最近まで,極度の不眠症に悩まされてきましたが,一昨日枕の高さを調節してみたら,一転してよく眠れるようになりました。枕って大事なんですね。
ところで,東弁の『LIBRA』6月号と一緒に送られてきた『関弁連会報』99号では,「司法修習制度の変更司法修習生の増員と各会の取り組み」というテーマで,所属単位会(関東弁護士会連合会には,東京三会と関東十県の弁護士会が所属しています)からの報告が載せられていますが,その中身をみると,これはブログで紹介しないわけにはいかないな・・・というような内容でした。以下,その概略について紹介します。
1 各弁護士会の指導体制
司法修習生の人数は,司法試験合格者の増加に伴い年々増加しており,当然ながら各単位会ごとの割り当て人数も増加しているわけですが,司法修習生の増加に伴い,指導担当弁護士の確保に頭を悩ませている単位会が増えているようです。
以下,数例を挙げてみます。
・東京弁護士会全体では,2007年末現在,約5500人の弁護士が登録しているが弁護修習の指導担当弁護士として,積極的に取り組んでゆくことのできる人はそれほど多くない。第60期及び第61期の各指導担当弁護士約250人を何とか確保できたというのが実情である。都会ゆえのスペース不足,事件の偏り,刑事事件取扱の減少等々,最近の傾向からすると,司法修習生を受け入れて一般事件を中心として充実した弁護修習が実施できる法律事務所はそれほど多くない。(東弁)
・当会の会員数は,現在3400名を超えているが,それでも,これまで毎年130名近くに上る指導担当弁護士の確保に四苦八苦しているのが実情である。当会では,平成17年度より,特別な事情で修習生の指導ができないとする会員を除き,原則として,7年以上の法曹経験を有し,かつ,弁護士経験5年以上の満70歳未満の全会員を指導担当者名簿に登載することとした(今のところ,経験年数をさらに短縮することは考えていない)。そして,名簿順に指導担当の依頼を行っているが,「事務所のスペースが狭い」,「専用の机がない」,「修習生にふさわしい事件がない」,「忙しい」,「指導する意思も能力もない」など,様々な理由により,拒絶されるケースが実に多いのである。後進法曹の指導は公益活動の一環であり,弁護士としての義務でもあると説き,無理を承知でお願いしているが,期限ぎりぎりまで指導担当の決まらないことが常態化してしまっている。(中略)なお,今後の課題として,指導担当者の員数の確保のほか,その質をどの様にして維持するか(修習生から指導弁護士に対するクレームが寄せられることもある),研修の実施の必要性等が俎上に上っているが,更なる負担となるため,指導担当者の理解が得られるか,頭が痛い。(二弁)
・裁判所と検察庁の受入人数に制限があるため,合格者増に比例しての大幅な増加はないが,個別指導担当の弁護士の確保は結構大変であった。新61期については,当初の予定は119名であったところ,合格者が予定より少なく,割り当てが108名に減ったため何とか確保できたという感じである。(横浜)
・埼玉弁護士会では,従来司法修習生にアンケートを実施し,その希望するタイプの事務所に配属するよう努力してきたが,もはやそのようなことを行う余裕はなく,司法修習委員会側で一方的に配属事務所を決めることにした。(中略)また従来は弁護士経験10年以上の弁護士に指導担当をお願いしてきたが,それではまかないきれないので,7年以上の経験者に変更した。それでも新61期については,現在なお最終の班については若干名配属先が決まっていない実情にある。(埼玉)
・従前,指導担当弁護士の資格要件として,弁護士登録満8年経過していることを必要としておりましたが,平成18年度からこれを7年に変更致しました。また,かつては,同一事務所に複数の弁護士が所属している場合であっても,複数の司法修習生を配属することは実施していませんでしたが,現行60期から複数の弁護士が所属している一部の事務所について2名の司法修習生を配属するようになりました。(千葉)
