鹿嶋少将の航海日誌second

宇宙戦艦ヤマト新作情報・二次創作他、気になったものなどをお届け(^-^)

女神ネメシスの唄◇機動戦士ガンダム外伝◇後編

2021-04-22 22:01:00 | 機動戦士ガンダム外伝


ジオン公国軍
地球占領重要拠点オデッサ鉱山基地

ワタシたちは到着予定の6時間後、辛うじてオデッサ鉱山基地に到着した。
予定時間より、6時間遅れで少し不機嫌ではあるが、地球侵攻総司令マ・クベ中将自ら我々を出迎えた。
我々を出迎えたと云うより、試作モビルスーツYMS-15ギャンを出迎えたと云った方が正解だ。



「遠路遥々、ご苦労であった。道中、連邦戦艦との遭遇で到着が遅れた事は大目に見よう。
「貴官らの事はキシリア閣下から聞いている。」

「貴官らのザンジバルは我々が完全な形で修復する。」
「48時間の休暇を取るがいい。」

「以上だ。下がってよし。」そう告げマ・クベ中将は窓の外に聳えるギャンを眺めていた。


48時間の休暇と云っても、基地の外へ出れる訳でもなく、基地内の娯楽施設で時間を潰すしかなかった。
基地内の娯楽施設とは云え、広大な広さの基地、小さな街ぐらいの施設だ。
簡単には云えばショッピングモール並みの施設だ。
この施設に勤める地元の民間人も多数、存在する。
生きてゆく為、ジオンに忠誠を誓っているフリをする者も居るんだろうな。と思えた。

「これだけの施設が整ってるんなら、基地の外に出る必要も無いくらいだ。」
「カフェ、レストラン、トレーニングジム、映画や酒を嗜(たしな)める場所まであるんだからな。」

「でも、元々は連邦の基地だったんだろ?」

「ああ。これだけ揃ってれば、堕落するのも解るな。」
「誰か云ってな。魂を重力に縛られる。って。」

「だから、侵攻から僅かな時間で約2/3もの制圧が、可能だったのかも知れんな。」

「マウコウ中佐。それよりも、彼処で一杯、やりませんか?」

「いいね。みんなどうだい?」

「いいっスね。」

ワタシたちは、ダンジュが見付けたショーパブに入る事にした。
ワタシ的にはストレス発散出来る、こういう店を探していたからラッキーだった。
とりあえずビールで乾杯し、それからはそれぞれが呑む、食べる、踊るを楽しんだ。
店は生バンドが演奏し、踊れるスペースがあり、それを囲むようにテーブル席が並んでいる。
少し離れた入り口に近い場所にバーカウンターがある。
その裏にキッチンが備わるのだろ、料理はバーカウンターのボトル棚の横の小窓から出てきていた。
それをセカンドバーテンダーがホールスタッフに渡していた。

「そういえば、ダンジュさん。隊長何処に行ったんですかね?」
「さっきまで此処でピザ食べてたんスけど、居なく成っちまったス。」
「トイレかとも思ったんスけど、長すぎるし。」
部下の一人で、管制担当のマーシがビール片手にダンジュに訪ねていた。
ダンジュは店の真ん中に設置された"お立ち台"を指さした。

