独り言雑記ブログ

将棋関係の一人言雑記帳

マイナビ杯女王戦予選一斉対局 その2

2007-10-31 21:15:27 | Weblog
結果編
今回の一斉対局での一番印象に残ったのは、やはり

「中村桃子2級の鮮烈デビュー」

でしょうか。2回戦でA級の岩根初段を破り、予選決勝で貞升1級に敗れたとはいえ、途中でいい場面もあり、「デビュー即日1級昇級か?」というところまで行ったのは印象に残った人も多いんじゃないでしょうか。

自分自身もこういう見方をしてしまうし、どうしてもそう見てしまうのが、LPSAと連盟の「対抗戦」という図式。結果から見ればLPSAとしては、やや不満の残る結果になってしまい、脱・2枚看板は達成できず。松尾初段、中倉姉妹、島井初段あたりがもう一回りパワーアップして欲しいところじゃないでしょうか。
逆に、連盟所属の棋士は、鈴木初段、貞升1級とノーシードの若手が本戦入り。この二人が本戦で暴れることが出来るか、シードの上田初段、中村真初段に追いつくような活躍が(他棋戦も含めて)出来るかというのが、本戦の楽しみだと思います。

そして、気になったのは、1回戦から出場した棋士で枠抜けをしたのは、1回戦から登場した棋士同士の対戦となった7枠だけ。もちろん力のあるシード棋士は2回戦からの登場だし、まだたった1回なのでなんともいえないところはあるが、1日3戦の大変さというのは感じた結果でした(LOT予選とかNHK杯の予選はどうなんでしょう?)

本戦は、11月21日に中井六段-里見初段戦で開幕とのことですが、前夜祭や対局中の動画とかはいつになったら更新されるんでしょうか?

マイナビ杯女王戦 予選1回戦 ▲船戸陽子二段-△井道千尋1級

2007-10-30 23:21:39 | Weblog
1週間以上経過してしまいましたが、マイナビ杯1回戦の観戦記です。えーと、時間が経って記憶が薄れ気味なのとメモした自分の文字が読めない(!)ので、なんかうまくまとまってませんが・・・。キラリっ娘の3人組の仲の良さみたいなのを感じてもらえれば・・・。
というか、前回のもそうだったけど、日本語力がないな>俺(まあ、ないから理系人間やってるんだけど)



先手:船戸陽子二段
後手:井道千尋1級
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛
▲6八玉 △6二玉 ▲7八玉 △7二銀 ▲5八金右△7一玉
▲3六歩 △3二銀 ▲5六歩 △5二金左▲2五歩 △3三角
▲5七銀 △9四歩 ▲7七角 △8二玉 ▲8八玉

新棋戦誕生
 毎日コミュニケーションズ、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会の3者が主催する第1期マイナビ女子オープン。タイトル称号を公募したり、組み合わせ抽選はすべて公開で行なわれたりするなど、今までにない形式となった女流棋界の新大型棋戦。2週間近く前に相手が分かる他の棋戦と違って、予選の場合、組み合わせは前夜祭で決まり、しかも公開一斉対局で持ち時間も男性棋戦の朝日杯将棋オープントーナメントと同じく40分60秒の形式という、どちらかというアマ大会に近い形式で行なわれる。実際、本棋戦でプロ入り初勝利を飾った中村桃2級や熊倉2級は、対局後の感想で「アマチュアの時の大会に近い形式だったので」と語っていた。

 公開対局ということで、今回は、ファンにも対局場が公開された。原則的に非公開で行なわれる公式戦で、これだけの棋士が一斉対局する姿を見ることが出来るのはなかなかない機会だ。1つ上のフロアでは、本戦シードの村田女流初段のほか、藤井九段、先崎八段などによる大盤解説会も行なわれることにもなっている。

 主催者の掛け声で1回戦を戦う24名が一斉に対局場に入場。振り駒の後、駒を並べる。なんともいえない雰囲気が漂っている対局場には、駒音とカメラのシャッター音だけが響いている。前夜祭で発表された新称号は「女王」。そして、その初代女王を決める戦いがこれから始まる。10月20日午前10時。主催者の掛け声とともに、1回戦全12局が始まった。


