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バロックヴァイオリン 佐藤 泉  Izumi SATO

「コンサート情報」や「日々の気づき」などをメモしています。

11月23日 出演者紹介 山縣 万里さん

2023年11月19日 | コンサート情報
先日霰、雹?が降り、その後急に冷え込んで来ました。11月23日教会の聖堂は床が石なので、お天気が良くとも足元が冷えます。どうぞ足元暖かくしていらして下さい

さて、出演者紹介 山縣 万里さん。

マレ:組曲ト長調 (ガンバ福澤 宏 チェンバロ 山縣 万里)


2020年にコロナ禍で中止になってしまったシギスヴァルト・クイケンとの室内楽公演。その時福澤先生から推薦して頂いたのが山縣 万里さんでした。東京芸大でチェンバロを学びながら、福澤先生のガンバクラスで副科ガンバを取った万里さん。元々モダンヴァイオリニストだった彼女は、福澤先生を驚かせたのではないかと想像しています。(私も最初の練習の時、そのセンスに驚きました
卒業後から15年に亘って共演を続けておられます。これは、中々出来ることではありません。

今や各地で引っ張りだこの万里さんですが、兵庫県で演奏されるのは、初めてとのことでした 最近の動画はこちら

必要な時に 必要な事だけを的確に提案して下さる万里さん。彼女の聡明さと謙虚さのバランスが絶妙で、多くのアンサンブルが信頼を寄せるのも当然と思うリハーサルでした。私としては、万里さんが野球ファンと知って話したいことは沢山あるのですが、それは終演後のお愉しみ

菅さん、福澤さん、山縣さんに支えられ、何とか当日を迎えようとしています。

では、11月23日会場でお待ち申し上げております。




11月23日公演 出演者紹介 福澤 宏さん

2023年11月17日 | コンサート情報
今年と来年の公演準備が重なって、あっぷして遅くなりました。今日は出演者紹介 福澤 宏さん です。

福澤先生のことは、この動画をご覧になって頂くのが一番。ヴィオラ・ダ・ガンバ ~眠っていた楽器が教えてくれたこと

昨年共演したバルトルド・クイケンが、福澤先生が弾き始めた途端に「あ!あの楽器の音色だ!」と気づき、とても嬉しそうに福澤先生と話しておられました。そう、福澤先生の師匠ヴィーラント・クイケンが持っていた楽器を福澤先生が譲り受けておられるのです。

この楽器は、ジブリの映画「耳を澄ませば」の中で福澤先生によって演奏され、このコピーが今のジブリ美術館に展示されているそうです。それを話すと、バルトが「ヴィーラントにすぐに伝える!」と喜んでおられました。
(ジブリファン

そして、バルトから何度も「宏は良いバス奏者だ・・・」と聞いているうちに、2024年のバルト来日時にも是非福沢先生にお願いしたい、2025年のシギスヴァルト・クイケンとの共演では、是非ガンバ二重奏をお願いしたいと思ったのでした。
若きシギスヴァルトとヴィーラントが一緒にガンバを弾いていた時代。その頃にヴィーラントが使っていたガンバだと聞いています。クイケン兄弟と日本の古楽奏者の長いご縁を思い返すこの頃です。

今回は、通奏低音としてはバスガンバ、そして後半の一曲目は写真のテナーガンバを演奏して下さいます。


リハーサルで、的を得た瞬間に今一番必要なことを、短い言葉で穏やかにアドヴァイスして下さる福澤先生に、
感謝、感謝です。





菅 きよみさん ⑧

2023年10月24日 | コンサート情報
そんなこんなで、2023年現在に辿り着きました。

2023年11月23日にお聴き頂く最後の曲、バッハのトリオソナタBWV1039 は、現存する筆写譜やバッハのガンバソナタで残された自筆譜などを見比べうるち、細部の違いがどこから来るのか分からず混乱しておりました。老眼の影響で細かいチェックに悲鳴を上げていたある日 友人がいとも簡単に「あ、私ベーレンライターの現代譜持ってますよ!」というので、そっか 今は2023年・・・と気が付かない自分に呆れたのでした。(いつの時代の人?)

