鹿嶋少将の航海日誌second

宇宙戦艦ヤマト新作情報・二次創作他、気になったものなどをお届け(^-^)

機動戦士ガンダム外伝◇陽炎-ようえん-のキシリア◇第六話

2021-02-28 10:32:00 | 機動戦士ガンダム外伝

「私をガンダムを待っていただと……。」
「だから他のモビルスーツは私に掛かって来ないのか?」
流石に格闘/白兵戦に特化した機体ギャンの発展系だけの事はある。
ディアナの手にするビームサーベルでは、押し負けしつつあった。

「……パワー負けしてるッ!」
「くっ!」
「ふぁ……ファンネルッ!!」
ニコルはファンネル攻撃を思い浮かべた。
ディアナのショルダープロテクター後部に装備された6基のファンネルが、左右から3基づつ上方へ射出された。
今はまだ、頭に思い浮かべてから、コンマ0.2秒もの遅れが生じていた。
ニュータイプであるマルシェの娘ウシャスには、悟られてしまう。

「レベルの低いニュータイプね。」
「お前の"感応波"には、タイムラグが目立つわね。」

「ほらほら、ファンネルに感応波を使いすぎて、パワー負けしてるんじゃなくて?」

ディアナの右手首関節部から複数の白い煙が、昇りはじめた。
ニコルの眉間にシワが寄り、左目を閉じ、奥歯を噛み締める表情に変わって行った。

「ぐぐぐぐぐっ。」

「負ける訳には行かないッ!!」
「乱れ撃ちだぁぁぁぁぁーーーッ!!」

ニコルのファンネルによる捨て身の攻撃に、目を丸くするウシャスは、軽く退いた。

「鬱陶し、ファンネルども!」
「墜ちろッ!!」
ウシャスもまた、フィン・ファンネルを射出した。
ウシャスの操るギャン・クリーガーは特別仕様に造られている。
これはただ単にマルシェの娘でモビルスーツ隊総隊長だからではない。
ウシャスがニュータイプだからである。
バックパック両脇に平仮名の「くの字」に大小2基づつ、大きいフィン・ファンネルが下に小さいフィン・ファンネルが上に計4基、装着されたフィンタイプのファンネルが、親衛隊機の一般機と外見上の違いがある。

そんな中、残った改サラミス級がムサイ級との砲撃戦に敗れ、宇宙(そら)のデブリと化した。

「キャンベラ(改サラミス級)轟沈!!」

レーダー/通信オペレーターの報告にユーウは、ディアナを後退させた。

「ニコル機へ。現在、交戦中のクリーガーを引き離し、ホルスの護衛に入れ。」

「……了解!」
「了解はしたものの、簡単に行かないわよ!」と、心の中で叫んだ。
相手はニュータイプ、フィン・ファンネルを巧みに操り、間合いを詰めてはビームランスで攻めてくる。
ニコルはニコルでガードするも、飛ばしたファンネルの制御が愚(おろそ)かになる。

「くっ!」
「これ以上、ファンネルを操れない!」





「ダイジョウブ。」
突然、何処からか聴こえる声。

「えっ!?」



「ニコル!今だ!後退しろッ!!」
それは突然の出来事だった。
ディアナ開発主任カトウの搭乗するコロニー警備艇ヴォルホッグがニコルのディアナとウシャスのクリーガー間に割って入って来たのだ。