△6四歩 ▲6六歩 △4三銀 ▲7八金 △6三金 ▲9八香
△7四歩 ▲9九玉 △7三桂 ▲6七金右△5四銀 ▲8八銀
△4五歩 ▲6八角 △4一飛 ▲1六歩 △9五歩 ▲5九角
△1四歩 ▲2六角 △1二香

能登の陽だまり
 対局開始から10分から経過して、報道陣の撮影禁止のアナウンスが流れた。本局は、井道1級の四間飛車に船戸二段が居飛車穴熊模様となかなか予想しなかった戦型だ。

 井道1級は、今年から東京に出てきて活動しているが、元々は関西所属で地元は石川県。愛知の室田1級、島根の里見初段とともに活動している「キラリっ娘」の長女で、ファン投票でついたニックネームは「能登の陽だまり」だ。たまたまなのか、主催者の意図なのか分からないが、本局の隣では、キラリっ娘の次女・室田1級がベテランの蛸島五段と対戦している。関西の期待の若手と1期生の対局ということで、対局開始前後はこの対局に多くの報道陣のカメラが集まっていた。他には、アマチュア2選手の対局に注目が集まっている。

三女・里見初段は昨年度に本棋戦の前身・レディースオープントーナメントで活躍し本戦シードということで、井道1級・室田1級の対局を見守っている。この3人は、普段も仲がいいようで、対局前には、控え室の前で3人で談笑していた。

 井道1級は、序盤から小刻みに時間を使っており、28手目△6三金が約7分、36手目△4五歩が約5分考慮。船戸二段も41手目▲5九角に約10分考えるなど、序盤から神経戦になっているようだ。

隣の室田1級-蛸島五段戦は、井道1級とは対称的に室田1級が早いペースで進めていることもあってか、既に小競り合いがはじまっているようだ。井道1級は、44手目△1二香を指した後、一瞬、室田1級に目をやった後、再び盤面に目を戻した。


▲3五歩 △同 歩 ▲同 角 △6五歩 ▲2四歩 △同 歩 
▲6五歩 △9六歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲同 香 △8五桂
▲6六銀 △9七桂成▲同 桂 △9二香打▲5五桂 △6二金引
▲2二歩

人気ブロガー
 井道1級はキラリっ娘として「キラリっ娘のそよ風日記」で里見初段・室田1級とともに書いている人気ブロガーだが、船戸二段も「船戸陽子blog」というブログをやっている。普段の将棋教室の様子や女流棋士の写真をあげている人気ブロガーの一人でもあり、現在は、女流棋士会のホームページを担当するデザイン派でもある。

 本譜は、約3分考えて、船戸二段が45手目▲3五歩と突き、始めて駒がぶつかった。△同歩▲同角のあと、井道1級は、再び長考。手を顔にやり考えている。一方の船戸二段は、手に持った扇子を時々動かしたり、扇子で扇いだりしながら考えている。序盤、井道1級のほうが多く時間を使っていたが、41手目▲5九角に約10分考えたこともあり、持ち時間が逆転していたが、再び持ち時間は逆転し、井道1級が上回った。井道1級は、約5分考えて、48手目△6五歩。51手目▲6五歩には、ノータイムで△9六歩と端攻めを敢行した。

両者ともまだ10分以上の持ち時間を残しているが、早くも他の対局からは秒読みの声が聞こえてきている。序盤はゆっくりとした展開だった本局だが、読み筋どおりになのだろう。中盤に入り井道1級のペースが早くなった。逆に、隣では早くも終盤の入り口に差し掛かり、ここまで早いペースで進めてきた室田1級が長考しているようだ。

船戸二段は61手目▲5五桂を指して、大きくため息をついた。残り時間は、再び船戸二段のほうが少なくなった。


△9六香 ▲9八歩 △4六歩 ▲3四歩 △4五飛 ▲4六角
△5五銀 ▲同 歩 △4四角 ▲2一歩成△8五桂 ▲8六桂
△7三金 ▲9四銀 △9七香成▲同 歩 △9六歩 ▲同 歩
△9四香

勝負どころ
 本局は勝負どころを迎えていた。局後の感想戦の感じでは、63手目▲2二歩の局面では、船戸二段はけして自信があったわけではないようだったが、まだまだ難しい勝負だろう。

