黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

市民権濫用で偽装破産?

2005-11-21 12:47:05 | 司法(平成17年)
 落合先生のブログ経由で読んだ記事。

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1498360/detail?rd

 あまりにひどい記事なので,全文引用の上コメントしたいと思います。ちなみに「  」内が黒猫のコメントです。

【PJニュース 11月19日】- 自己破産は借金超過で苦しんでいる人を救済し、市民に再び立ち直るチャンスを与えるために国が作った制度である。国が善良な市民のための救済措置として制定されている制度を悪用し、借金を返済したくないために、自己破産の申し立てを起こす市民もいるという。市民から借金を返済したくないので自己破産(偽装破産)を申し立てたいと依頼された弁護士は、その時点で市民からの着手金が手に入る。
「黒猫のオリジナルは,かなりの数の破産事件をこなしていますが,実際には,受任時点で着手金が入ってくることはほとんどないですね。大抵月2万円とか3万円くらいの分割払いです。」

 そして弁護士から、自己破産の申し立てを受けた裁判所は、申し立てが適法にされているかどうかを審理し、書面上、市民が借金を返済できないのだと判断した場合には、破産宣告をすることになる。裁判所の破産宣告により、市民は、一時的に、借金の返済は免れ、得した気分になるかもしれない。だが、弁護士に支払う費用が、借金の返済額よりも上回る事態が起きることも想定しておくべきであろう。
「弁護士費用が借金の返済額を上回るというのは,非弁提携の超悪徳弁護士であればともかく,通常はありません。」

 偽装破産をするには、どのくらいの費用が必要なのか。偽装破産で得するのは、誰なのかお知らせしよう。

市民が自分で自己破産の申し立て行った場合の費用
 裁判所が借金を返済することはできないという判断で破産宣告を下し、免責決定が下りると、市民は借金は払わなくてもいい状況となる。免責決定とは借金は払わなくてもいいという決定を受けることをいう。免責決定が下ると、借金を払いたくないので自己破産の申し立てをした市民が、借金から解放されることになる。それらの裁判手続きには、約2-3万円の実費がかかるとされている。
「現在は破産宣告ではなく,破産手続開始の決定です。免責決定も正しくは免責許可の決定です。本人申立ての場合の実費は大体合っていますが。」


市民が弁護士に依頼して自己破産の申し立てを行った場合の費用
 借金を払いたくないので自己破産をしようとする市民にとっては、裁判所の免責決定が下りなければ、実費2-3万円が損だと考えることになる。免責決定が下りるよう書面提出するには、弁護士に依頼し、専門家の知識を借りたいと考えるであろう。その場合に、弁護士に支払う費用は、実費(2-3万円)、プラス着手金20-50万円、プラス報酬額20万-50万円くらいだという。つまり、弁護士に支払う費用は100万円程度は必要だと考えておかなければならない。
「最近は,激安の事務所なら報酬金無しで弁護士費用20万円~30万円台というところもありますし,実際に100万円前後も弁護士費用を取られるのは,借金が何千万円もある人(高給取りか事業者)くらいです。」

弁護士の提言は、「自己破産でリスクは背負わない」
 自己破産について、本人訴訟をすすめる弁護士の著書などを見ると、自己破産は自分で裁判所に申し立てることができる。自己破産は本人の経済的な新しい出発を図る積極的な制度で、自己破産して免責を受けると借金を返さなくてよくなり、経済的に非常に楽になる。200万円の借金も1億円の借金も自己破産すればなくなる。また、自己破産すると、借金の取り立てから解放される。さらに、弁護士に依頼して自己破産する場合には、弁護士介入通知により依頼後まもなく取り立てが止まる。
「これはまあそのとおりです。そのとおりだからそのように書いているんだと思います。」

 自己破産の申し立てをしても破産宣告後の給料は原則としてすべて自分で自由に使える。海外旅行もできる。自己破産したことは戸籍謄本や住民票には載らない。通常は近所の人や勤め先に知られない。自己破産したからといって会社は本人を解雇できない。子供の就職や結婚の障害にはならない。選挙権もなくならない。自己破産しても実際には困ることはほとんどないので、借金の返済ができなくなった場合には積極的に自己破産を検討してみてはどうかと提言されている。
「むやみに勧めるのはどうかという問題もありますが,借金をかかえたまま家族や友人に迷惑をかけまくったり,犯罪に走ったり自殺したりする人もいますから,それよりは自己破産の方がずっとましでしょうね。」