「なんスか?」

「綺麗なお姉さんが、きらびやかな露出の高い衣装に身を包んでダンスしてるだろ。」
「あれが隊長だよ。」

「ええーッ!!」

「お前はこの隊に配置されて日が浅いから知らんかも知れないが、隊長はコスプレしてダンスを踊りまくる事が趣味なんだよ。」
「本人曰く、ストレス発散なんだとさ。」

「真面っすか!」突然の驚きに興奮するマーシは、手にするビールを一気に空けた。

「隊長が履いている紅いハイヒールが俺たちのチーム(隊)名の由来だ。team.red.shoesだ。」

「そうだったんスか。」


何時しか男女関係無く、魅了された人垣が、お立ち台を取り囲んでいた。


翌晩、昨夜の噂を聞き付けたマ・クベ中将に呼ばれた。

「すまんな。みんな、今日は先に楽しんでくれ。」
「ワタシはマ・クベ中将に呼ばれ、一杯付き合う事に成っちまった。」
「昨夜の噂を聞いてダンスを観たいんだと。」

「了解っス!」

「なんだよ。マーシ。張り切ってな。」

「あっ。いや、その~隊長のダンス自分も楽しみにしてたもんで。」

笑い声がその場を包み込んだ。



「今宵はまた、一段と凝った衣装ですね。ショータイムが楽しみだよ。中佐。」
マ・クベ中将は左の口角を上げ、Vipシートに腰を下ろした。

◆◆◆◆

紫色の空、まだ所々に星々が煌めく前夜と翌朝が混ざり会う中、ワタシはマ・クベ中将の屋敷から宿代わりにしている隊舎に戻った。
本命の出撃まであと2時間、ワタシはシャワーを浴び、身支度を整え、クルーの待つネメシスに向かった。
全員、此処へ赴いた時と違って、ノーマルスーツではなく、軍の制服に身を包んでいた。
ワタシも久々で佐官の制服に袖を通した。

「ダンス衣装も似合うが、制服のマウコウ艦長もまた素敵だな。」
ワタシたちの出撃を見送りにやって来たマ・クベ中将が告げた。

「恐れ入ります。」こんな奴に頭を下げたくは無いが、軽く微笑み会釈した。

「これよりマウコウ以下、130名はキシリア閣下、直々の作戦遂行に当たり、抜錨致します。」

「うむ。」
「貴官らの健闘に期待する。」ワタシたちブリッジクルーはクルーを代表する形で、報告と敬礼を済ませ、ザンジバル級ネメシスに乗艦、地球占領総司令部であるオデッサ鉱山基地をあとにした。


オデッサ鉱山基地を発って、四日が過ぎようとしていた。
あと数時間後には目標地「南大西洋洋上連邦基地」に到達する。

「艦長より全艦に発する。」
「総員、ノーマルスーツ着用。本艦は間もなく作戦地区に到達する。」
「装備品の点検及びred.shoes隊モビルスーツの点検に掛かれ。以上だ。」



「マウコウ艦長。間もなくキリマンジャロ鉱山基地上空を通過、アフリカ地区から離脱、目標地:南大西洋沖合いに出ます。」

「うむ。」
「総員。第二種戦闘配置。対艦、対空を厳とせよ。」

「機関。第二戦闘速度へ。」

「了解。」



命令を下して10分もしない内に、連邦のセイバーフィッシュ2機を補足した。

「機影2(ふた)を補足!」
「セイバーフィッシュ強行偵察タイプ!」

「……ん!?」
「セイバーフィッシュ、引き返します!」

「うむ。」
「此方の所在がバレたな。」
「引き返したと成ると母艦が潜んで居る可能性が高いな。」

「ダンジュ大尉。レーダー見落とすなよ。」

「了解。」

「……ハープーンミサイル2(ふた)海面より、突出!」

「海面からだと!?」

「はい。恐らく、M型潜水艦母艦と思われます!」

「くっ。」
「よりによって潜水艦母艦だと。」

「対空防御で切り抜ける!」
「各機銃で対応せよ!」ワタシは歯痒さを募らせていた。
此方には対潜用の兵器は無い。
飛来するミサイル類は対空機銃で墜とすしか術は無い。

「艦長!意見具申!」砲雷長のマツリ中尉から突然、飛び込んだ意見具申。

「何か?」

「ミノフスキー粒子の散布及び滑空飛行を具申します!」
「ミノフスキー粒子で追尾レーダーをある程度、狂わす事が可能です。滑空なら熱追尾レーダーで追尾出来ません!」

「なるほど!その手があったか!」

「機関長!機関を30秒、停止!」
「各機銃は目視による射撃を!」

「了解!」

こんな状況下、新しい情報が飛び込んだ。
それは、つい先程、引き返したセイバーフィッシュと思える機体の破片が複数、海上面に散乱、浮かんでいるとの事だ。

「間違いありません!ネメシスのA.Iで解析した結果も、壊れかたからしても、事故ではなく、ミサイルか何かは現時点では断定できませんが、明らかに攻撃を受け、被弾、大破したものかと!」
「救難信号も発しています!」

「うむ。」
我々以外にも、友軍が存在するのか?と頭に浮かべた時であった、海面からビーム攻撃に晒された。

「何ッ!!」

ミノフスキー粒子を散布した事もあり、直撃は免れたが、被弾は免れなかった。

「ダメージコントロール急げ!!」


「チッ。ミノフスキー粒子か。」グラブロのパイロットは呟くように云った。


「艦長ッ!!海中に大型物体!!」

「何ッ!!」

「あっ!あれは友軍のモビルアーマー!」
海面すれすれに浮上したモビルアーマー・グラブロを捉えた。



「3時の方向に潜望鏡を観測!!」
「形状からマッドアングラークラス!!