船戸二段が▲9八歩と受けてしばらくして、隣の対局では、関根四段が投了。中村桃2級がプロ初対局初勝利を新棋戦勝ち名乗り1番手で決めた。まだまだ中盤の難しい局面の本局だが、隣では、多くの報道陣やギャラリーが集まっている。中村桃2級への主催者のインタビューや感想戦の声が聞こえてくる。ほどなく感想戦も終わり終局後も厳しい表情が続いていた中村桃2級だったが、ようやくほぐれていた。まだ対局中の残りの22人は、一瞬、そちらに目をやることはあっても、気にする余裕は当然ないようだ。

 井道1級もここで最後の長考に入っていた。残り1分まで約5分考えて、67手目△4六歩と飛車先の歩を突いた。船戸二段の▲3四歩に井道1級はほぼノータイムで△4五飛。△4五飛に対する船戸二段の応手▲4六角を考慮中に、持ち時間を使いきった井道1級は、記録係の声にうなずいた。一方の船戸二段の残り時間は2分だ。

 終局後、最初に口頭で感想戦行なわれたのはこの辺りだった。そして、ここでの△5五銀が感想戦で井道1級が真っ先に悔やんだ手で、形勢を損ねてしまったようだ。船戸二段も77手目▲9四銀から1分将棋。船戸二段は、一度銀を持ったが、もう一度駒台に置き、40秒まで考えてから、再び銀を持ち直してから▲9四銀と打った。


▲同 桂 △7一玉 ▲8六香 △9七歩 ▲8九玉 △3五角
▲5七銀 △4六角 ▲同 銀 △3九角 ▲2四飛 △6六桂
▲9三角 △6二玉 ▲2二飛成

秒読みの中の勝負
 井道1級は、82手目△9四香を指したあとゆっくりお茶を飲んだ。▲同桂にはノータイムで△7一玉。△7一玉を指した後、井道1級は、一瞬、隣で対局している室田1級に目をやった。蛸島五段は少し前から秒読みに入っているが、室田1級はまだ数分の持ち時間が残っている。隣の対局では、室田1級の最後の長考で、84手目△8四龍。寄せを読みきったか、その手つきには力があった。一方の蛸島五段の応手・▲4五玉を指す手つきには力がない。室田1級が優勢のようだ。

本局は、両者は既に1分将棋だ。とはいえ、60秒ぎりぎりまで考えることは両者ともほとんどない。30秒以内に指すことも多く、50秒まで読まれることもほとんどない。お互いの読み筋どおり進んでいるのだろうか。井道1級は、姿勢や表情が大きく変わることはないが、船戸二段は、秒読みになってより前傾姿勢になってきている。

 井道1級は、92手目△3九角~94手目△6六桂と迫るが、一方の船戸二段、95手目▲9三角から97手目▲2二飛成で左右挟撃態勢。▲2二飛成と飛車が成り込んだ手が王手になるのでは、井道1級はやや苦しいのかもしれない。船戸二段は、▲2二飛成と飛車を成り込み、今日何回目だろうか、再び大きくため息をついた。


△5二銀 ▲6六金 △4六飛 ▲同 歩 △5七角成▲6八香
△8四歩 ▲8五香 △6九銀 ▲9七銀 △8三金 ▲6七金引
△同 馬 ▲同 香 △9三金 ▲6四歩 △9四金 ▲4五角
△5一桂 ▲6三歩成△同銀右 ▲9二飛 △7三玉 ▲9四飛成
△8三金 ▲6五桂
まで123手で先手の勝ち

明暗
隣で行なわれていた室田1級と蛸島五段の対局が終わり、この対局もいよいよ最終盤。船戸二段の後ろからは、感想戦とカメラのシャッター音が聞こえてくる。他の対局も続々と終局しているようで、各対局で主催者のインタビューや感想戦が行なわれている声が対局場に響いている。残る対局も少なくなってきたこともあって、この対局を見つめる人も増えてきた。

 船戸二段の手つきは力強い。優勢だからというわけではなく、力強い手つきは最初から一貫しているが、終局までの道筋が立ったか、船戸二段の動きは少なくなってきた。前傾姿勢も一時ほどではない。相変わらず両者は時間いっぱいまで指してを考えることは少なく、108手目△8三金は、井道1級の指し手に記録係が気づかずに井道1級が指摘するシーンもあった。

 隣で対局していた室田1級は、蛸島五段の感想戦も終わり、席を立ったあとしばらくこの対局の盤面を見つめたあと、同じように本局を見ていた里見初段に笑顔を見せていた。やはり「キラリっ娘」の仲間の対局はお互いに気になるようだ。