罪悪感でリスクを背負うのは市民。達成感を得るのは弁護士。
 自己破産をして、実際に困ることはほとんどないのだとすると、偽装破産をしたら、得だという考え方もできる。ただし、弁護士に支払う費用を考えに入れておかなくてはならない。だが、実質上、得であったとしても、偽装するために虚偽の書類を裁判所に提出したことは、犯罪行為である。
「何を偽装と言うかの問題ですね。実際に借金がないのにあると言ったのであれば偽装かも知れませんが,実際に借金があるのであれば偽装ではありません。実際に偽装めいたものが問題になるのは財産隠しですが,これは当然犯罪(詐欺破産罪)になりますし,弁護士も裁判所も財産関係の書類はチェックしているので,そう簡単に財産隠しができるわけではありません。」

つまり、市民が偽装破産すると、弁護士に着手金と報酬金を支払ううえ、犯罪行為の事実に対して、罪悪感という心理的リスクを背負うことになるであろう。一方、弁護士は、市民からの着手金と報酬金が支払われることにより、弁護士職を全うしたことに対する達成感を得ることになる。そうであれば、偽装破産して、得するのは弁護士だ。【了】
「このへんになると,意味がよく分かりません。自己破産で借金の支払いを免れたのであれば,


パブリック・ジャーナリスト 渡辺 直子【兵庫県】
この記事に関するお問い合わせ先:public-journalism@livedoor.net
<引用終わり>

 さらに続編もあるようですので,こちらも引用します。

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1499195/detail

偽装破産!破産管財人って、弁護士?
【PJニュース 11月20日】- 自己破産は借金超過で苦しんでいる人を救済し、市民に、再び立ち直るチャンスを与えるために国が作った制度である。国が善良な市民のための救済措置として制定されている制度を悪用し、借金を返済したくないために、自己破産の申し立てを起こす市民もいるという。市民から、自己破産(偽装破産)の申し立てを依頼された弁護士は、市民の代理人となり裁判所に自己破産申立書を提出することになる。

 弁護士から、自己破産の申し立てを受けた裁判所は、申し立てが適法にされているかどうかを審理し、書面上、市民が借金を返済できないのだと判断した場合には、破産宣告をすることになる。裁判所の破産宣告により、破産手続きが終了し、弁護士は、免責手続きに入る。免責手続きとは、裁判所に、市民が借金を払わなくてもよいと決定してもらい、市民としての返済責任を免除してもらおうとする手続である。その手続きには、破産管財人が加わる場合があるという。そもそも、破産管財人とは、誰が、誰を、いつ、選出するのかお知らせしよう。

免責手続き
 破産手続きが終わると免責手続きに入る。免責の申立てをすると、2-3カ月後に裁判所から呼び出しがあり、裁判所では、ギャンブルをやりすぎていないか、浪費をしていないかなどの免責不許可事由について聞かれるという。免責不許可事由がなければ、裁判所は1ー2カ月後に免責決定を出すとされている。
「たまに呼び出されないこともありますが。」

免責不許可事由とは
 免責不許可事由とは、例えば、ブランドものの高級腕時計を買うなど無駄遣いをした場合、競馬や競輪などのギャンブルにお金を使った場合、裁判所に提出した書類に嘘がある場合、はじめから返せないと分かっていながら貸主をだまして借金していた場合などには、裁判所の免責決定が下りないと破産法で制定されているもの。
「現在は,免責不許可事由に該当する場合であっても,裁判所の裁量により免責が認められることは破産法の明文で規定されています。」

免責不許可事由があっても、免責される場合がある
 ところが、免責不許可事由があっても必ず免責されないわけではなく、免責不許可事由がある場合でも、裁判所の裁量で免責されるケースもあるという。さらに、免責不許可事由がある場合でも、裁判所は本人の誠実さを知るために破産管財人を選任して免責を許可できるかどうかを調査させる権限があるという。破産管財人に、市民の誠実な人柄が認められると、破産管財人は、「免責相当」という意見を書いてくれることもあるという。この「免責相当」という意見があればほとんどのケースで免責になるそうである。免責決定が確定すれば、借金を返さなくてよくなる。
「まあ,これはそのとおりですね。」