「こんな俺でも、小型宇宙艇くらいは飛ばせるんだよ!!」

ニコルは驚きながらも、カトウの助け船により、後退する事に成功するが、火に油を注ぐ事に成った。

「……何なんだ!?」
「五月蝿いんだよ!!墜ちろッ!!」ウシャスはシールド内に固定武装されたビームガンを撃ち放つ。
連射された輝かし光弾の嵐がカトウ機を襲った。

「……カトウ…さん。」後退するディアナのメインモニタには、螺旋を描(えが)き黒煙を撒きながら、宇宙(そら)の彼方へ消えてゆく光景だけだった・・・

ホルスの放つ弾幕が厚く張られた。
ユーウは、ディアナの緊急着艦とジオン強襲部隊、引き離しを試みた。

「カタパルトハッチ、オープン!」
「ガンダム・ディアナの着艦を急げ!」
「着艦後、機関最大へ!!」

辛うじてジオン強襲部隊との距離を引き離す事に成功するが、ホルス艦内は深い哀しみに包まれていた。


哀しんでばかりはいられない。
艦長であるユーウは連邦本部に連絡を入れた。
ランデブーポイントにて、合流した友軍艦艇、旗艦プリンス・オブ・ウェールズ及び改サラミス級2隻を失った事を報告した。
本部から言い渡された言葉に自身の耳を疑った。
それは、代わりに自分たちが強襲部隊を振り切り、ベルファスト基地へ届けると云う内容であった。

「……」
暫く、ユーウは沈黙、ブリッジ内は機械音だけが、何時もと何ら変わりなくBGMのように流れていた。

「……艦長。ユーウ艦長。」
ニコルが一番先に口を開いた。

我を取り戻したユーウ。
そのユーウは一度、ブリッジ内を見渡した。
ブリッジに居るクルーは任務をこなしながら視線はユーウ、艦長ユーウに向けられていた。

「ビワ通信オペレーター。」
「全艦放送を行う。」

「了解。」ビワ少尉は「カタカタ」とキーボードを叩き、艦長放送の準備を整えた。

「全艦に通達。」
「艦長のユーウだ。」
「クルー全員に伝える。」モニタには何時もより、下向き加減のユーウが胸から上が映し出された。
「本艦ホルスは現時点を持って、作戦変更により、地球ベルファスト基地へ赴く。以上だ。」

カタパルトデッキ、格納庫、機関区、医療区、ほか移住区に居合わせた者はみんな、設置されたモニタに耳を傾け、中には作業を中断し、見入る者まで居た。
艦長ユーウの放送が終るとザワザワと騒がしいくらいにクルーたちの私語や噂話が、まるで風邪が蔓延するかのように広まった。

そんな中、アナハイム・エレクトロニクス、ディアナ開発責任者である、アマノは側でザワザワと騒がしく話す者たちに「今、憶測で騒いでも仕方ない。今は艦長に従い、生き抜く事を考え、行動する。」と云い、「それが嫌なら、艦長に下艦を申し出ろ。」と告げた。
この言葉で騒ぎは収まった。

「仮に強襲部隊が追って来ても、ムサイ本体は、大気圏突入は出来ない。」
「コムサイだけだ。」
「4機のモビルスーツも戦闘を仕掛けられない。だが、このホルスは艦(ふね)ごと大気圏突入が可能だ。」
「それに連邦の制空権内だ。今よりは、ずっと安全だ。」
こうして、予定は全て狂わされたが、クルーは生き残る事を選択した。






ホルスに振り切られる形と成ったウシャスはもう一度、強襲を仕掛ける事にした。

「あのガンダムのパイロットを引きずり下ろすわ。」

「御意。」

「必ず引きずり下ろし、わたくしの股の下を這いつくばわせてあげるわ。」キャプテンシートに仁王立ちに成りながら「ニヤリ。」と笑みを浮かべウシャスは、そう心に思い描(えが)いた。


第七話へ
つづく。

この物語りは「機動戦士ガンダム」の外伝です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。

機動戦士ガンダム外伝◇陽炎-ようえん-のキシリア◇第五話

2021-02-26 23:04:00 | 機動戦士ガンダム外伝
強行偵察揚陸艦ホルスは連邦本部から指定されたランデブーポイントに到達した。
あと数時間もすればサイド3が制圧下に置かれ48時間を迎える。
そんな中、マルシェの娘ウシャスはガンダム・ディアナ追撃の許可を母に尋ねた。

「お母様。わたくしたちがサイド3へ侵攻途中に遭遇した、白いモビルスーツガンダムの討伐の許可を。」
「末端の兵ではありますが、犠牲が出ております。」
「ここで末端の兵の仇を取れば、お母様の株も更に上がる事でしょう。」
「末端一人一人の命も大切に思う主導者ならと、民衆も更に結束してくれましょう。」

