酸素ボンベは一時間分の酸素しか持たない。
その為、効率を考えれば最上階から捜索していたのでは、僅かしか捜索出来ないからだ。
「そう云えば班長も空挺の訓練を受けたんですよね。」
「ああ。だが、駒沢、君みたく卒業課題をクリアしていない。」
「課題中、左足首を骨折してな、途中棄権しちまった。」
「完治してリハビリ後、もう一度、推薦されたんだが、嫁さん貰ったら正直、怖く成ってな。」
「守るものが出来た怖さってヤツさ。」
「そんで、断念したよ。て云うか辞退した。」
「そうだったんですか。」
「でもな。その守るものも、ガミラス戦役でなくしちまった……。」
「遊星爆弾でな。」
「……すみません。悲しい話をさせてしまって……。」
「私と同じだ……。」駒沢はそう言葉には出さなかったが、心の中で呟いていた。

「なぁに。気にすんな。駒沢。」
「それよりも、酸素があと45分しか持たない。先を急ごう。」
「了解。」
宇宙戦艦ヤマト復活編外伝
◇新太陽系誕生◇
後編①

あれから何れくらい気を失っていたのだろ?
柴田はデスラーの私室とは別の部屋に移されていた。
「総統。例の娘が目を覚ましたようです。」
別室をモニタリングするコマンダーが報告を入れた。
「うむ。」
「暁と云ったかね!?」
「漸くお目覚めしたかな?」
柴田の耳に届くデスラーの言葉。
「ええ。目覚めたわ。」
「パイロットスーツが見当たらないけど、殺されなかっただけ、マシって事かしら?」
「クックックックッ。」
「気の強い嬢ちゃんだ。ヤマトのクルーらしいな。」
「まぁ。そんなに尖りなさんな。」
「暁くん。君を解放しようと思っているんだが。」
「……解放!?」
「そう。解放だ。」
「パイロットスーツは直ぐに返そう。」
「君は機械の手を持っていたんだね。」
「……機械!?間違いではないけど、違うわね。」
「義手は機械ではなく医療用のサポート……
」
「そんな事はどうでもいい。」デスラーは暁の言葉を遮って話を続けた。
「君のその手と自身を少し、改良を加えた。」
「さっきも云ったように暁くん。君をヤマトに返す。」
「君は我がガルマン・ガミラスの栄光ある下部(しもべ)としてね。」
「ヤマトに戻り、ヤマトの情報を我々に提供する。それだけで、今までと何ら変わりなく生きて行ける。」
「拒否すれば死だ。但し、ヤマトの中でだがね。」
「君の身体にはナノサイズの爆弾を装着させて貰った。遠隔操作可能な爆弾だ。」
「自走地雷とでも云ったところかな。」
「情報を集め、私に提供してくれればそれでいい。」
「成功すれば、中和剤をプレゼントするよ。」
「悪い条件ではあるまい?」
「……でも、私がノコノコとヤマトに戻ったら逆に怪しまれるわね。」
「そしたら即、検査してナノサイズの爆弾は取り除かれるわね。」
「まぁ。その前に遠隔操作とやらで私がお陀仏かもだけど。」
「その時は般若心経を唱えてね。」
「フッハッハッハッハッハッ!」
デスラーは豪快に笑い話を続けた。
「ますます気に行ったよ。」
「だが、ご心配ご無用だ。君を救出させれば、怪しまれん。」
「我々は、この艦(ふね)を含め、大型戦闘艦が2隻、合計3隻、それもヤマトより大型で火力も上だ。」
「君が事を暴露し、戦闘に成ったとしてもヤマトに勝ち目は、無い!」
「さあ。どうするかね?柴田 暁。」
モニタ越しにデスラーの目が紅く光った。
「……解ったわ。引き受けるわ。」
「そうか。朗報を待つよ。」モニタはそこで「プツリ。」と消えた。
「フッハッハッハッハッハッ!」デスラーは高々と笑った。
デスラーにはもう一つ、別の狙いがあった・・・

◆
残り最上階のみと成った捜索班。
「残りの酸素が15分だ。この部屋を捜索してランディングクラフトに戻るぞ。」
「了解。」
「……!?」
「あの箱、怪しいわね。」とデスクの上に置かれた箱を見つけた駒沢は、酸素の持ち時間を気にするあまり、何時に無く焦りがあった。
デスクまで泳いだ時だった箱は持ち出されようとしていたのか、白骨化した腕と繋がれていた。
「キャッ!」
軽く驚いた駒沢はウェットスーツと酸素ボンベのチューブを尖った瓦礫に引っかけ、動きが取れずにいた。
気泡が駒沢を悪戯に包む。
「しまった……。」
ヘルメットに内臓された無線を飛ばした。
駆け付けた須藤は自分のマウスを駒沢に咥えさせた。
「……すみません。班長。」
「喋るな。無駄に酸素が減る。」
駒沢はデスクの上の箱を指をさした。
残り五分と成った。
「駒沢。すまんが、時間が足らん!ボンベとウェットスーツを捨てろ!」
裸体をさらけ出す事に成るが、その言葉に駒沢は頷いた。
箱を抱え、須藤と駒沢は交互に須藤のマウスを咥え、ランディングクラフトへ帰投した。
「……小林!目を瞑って!」近傍モニタを覗く折原が慌ただしく云った。
「なっ!なんだよ真帆、いきなり!」
「いいから小林は目を瞑って!」
コックピットの窓からも駒沢の裸体が確認出来た。
アワアワと小林はうろたえ手で目を覆ったが、やはり少しは気にするのか指の隙間から上がって来る二人を見ていた。
「だから見るなって!」
「裸を見てる訳じゃなく、二人の位置を確認しただけだよ……。」
「私が合図します!」
「わ、解ったよ。」
収用され、貨物室の排水が開始された。
「宝を回収した。ヤマトへ戻ろう。」
「了解!」

こうして、須藤たちが持ち帰った箱は無事、解析に回され、新たな情報を掴んだ。
「……天の川銀河……精神生命体テレサ………。
テレサ………逢え……
……………モノポールエネルギーと………テレサの力が……………。」


「……テレサって、あのテレサの事か?」解析結果を目にした上条がいち早く口を開いた。
「おそらく。」
「天の川銀河と書かれている事からまず、間違いない。」
古代がそれに答えた。
「ですが、テレサはガトランティスと共に……なんて云うか、消滅したのでは?」
「ああ。確かに。」




後編②へ
つづく。
この物語りは【宇宙戦艦ヤマト復活編】の外伝です。(二次創作です。)
登場人物、メカ等は架空です。実在する人物とは関係ありません。
また、私的設定が混ざってます。
挿し絵的画像はイメージです。