そう、今は2023年ではないですか! 恐らくバルトルド・クイケン校訂譜があるはず と検索すると案の定ありました。
2016年発売。。。なんで気が付かなかったのか!我ながらあほやなあ・・・と思う。

バルトルド・クイケンはもう40年以上図書館にいることが最も多い演奏家ではないかと想像します。なので現存するあらゆる筆写譜を調査、細かくチャックした上で校訂譜を出されるのです。

それを自分でしてこそ良い演奏が出来る訳ですが、老眼と語学のハンデに甘えて、この楽譜買っちゃいました
すると、なるほどなるほど~~~。バルトの調査と謙虚な考察、演奏家の思考を邪魔しないあらゆる配慮も伝わります。だからこそバッハが何を意図して書いたのかを考える一番大きな助けになるのでした。

菅さんが「え~っと、ここはなんでこうなる??」 と言い始めると部屋はすぐにこんな感じに。古楽あるあるですが、 あれ?どこかで見たことある光景。。。と思ったら、そう昔一緒の下宿にいた時の記憶。



昔、菅さんを尊敬し憧れるからこそ、私はバッハではなく、ついつい菅さんに注目して一緒に弾いていた。すると、音楽がよく分からなくなり、野球で言えばボール玉ばかり振るような状態になるのでした。

20年近くたって見えて来たのは、相手ではなく、バッハの意図を探り、腑に落ちるまで納得した上で一緒に弾くと、すっきりクリアな透明感を持って、シンプルに一致するという事。バルトルド・クイケンの教えです。

これで、良い演奏会になるね!と安堵した二人でした。(いやいや練習はここからよ

では、11月23日お待ち致しております。 
次回は福澤先生と山縣万里さんの通奏低音隊についてご紹介します。


菅 きよみさん ⑦

2023年10月23日 | コンサート情報
1970年代から模索が続いた古楽界も、時間が経つにつれ、1990年代にはクラシック期の楽器も模索し演奏するようになりました。

クラシック期のオリジナルのフルートや、そのコピーを皆が手に入れ練習し、ハイドン、モーツアルト、そしてついにはベートーヴェンまで演奏するように。

しばらくして我々もベートーヴェンの交響曲にトライし始めた頃、初めて第9を聴いた菅さんが目を丸くして、「何この音楽!?びっくりした@@」と茫然としていたのをよく覚えています。

モダンオケの人はもう全部覚えてしまっている耳慣れたレパートリーですから、逆に驚く菅さんに驚く。
特にフルートのお休み部分(数十小節ある)を 前田 りり子さんと 菅さんが指折り数える姿に爆笑する人もいました。

ハイドンがベートーヴェンに驚き、手に負えんわ・・・と思った気持ちを きっと菅さんは実感出来たのだと思います。

モダンオケの経験がある私も15年ほどバロックだけを演奏していると、久々のベートーヴェンで、ティンパニが登場した途端、何か爆発したのかと、リハーサル中に心の中で「きゃあ@」と叫び思いっきり振り返ったくらいですから。

練習中に、そうか、、この頃きっと武器も大規模化したんだろうな・・・更に騒がしく物騒な時代に入るんやな・・・とぶつぶつ思ったものでした。(指揮者の秀美さんが、本気で弾いてない!と憤慨されたのも無理はない。新しい時代に驚く老人の心境だったのですから)

続く

菅 きよみさん ⑥

2023年10月14日 | コンサート情報
続きです。

その後、バッハコレギウム ジャパンのオーディションに合格した菅さんは、前田りり子さんと共に、今に至るまで20年以上メンバーとして国内外の演奏旅行に、レコーディングに参加する様になりました。

