Siamo tutti un po' pazzi.

~我々は皆少しおかしい(イタリアの慣用句)~

普段色々考えていることの日記です。

「ウィキッド」劇団四季版

2009年11月07日 | ミュージカル・演劇
(ネタバレ注意)
「……………」

ふぅ。

言っていいですか?
言っていいですかね?

落ちたな、劇団四季。

四季のレベルが低下したのか、それともウィキッドが劇団四季にあわなかったのか、その辺は微妙ではあるが。

面白くなかったことは確かである。

はぁ。

何がいけなかったかと言われれば、すべてとしか言いようがない。

まず舞台全体にハリが無い。
上手く言えないが、役者一人一人脇役に至るまで、何かダレのようなものがあるのだ。
役者が客を見ていないというか、役を演じるだけで精一杯になってしまって役者自身の余裕が無いというか、たった一人でもいいから今日来た客から自分のファンを作ろうという気迫が無いというか、
ぶっちゃけ四季団員というだけで満足してしまっていない?

そして、主役二人。(この場合、エルファバとフィエロ)
実力はあるんだと思う。
実力はあるんだろう。
だが、しかし。
実力に役がともなっていないことは確かだ。
ともかく歌が歌えていないのだ。
ウィキッドは高音域をガンガン使ってかなり高難度の歌を使うことで有名だ。
その高音域の歌がエルファバが持つ人とは違う才能をあらわし、西の魔女ここに然りという感じを観客に与える。
1幕終わりのかの有名なシーン。
比喩でも何でもなく観客が本物の魔法に出会うシーンにエルファバの絶叫域とも言える歌が歌われる。
このシーンを考えるだけで、エルファバという役と歌唱力は切っても切り離せない関係だと分かる。
その歌唱力が残念ながら四季のエルファバにはともなっていない気がする。
もちろん高音域の声はそれなりに出しているが、一息で声を上げず、2段階から3段階かけて高音域を出しているのだ。
ポップシンガーが高音域の声を出す時こういう歌い方をするのだが、それは決して上手いわけではない。
上手い人は一息で出すのだ。
例えばブロードウェイ版のエルファバ役の役者のように。

ここで決して外国人と日本人の違いを言いたいわけではない。
(エルファバ役の人はどうやら韓国人らしいので、欧米人とアジア人の違いと言ってもいい)
よく、欧米人の声量はアジア人には無理という話を聞くが、そんなことを言っていたらアジア人は一生オペラ歌手になれない。
訓練次第ではアジア人でも欧米人なみの声量を得ることはできるのである。
ただ、ここで私が最初に言った「ウィキッドが劇団四季にあわなかったのか」という疑問に戻るのだが。
この訓練が劇団四季役者は積んでいないのじゃないかと思うのである。
いや、劇団四季も歌唱の指導をしていることは知っているが、いわゆるオペラ歌手が行う歌唱訓練はしていないんじゃないかな、と。
まぁ、実情はよく分からないのだが、エルファバ役とフィエロ役の役者が高音域を歌うたびに声が裏返り、それが気になって仕方がなかった。
そして役者は歌うだけで精一杯。歌に演技をのせることが出来ておらず、私は全く主役二人に感情移入できなかったことは確かだった。

感情移入が出来ないというのは本当に始末が悪い。
劇にのめりこんでいないからか、劇自体のアラばかりが目についてくるのだ。
フィエロは何でエルファバが好きなの? とか。
エルファバは何でフィエロが好きなの? とか。
結局エルファバは何がしたかったの? とか。

私はあの嫌味でおバカなグリンダが自分がエルファバにしたことを反省してエルファバと仲良くなるシーンが好きだ。
私がフィエロなら、あそこでグリンダに惚れる。
だけど、フィエロがエルファバに惹かれた理由は全く分からない。
あえて理由を探すなら、「あなたはちっとも幸せそうに見えない」なのだろうか?
だけど、なんかエルファバに共感を持つシーンが無かったから、なんかこの二人の恋愛なんてどうでもいいやって思ってしまった。
本当に二人のラブシーンは眠たくて眠たくてあくびをかみ殺していたぐらいだった。
だが、グリンダが歌う歌には自然と涙が出て、感動している自分がいた。
もちろん、フィエロとエルファバカップルが出てきた瞬間、感動が台無しになったが。
普通はハッピーエンドにさらに感動するところが、
あのまま死んでいれば良かったのに。
と、ものすごくガッカリしてしまった。
アレ、ものすごくグリンダが可哀そうなんですけど。
カカシ、お前、原作通りオズに帰って王様になれよ! 

まぁ、他にも、なんで動物差別? とか。
オズの魔法使いってエメラルドに降りてそのまま魔法使いになったんじゃないの? とか。
ドラゴン時計って結局何だったの? とか。
もう気になるところばかり。
こういうのって、ミュージカルに力があれば、「ま、いっか」って思えちゃうところなんだけど、その力が無いから、気になって気になって。
ともかく、私は
これはグリンダの成長物語だから、グリンダが主人公なんだ。
と自分をなぐさめるしかありませんでした。

うん。グリンダは良かったよ。グリンダだけは、ね。


コメントを投稿