 本戦シードの里見初段、1回戦を突破した室田1級に続きたかった井道1級だが、123手目▲6五桂で投了。最後は、船戸二段がしっかり勝ちきり2回戦進出を決めた。

マイナビ杯女王戦 予選2回戦 ▲島井咲緒里初段-△伊奈川愛菓2級

2007-10-22 21:58:39 | Weblog
せっかく1つの対局を集中して見ていて、いろいろ感じたのでそれを観戦記みたいな感じで、まとめてみました。指し手のコメントとかは棋譜コメントを参考にしています。多少メモしたとはいえ、あくまで素人の感覚と文なので、うまく伝わらないかもしれませんが、当日いけなかった人に少しでも対局場の雰囲気を感じてもらえればと思います。行けなかった人に「いけばよかった」と思わせる文章を書きたいと思いますが、無理だろうな(笑)。
誤字等は大目に見て、こっそり指摘してくださるとうれしいです。

棋譜・コメントはこちら
※ネットで公開されている棋譜だし大丈夫だと思って、棋譜載せました。まずかったら削除します。この辺の権利関係が曖昧なのが将棋界の問題の1つじゃないでしょうか。



先手:島井咲緒里初段
後手:伊奈川愛菓2級
▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛 △6二銀 ▲4八玉 △5四歩
▲3八玉 △1四歩 ▲2八玉 △4二玉 ▲1八香 △3二玉
▲1九玉 △3四歩 ▲6六歩 △3三角 ▲1六歩 △2二玉
▲2八銀 △1二香 ▲7八銀 △8五歩 ▲7七角 △1一玉

2回戦開始
 注目のマイナビ女子オープンの予選一斉対局も昼休みを挟んで午後2時から再開。2回戦の戦いが始まった。1回戦同様、主催者の掛け声で32人の対局者が入場。2回戦は、この日最多の16局が同時に行なわれた。2回戦から週間将棋のランキングで選ばれた予選シードの8人が登場することもあってか、午前中より多くのファンが対局場を訪れていた。

2回戦の中でも注目の対局は、女流名人戦リーグA級に所属し予選シードの岩根忍初段に、デビュー戦で見事に初勝利をあげた中村桃子2級が挑戦する一戦、そして関東の若手注目棋士同士の対戦となった坂東香菜子2級と貞升南1級の対戦。この2局が対局場の入り口からみて右手前側で並んでの対局となったために、多くのファンがそのエリアに集まっていた。

 この島井咲緒里初段と伊奈川愛菓2級も将棋連盟から独立したLPSA所属で、中井六段、石橋四段に続く3番手として注目の棋士と将棋連盟所属の人気若手棋士ということで、ネット中継の対象局にも選ばれた。入口からみて右奥の盤での対局となったこの一戦にもやはり多くのファンが見守る中での対局となった。
 振り駒の結果、歩が3枚出て島井初段の先手に。四間飛車が十八番の島井初段と純粋居飛車党の伊奈川2級の対局ともあって、開始から1分・わずか3手で四間飛車と居飛車の対抗系になることが確定。伊奈川2級はなかなか角道をあけずに飯島流引き角戦法かと思わせたが、14手目に角道をあけ、結局は四間飛車穴熊対居飛車穴熊の相穴熊戦になった。


▲6七銀△5三銀 ▲5六銀 △4四銀 ▲4六歩 △2二銀
▲3九金△5一金右▲5八金 △4二角 ▲6五歩 △3二金
▲3六歩△4一金 ▲4八金寄△3一金寄▲4五歩 △3三銀引
▲4七銀

女子高生棋士
 後手の伊奈川2級は人気の現役女子高生棋士。今の女流棋士の中では、伊奈川2級のほかに、昨年マイナビ杯の前身・レディースオープンで活躍して話題になった里見初段、中京地区ただ一人の女流棋士・室田1級の計3人の女子高生棋士がいる。この対局の斜め奥で対局している室田1級は私服での対局だったが、伊奈川2級は高校の制服を着ての対局だ。伊奈川2級は、今の若手の中では数少ない居飛車党。この対局でも、2手目で△8四歩と飛車先を突き、早々に居飛車を明示している。

