うげ~宝塚? あの女ばかりの劇団やろ。男を女がやるなんて不自然で気持ち悪いよ。
うげ~歌舞伎? あの男ばかりの古典芸能やろ。女を男がやるなんて不自然で気持ち悪いよ。
と思っている方は一度、宝塚歌劇と歌舞伎を見に行って下さい。
思っているほど不自然でも気持ち悪いものでもありませんよ。
そして、男だけでやるシェイクスピア劇も・・・・・・
十二夜 祭りのあとは、ご勝手に byウィリアム・シェイクスピア
出演者
ヴァイオラ・セバスチャン:吉村祐樹、オルシーノ:岡田力、オリヴィア:橘義
マルヴォリオ:原田大二郎(客演)、道化師フェステ:山中雅博(客演・関西二期会)
他:ピッコロ劇団
演奏:PACアンサンブル
翻訳・演出・美術:三輪えり花、音楽監督・作曲:池辺晋一郎
十二夜は、私が初めて見たシェイクスピアでした。
男と女が入れ替わることによる恋のもつれは典型的なラブ・コメですが、
ヴァイオラ→オルシーノ→オリヴィア→シザーリオ(ヴァイオラ)
という四角関係だけでなく、
マルヴォリオ→オリヴィア←アンドリューとか、
トビー→←マライア(←フェステ)
など場外乱闘編的な恋愛関係がもつれ込み、さらには、
ヴァイオラ(女)←オリヴィア(女)→シザーリオ(男)←オルシーノ(男)とか、
アントニオ(男)→セバスチャン(兄)→ヴァイオラ(妹)
などちょっぴり怪しい関係も匂わされて、まさしく、「恋する男と恋する女--愛する人には愛されず」な、もつれ具合なのですよ。
で、最後はハッピー・エンド(?)な感じで終わるところが典型的なラブ・コメではなくなっていて、シェイクスピア劇初心者の私でもスッと劇の中に入り込めて普通に「面白い!」と感じた劇でした。(そして、いい気になって「真夏の夜の夢」を見て撃沈しました。アレのどこが面白いの~)
特にトレヴァー・ナン監督の映画「十二夜」は、イモジェン・スタッブス、ヘレナ・ボナム・カーター、ベン・キングズレー、ナイジェル・ホーソーンなどイギリス演劇界のそうそうたるメンバーで作られた映画で、シェイクスピア映画の中で不朽の名作だと思います。
映像の美しさもさることながら、音楽も素晴らしく、全体的にアンニュイな雰囲気で、それでいて原作の面白さがちっとも損なわれていないのです。(小学生の従妹が夢中になって見ていました)
オススメの一品ですので、ぜひぜひ見て下さい。特に、ヘレナのファンは必見ですよ。
ところでシェイクスピア劇ですが、「恋に落ちたシェイクスピア」をご覧になった方ならすでに知っているでしょうが、シェイクスピアが劇を書いた当時は女性は舞台に上がることが禁じられており、女性役は少年俳優が演じていました。
理由は、日本の歌舞伎がなぜ男ばかりで演じられているのかと同じ理由です。
当時、女優というより女性芸人はどうしても娼婦としての役割があったのです。で、風俗が乱れるというのが最大の理由でした。
だから現在では、上記で紹介した映画も含め、女性役を少年俳優が演じることはありません。ましてや男優が女性役をやることは決してありません。
……だけど、「見てみたい」とは思いません?