マタイ、ヨハネの受難曲やカンタータのアリアに寄り添うトラヴェルソ・ソロ、アンサンブル曲のCDは数が多すぎて本人も把握出来ていないそう

2007年には日本に帰国。その前に結婚もしていたので、出産前は大きなお腹でオーケストラに参加。出産後はお母さまの助けを借りて、娘さんを連れてオーケストラの練習に行ったりしていました。

私が妹の車に乗ると、いつも菅さんの 「モーツアルト:フルート四重奏曲」のCDがかかるのですが、”あの2月の寒い時に、子育て真っ最中に、よくこれだけの演奏したなあ・・・」と感慨にふける私です。
その時丁度上京して彼女の家に泊まっていたのですが、レコーディングから夜遅く戻った菅さんに、”どうだった?”と聞くと、「面白かった! 若松夏美さんも 鈴木秀美さんも すごく素晴らしくて助けられた!」と 
玄関で輝いていたのを思い出します。 昔下宿で”どうだった?” 「普通。。。」と言っていた表情とは大違い。色々大変ながらも強くなったなあ、、、自分を存分に生かせる場所にいるんだなあ。。。と安堵したことでした。



菅 きよみさん ⑤

2023年10月01日 | コンサート情報
続きです。 

そうこうするうちに1999年夏を迎えました。
菅さんはブリュージュの古楽国際コンクールに挑戦。会場で見守る私。自分が弾く方がドキドキしないもんだな・・・と自覚。

最初はテレマンのとてもシンプルなソナタでした。他のトラヴェルソ奏者とは明らかに違う 遅いテンポを選んだ菅さん、”さっき聞いたのと同じ曲とは思えない。。。。”と皆が感じたのが分かりました。

次第に波に飲み込まれる様な感動が会場を包みました。殆ど演奏会 

すると隣のベルギー人トラヴェルソの学生が、走って外へ出て行ったのでした。後で聞くと「号泣しそうで外へ行ったの。そこで思う存分泣いたわ。あんな感動的な演奏初めて」とのこと。

その伝説の曲をもう一度聞きたくて、11月23日のコンサートでも無理を言って、1楽章だけ演奏して頂くことに。是非ご期待下さい

さて、翌日本選となりました。

一位になったヴァイオリンの桐山さん(宮様)は燕尾服の正装で登場。2位になった前田りり子さんも美しいピンクとブルーが微妙に混ざったドレスで正装。

その後、きよみは、普段着で登場。あまりに普段通りの演奏で、それはそれでよかったのだが、ちょっとしたミスがあって3位。

後で鈴木秀美さんに叱られたのは、私でした  「なんであんな服装で出場させたんだ!」 って言われましても 前日からきよみはブリュージュにいたので、どんな服持って行ったかは知らなかったんです。 ひや~~~。すみません・・・

ヴィーラント・クイケンが菅さんに「テレマン、凄く良かった・・・」と仰って下さったのもこの日。あのように音楽すればいいんだよって。

バルトルド・クイケンは帰りの電車で、きよみと前田りり子さんとバッタリお会いになったそうで、色々話せたよ。とのこと。

ペーター先生は、私に「く~~~っ 惜しかったね~。きよみの実力は皆が認めるところだけど、宮様のバッハ、 あの難曲 無伴奏ソナタ3番を暗譜で、しかも いかにも簡単そうにノーミスで弾かれたら、たまらんね! それにあの謙虚で喜びに満ちた表情でのステージでの態度とお辞儀。感動した」

ご存じのようにこの3人は、今も世界の古楽界で大活躍。あの日からもう24年かあ・・・




菅 きよみさん ④

2023年09月25日 | コンサート情報
間が空いてしまいました・・・この間現在の菅さんと色々やり取りをしていたので混乱@@ もう一度昔の記憶に戻らねば。

前回の続き。

”えらいことになった・・・”と貧血気味の私。何から始めれば良いのか・・・真剣に学ぶのを助けて下さったのは、「バッハからのメッセージNo.2」に登場された、リコーダーで音楽学者のペーター・ファン・ヘイヘン先生ご夫妻。