同じ列の反対側で対局している中村桃子2級は、女流2級昇級時のインタビューで伊奈川2級から育成会の対局の日の前にはメールをもらっていたと答えていたが、対局前には、同時期に育成会を戦った熊倉2級とともに3人で対局場の外で談笑していた。

抽選の結果、2回戦からのスタートになった伊奈川2級はこの対局が、今日最初の対局で、普段の対局と違い公開対局で多くのファンやマスコミの視線が集まる中での対局だ。こういう場での経験は少ないのだろう。伊奈川2級は、対局直後はなかなか対局場の雰囲気になれないのか、何度か外に目をやったり、他の対局を見渡したりするなど落ち着かないようだ。落ち着くためか、伊奈川2級の指し手はゆっくりだ。対局開始から10分が経過して、主催者を除くマスコミの撮影をやめるような放送があった。この頃になると、やっと伊奈川2級もの対局場の雰囲気にも慣れてきたか、落ち着きを取り戻し、盤面に集中している。


△7四歩 ▲9八香 △8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲6六飛
△7二飛 ▲7五歩 △同 飛 ▲3五歩 △同 歩 ▲3八金寄
△8八歩 ▲7六歩 △7二飛 ▲6四歩 △同 歩 ▲8八角

3番手争い
 本譜は、伊奈川2級が角引きから金銀4枚の穴熊に組み、島井初段もやはり金銀4枚の囲いを完成させた。伊奈川2級のプロ初勝利の対局は、中倉宏美初段に居飛車穴熊で勝ったものだ。島井初段も1週間前に行なわれたLPSAの独自棋戦・1dayトーナメントこそは、穴熊を封印したもの四間飛車穴熊はもちろん得意戦法だ。お互い得意な戦型になった。

 島井初段も1dayトーナメントでは2連覇したとはいえ、名人戦リーグではA級の1期での陥落が既に決まっている。中井六段、石橋四段に続く3番手として隣で対局している中倉宏美初段とともにファンからの期待は大きい。今回の予選一斉対局を将棋連盟とLPSAの対抗戦という見方をすることも多く、抽選でその中倉宏美初段と同じブロックになってしまったとはいえ、是が非でもマイナビ杯で予選を突破し、活躍したい気持ちは強いはずだ。静かだが、その対局姿・指し手からは闘志を感じる。

 どの対局も、対局が一段落したところなのだろうか。島井が45手目▲9八香を指した直後に何人かの女流棋士がほぼ同時に席を立った。島井も少し前に、一度席を外している。最初は島井初段の指し手は早く、伊奈川2級はゆっくり指していたが、序盤から中盤に入りお互いに少考を繰り返し、ここまでの消費時間はほぼ同じだ。
 
 伊奈川2級の46手目△8六歩の仕掛けも約2分の考慮。その後も、慎重に一手一手に3分から5分の時間をかけながら指し手が進んでいく。61手目▲8八角の局面で、残り時間は、島井初段が約10分、伊奈川2級が約14分。


△8二飛 ▲7五歩 △6五歩 ▲7六飛 △6四角 ▲6三歩
△7二飛 ▲7七角 △5五歩 ▲4六銀 △8八歩 ▲同 角
△5六歩 ▲同 飛 △7五飛 ▲7六歩 △7二飛

静かな対局
 早くも他の対局では秒読みが始まっているようだ。

 対局中は扇子を盤の前に置いたり、手にしたりしている棋士も多いが、伊奈川2級も島井初段もタオルをひざにおいているだけで、隣の中倉宏美初段-船戸陽子二段戦では、中倉初段が扇子で扇ぎながら、船戸二段が扇子を手に持ちながら考慮しているのとは対称的だ。両者とも考慮中でも大きな動きはなく、大きく前傾姿勢を取ることもない。むしろ盤側の記録係やネット中継スタッフが考慮しているときのほうが動きは大きいかもしれない。

 他の対局でも続々と秒読みが始まるなか、伊奈川2級が67手目▲6三歩に対する応手を考慮中、坂東2級-貞升1級戦が終わったようで、主催者のインタビューや感想戦の声が聞こえてくる。貞升1級は、インタビューに対して「研究範囲でした」という意味の受け答えをしているようだ。

 この対局は、たしかに静かだ。たしかに、大きく前傾姿勢を取るわけでもない。しかし、静かといっても、島井初段からも伊奈川初段からも闘志を感じることができる。テレビの聞き手やイベントでおなじみの島井初段だが、そのときはまったく違った表情をみせている。

