サイド7に帰投したテスト艦フッド及エクセターは、表向き何事も無かったようにメインゲートとは反対側から進入、偽装ドックに接岸した。
「テム技術官。一時間後にエセクター艦長室へ出頭を。」
「解りました。」
「では、一時間後に。」
「シアノ君は我々がムラサメ研究所に送り届けます。」
「ガンダムをはじめ、モビルスーツのテストは全て終了とします。」
「明日には新造戦艦ペガサス級が入港します。」
「搬入準備を済ませておくように。以上だ。」
バスク・オムは静かな口調で告げた。
テムは後ろ髪を引かれる思いで、偽装ドックを後にした。
一足先に偽装ドックを後にしたメンバーらと合流、不祥事と不手際を改めて謝罪し、メンバーらとは、その場で別れた。
「少佐。アナログで申し訳ありませんが、これが例のV作戦に関係あると思われる新造戦艦と新型戦闘機の写真です。」
「特命から約三週間、漸く連邦のしっぽを捉えましたよ。」
「うむ。」
「二人共、特務遂行、ご苦労であった。」
「コレは約束の特別報酬だ。」
「特別報酬については他言無用だ。」
「大尉には私から報告しておく。以上だ。」
「下がってよし。」
「ハッ。」
スカンチ曹長、ウロソ伍長は各々、金貨を数枚づつ受け取り、シャアのムサイを後にした。
「この新造戦艦も気になるところだが、此方は関係無さそうだな。」
「それよりは、この新型戦闘機だな。」
「V作戦……。」
「ドレン中尉。」
「私のザクの整備を進めておいてくれ。」
「24時間後に出撃(でる)。」
「デニム、スレンダー、ジーンにも伝えておけ。」
「21時間後にブリーフィングルームへ集まれと。」
「了解であります。」
テムがバスク・オムから叱責を受けている間、シアノはまだ、営倉に閉じ込めらていた。
「いつまで此処に閉じ込めておく気
?」
「解放するって云ったじゃないか!」
「五月蝿いぞ!」
「ムラサメ研究所に帰る時までだ!」見張りの兵かがドア越しに告げた。
「服ぐらい返しなさいよ!」
「尋問の時の方がマシじゃない!」
「だから!静かにしろと云っている!」
「そんなに返して欲しけりゃ、この俺を楽しませてくれよ。」
「内緒で返してやるぜ。」
数分後、やっと静かに成ったと、思った時であった、シアノはドア越しに兵を呼んだ。
「ごめんなさい。静かにするし、兵隊さんなら……楽しませてあげても……いいよ。」
「アハハハ。」
「最初から、そうやって頼めばいいんだよ。」
「土下座して、もう一度、頼め。」
「私で楽しんで下さい。とな。」
シアノの云われた通り、土下座してた。
「お願いします。アタシで楽しんで下さい。」
「お願いされちゃぁ~。楽しませて貰うか。」
ドアが開き、見張りの兵が二歩、三歩と足を踏み入れた。
「いい眺めだな。」
「クックックッ。」
「そのまま、顔を上げろ。」
「早速、たっぷりと俺を気持ちよ~くしてくれよ。」
「ほれ。」
シアノはゆっくりと顔を上げると、そこからは一気に立ち上がり、股関目掛け頭突きを喰らわした。
「ウゲェェェェッ!!!」
屈み込む兵を更に蹴り飛ばし、股関を踏みつけ拳銃を奪い、見下ろした。
「自分で慰めなさいよ。瞼(まぶた)の裏に焼き付けたアタシを眺めながら。」
シアノは踞(うずく)る兵の顔に股がり、しゃがみ込むと股間に拳銃を押し当てた。
見張りの兵は小刻みに震え出すと失禁、「ゆ、許してくれ………。」と泣いた。
「情けないわね。お漏らし。」
「可哀想だから、コレ。お土産よ。」と。
シアノはスッキリした顔を観せ、営倉から出るとドアを施錠し、走り出して営倉区画から逃げ出した。
-24時間後-
新造戦艦ペガサス級ホワイトベースが入港するが同時に、けたたましいサイレントがサイド内に響き渡る。
シャア率いる特務戦隊の強攻偵察隊デニム、スレンダー、ジーンの操るザクⅡ三機が潜入、作戦を無視した一機のザクが連邦のモビルスーツをホワイトベースへの搬入を阻止しようと破壊工作を仕掛けてしまう。
それとは別に逃げ出したシアノは入港したばかりのホワイトベースへ潜入を試みる。
「あれが新造戦艦ね。」
「少しでも出港が遅らせる事が出来れば、あの人の役立つわ。」
「狙うなら機関区ね。」と身を屈めながら小走りで距離を詰めて行った。
流石に警備は厳重で、自動小銃を構える連邦の正規兵らが、並んでいる。
そんな中、飛び込んで行くなど、スーパーヒーローくらいだ。
そんな思いを頭の片隅に思い浮かべながら、シアノは搬入予定なのかは解らないが、梱包された積み荷の影に、コア・ファイターが、待機しているのを発見する。
「アレだ!」
「アレなら動かせるわ。」
シアノは再び身を屈み、低い姿勢でコア・ファイターに歩み寄った。
だが、ハロータイプの警備ドローンに捉えられてしまう。
鳴り響くサイレン。
「フシンシャ!フシンシャ!」
「チッ!」
「んなところにドローンかよ!」
「タン!タン!タン!」と銃声が響き渡る。
シアノはとっさに奪った拳銃を射ち、ドローンを破壊したが、それは見張りの連邦兵を呼び寄せる事と成った。
「……囲まれたか。」
「こうなれば一か八かだわね。」と拳銃を上に向け、射ちながらコア・ファイター目掛け、走り出した。
「……ん!?」
「そこの!止まれ!!」
聞く耳など持ち合わせるシアノではない。
「ガガガガガガーーーッ!!!」
