驚いたんだけど年配のお客さんがいっぱいいらっしゃいますね。
というか高齢の方も随分おられて驚きました。」
「そうよ。うちは若い人で40ぐらいだからアマル君も若い方だよ。」
「ひぇ~ッ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_sup.gif)
「系列のT店やK店は20代の若い人もいっぱい来るけど
ここは年配者が多いね。」
「歴史がありますもんねぇ。
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「そうねぇ。日本でアルデンテなんて言葉を誰も知らない時代からやってたからね。
当時アルデンテ状態で(パスタ)出したらお客から料理を突き返されたからね。(笑)
“これ硬いじゃないか!食えたもんじゃないよこんなもの”ってね(笑)」
「そうですねぇ(笑)」
「今月で閉店なんですよね。寂しいなぁ。」
「○○日が最後だ。最終日は全国からお客さんが来られるし、この店から独立してった子たちや
海外からもイタリアだけでなくスペインからも料理人や知人が駆けつけてくるよ。(笑)」
「そりゃスゴイ!盛大ですねぇ。」
「このフロア(100席余り)で収まらないよ。最後は立ち飲み・立ち食いになるかな?(笑)」
その他、他愛もない話をしながらアマルが20代の時、この店を初めて訪れ
ここで働きたいと申し出、K料理長や本社の社長や役員の方々と面談した時の話題にもなり、
30年近い歳月があっという間に流れたことを互いの顔に増えたシワを確認しながら笑い合うのでした。
「今すぐにはできないけど、いつか小さな店を開ければできたらいいかなとは思ってるんだ。」
「それは素晴らしいですねッ。お店開かれたら絶対伺いますよ。」
「そう。ありがとう。」
「料理長のファンは全国にいっぱいいるから大繁盛間違いなしじゃないですか?」
「いやぁ、もう経営で苦しみたくないからカウンター越しに料理を出すような
小ぢんまりした店で十分なんだよね。(笑)」
「いいですねぇ。(笑)」
そうしてると、これまた30年近くK料理長と同様におつきあいのあるホール長がそばに来て
「アマルさん、お世話になりましたね。」
「いえいえとんでもない。」
「お客さんをいっぱいお連れいただきありがとうございました。
アマルさんがお連れいただいたEさんやSさんはご家族でよくお越しになられますよ。」
「へぇ~、そうなんですかぁ。」
「前職や前々職での忘年会やフロア貸切での宴会大パーティー、忘れられません!
あのときはOさん(フロアー長の名前)本当によくしていただきありがとうございました。
あのときのこと、あの時の料理・お酒、料理長とのコンビネーション、フロア担当の皆さんの
連携、素晴らしかったぁ。
今でも昔の連中に会うと話題(語り草)になります。(笑)」
「こちらこそ、いい思い出です。」
「Oさんはこれからどうされるんですか?」
「社長から系列店の教育指導係を任されることになりまして、休ませてくれません!(笑)」
「そうですかぁ。それはよかったぁ。
じゃまたお目にかかれますね。(笑)」
「はい。(笑)」
「あまり長居してはお2人休憩できませんね。そろそろ失礼しますね。」
このあとKさんとOさんとアマルの3人でダビンチが描いたスケッチをバックに
記念撮影。
「じゃアマル君、元気で!」
「Kさんもお元気で!お店を出す時には必ず連絡くださいね。」
「ハハハッわかった、わかった。じゃ、また何処かで。(握手)」
K料理長とOホール長に見送られ店の扉を閉めたとき
日本にイタリア料理を紹介し一時代を築いたこのお店で、
多くの人と集い楽しい時間を過ごしたことが走馬灯のように頭を駆け巡り、
今静かに幕を下ろそうとしている姿に一抹の寂しさを隠し得ませんでした。
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Inspiration by Gipsy kings
新年そしてお誕生日と、おめでた続きですね。
パート1のリゾット、おいしそうですね。 海の幸がいろいろ入ったこの一品、ぜびいただいてみたいです。 トマト味、大好きです。
画家、建築家、作家は作品を後世に残せるけれど、料理人はレシピは残せても、その手で作った料理を形として残せない。 それを食べた人の思い出の中にのみ、その味が生き続ける。 うたかたの芸術?
ブログは持っていません。
つれづれに何か書いたり、歌を詠んだりすることはありますが、自分専用です。
「海の幸のリゾット」日本広しといえども、あのリストランテのランチタイム限定で食べられる一品でしたのでとても残念です。
イタリア料理好きの人には必ずといっていいほど紹介していた品です。
遡ること約四半世紀前、そのリストランテを経営する社長から「アマル君、これは日本ではうちでしか食べられないものだよ!」といって紹介されたスペシャリテなんです。
ランチに辛口の白ワインと合わせて食べるともう幸せでたまりませんでした。
昔ランチタイムにアマル一人でこのスペシャリテを頼んで食べていたとき、これを知らないすぐそばのテーブルにいた女性客たちがアマルのそれを目ざとく見つけ(リゾットアラマリナーラが見た目も美しく具材も豊富で美味しそうなので)、カメリエーレに「すみません。あの人(アマルのこと)が食べているあれは何ですか?」と訊かれ。
「あれは○○○○です」とカメリエーレが答えると、彼女たち(4名でした)全員が「私たちもそれくださいッ!」と一斉に注文され、きゃぁ~きゃぁ~とテンションが上がられてアマルの食事風景をのぞき見する2人の女性と目が合ってしまい、苦笑いとともに思わず「美味しいですよ~ッ!
>つれづれに何か書いたり、歌を詠んだりすることはありますが、自分専用です
ん~っ見てみたい。