山猿日誌

~春夏秋冬~クライミング・山スキー・登山の記録集。

2014~2015東鎌尾根~厳冬期の挑戦~

2015-01-02 | 登山


2014/12/28~2015/1/1
単独
ルート:宮城ゲート~燕山荘~大天井~赤岩岳~槍岳山荘~飛騨沢~槍平小屋~新穂高~宮城ゲート

 昨年の北鎌尾根に続き、今年は東から槍ヶ岳を目指した。悪天候につかまり厳しい山行となったが予定していたルートを行くことができ、2015年も最高のスタートをきることが出来た。


12月28日(晴れ)

 当初の計画では、28日朝のんびりスタートして一日目は合戦小屋付近泊の予定だったが、31日から1日にかけて寒波到来の予報を聞いて出発を早める。
27日の晩に現地入りして、近くのコンビニ駐車場で数時間仮眠。
28日1時宮城ゲート出発。真っ暗な中、ただただ一人もくもく歩く。


宮城ゲート出発!

中房温泉の沢で水を汲んだのだが、この水のせいか?この日一日腹痛に悩まされペースが上がらなかった。(あとあと水の香りを嗅いだら硫黄のような臭いがした)

 合戦小屋手前でアイゼンを装着、トレースは燕山荘までばっちり着いていた。
 8:30燕山荘到着。知り合いの弟さんに挨拶していこうと思ったが、生憎今日は下界に行っていて、午後戻ってくるとのことだった。
時間の都合上、燕岳の往復は止めて大天井岳を目指す。


今回はここから眺めるだけ燕岳。


目指す大天井岳は左奥の高い山。遠っ!

稜線上はクラストしていたり、モナカ雪になっているところもあり歩きにくい。ところどころトレースも残っていたが、どうも大天井から燕岳に向けてのトレースのようで、あまり楽にならなかった。
大天井岳頂上手前から強風になり時々体が持って行かれそうになる。
13:10大天井岳到着。今晩は大天井冬季避難小屋泊。
予定していた2日分の工程を今日1日で来れて良かったが、さすがに脚パンパンだ。


雪煙をあげる大天井岳。


待ってろよ槍ヶ岳。

12月29日(雪のち曇り)

 小屋から出ると、昨日とは打って変わって雪が降っていて視界悪し。
6:50本日の宿泊予定地、ヒュッテ西岳を目指し出発。
大天井ヒュッテから喜作新道を行こうと思ったがラッセルがきつそうなのと雪崩の心配もあり稜線伝いに進む。


大天井ヒュッテ。

次第に雪は止み、ときおり太陽が顔を出すようになってきた。
トラバースするところが何か所かあるが、その度に表層雪崩が起きる。


雪崩れ連発。

核心と言われていた、赤岩岳もそれほど苦労せず通過することができた。
12:30ヒュッテ西岳に思っていたより早く到着するも、冬季小屋入口が埋まっていてどこか分からない。もっと下調べしとけば良かった。
しばらく冬季小屋入口を探したが見つからず諦め、第二宿泊候補地水俣乗越を目指すことにした。
ヒュッテ西岳からのトラバース&下降が雪崩の起きそうな地形で恐ろしかった。


西岳を振り返る。

ここから水俣乗越までラッセルがきつくなり、更に細尾根もあり気が抜けなかった。
15:30水俣乗越到着。
雪庇を壁にし、うまい具合に風避けのあるテン場ができた。
この日の晩のラジオで、やはり31日か1日あたりから荒れ模様になる予報と再度確認。明日の内に槍山荘に到着したいと思い就寝。

12月30日(強風雪)

