《ゆめぴりか挑戦》汚名晴らす自信の味
2011年11月22日
ゆめぴりかが誕生した道立上川農業試験場。佐藤毅研究主幹は今年も新たな米作りに取り組む=比布町
(中)汚名晴らす自信の味
■開発に12年 実った夢
全国ブランド確立にむけて歩み始めたゆめぴりかは、道立上川農業試験場(比布町)の研究室で生まれた。「開発に12年かかった。感慨深いものがあります」。2003年から開発チームを率いる佐藤毅研究主幹(49)はこう話す。開発のきっかけは1980年にまでさかのぼる。
* *
道産米は80年代まで、そのまずさから「やっかい道米」や「ねこまたぎ」と揶揄(やゆ)されてきた。米のうまさはたんぱく質や、でんぷんの一種「アミロース」分の含有率が決め手になる。低ければうまくなるが、道産米は冷害に強く、多収量の米を目指した結果、高たんぱくで硬いパサパサした食感になってしまっていた。
北海道農協中央会によると、69年に好きな米を食べられる自主流通米制度となってからは、「あまりの不人気から減反政策で生産目標をほかの地域より低く抑えられた」(水田農業課担当者)。同年に26万ヘクタールあった道内の作付面積は、4年後に14万ヘクタール強に半減した。
「このままでは米を作れなくなる」。農家の危機感は募り、道は80年、うまい米作りのプロジェクトに着手した。道内3カ所の農業試験場で、毎年多くの種の掛け合わせが試された。
8年後、最初のヒット銘柄「きらら397」が誕生した。さらに「ほしのゆめ」「ななつぼし」「おぼろづき」と続いた。ただ、「道産米はまずい」との先入観を覆し、全国ブランドに育つには至らなかった。
「コシヒカリに追いつく品種を作らなければならない」。上川農試の開発チームの最優先課題となった。
* *
トップブランドのコシヒカリはたんぱく質が低い、軟らかい米の代表だ。開発チームは日本人好みの強い粘りが出るアミロース分が低い米作りを目指し、97年から約100種類ほどの配合を試みた。
ゆめぴりかとなる、アミロース分の低い「北海287」と、早稲(わせ)で多収量の「ほしたろう」を掛け合わせた品種は、まだこの内の一つでしかなかった。
ゆめぴりかとなる品種については試験管やシャーレを使い、2万3千個の細胞を培養。600個ほどの細胞が植物に育ち、この中から100個を選抜して栽培へ進んだ。さらに収量や味、病気、寒さへの耐性を基準にふるいにかけ、最終的に07年に一つに絞り込んだ。
この間の試験段階で「コシヒカリに匹敵する」と、味の良さで際立った成績を見せていた。08年、ついに道から消費者への販売が認められる「優良品種」の認定を受けた。
アイヌ語で美しいという意味の「ぴりか」を使い、「ゆめぴりか」と名付けられた。ゆめは「おいしい道産米を全国に広げる」という農家や開発者の夢を意味する。
今年、財団法人の日本穀物検定協会が実施する米の食味ランキングで、5段階で最高の「特A」を獲得した。栽培が始まって間もないとして参考扱いだったが、道産米で初の快挙だ。
「北海道米はまずいと言われ、開発者としても屈辱的な日々が続いた。ゆめぴりかは先入観を覆してくれるはずだ」。佐藤主幹はこう自信を深めている。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001111220001
2011年11月22日
ゆめぴりかが誕生した道立上川農業試験場。佐藤毅研究主幹は今年も新たな米作りに取り組む=比布町
(中)汚名晴らす自信の味
■開発に12年 実った夢
全国ブランド確立にむけて歩み始めたゆめぴりかは、道立上川農業試験場(比布町)の研究室で生まれた。「開発に12年かかった。感慨深いものがあります」。2003年から開発チームを率いる佐藤毅研究主幹(49)はこう話す。開発のきっかけは1980年にまでさかのぼる。
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道産米は80年代まで、そのまずさから「やっかい道米」や「ねこまたぎ」と揶揄(やゆ)されてきた。米のうまさはたんぱく質や、でんぷんの一種「アミロース」分の含有率が決め手になる。低ければうまくなるが、道産米は冷害に強く、多収量の米を目指した結果、高たんぱくで硬いパサパサした食感になってしまっていた。
北海道農協中央会によると、69年に好きな米を食べられる自主流通米制度となってからは、「あまりの不人気から減反政策で生産目標をほかの地域より低く抑えられた」(水田農業課担当者)。同年に26万ヘクタールあった道内の作付面積は、4年後に14万ヘクタール強に半減した。
「このままでは米を作れなくなる」。農家の危機感は募り、道は80年、うまい米作りのプロジェクトに着手した。道内3カ所の農業試験場で、毎年多くの種の掛け合わせが試された。
8年後、最初のヒット銘柄「きらら397」が誕生した。さらに「ほしのゆめ」「ななつぼし」「おぼろづき」と続いた。ただ、「道産米はまずい」との先入観を覆し、全国ブランドに育つには至らなかった。
「コシヒカリに追いつく品種を作らなければならない」。上川農試の開発チームの最優先課題となった。
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トップブランドのコシヒカリはたんぱく質が低い、軟らかい米の代表だ。開発チームは日本人好みの強い粘りが出るアミロース分が低い米作りを目指し、97年から約100種類ほどの配合を試みた。
ゆめぴりかとなる、アミロース分の低い「北海287」と、早稲(わせ)で多収量の「ほしたろう」を掛け合わせた品種は、まだこの内の一つでしかなかった。
ゆめぴりかとなる品種については試験管やシャーレを使い、2万3千個の細胞を培養。600個ほどの細胞が植物に育ち、この中から100個を選抜して栽培へ進んだ。さらに収量や味、病気、寒さへの耐性を基準にふるいにかけ、最終的に07年に一つに絞り込んだ。
この間の試験段階で「コシヒカリに匹敵する」と、味の良さで際立った成績を見せていた。08年、ついに道から消費者への販売が認められる「優良品種」の認定を受けた。
アイヌ語で美しいという意味の「ぴりか」を使い、「ゆめぴりか」と名付けられた。ゆめは「おいしい道産米を全国に広げる」という農家や開発者の夢を意味する。
今年、財団法人の日本穀物検定協会が実施する米の食味ランキングで、5段階で最高の「特A」を獲得した。栽培が始まって間もないとして参考扱いだったが、道産米で初の快挙だ。
「北海道米はまずいと言われ、開発者としても屈辱的な日々が続いた。ゆめぴりかは先入観を覆してくれるはずだ」。佐藤主幹はこう自信を深めている。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001111220001