警備兵は携帯する自動小銃を射ち放つ。
シアノのコア・ファイターに乗り込む事に成功したのだが・・・
「……痛ぅ。」
「真面か……アタシとした事が………。」
「ぐはっ!」
血反吐を吐くシアノ。
「……間抜けね……アタシ………。」
「………今……あの人の声が聞こえたわ……。」
「君は機械でもない。ましてや部品なんかでもない。」
「生きる事を考えるんだ。」
「もう誰も、君を"人材"人間の材料などと呼ばない。」
「この金貨を持ってゆけ!」
「生きるんだ。生きていれば必ず、この私が君を迎える。」
「……おい。見ろよ。」
「まだ子供だぜ。」
「軍法会議もんか?」
「民間人……射っちまったよ。」
「大丈夫だ。薄暗いが、銃を所持しているのは確認出来、発砲された為、射ち返した。」
「現にドローンは射ち壊された。」
「………そ、そうだよな。」
一方、コロニー内に侵入したジオンのモビルスーツ・ザクⅡ三機は、テム・レイの息子アムロ・レイの活躍で撃破に成功。
ホワイトベースはガンダムをはじめ、ガンキャノン、コア・ファイター等の受領、積み込みを終え、サイド7を出港した。
~fin~
◆
ホワイトベース(WHITE BASE)
艦籍番号SCV-70
分類:強襲揚陸艦
艦級:ペガサス級
所属:地球連邦軍
建造:ジャブローAブロック1号ドック
全高93m
全長262m
全幅202.5m(主翼含む)
全備重量68,000t
装甲材質ルナチタニウム合金
推進機関熱核ジェット/ロケット・エンジン×4×2
ミノフスキー・クラフト・システム
出力550,000馬力
最高速度マッハ12
武装58cm連装主砲×1
連装メガ粒子砲×2
連装機関砲×18(計36門)
ミサイルランチャー×40(前部24門、後部16門)
有効射程72km(主砲・地上)
乗員人数最大収容人数:500名
正規乗員数:225名
艦長パオロ・カシアス→ブライト・ノア
搭載数MS×6
航空航宙機×10
主な搭載機RX-78 ガンダム×1
RX-77 ガンキャノン×2(劇場版)
RX-75 ガンタンク×1→0(劇場版)
ガンペリー×1
FF-X7 コア・ファイター×6
Gファイター×2(テレビ版)
FF-X7-Bst コア・ブースター×0→1→2(劇場版)
宇宙艇×2
ランチ×2
◆
ガンダム
型式番号RX-78-2
頭頂高18.0m
本体重量43.4t
全備重量60.0t
装甲材質ルナチタニウム合金
出力1,380kW(65,000馬力)
推力24,000kg×2、
総推力55,500kg
センサー有効半径5,700m
最高速度205km/h
武装
60mmバルカン砲×2
ビーム・ライフル
ハイパー・バズーカ
ビーム・サーベル / ビーム・ジャベリン×2
シールド
スーパー・ナパーム
ガンダム・ハンマー
ハイパー・ハンマー
搭乗者
アムロ・レイ
セイラ・マス
地球連邦軍の技術の粋を集めて作られたMSであり、ジオン公国軍のMS-06F「ザクII」を徹底的に研究し開発された。
計8機が生産されたRX-78ガンダムの内、2号機は当初RX-78-1と同仕様だったが、サイド7への搬入後に1号機と共に装甲と駆動系を3号機と同一仕様(RX-78-2)に刷新。また、最新技術であるエネルギーCAPを採用した携行式メガ粒子砲「ビームライフル」の仕様を固定式ハンドショットガンスタイルから分離式に変更している。
こうした背景から、公式には試作機と呼ばれつつも良質の材料と最高の技術で完成されたカスタムメイド機としたほうが正しいともされている。
ロールアウト時の色彩は銀地に白、赤で塗り分けられていたが、サイド7搬入後に銀地を白に変更し、最終テスト時に1、3号機と同じくトリコロールのデモカラーとなった。
RX-77ガンキャノンを経て開発されたガンダムは、重火器を固定装備とした前型から兵装・防御システムを最低単位に分離し、対MS戦でザクを凌駕する高機動MSとなっている。
ジオン軍の一連のMSに単一機種で対抗可能なよう設計され、装甲材はRX-77から引き続きルナチタニウム合金を採用。加えて、特殊樹脂や強化セラミックを充填した三重のハニカム装甲とすることで軽量化の両立にも成功した。完成度の高さは群を抜いており、MS-14ゲルググとともに一年戦争における最高位のMSである。性能面では後の量産型RGM-79を遥かに凌駕する機体だが、その一方で量産化を前提とした設計であるにも関わらずコストは高額となった。
RX-78の2号機はサイド7にて実用実験を行った後、ホワイトベースに搭載されアムロ・レイの乗機として活躍。
後に2号機はマグネット・コーティング等の処置を受けてRX-78-3と一部同等の仕様に刷新された。この際に型式番号もRX-78-3に改められたとする資料、アムロが3号機(G-3ガンダム)に乗り換えていたとする資料もある。
一年戦争における2号機の活躍は連邦軍にとって希望の象徴、ジオン軍にとって恐怖の対象だった。結果として名称や頭部の造形などは「ガンダムの持つ魔力」と形容されるほど特別な意味を持つ事となり、後のMS開発の方向性にも大きく影響を及ぼしている。
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