hitorigoto 2

  笑顔までの距離

風の色 4

2011-02-13 22:24:50 | 風の色
風の色 4


マットブラックの古いダッチバン。荷室が広くてまるで日本の霊柩車のようだ。
彼女は日本人観光客相手のダイビングインストラクターをしている。
ボンベ、ウエットスーツなどの機材を積み込むにはこんな車になる。

この島は観光客と、その対応する関係者だけが住んでるような島だ。

約10分 ハミルトン島のシーサイドから高台にある少し古ぼけた彼女の家。
一人暮らしには十分すぎる広さの3LDK。

建物と同じ広さのほどある庭には2本のParmTree。
ヤシガニも登っていそう。

すでにPM5:00。夕日がベイに差込み、キラキラ光り彩っている。
こんな場所なら、日本には帰りたくはなくなるな。

「夕食作るから手伝って。」包丁片手にサリー。

「OK」料理は下手でも好きな方だ。

「明日は食料も調達しなくちゃ、あんた達食べそうだしね。ここにいるのはかまわないから食費はお願いね。」

「スーパーはさっきのストリートに2軒あるから。車は仕事があるときは使うけど、なければ使ってもいいわよ。」
包丁を裁く手つきが軽快だ。

「分ってる、何ができる分らないけど行ってくるよ。」
部屋の隅にあったギターを爪弾きながら牧野がメロディにして返答。
Takamineのアコースティック。好きなブランドのアコギ。


「今日は私のおごりよ。」

「アルコールはあるかな?。」心配気なオレ。

「う~ん ビールと赤ワインくらいかなあ~。」

「十分だ。明日補給しとくよ。」

「カクテルがいいね。」レゲエ調メロディで牧野。


彼女は一人暮らしが長いからか、料理は上手い。ホワイトソースとパインソースの2種類のオムライスに、ナッツを和えたヨーグルトサラダ、オージービーフのレアステーキ。

彼女は結構張込んだに違いない。この頃には、あの時オレにあった違和感は消えてしまっていた。



「早速、明日から捜索開始だな。」ハイライトに火をつけながら牧野。

ロッカーはハイライトが定番と思ってるらしい。

「日本人が仕事を持つには限られてる。観光中心の小さい島だし、ここにいるならすぐに見つかるだろ。」 意外に柔らかいビーフをかじりながらオレは赤ワインのグラスを傾ける。

「日本人ガイドだったら絞られるわね。」

「去年ゴールドコーストから一人日本人男性のガイドが来たのは、聞いたことがあるけど・・・。」

「よ~し すでにビンゴ気分だー。ひと月くらいバカンスしようぜ。」ワイン片手に陽気に出来上がった牧野。

「いいねえ、暮らしたっていいよな。」オレも酔ってきた。

オレ達には日本にとりたてて引き止めるものもない。自由はグレートバリアリーフのように果てなく持て余している。


夏の夕暮れ、ベイに沿って立ち並ぶリゾートホテルのライティングが海面を彩り、ビーズを敷き詰めたようなイメージ。

夕闇が深まり一層それを引き立てている。

空には負けないくらいの降ってきそうな星空が広がって、心を浄化してくれる。

そんな星空をグラスの中に浮かべて 冷えたキールを飲み干す。

Takamineはスローバラードを奏でてる。

The Beatles 「Hey Jude」。

三人のガーデンパーティは夜更けまで続いた。





























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