植物好事魔多し

植物を育てる、とある趣味家の備忘録兼管理ノートです。

台湾ヤドリコケモモ

2016-10-15 13:00:00 | Ericaceae ツツジ科
栽培品の台湾ヤドリコケモモ。
台湾に分布するツツジ科の常緑低木。
塊根を形成する。
恐らくは挿し木一~数年生で、まだ塊根はない。
果実らしきものがみえる。


台湾ヤドリコケモモは流通名であり、その正体はどうやらオオバコケモモVaccinium emarginatumであるらしい。
なお、Vacciniumはブルーベリー等も含む属。



本種に関する情報はあまり得られず、類似種とされるヤドリコケモモVaccinium amamianumの栽培例等を参考にすることにした。
なお、V. emarginatumとV. amamianumは分類学的に同種とする説もあり、このことは鹿児島県森林技術総合センターの「鹿児島県に固有の木本植物の収集と保存〔Ⅰ〕」(PDFファイル)に詳しい。
ちなみにITIS(Integrated Taxonomic Information System)ではシノニム扱いされている
日本の国内法(種の保存法)では、V. amamianumとして奄美大島に固有の独立種とし(即ちV. emarginatumとは別種とし)、ヤドリコケモモV. amamianumを国内希少野生動植物種に指定しており、採取、譲渡、販売等が規制されている。
したがって、いわゆる台湾ヤドリコケモモは規制の対象外ということになる(だから入手できたわけだが)。



上述の鹿児島県森林技術総合センターのPDFによると、
・鹿沼土に挿し木を試みたところ発根は容易だったが、生育は遅い
・挿し木四年生で一部に塊根が生じた
・礫で鉢植えにし、乾燥気味の管理で維持できている


手持ちの文献では、「タネから楽しむ山野草」(東京山草会・編著、社団法人農山漁村文化協会、2004年)にヤドリコケモモの記述がある。
・寄稿者は東京都墨田区の方で、室外霜除けで越冬している
・気温15℃以上があれば水道水に水挿しで2~3週間ほどで発根
・種子はごく小さい
・自家受粉でも種子を得ることができた


環境省の種の保存法に基づく国内希少野生動植物種等に追加しようとする種の概要によれば、
・腐葉等が蓄積した巨木に着生する
・本種は奄美大島の固有種であるが、同属の類似種は台湾に2種、中国雲南省、ヒマラヤ、マレーシアの高山等に十数種類知られている



以上のことから、ある程度の耐寒性があり、挿し木等の栄養繁殖が容易であるといえる。
自家採種、実生もある程度は期待できる。
自生地の腐葉の栄養度は不明ながら、着生植物は肥培に弱いものもあるため、念のため肥料は控えめで、土は水はけよく、乾かし気味に管理すると良いのだろう。
着生であるから、通風も心掛けたい。
ツツジ科は酸性の用土を好むため、本種も酸性寄りの用土に植え込むのがいいかもしれない。