「それに、わたくしは不愉快な思いを借りたままです。」
「何卒、ご理解を。」ウシャスはき、瞳を潤るわせ上目遣いに申し入れた。

「解りました。ただし、護衛を付けます。」
「よろしいですね?」

「お母様。ありがとございます。」ウシャスは立ち上がり、マルシェの首筋に口づけをした。


ランデブーポイントで待つこと一時間。

「ユーウ艦長。前方、10キロメートルの地点に艦影3つ。」
「照合により、連邦のネェルアーガマ級:1改サラミス級:2。」オペレーターの一人が告げた。

「うむ。」
言葉には出さなかったが、「やっとか。」とユーウは心に浮かべた。




ホルスから見て、右舷側に交差するようにネェルアーガマ級:プリンス・オブ・ウェールズ、そのプリンス・オブ・ウェールズを両脇やや後方から護衛するように改サラミス級が、左右に一隻づつ停止した。

「係留よーい!」
「艦、固定ワイヤー射出!」

ホルスとプリンス・オブ・ウェールズがワイヤーで固定された。
同時に地球連邦基地ベルファストから抜錨して来た三艦、艦隊司令ロサイスから通信映像が入った。

「ユーウ艦長。ここまで次世代ガンダムの輸送、ご苦労であった。」
「これより、強化パーツ/ガンダム本体、その他備品等の受領を始める。」

ホルスの格納庫内が慌ただしくなった。
まずは搬出、搬入に手間の掛かる強化パーツから搬出準備に入った。

準備に入ると司令ロサイスとユーウ艦長の対談がはじまった。
コロニーUSJ-7で遭遇したジオンとの事がメインだった。
戦闘データの引き渡しも同時に行われて行った。
司令ロサイスの話によれば、ガンダム・ディアナはベルファスト基地で最終稼働テストを行ったあと、量産化に伴い、再びアナハイム・エレクトロニクス・グラナダ支社に運ばれ、本格的に量産化される予定に成っているようだ。
プリンス・オブ・ウェールズへ引き渡しが終了後、ユーウ艦長をはじめ、エンジニアのカトウ、ツバサやテストパイロットを兼任する士官候補生ニコルらは、再びコロニーURJ-7へ引き返し、テストチームは解散、そこから各々が新たな部署へ移動する事になる。

搬出準備が整ったようだ。
ホルスの発進カタパルトデッキがオープンされた。
その時であった敵襲来を告げるアラームが、けたたましく鳴った。

「くっ。」
「こんな時に!」ユーウは、そう思いながら指示を飛ばした。

「全艦、現作業を中止!第一種戦闘配置!」
「対空防御よーい!」
「各機銃は弾幕を張れ!」

「甲板クルーは固定ワイヤーを解除、戦闘に備えよ!」
ユーウの指示に間髪入れずにレーダー/通信オペレーターから慌ただしく報告が、飛び込んだ。

「6時方向から、ビーム群!」
「艦影、モビルスーツ隊を捉えた!」

「……はっ、早いッ!!」
「ムサイ級が撃ち放ったビーム群に紛れ、モビルスーツ一機、抜けて来ます!」

「このモビルスーツの速さは、あのエースパイロットで、ニュータイプを彷彿させます!」
「気をつけて……。」
「気をつけて下さい!」と、告げようとした時だった、プリンス・オブ・ウェールズ左舷側に停泊中の改サラミス級が轟沈した。
ブリッジは粉々に何処から撃ち込まれたのか、数えきれない程の弾痕、飛び散る残骸は宇宙(そら)を宛もなく浮遊、デブリと化した。
青白いプラズマ、赤黒い爆炎、真っ黒な煙が所狭しと宇宙(そら)を漂う。