・当会において,修習指導担当弁護士の正式な資格要件が定まっているわけではない。十年以上前には,弁護士登録後十年を経過した弁護士が,期の古い順に従って,修習生を担当するという慣習であった。
しかし現在は,修習生を担当している弁護士の内,もっとも期の若い弁護士は50期であり,弁護士登録後10年経つか経たないかというくらいの弁護士が指導担当となっている。実質的に副会長を経験した後は,順に修習生を担当するという慣習ができあがりつつある。(中略)さらには,そろそろ免除してもらいたいという申し出があるにもかかわらず,20期代の前半の弁護士にも指導担当を受け持ってもらっている状況である。(中略)今後,修習生が現在の人数枠よりさらに多く配属される事態になれば,弁護士登録年数とは無関係に,副会長経験者はもちろんのこと,さらに多くの各支部の弁護士に指導担当を割り当てざるを得ない。(水戸)
・修習生数の増加により,従前,長野地裁本庁の法律事務所においてのみ受け入れていた弁護修習を,57期からは上田支部管内の法律事務所でも2名(新61期からは3人)受け入れるようになり,59期からは松本支部管内の事務所でも3人(現行60期からは5人)を引き受けるようになった。
(中略)司法研修所からは通勤費として普通運賃相当額しか支給されないので,長野県弁護士会で,新幹線「あさま」自由席相当額と,特急「しなの」自由席相当額を負担し,上田2人,松本5人の60期では,合計で約100万円となっています(当会の一般会計における支出の規模は5000万円弱です)。(中略)地方の場合,普通電車が2時間に3本くらいしかないこと,通勤時間などもあって,支部修習を避けたいと思っている修習生にインセンティブを与えたり,修習生間の実質的公平を図る目的から,現在のところ,普通運賃を超える分は,弁護士会の負担としています。(長野)
紹介しなかった単位会の報告も概ね似たりよったりで,どこの単位会でも,司法修習生の引受人数は限界に近付いているようです。指導する能力も意思もないと明言している弁護士や,老齢ゆえ辞退を申し出ている弁護士にまで無理に指導担当をお願いせざるを得ない現状にも,果たして中身のある修習が出来ているのかという点において大いに問題があると思いますが,さらに人数が増えれば,指導担当弁護士の質の問題もさらに顕在化してくる可能性があります。
他の地方では,既に法曹増員反対決議を可決している連合会もありますが,このまま年間合格者数3000人を強行すれば,修習生の引受拒否・引受不能といった最悪の事態もあり得るでしょう。
2 修習生の質に対する感想
・新修習生は法科大学院から直接実務にやってくるため実務文書起案や実際の訴訟手続理解に不足するところが散見される。法科大学院設立の当初の理想は,法科大学院で前期集合修習終了程度の実務教育の導入まで済ませるというものであったが,実際にはそうなっていない。多くの新修習生たちは司法試験合格のための実体法,訴訟法の試験勉強に大変なエネルギーを割いているのだから無理はない。ただ,法科大学院で導入されているソクラテス学習方式などは一定の成果を上げているようで,新修習生たちは,討論,発表などについては,比較的慣れているというのが実務指導にあたった先生方の大方の感想である。
そして,ソクラテス学習方式や受験では経験できない実務文書起案,特に訴状,準備書面,弁論要旨などの起案についての訓練が不足しているとの感想が出されている。(東弁)
・司法修習生に聞いてみると,法科大学院では判決あるいは準備書面の起案の機会が極めて少ない実情にある。しかも私が見聞した範囲内のことであるが,法科大学院で刑事関係の起案をした経験のある司法修習生は皆無であった。そして実務修習中に起案の機会の不足を補うにしても期間が2ヶ月であるから,補うには限度がある。(一弁)