 ついに伊奈川2級も73手目▲8八同角を考慮中に秒読みに入った。78手目△7二飛は、秒に追われたか、迷ったような手つきで指された。この手を見て、島井初段も最後の長考。残り時間約3分をすべて使いきり、記録係から「1分将棋でお願いします」という声がかかり、島井初段は、はっきりとした声で「はい」と答えた。

▲7七角 △8二飛 ▲6二歩成△同 飛 ▲5一飛成△8二飛
▲5五銀 △8六角 ▲3四歩 △4二角 ▲7一龍 △8九飛成
▲3三歩成△同 角 ▲4四歩 △1五歩 ▲3四歩 △2四角
▲4三歩成△1六歩 ▲4四銀 △1七歩成▲同 銀 △4七桂

1分将棋
 秒を読まれた島井初段は、角をすーっとすべらせるようにして、79手目▲7七角と指した。83手目▲5一飛成はノータイムだったが、秒読みの中では、相手に考えさせないように時間を使わず指す棋士もいるが、お互いにまだまだ難しいと感じているのか、ほとんどの指し手で、50秒、1、2、3…という記録係が秒を読むまで考えている。それまで、ほとんど動きのなかった両者だが、さすがに秒読みに入り、身を乗り出したり、お互いに首をかしげたりする場面も出てきた。

 他の対局では、既に終わったところも何局かあるようで、感想戦の声も対局場では聞こえくる。石橋四段と思われる声が対局場に響いていたが、両者の耳には入らないようだ。お互いに盤面に集中している。
秒読みの声が響く対局場には、いつの間にかそれぞれの対局を見つめるファンの数が増えてきて、対局場の熱気も増してきた。秒読みの中、本局は島井初段の鋭い攻めが決まり、先手優勢のようだ。

 93手目▲4四歩力強い手つきで指された。それまで、秒読みに入ってから首をかしげる場面が少なくなかった島井初段だが、ここに来て、その表情からは力強さをより感じられるようになってきた。逆に伊奈川2級は指した直後に視線を落とす場面が増えてきた。それでも逆転の望みをかけて端攻めにでるその手つきにはまだ力が残っている。

 しかし、相手は相穴熊の経験は豊富の島井初段だ。ここまでくればもう寄せが見えているのだろう。伊奈川2級の100手目△1七歩成には、ノータイムで▲1七同銀と応じた。


▲3二と △同 金 ▲2一龍 △同 玉 ▲3三桂 △同 銀
▲同歩成 △1七香成▲3二と △1二玉 ▲1七香 △1六歩
▲1四香
まで115手で先手の勝ち

見事な寄せ
 102手目△4七桂にもほとんど時間を使わず島井初段は▲3二と。形勢は先手勝勢だろう。それでも、当然ながら、島井初段の表情が緩むことはない。先手玉は「ゼット」と呼ばれる絶対詰まない形。島井初段は、後は確実に後手玉を追い詰めるだけだ。105手目▲2一竜もほぼノータイム。島井初段は読みきったか、もうほとんど時間は使わない。107手目▲3三桂を指して、島井初段はお茶を一口、口に含んだ。伊奈川2級も時間は使わず指すが、さっきまでの力強さの残っていた手つきではない。

 ▲1四香を見て、伊奈川2級は、「負けました」と投了を告げた。主催者のインタビューに「序盤は作戦負けだった」と答えた島井初段だったが、相穴熊の経験を生かし最後は鮮やかな寄せで先輩の意地をみせ、予選決勝進出を決めた。感想戦がはじまっても島井初段の表情からは、まだ終わったわけじゃないといった雰囲気があったように感じた。もしかしたら、感想戦で本局を振り返りながらも、すでにこのあとすぐ行なわれる予選決勝に負けられないという気持ちを持っていたのかもしれない。

 この対局が終わるとほぼ同時に隣で対局していた中倉宏美初段が投了し、島井初段の予選決勝は船戸二段決まった。その反対側で対局していたLPSAの代表理事・中井六段が苦しい将棋を逆転勝ちで予選決勝進出を決めたのは、それからそう時間の立たないうちのことだった。