「敵、モビルスーツはギャンタイプ・クリーガー4機!」
「紅いクリーガー機は通常の三倍近い機動力!」

「右舷側の改サラミス級、反転!」
「砲撃を開始ッ!!」


ユーウ艦長は司令ロサイスに意見具申した。

「ガンダムを!」
「ガンダム・ディアナの発艦許可を!」

「駄目だ!艦長ユーウ!」
「あのガンダムを失う訳には行かんのだ!」

「ですが、モビルスーツ戦に艦砲射撃だけでは勝てません!」

ホルスがゆれた。
「右舷後部に被弾ッ!!」

「司令!」

「駄目だ、対空防御を厚くせよ!」
その時であったプリンス・オブ・ウェールズに被弾報告が飛んだ。

「……独断で使用します!」
「整備及び甲板クルーはガンダム・ディアナの発艦準備!」
「急げ!」
「ニコル候補生はガンダム・ディアナに搭乗、発艦に備えよ!」

「プリンス・オブ・ウェールズ!中央カタパルトデッキが大破!」
プリンス・オブ・ウェールズは搬入する為、全てのカタパルトデッキをオープンしていた為、格納庫内の被害は甚大であった。
ダメージコントロールも追い付いていない中、更に追い打ちを掛けられた。
紅いクリーガー1機の護衛、3機のクリーガーガーがプリンス・オブ・ウェールズを畳み掛ける。


【正統ジオン親衛隊機ギャン・クリーガー】

ウシャスの護衛として随行したクリーガー親衛隊機3機は、プリンス・オブ・ウェールズのがら空きカタパルトデッキから艦内に侵入、プリンス・オブ・ウェールズは、腹腸を喰い千切られるかのように、内部から崩壊をはじめた。

「ガンダム・ディアナ、ニコル出るッ!!」

「……プリンス・オブ・ウェールズ沈黙。」
「沈みます……。」

ニコルはディアナに装備されたビームサーベルを背中のバッグパックから抜いた。

「好き勝手やってくれちゃってッ!!」 
「このぉぉぉぉぉぉぉーーーッ!!」

ウシャスの紅いクリーガーのモノアイが紅く光を放つ。

「待っていたぞ!ガンダムッ!!」
ウシャスもまたビームランスを構え、スラスターを吹かし、加速した。
激しくぶつかり合う二つのビームの刃(やいば)。


第六話へ
つづく。

この物語りは「機動戦士ガンダム」の外伝です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。

機動戦士ガンダム外伝◇陽炎-ようえん-のキシリア◇第四話

2021-02-25 01:57:00 | 機動戦士ガンダム外伝
◆サイド3
首都バンチ-ズムシティ・旧公邸

旧公邸に縦に大きな旗が垂れ下げられた。
赤い下地に白と黒の十字の模様、その真ん中にはジオンのマークが施された国旗。
ジオン公国の巨大な国旗だ。
その垂れ下がる国旗に併せ、正装しているのだろ、公邸に垂れ下がる国旗を二回りほど小さくした国旗を右肩から掛け、二機づつ左右に薄紫色のギャン・クリーガータイプのモビルスーツが立ち並んでいる。
そして、旧公邸屋上には複数の人影。
旧公邸の前にも、人だかりの山。
ザワザワと騒がしい。
そんな中、屋上に集まる人影は左右に同等の人数に分かれ、整列した。
その整列した真ん中には赤い絨毯がしかれた。
その1~2分後、正装した二人の人物が、ゆっくり敷かれた赤い絨毯の約3分の2辺りまで歩くと止まった。
白い鉄火面タイプのヘルメットを被る女性と、まだ、幼さが残るこれまた正装に身を包む少女である。
白い鉄火面タイプのヘルメットを脱ぎ、その素顔を晒け出した。



「私は正統なるジオン公国、後継者マルシェ・キシリア・ザビである。」
「愛おしき母、キシリア・ザビの娘であり、ダイクンの息キャスバルは私の父である!」
どよめきの中、こう。切り出した私は話を続けた。

「ここに私は宣言する!」
「ここ、首都バンチ:ズムシティは我ら正統ジオンが完全に掌握した!」
「だが、これは一部で騒がれている侵略テロではない!」
「これは皆(みな)を連邦の呪縛から解き放つ第一歩に過ぎない!」
「自治権を放棄して9年。皆の暮らしは良くなったのか?」
「連邦による関与が、より一層、高まったのではないのか?」
「よく考えてみるがいい。
「地球に巣食う、特権階級の横行は私の母であるキシリア・ザビも参加したジオン独立戦争前より、酷く成ったのではないのか?」
「皆も記憶に新しい今から4年前、一人の青年が立ち上がった。」
「それは何故か?」
「地球連邦政府の高官ら特権階級の人々が地球の汚染を加速させており、「人狩り」とも呼ばれる強引な手段で民衆を宇宙に送り出す政策によって地球を私物化したからである。」 「これまでの戦争で死んだ全ての人々の行為を無下にしない為、その青年は反地球連邦組織「マフティー・ナビーユ・エリン」への参加を決意。」 「腐敗した特権階級の粛清がスペースノイドたちから歓迎されるようになった。」
「それがUC.0105年の紛争だ。」
「あれから4年、連邦の腐敗、横行は消えていない!」