偽装破産の免責手続きには、破産管財人の存在が不可欠ということ
 裁判所に免責相当と認められるためには、市民の誠実な人柄を認めてくれる破産管財人の存在が不可欠だということだ。市民と弁護士が結託して、裁判所に偽装破産申請を起こした時点で、市民と弁護士は、裁判所を欺き、社会人として、不誠実な行動を起こしている。だが、その事実を知る由もない破産管財人は、市民を誠実だと誤認して、免責相当と認めることになるであろう。
「何をもって偽装破産としているのか分かりませんが,財産隠しなどをしているのであれば,いくらなんでも裁量免責は認められませんし,財産調査などに破産者が協力しない場合にも免責は認められません。」

破産管財人は、弁護士を裁判所が選出するもの。だが、例外もあり
 破産事件における破産管財人は、原則として、裁判所が、弁護士を破産管財人として、選出することになっている。だが、例外もあり、破産申立てを申請した弁護士が、知り合いの弁護士を、自身が起こした破産事件の破産管財人として、推薦する場合もあるという。
「東京地裁ではまずそのようなことはありませんが,超田舎の裁判所に行くと破産管財人のなり手がいないため,管財事件になる破産事件を申し立てるには自分で管財人の候補者を連れてこなければならなかったり,弁護士が1件管財事件を申し立てると次の事件はその弁護士が破産管財人にならなければならないという暗黙のルールが成立していたりする裁判所はあるようです。」

 記者は、かつて、ある破産事件を追い、裁判所職員に、破産管財人の選出方法について、取材したことがある。裁判所職員の話によると「破産事件を申し立てた弁護士が、破産管財人を選出した方が、いろいろ内情が分かり合え、裁判の進行がスムーズなのです。弁護士からの申出があれば、破産管財人は、弁護士の知り合いの弁護士が選出される事例は、よくあることです」との説明であった。【了】
「これはあくまで田舎の話でしょうね。田舎の方に行くと,ある裁判所の管内で開業している弁護士が10人足らずくらいしかいなくて,当然全員が知り合いですから,管財人として全く面識のない弁護士を立てろという方が無理でしょう。」

パブリック・ジャーナリスト 渡辺 直子【兵庫県】
<引用終わり>

 この渡辺直子さんという人,破産事件についてものすごい偏見を持っているようです。自己破産で知り合いに借金踏み倒された経験でもあるのでしょうか。
 書いていることは一部当たっているところもありますが,「偽装破産」の定義自体がはっきりせず,普通に払えないほどの借金を抱えて自己破産する人を偽装破産と決めつけているようにも読めますし,記事の主たる目的(弁護士費用が借金額より多い,破産管財人が知り合いなど)とする部分は,十分な取材に基づかず筆者の妄想で書かれている観があり,弁護士と破産制度に対する誹謗中傷を目的とした記事であるといわざるを得ません。
 パブリック・ジャーナリストというのは,ライブドアニュースで一般の人から記事を公募しているようですが,一般の人から記事を募集すると,マスコミなどが見落としていた視点からの記事がでてくるという利点もある一方で,このような質の悪い記事も出回るおそれがあるということに留意すべきでしょう。

2 コメント

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Unknown (PINE)
2005-11-22 23:00:51
個人破産で成功報酬とる弁護士なんて、いるの?
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個人破産事件の報酬金 (黒猫)
2005-11-25 13:22:00
PINEさん,コメントありがとうございます。

個人破産事件では,報酬金を取らない弁護士も増えていますが,2002年度の日弁連アンケートによると,報酬金を取らないという回答は全体の51,6%にとどまっており,なお半数近くの弁護士は報酬金を取っていることになります。ちなみに黒猫のオリジナルの事務所も取っています。

ただ,上記アンケートは3年前のものであり,現在では報酬金を取っている事務所がさらに減っている可能性もありますね。
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