マイナビ杯女王戦予選一斉対局 その1

2007-10-21 17:37:12 | Weblog
公開対局編

その1とか公開対局編と書いたからには続けなきゃダメですね。とりあえず、今回は表題の通り公開対局について朝日杯の時にも書いたんですが、記録係や観戦記者が見てるのと同じような視線で見れる対局はいいですね。今回はほぼ同時に2つの対局がみれたこともあってより楽しめました(3つ以上も見れる配置だったけど、3つ以上だとこっちがついていけないので)

持ち時間なども朝日杯と一緒で今回のような形でやるにはちょうどいいと思いましたが、2回戦と決勝の間がちょっと短かったような気がしましたが、40分1分で3局やるなら9時半開始にするとか、決勝のスタートを30分遅らせるかしたほうがよかったような気がします。

公開対局をみて感じるのは、やっぱりプロ棋士の対局姿はかっこいいなということ。それに、今回のネット中継をみて始めて棋譜をみる方もいましたし、休憩時間中は、下の階のレストランフロアや対局場の外に女流棋士がいるのをみて、ちょっと普段の様子が垣間見れたような感じがして得したような気がしました。
1回戦、2回戦と1つの将棋を主としてみてたので、そこでいろいろ感じましたが、その感想は書きたいなと考えてます。
ただ、今回は施設の都合でしょうがないとはいえ、解説会場と対局場の距離がちょっと離れすぎかなという感じはしました。さすがに、あれだけ距離あるとほとんど解説会場を除くことはできませんでした。

終わったあとネットをみた感じだと、ちょっとネット中継がまずかったみたいですね。ネット中継の主力や毎日の順位戦・王将戦、週将のLOTの実績を考えるとちょっと驚きました。ところで、ネット中継スタッフの某氏が対局中の様子とかを動画撮ってたと思うんですけど、それはアップしないでしょうか?

マイナビ杯女王戦

2007-10-19 20:46:13 | Weblog
注目のマイナビ杯もいよいよ明日開幕。タイトル称号も女王に決定。公開抽選会も行なわれて、組み合わせも決定。

今回のマイナビ杯は、東西の区切りを取ってることもあって、予選の段階から関東-関西の組み合わせもいくつか。注目として、岩根初段が週間将棋のインタビューではなしていたように、関東-関西の対抗意識というのもあるだろうし、やはり今回の注目はどうしても連盟とLPSAの対抗ということになりそうだ。

週間将棋では、勝利宣言はLPSAは3人、連盟は6人という数字を出してるが、連盟としては6人枠抜けできればOKだろうが、LPSAとしては、シードが0の以上、やっぱり3人というのは最低のノルマであって、「勝利宣言」といえるのは本戦の人数を考えると5人ではないかという気がします。
抽選結果を見てみると、抽選のアヤもやってLPSAの3番手を争う中倉宏初段と島井初段がどうブロック。一方で、松尾初段が混戦のブロックの2枠で十分チャンスがあり、北尾初段も3枠で前回の1dayのような将棋がさせれば勝機はありそう。あるいは、1dayで優勝経験のある藤森三段やLOTには相性のよかった大庭初段も混戦のブロック・・・と考えると5人枠抜けというのは十分狙えそうな気がします。
とはいえ、やってるほうはまず自分が勝つために必死でしょうから連盟かLPSAかというのは見てるほうがいうことだとは思いますが・・・

倉敷藤花戦の時期と結果次第では、今回が今期初対局という人もいるし、名人戦・王位戦でリーグ入りを逃がした場合には、公式戦は半年ぶりというひともいる。当然、研究会などでは実戦を積んでるだろうけど、公開対局での公式戦。いつも通りの将棋が出来るかというのが一つのカギになるんじゃないかという気がします。

第20期竜王戦七番勝負

2007-10-18 10:26:43 | Weblog
竜王戦ブログにトラックバックURLがあったので、トラックバックしてみました

第1局は、佐藤二冠が▲9六歩から決めにいったが、渡辺竜王の反撃がすばらしく渡辺竜王が先勝
終盤、渡辺竜王がほぼノータイムでどんどんいくあたりはテレビで見てても迫力を感じました。ダイジェストを見た感じでは、▲3六銀に対する△2四銀がよかったということでいいんでしょうか

個人的には、開幕前は奪取なら4-0か4-1、防衛なら4-2か4-3と予想していましたが、佐藤二冠の調子が思ったよりよくないようなので、2局目・3局目でどこまで調子があがってくるか注目してみたいと思います。


あと、出来れば終盤以降は、まったく中継画面が更新されなかったんで、サーバーの強化をお願いします!!