「もう一度、云う。
「私は、そんな連邦の呪縛から皆を解き放つ!!」

「地球連邦に告ぐ!」
「我が正統ジオンは地球連邦に対し、宣戦を布告する!!」

「愛おしき母は、皆も知っての通り、戦史書に書かれた通り、先の大戦、一年戦争で名誉の戦死を遂げ、この世を去った。」
「私は看とる事も叶わず、30年末余りもの間、木星圏に身を潜めていた。」

「それは何故か?」
「ミネバ・ラオ・ザビという若き後継者が存在したからだ。」
「若き後継者ミネバを支える者たちが、連邦を粛清すると信じたからだ。」
「だが、結果は「ラプラスの石盤」と呼ばれるものを開示しただけで、あとは知らん顔だった。」

私は赤い絨毯に跪き、土下座した。
その姿は公邸前に設置された大スクリーンや街頭モニタ等、全コロニー、地球の全の映像通信機に映し出された。

「心からお詫び申し上げる。」

ざわめきが埋め尽くした。

私は再び立ち上がり、こう。告げた。

「私に皆の力を貸して欲しい!」
「必ずや、連邦から真の解放を実現するために!!」

物凄い歓声と拍手が沸き上がった。
少なくとも、ズムシティの民衆は賛同したと、確信した。


強行偵察揚陸艦ホルスでも、艦内モニタの前は、人だかりが出来、この宣戦布告に釘付けだった。

「……結局は戦争がしたいだけだ。」ブリッジでモニタを観ていたニコルが、呟くように云った。

「……でも、あの人が云った事は事実だと思うよ。」
「勤めてる私が云うのも、可笑しいけど、大企業や連邦の特権階級の人間の腐敗と横行は減ってないもの。」うつむきながら、ツバサが云った。
どんよりした空気が流れる中、艦長ユーウが口を開いた。

「何をしている?今は第三警戒中である。」
「今は、ジオンを警戒し、ランデブーポイントまで無事に赴く事に集中せよ。」強い口調で指示を飛ばすユーウだが、震えていた。
その指示にニコルやアナハイムのエンジニアたちは一旦、ブリッジを降り、格納庫へ向かった。
向かう途中でツバサが口を開いた。

「……あのキシリアって人。ほんとにあの戦史に出てくるキシリアの娘なのかなぁ?」

確かに証明する話はしなかった。
ツバサが疑問に思うくらいだから、あの演説を観た人の中には、ツバサと同じように思う人はいるだろう。

「……えっ!」
「どういう事よ?」ニコルが問いた。

「だって一年戦争中に子を産んだなんて、戦史に書かれていなかったから。」
「結構、ザビ家については詳しく書いてあったけど、子を産んだなんて書いて無かったわ。」

「確かに。」
「でも、戦時中で男女の関係があっても不思議ないし、ゴタゴタで記録が無かっただけかもよ。」
「偽物なら直ぐにボロが出るわ。」

「……だといいけど。」と心で思いながらツバサは、こう応えた。
「そうよね。」と。

時を同じくして、メガラニカ・ビスト邸でこの宣戦布告を観ていたミネバ・ザビは、ニコルと同じ事を呟き、愕然としたという・・・





「これで良かったのだろ!?ウシャス。」

「ええ。お母様。」
「良い演説でしたわ。」ウシャスは母マルシェの足元に跪き、足の甲に口づけをした。

「ご褒美よ。お母様。


第五話へ
つづく。


この物語りは「機動戦士ガンダム」の外伝です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。