ということで、ピッコロ劇団が男性だけで「十二夜」をやると聞いて、とりもなおさずチケットを取りました。
それまでピッコロ劇団の名前は聞いていたのですが、観るのはこれが初めて。
それがこんな色物からデビューとは、どうよ? とは思ったのですが、ピッコロ劇団の実力を信じて、一番前の席を取りました。
で、これが面白いやら面白くないやら。
初め、男性が女性役をやることに少し違和感を感じましたが、途中からそんなことが気にならないぐらい面白くなりました。
まず、客演のマルヴォリオ役の原田大二郎とフェステ役の山中雅博が良い演技をしているのです。特にフェステの山中さんは俳優ではなく音楽家。途中ヴァイオリンを弾いたり歌を歌ったりと、なかなかな見せ場があるのです。
この二人は力のある俳優がやらないと、劇全体がピリッとしないので、いい役者を呼んできたなぁと思いました。
主役を紹介する前にもう一人脇役を紹介。
マライア役をした中川義文。
実は女性役をした人の中で一番はまっていました。
ご本人の素の顔を見ればいい年したおっさんなのに、劇の中では何となく大人の女性の色気が匂うマライアでした。そりゃ、トビーも落ちるわ。
そしてそして、主役のヴァイオラとセバスチャンの二役をした吉村祐樹。
ヴァイオラとセバスチャンは双子の兄弟という設定なので二役するのは当然とはいえ、衣装はまったく同じで、演技だけで区別を付けるという難役を文字通り舞台中走り回って演じておられました。
何せヴァイオラが右の袖へ引っ込んだらセバスチャンは左の袖から出てくるという多忙ぶり。
本人汗だくでしたが、ちゃんと混乱することなく演じ分けていました。
特にヴァイオラ役の時は女性であるヴァイオラがシザーリオとして男の振りをしているというややこしい設定。
ヴァイオラが演じるシザーリオと、元々男のセバスチャンの演じ分けは難しかったと思います。
だけどきっちり演じ分けていました。
シザーリオの時はどこか守りたくなるような優しい少年。
セバスチャンの時は守られたくなるような勇ましい少年。
そしてシザーリオの時は、実は女性なのだというところが不自然無く演じていたので、二人が顔を合わせるシーンの演出が効きました。
このシーンだけは、再演を望んでネタバレ無しとします。
もし再演されましたら、楽しみにしていて下さい。アッと驚く仕掛けが施されています。
さて、この劇、実は兵庫県立芸術文化センターに所属しているオーケストラが共演しているのです。
俳優ではなく音楽家畑の山中さんが客演しただけでなく、舞台後ろでは兵庫芸術文化センターの管弦楽団メンバーが生演奏で舞台の音楽を盛り上げてくれました。
しかも、ただの黒子的な存在ではなく、ちゃんと役者と掛け合いをしてくれるのです。
日本でいえば歌舞伎、ヨーロッパでいえばオペラとオペレッタ。当時の劇には音楽と演劇の垣根がないことの一端を見せてもらった気分でした。
うげ~歌舞伎? あの男ばかりの古典芸能やろ。女を男がやるなんて不自然で気持ち悪いよ。
と思っている方は一度、宝塚歌劇と歌舞伎を見に行って下さい。
思っているほど不自然でも気持ち悪いものでもありませんよ。
そして、男だけでやるシェイクスピア劇も・・・・・・
十二夜 祭りのあとは、ご勝手に byウィリアム・シェイクスピア
出演者
ヴァイオラ・セバスチャン:吉村祐樹、オルシーノ:岡田力、オリヴィア:橘義
マルヴォリオ:原田大二郎(客演)、道化師フェステ:山中雅博(客演・関西二期会)
他:ピッコロ劇団
演奏:PACアンサンブル
翻訳・演出・美術:三輪えり花、音楽監督・作曲:池辺晋一郎
十二夜は、私が初めて見たシェイクスピアでした。
男と女が入れ替わることによる恋のもつれは典型的なラブ・コメですが、
ヴァイオラ→オルシーノ→オリヴィア→シザーリオ(ヴァイオラ)
という四角関係だけでなく、
マルヴォリオ→オリヴィア←アンドリューとか、
トビー→←マライア(←フェステ)
など場外乱闘編的な恋愛関係がもつれ込み、さらには、
ヴァイオラ(女)←オリヴィア(女)→シザーリオ(男)←オルシーノ(男)とか、
アントニオ(男)→セバスチャン(兄)→ヴァイオラ(妹)
などちょっぴり怪しい関係も匂わされて、まさしく、「恋する男と恋する女--愛する人には愛されず」な、もつれ具合なのですよ。
で、最後はハッピー・エンド(?)な感じで終わるところが典型的なラブ・コメではなくなっていて、シェイクスピア劇初心者の私でもスッと劇の中に入り込めて普通に「面白い!」と感じた劇でした。(そして、いい気になって「真夏の夜の夢」を見て撃沈しました。アレのどこが面白いの~)
特にトレヴァー・ナン監督の映画「十二夜」は、イモジェン・スタッブス、ヘレナ・ボナム・カーター、ベン・キングズレー、ナイジェル・ホーソーンなどイギリス演劇界のそうそうたるメンバーで作られた映画で、シェイクスピア映画の中で不朽の名作だと思います。
映像の美しさもさることながら、音楽も素晴らしく、全体的にアンニュイな雰囲気で、それでいて原作の面白さがちっとも損なわれていないのです。(小学生の従妹が夢中になって見ていました)
オススメの一品ですので、ぜひぜひ見て下さい。特に、ヘレナのファンは必見ですよ。
ところでシェイクスピア劇ですが、「恋に落ちたシェイクスピア」をご覧になった方ならすでに知っているでしょうが、シェイクスピアが劇を書いた当時は女性は舞台に上がることが禁じられており、女性役は少年俳優が演じていました。
理由は、日本の歌舞伎がなぜ男ばかりで演じられているのかと同じ理由です。
当時、女優というより女性芸人はどうしても娼婦としての役割があったのです。で、風俗が乱れるというのが最大の理由でした。
だから現在では、上記で紹介した映画も含め、女性役を少年俳優が演じることはありません。ましてや男優が女性役をやることは決してありません。
……だけど、「見てみたい」とは思いません?