棋譜公開

2007-10-16 16:02:49 | Weblog
竜王戦をみながらブログ書いてます。現在、佐藤二冠が▲4八銀としたところ

ちょっと前に、ネット中継でおなじみの烏記者が日の目のを棋譜についての話をだしていましたが、個人的には、方法の問題はあるにしろ、全局棋譜が見られる状況にして欲しいと思っています。
たとえば、順位戦・名人戦中継もリアルタイムでという点と同じくらいに、A級以外のB1~C2含めた全局見られるからこそ、有料で成り立って価値が出てるというのはあると感じています。
とはいえ、全局すべて見ている・並べているかといえば、そんなことはなく注目の対局だとか好きな棋士の対局を中心に並べて、後日週間将棋などの記事を見て見返すこともあるくらいですが。

一応、解説つきの棋譜としては、将棋年鑑がありますが、それも本戦クラス以降の棋譜ですら全部載ってるわけじゃないですし(そういえば、週間将棋の記事見逃した昨年の王将リーグ・森内-郷田戦@横歩取り△8五飛の解説が読みたかったけど、今年の年鑑には載ってなかったな)、書籍版には、年間全体局を載せるのは無理でしょう。CD-ROM版に××年度第2巻として、書籍版に載ってない対局を全部載せることは出来るかもしれませんが、それでも全局解説入れるの難しいと思いますが、局後のコメントを一言ずつ載せるとかなら出来るでしょうか

個人的には、もちろん王将リーグのように「棋譜が公開されてるけど解説がないから解説がみたい棋譜」というのもありますが、それ以上に「解説があるからその将棋の棋譜見てみたい」というのもけっこうあります。この辺は、ブログで自分の将棋を解説している棋士が増えてきたせいもあるでしょう。
たとえば、角換わり同型腰掛け銀の「渡辺新手」の棋譜とかは見てみたいと思っても見ることが出来ません

ネットで公開するシステムを作るのは、その労力考えたら難しいと思いますが、個人的には、将棋連盟の道場のような所定の場所で、申し込めばシステム利用料として数百円~五、六百円程度で1局の棋譜をもらえるとかってのはできないかなとか思いますけど、どうでしょうか?これなら、既存の業務用(?)の棋譜データベースを使って出来るし、それほど労力なく出来そうですが
(業務用として使ってる棋譜データベースを公開してくれれば一番ありがたいんですが、いろいろ難しいんだろうな)



この問題で、一番大事なのは棋譜関係の権利がはっきりしてないせいでしょう。棋譜関係の権利がはっきりすれば、公開するにしてもどういう方法で出来るかというのがはっきりしそうですし

女流棋士界

2007-10-10 18:59:45 | Weblog
お久しぶりです。1ヶ月ぶりの更新です。これじゃ、月1更新だな・・・

残念ながら分裂という結果になってしまった女流棋士界ですが、二団体が競い合ってイベントとかが増えてるのはファンとしてはうれしいこと。女流棋士会は1日館長や紅葉前線イベント、LPSAも1dayトーナメントや各種将棋教室などだんだん両者の色は出てきたような気はします。
先日(っても2ヶ月前か)、ちょうど連盟にいったときに里見初段が1日館長ということもあって、色紙がもらえるようにと普段買わない将棋世界を買ったりしたりしたし、1日館長なんかは連盟としても売上が増えていい効果を生んだと思います。
(レジ打ちまでやらせるのか、同じ女流棋士が何度も登板するどうなのかというような問題はありそうですが)

自分の場合は、1dayトーナメント白瀧あゆみ杯もみるし、時間(とお金)があったときに面白そうなイベントがあれば参加するというパターンで、どっち派というつもりはとくにないんですが、ここまでの動きをみると、女流棋士会は、もっとできるのではというところもあって、ややLPSAを持ちたい感じでしょうか。


ところで、新春女流棋士フェスタの「2007年6月末までにMINERVAに入会された方は入場無料」ってどうやってそれを証明すればいいんでしょう(一応、会員番号は書くらしいけど)?
性善説で自己申告なんでしょうか?
ファンクラブ関係の女流棋士会の対応はさすがにまずすぎたんじゃないでしょうか