「……モビルアーマー・グラブロにマッドアングラーが何故?」と考えた時であった、マッドアングラー艦長(キャプテン)から音声通信が飛び込んだ。

「ジオンの転覆を企む反逆者よ!我はマ・クベ中将指揮下第十一海洋戦隊旗艦リヴァイアサン。貴様らには反逆罪の容疑が掛けられている!」
「投降するか、死を選べ!」


「なっ!何を馬鹿な事を!」
「此方はキシリア閣下直属の部隊である!」
「現在、極秘任務中である!」


「何を抜かすかと思えば。」
「キャプテン。奴らに投降の意思は無いと判断します。」
「撃沈でよろしいかと。」

「うむ。」
「砲雷長。ハープーン3番から6番、装填せよ!」

「了解!」


「艦長。このままでは、不利です。」
「連邦の海上基地まで誘い出し、連邦諸とも葬り去るしかないかと。」
副長を兼任するダンジュ大尉はワタシに耳打ちした。
この海上から西に10キロ進めば、目的地の連邦海洋拠点が存在する。
ワタシは意を固め、連邦海洋拠点を目指す事にした。
そこで、この隊を解隊する事にした。

「ダンジュ大尉。ワタシのザクの射出準備を。」
「それと、射出後、貴官が艦長だ。」
「地球を離脱し、中立サイドへ行け。そこで身を隠せ。」
「この隊は解隊する。」

「なっ!何を言い出すんですか!」
「艦長、いや、隊長を見捨て、自分らだけ助かろうなんて思ってません!」
「この命令には従えない!」

「ダンジュ大尉。ワタシの事なら心配は要らない。」
「ワタシ一人なら、この地球でも暮らして行ける。」

「作戦実行後、民間人に成り済まし、やり過ごすよ。」
「どのみち、この作戦終了後、軍属では無くなる。」

「……。了解。」

「なら、自分もお供します。」マーシ少尉が口を挟んだ。

「駄目だ。マーシ少尉。」

「こんな自分でも、弾幕くらいは張れますっス!」
「駄目って言われても、自分の機体、もう射出準備しちゃたっスから。」

「……マーシ少尉。」
「解った。足手まといに成るなよ。」

「副長。あとは頼んだよ。」



射出後、マーシは試作ビームマシンガンを乱射、弾幕を張り続けた。

「成仏しろよ!リヴァイアサン!」

「落下傘(パラシュート)スラスター点火!」
「照準よし!」

対空砲火が激しさを増す。
ワタシらを追撃するリヴァイアサン隊は、モビルスーツ・ハイゴック三機を更に発艦、ワタシとマーシのザクを攻撃しつつ、連邦の地上部隊に応戦した。
連邦は連邦で水中対応モビルスーツ・ガンダム・マリーンを投入した。






ワタシは降下しながら核バズーカのトリガーを引いた・・・


◆◆◆◆


数週間後・・・

ワタシはショーダンサーとして、舞台に立っている。
マーシはワタシの付き人として、マネジメントを管理、舞台の袖からショーを観ていた
風の便りでは、あの戦闘から二日後11月9日オデッサ鉱山基地は陥落したとの事だった。

ワタシは、この街の舞台に立つ前、キシリア閣下宛に唄を書いた手紙を送った。


※閣下も御存じのごとく、動物の中でも神の雷撃に打たれますのは際立って大きいものばかりで、神は彼らの思い上がりを許し給わぬのでございますが、微小のものは一向に神の忌諱(きい)にふれません。 また家や立木にいたしましても、雷撃を蒙るのは常に必ず最大のものに限られておりますことは、これまた御存じのとおりで、神は他にぬきんでたものはことごとくこれをおとしめ給うのが習いでございます。 神明(しんめい)はご自身以外の何物も驕慢の心を抱くことを許し給わぬからでございます。 (Ⅶ.10より引用。※書き出しの一部を変えています。)





~fin~



【試作小型ビームマシンガン】イメージ

この物語りは「機動戦士ガンダム」のオリジナル二次創作外伝です。

登場する人物、企業等は全て架空です。 実在する人物、企業等は関係ありません。 使用している挿し絵的画像はイメージです。

※この物語りに登場するザクⅡ(type.F改)及び、ザンジバル級設定は私的設定が混ざってます。