黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

千葉・松尾8人死傷のひき逃げ事件、懲役25年を求刑 (朝日新聞)

2005-11-22 12:36:17 | 司法(平成17年)
千葉・松尾8人死傷のひき逃げ事件、懲役25年を求刑 (朝日新聞) - goo ニュース

 従来,轢き逃げだと悪質な事案でも懲役7年6カ月が限度だったのですが,危険運転致死傷罪の新設と懲役刑の上限引き上げで,こんな求刑も出されるようになりました。
 法律の改正があったとはいえ,わずか2~3年の間にここまで量刑相場が跳ね上がるのは,おそらくあまり前例はないと思います。重罰化に行き過ぎの観があるか,それとも従来の相場が軽すぎたのかは,考え方によると思いますが。
 なお,黒猫としては,被害者8人ともなると,このくらいの求刑でも仕方ないのかなと思います。

 それにしても,弁護人の『直接の原因は飲酒よりも、友人が亡くなったことを考えていたため前方不注意となった』ものであるから,業務上過失致死傷罪の適用を求めるっていう主張,記事で読むだけでもかなり苦しいですね・・・。
 酒を飲んだことはそのとおりだが酩酊状態ではないと主張しても,認められる可能性はほとんどないような気がしますが,被告人がそう主張していればやらざるを得ないんでしょうね。刑事弁護人という立場の悲しいところです。

3 コメント

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直近過失論 (y_okamura)
2005-12-03 20:17:03
この法改正がされた際に,もっとも恐れていた主張を,この弁護士さんがなされたということではないでしょうか。



危険運転致死傷罪が新設された際,まだ現場におりましたが,同僚と,このような主張が最も怖いと話したことを思い出します。



直近過失論をとる以上,脇見が事故の直近過失であれば,この法条は適用されないと話し合いました。



捜査段階で,素直に誘導されて自供し,法廷で,脇見あるいはぼんやり運転が過失であると主張されたら,覆しようがないように思います。



実務では,おおむね呼気1リットルあたり0.4ミリグラム以上から酒酔い運転を疑いはじめますが,0.8ミリグラムでさえ,酒気帯び運転としてしか起訴できないという実例もあります。



「刑事弁護人としての立場の悲しいところ」であるとは考えません。この法条自体が内包する問題点であると考えます。

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因果関係 (y_okamura)
2005-12-05 08:20:17
刑法208条の2を本件に適用すると,「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で,自動車を走行させ」,「よって」人を死亡させた者となります。

直近過失論では,「よって」は因果関係であり,直近過失が,ぼんやり運転であれば,飲酒酩酊とは因果関係がないと考えます。



飲酒酩酊状態と人の死亡との間に因果関係が必要であり,直近過失が,脇見あるいはぼんやり運転であれば,因果関係はありません。

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いちゃもん (y_okamura)
2005-12-05 08:22:44
警察庁提出法案だから,いちゃもんつけてるの。

古巣の提出法案なら,おそれおおくて,こんないちゃもんつけないの。

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