 今日は、冬型になるとの予報。
強い冬型ではないだろうから大したことないだろう、次第に緩んでくるだろうと予想していたが、予想は外れ強風雪が続き、視界は数十メートル雪庇の踏み抜き、雪崩に注意しながら進む。途中ホワイトアウトになり、立ち止まる時間も多くなり予定していた時間より遅くなんとか大槍ヒュッテ到着。この強風、視界の悪さ、日没までの時間を考えるとこれ以上進むのは危険と判断し、ヒュッテ大槍の横にテントを張る。
しかし、このテントを張った場所が悪かった、と言うよりテントを張らずに雪洞を掘れば良かったとあとあと後悔した。
強風が通り抜け、今にもテントごと持って行かれそうになる。火も起こせずに晩飯は行動食で済ませ、とりあえず寝袋に潜り込む。そんな中眠れるわけもなくシュラフに頭ごと潜り込み、ラジオを聞いて気分を紛らわせ一夜を過ごした。


この日唯一僕の心を和ませてくれた雷鳥。

12月31日(強風雪)

 4時頃、体を起こしテントの中を見渡してビックリ!テントの中が雪まみれになっている。どこから入り込んだのかと思ったらテント入口の下部ファスナーが強風の影響で全開になっていた。浸水してきたボート状態のようになったテント内。
とりあえずテントの中の雪をかきだす。落ち着いたところで飲み物を作るため火を起こした。
悪天候は続くが、さすがにここに停滞は無理だ。
そして、今晩からは更に天気は荒れる予報。とにかく最低でも槍山荘冬季小屋を目指すことにした。
視界は相変わらず悪く、更に風も時折強風が吹き抜け体がよろける。一度細尾根を歩いている最中に強風が吹いてピッケルを差し込んで事なきを得た。
槍山荘までもう少しだろうという地点まで来たが、トラバースラインが分からずゆっくりゆっくり登る。一瞬山荘のようなものが見え登り詰めたところに山荘があった。
冬季小屋に行くと扉が全開になっていた雪が小屋の中にたっぷり入り込んでいる。それでも雪をどけてなんとか小屋の中へ入り込むことが出来た。


槍山荘冬季避難小屋。

ここで停滞するか、下山するか、この後どうしようかとしばらく考え、、出した答えは下山することに。
当初、大喰岳の西尾根を下ろうとしたが、飛騨沢を下ることにした。(あとあとこれは非常に危険だったと反省)
途中まではガチガチのクラスト斜面だったが、次第に深いラッセルに変わり下りなのになかなか進まない。
ヘッデン灯してでも今晩中に槍平小屋に辿り着こうと思いながら下っていたら、トレース発見!
やったー!助かったと思っていたのもつかの間、少し下ったところにこのトレースを作っている二人の夫婦が居た。(下山してから、この二人の遭難ニュースが出ていたことを知った。)
ここから三人で協力しながら槍平小屋目指しラッセルラッセル。
ちなみにもう一つの反省点、今回の山行にワカンを持ってこなかった僕。昨年の、北鎌の下りの時のラッセルもしんどかったが、今回は昨年より雪が深い上、更にワカンが無かったため、今までで一番しんどいラッセルだった。
そして、20:15槍平小屋到着。トータル10時間ほどラッセルしていたことになる。さすがに疲れた。

1月1日(雪)

 夫婦に別れを告げ先に下山。
滝谷の小屋付近までトレースが消えていて、先行していた単独の方とあっちでもないこっちでもないとトレースの痕跡を探しながら下山した。
滝谷の小屋からはツボ足でもそれほど沈まず歩けるようになり、やっと楽に歩けるようになった。
12:40新穂高到着。
ここからバスと電車、タクシー乗り継いで宮城ゲートへ車を回収に向かった。

今回、単独だった上、予想していた以上に悪天候になり、非常に困難な山行となったが、一日目の出発時間を早めたことが、功を奏した。
いろいろ反省点はあるが、行ってみたかったルートを厳冬期に行くことができ感無量だ。