ということで、ピッコロ劇団が男性だけで「十二夜」をやると聞いて、とりもなおさずチケットを取りました。
それまでピッコロ劇団の名前は聞いていたのですが、観るのはこれが初めて。
それがこんな色物からデビューとは、どうよ? とは思ったのですが、ピッコロ劇団の実力を信じて、一番前の席を取りました。
で、これが面白いやら面白くないやら。
初め、男性が女性役をやることに少し違和感を感じましたが、途中からそんなことが気にならないぐらい面白くなりました。
まず、客演のマルヴォリオ役の原田大二郎とフェステ役の山中雅博が良い演技をしているのです。特にフェステの山中さんは俳優ではなく音楽家。途中ヴァイオリンを弾いたり歌を歌ったりと、なかなかな見せ場があるのです。
この二人は力のある俳優がやらないと、劇全体がピリッとしないので、いい役者を呼んできたなぁと思いました。
主役を紹介する前にもう一人脇役を紹介。
マライア役をした中川義文。
実は女性役をした人の中で一番はまっていました。
ご本人の素の顔を見ればいい年したおっさんなのに、劇の中では何となく大人の女性の色気が匂うマライアでした。そりゃ、トビーも落ちるわ。
そしてそして、主役のヴァイオラとセバスチャンの二役をした吉村祐樹。
ヴァイオラとセバスチャンは双子の兄弟という設定なので二役するのは当然とはいえ、衣装はまったく同じで、演技だけで区別を付けるという難役を文字通り舞台中走り回って演じておられました。
何せヴァイオラが右の袖へ引っ込んだらセバスチャンは左の袖から出てくるという多忙ぶり。
本人汗だくでしたが、ちゃんと混乱することなく演じ分けていました。
特にヴァイオラ役の時は女性であるヴァイオラがシザーリオとして男の振りをしているというややこしい設定。
ヴァイオラが演じるシザーリオと、元々男のセバスチャンの演じ分けは難しかったと思います。
だけどきっちり演じ分けていました。
シザーリオの時はどこか守りたくなるような優しい少年。
セバスチャンの時は守られたくなるような勇ましい少年。
そしてシザーリオの時は、実は女性なのだというところが不自然無く演じていたので、二人が顔を合わせるシーンの演出が効きました。
このシーンだけは、再演を望んでネタバレ無しとします。
もし再演されましたら、楽しみにしていて下さい。アッと驚く仕掛けが施されています。
さて、この劇、実は兵庫県立芸術文化センターに所属しているオーケストラが共演しているのです。
俳優ではなく音楽家畑の山中さんが客演しただけでなく、舞台後ろでは兵庫芸術文化センターの管弦楽団メンバーが生演奏で舞台の音楽を盛り上げてくれました。
しかも、ただの黒子的な存在ではなく、ちゃんと役者と掛け合いをしてくれるのです。
日本でいえば歌舞伎、ヨーロッパでいえばオペラとオペレッタ。当時の劇には音楽と演劇の垣根がないことの一端を見せてもらった気分でした。
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