英語もよく分からない日本人学生に、噛み砕いて、身振り手振りで、歌いながら、演技しながら、よく説明して下さいました(感謝

ご夫妻の会話を聞いているだけでも、色々学びになったのを覚えています。”和声の特徴をどうとらえるか、、、”で
夫婦喧嘩が出来るなんて凄いと思ったことも つまり、それぞれ知っている古楽の知識は同じでも、その上に、それぞれの哲学、想い、考え、感性などが乗っかって演奏が成り立っているのだな、、とぼつぼつ分かって来ました。

脱線しましたが、菅さんの話。

最初の試験での演奏は、その円熟味において審査員を驚かせ、ちょっとした騒ぎになりました。バルトのアシスタントの先生が「きよみはあんなに小柄で、ぱっと見は心配するくらいだったのに、吹き始めたらなんと!素晴らしい。あの部分の🎵~~~(先生歌う)とか、集中力が凄くて惹きつけられたよね」

室内楽の試験では「あまりにも息継ぎせずに長く吹けるので、声楽家の審査員ご自身が、途中でだんだん息苦しくなって、ひ~~~っとなり、信じがたいと言ってたよ。」とバルト。

下宿では、どうだった? と聞くと いつも「普通。。。」と答えるきよみですが、周りはこんな様子でした。





出演者紹介 菅 きよみさん ③

2023年09月08日 | コンサート情報
続きです。

そんな菅さんと初めて学校のランチコンサートに出たのは、1996年だったでしょうか。今回のプログラムにあるC.P.E.Bachのトリオソナタ イ長調(この演奏はクイケン兄弟)を演奏しました。菅さんの2楽章が圧巻に美しかったのを覚えています。

モダンヴァイオリンから転向して間もない私(つまり素人)と最初からトラヴェルソを演奏し、モダン楽器を触ったこともない菅さんの演奏は、本当にちぐはぐでした。古の京ことばと20世紀のやんちゃな言葉で話している感じ。
モダン奏法や発想が悪いのではありません。時代が違い、文化が違うだけなのです。

聖書にある「新しい葡萄酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、葡萄酒は流れ出て、革袋のだめになる。新しい葡萄酒は新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、両方とも長持ちする。」
というのが肌感覚で分かりました。新しい葡萄酒の勢いある発酵に、古い革袋の収縮が耐えられないように、自分が菅さんの音楽を壊している感覚でした。

「泉さん、何も考えてないでしょ!」という きよみに、「え?音楽は感性とパッションじゃないの?」というズレ。あかん、一からやり直しや と、お蔭でここから18世紀の演奏習慣、西洋史、神学、和声法、バロックダンス、などの学びが始まったのでした。

本当に発想そのものが18世紀的に何とか変わるのに、その後20年かかるのですが、その間ずっと、菅さんが私の灯台の役目をしてくれました。

続く

菅 きよみさん ②

2023年09月03日 | コンサート情報
続きです。

菅さんと下宿で暮らすようになって最も印象的だったのは、彼女がバルトルド・クイケンの指導通り、何か月も家ではロングトーンだけを練習していたことです。既に彼女が留学2年目の前半だったでしょうか。

後にバルトが言うには、「基礎を教える時には、どの学生にも同じことを説明するんだよ。でも本当にそれをやり遂げたのが、菅 きよみだった」とのこと。

学校では沢山のアンサンブルを引き受けて、練習にレッスンにと目まぐるしい様子の菅さん。外では目いっぱい音楽を楽しんでいました。日本で十分実績を積んで留学した彼女は、今すべき事が明確に見えていたのだと思います。

菅 きよみさんの演奏に対して、バルトはいつも一言目に「Beautiful! 」とか「Splendid!」 と仰っていました。(ダメ出し ”アドヴァイスともいう” が一杯の私へのコメントとは対照的でした)