ータイムー
(28日)宮城ゲート1:00~中房温泉4:00~燕山荘8:30~大天井岳13:10
(29日)大天井冬季避難小屋6:50~大天井ヒュッテ7:20~赤岩岳11:20~西岳12:20~水俣乗越15:30
(30日)水俣乗越6:50~ヒュッテ大槍12:50
(31日)ヒュッテ大槍7:00~槍岳山荘9:00~槍平小屋20:15
(1日) 槍平小屋7:30~新穂高12:40~松本駅15:40~有明駅16:30~宮城ゲート17:00



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8 コメント

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Unknown (やじめぐ)
2015-01-04 09:39:21
おかえりなさい
ご無事でなにより
達成感ありで、なになによりより!
多くのファンが気にかけてましたよ

圧倒的なスケールの山行記録に
こちらで勝手に同行させて頂きました
冒頭の画像は言葉にならない美しさ
が・・・寒くて怖くて・・・無理っ

おばハーン(チンギスの末裔です)
またデッカイ凍傷つくってしまった・・・
あなたは?
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めずらいことに (shibata)
2015-01-05 08:42:08
>やじめぐさん
 ご心配いただきありがとうございました。
おじハーンは、めずらしいことに足の小指が軽い凍傷になただけで、きれいなフェイスのままです。(クライミングシューズ履くのしんどいですけど・・・)、更に、腰痛、膝痛、筋肉痛無しとこれまためずらしことです。

 その凍傷、激厚の化粧でごまかしましょう(^.^)
今年もよろしくお願いします。
 

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大天井ヒュッテの写真 (パンダ)
2015-01-05 13:51:11
見ただけで 軟弱もんは身も心も凍りつきます。
春から絶好調でなによりです。

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Unknown (miya)
2015-01-05 18:54:44
年寄りは人のことを心配するより、自分のことを心配しなければならないのに、どうしても若者を心配してしまう。kyuちゃんも同じ山屋として心配してました。
このような山行を単独で行う人と、気軽にビレー相手してもらい、気軽に会話できることに誇り?を感じます。松っちゃんなんか、神として見てます。
ところで、最近は烏帽子に何回も出撃しyていますが、へなちょこクライマーなので、「福井のクライマーはこの程度か?」と地元の者に見られるのも少し悔しい。ここは名誉挽回、福井のイメージアップに春までには一度参戦を!
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寒そうな写真でしょ。 (shibata)
2015-01-05 19:50:34
>パンダさん
 前日が、快晴だったのに翌日は朝から荒れ模様。日に日に写真撮る余裕もなかったし、撮っても真っ白な写真しか撮れないので、カメラ取り出す気にもなりませんでしたよ。
まだまだ絶好調にはほど遠いですよ。
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楽しいクライマー集団! (shibata)
2015-01-05 19:58:00
>miyaさん
 本当、ご心配いただきありがとうございました。
こんな僕が神とはありえんですね(^^)。ビレーにヌンチャクかけ、どしどしお申し付けください。よろこんで!の精神でさせていただきます。
烏帽子行きたいですね。今の僕が参戦しても大して登れませんけど。
とりあえず太陽をさんさんと浴びてゆっくりひなたぼっこしたいです。
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お礼 (桑名発)
2015-02-02 17:03:10
今頃誰がコメントするのや!と言われそうですが、一緒にラッセルした桑名の夫婦です。あの日は猛烈なラッセルに手こずって、かつ雪崩に怯えていたところに、東鎌を単独で越えてきた超人的な若者が現れたので、大変心強く思ったもんでした。ツボ足は大変でしたでしょう。ラッセルありがとうございました。
今後も気をつけて、素晴らしいクライミングを続けてください。
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お互い無事でなにより。 (shibata)
2015-02-02 18:41:49
>桑名発さんへ
 こちらこそありがとうございました。
僕もあの時は、久しぶりに人と会えて、会話ができただけでうれしなってしまいました。
あのあと、ニュースで無事新穂高まで下山されたことを知って安心してました。
またどこかの山でお会いできることを願っています。
今度は、もう少し余裕のある時に(^.^)
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