Harvard Square Journal ~ ボストンの大学街で考えるあれこれ

メディア、ジャーナリズム、コミュニケーション、学び、イノベーション、米国社会のラフドラフト。

消費から「社会貢献」へ~変るお金の使い方

2012-02-22 | Harvard-Nieman
贈物より寄付を、アイディアに資金提供を。市民の意識と仕組みで社会を変える

去年の秋、研究員仲間の親戚に不幸があった。
その通知メールには、「もし皆さんが、私たちのために何かしたいと思って下さるのでしたら、このリンク先の癌研究機関に、小額で結構ですので、寄付して下されば幸いです。今後、癌で苦しむ人が少しでも減ることが家族の望みです」と書かれてあった。日本的に考えると、お香典となるのかもしれないが、こういうお金の使い方もあるのだと、妙に感心した。

このところ、消費ではなく、社会のためにいかにお金を使うべきか、ということについて考えさせられることが多い。

12月のホリデーシーズンには、お世話になった人に贈りものをするのが一般的。ところが、物欲とはほど遠い友達がいたので、直接彼女の意向を聞いてみたところ「友達の幼い子供が亡くなり、彼女がとても悲しんでいる。息子の名前の基金サイトがあるので、St. Baldrick'sという小児癌の研究資金を集める団体に寄付して欲しい」。

さっそくサイトに行ってみると、これがまたとても良く出来ていて、私のクレジットカードで決算しつつも、私の友人が寄付したことにできる。さらにすごいのは、寄付を癌のタイプや、研究の他の使い道にも指定できる。また、今回のように遺族が個別に「窓口」を作れば、組織に直接寄付するというよりは、遺族の意思が反映された記念基金を経由して、寄付が組織に流れることになる。しかも、彼女宛に税金免除のレターもメールで送ってくれ、希望すれば「寄付金リスト」に彼女の名前を掲載してもらうこともできる。私は彼女にプレゼントをしているだけなのに、何だかとても良い事をしているような気持ちになり、自分もこうした方法をもっと使いたいと思うようになった。

数週間前には、こんなこともあった。5歳の娘の友達の誕生会の招待メールに「プレゼントは結構です。もしよかったら、birthdaywishesというサイトに行って、ホームレスの子供達に誕生会を開くお手伝いをすることを検討してください」。

全くたいしたことではないが、我家にとってとても身近なのは、誕生日を記念して、学校の図書館の欲しい物リストから、娘が選んだ本を寄贈すること。表紙に子供の名前と誕生日のシールが貼られ、他の人が贈った本を見るのもなかなか楽しい。また去年の下の娘の誕生会では、プレゼントの代わりに、幼稚園が作っているアマゾンの欲しいものリストから、本を選んでもらって、直接、学校に寄付してもらった。

この数年で、社会貢献を上手く組み込んだシステムが、急速に広がっている印象。

よく行くオーガニックスーパーのWhole Foodsでは、随分昔から、レジに廻りにバーコード付きの「寄付」をつのるカードをたくさん置いてある。列に並んでぼんやり見ていると、アフリカの女性の「起業」や、地元の貧困家庭を助けるためのプロジェクトなど実に様々。2~3ドルから20ドル位のものが一般的なようで、買い物したものに、カードを加えれば、簡単に寄付ができてとても便利。
先日はレジの店員さんから「ホームレスの方に、豆の缶詰(2ドル)をいかがですか?」と言われ、自分が普通に食材を買えるのはありがたいことだから、と思って、一缶加えてもらった。これがオンラインで手続きしたり、どこかの場所に出かけて行くとなると、そう日常的にはできないので、こちらとしてもありがたい。(ただ、どんな団体のものを扱うかといった判断など、興味深い点も多々ありますが..)

これらの例とは少し異なるものの、クリエイティブなアイディアを持つ人に資金提供しようというKickstarterというサイトも存在する。面白いプロジェクトが目白押して、どれくらいの資金が集まったのかも一目瞭然。ここを見ているだけでも、自分も何かやってみようかな~、とわくわくした気になる 。ちなみに、先日ブログに書いた科学ジャーナリズムのビジネスモデルにも通じる、調査報道を行う為の資金を集めている人もいる。

少し飛躍するけれど、私が現在、研究員をしているニーマンジャーナリズム財団も、新聞社のオーナーファミリーがジャーナリストこそ学ぶ必要がある、とのビジョンから、70年以上前にハーバードに当時100万ドルを寄贈したことから設立されたもの。

消費から社会貢献、社会投資へ。市民の意識も勿論大事だけれど、それを実現する手段が簡単で魅力的であれば、さらに広がるのではないかと思うこの頃。

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