・平成19年度の二回試験不合格者は,現60期で71名,新60期で76名(いずれも再チャレンジ組を含む)という人数に達している。見聞するところによると,「そもそも起案が日本語になっていない」とか,「法律知識がない」とかいうことが,二回試験不合格の理由であるようである。仮に,このようなことが事実とすると,もはや二回試験の問題ではなく,司法試験において,白表紙起案をさせるとか,法科大学院教育を抜本的に見直すというような対策を考える必要があると思われる。(一弁)
・当会に配属された新修習生の多くは,現行と比較し顕著にレベルが劣るということはない。しかし,全体的にみて,民・刑事の基本法に関する体系的知識と理解に不十分な者が見受けられるし,起案能力に乏しい者も目立つ(多くの委員から「弁は立つが,筆は立たない」との指摘がなされている)。そのような意味で,新司法試験の本来の合格水準に必ずしも達していない者が,合格者枠により合格しているのではないかとの危惧さえ抱くこともある。(二弁)
・当会では新61期生がこれまでの現行の修習生と比較してどうかという議論はまだなされていない。
しかし,日弁連で行われた地弁協,弁修協などにおける研修所教官の話を聞くと大体同じ内容であり,非常に参考になる。概ね,①民法・刑法の実体法の知識がない修習生が増えている。だから,記録から事実を拾えないし,試験では救いようのない答案を書いてしまう。予備校のテキストを使っていて基本書を読まないこと,以前のような択一の勉強をしなくなったことが原因のように思われる。②法科大学院で鍛えられているせいか話すことはうまいが,文章は下手である。主語と述語が対応していないものも多い。
これを個別弁護修習でどのように指導していくかであるが,やはり起案を多く書かせることと,実体法の知識が足りないと思われる場合には二回試験でも,実務についてからも命取りになりかねないことを忠告して勉強させるということになろうか。(横浜)
ここでは紹介していない単位会の感想も,言及されている内容は概ね異口同音で,話すことはできても起案は全然だめ,「弁は立てども筆は立たず」というのが新61期に対する感想のようです。
実際,弁護士の仕事は,話すことが決定的に重要になる場面はあまりなく,とにかく法律文書を起案することが主なものですが,そこへ「弁は立てども筆は立たず」という新人が入ってきても,ものの役に立たないことは言うまでもありません。仮に採用されても,仕事もできないくせに口答えだけはうるさいと言われて,短期間でクビになる人も少なくないでしょう。
そもそも,平成19年の新司法試験については,考査委員が司法試験委員会のヒアリングで「合格すべき水準に達していない答案の割合が過半数を上回っており,実務修習を受けるに至る能力を備えていないような合格者が多数出てしまうのではないか,こういう厳しい意見も複数あった。」「文書が箇条書きのようにぶつ切りで,論理に脈絡のないものもあり,また,誤字が非常に多かったり,極めて読みにくい略字を使ったり,あるいは走り書きになっている答案もあった。およそ他人に読んでもらう文書を書くという試験以前の常識に欠けている答案が少なくないと感じており,このことは非常に大きな問題である。」などとコメントしているくらいですから,政府目標を強引に「達成」するために,本来実務修習を受ける能力のなさそうな人も敢えて新司法試験に合格させてしまっているのが実情であり,修習指導担当者が頭を抱えるような出来の悪さも,ある意味では当然といえます。
そして,法科大学院による実務教育(前期修習の代替)は,今のところ空手形に等しい状態ですから,例えば二弁で借家における賃料不払い・明渡請求の事件記録を修習生に交付し,催告書,訴状,和解条項の即日起案及び保全手続き・執行手続きの小問に対する回答を起案させたところ,「民事保全に関し,明渡執行を前提とした占有移転禁止の仮処分に思いが及ばなかった者が数名おり,また,20万円程度の未払賃料につき仮差押の申立をすると回答した者が相当数いた。また,和解条項の起案については,執行力のことを考えない条項を起案した者が目立った。」などという結果になっています。
これが,前期修習の初めの段階であれば,まだ今後の修習で挽回できるという望みも持てるのですが,そもそも前期修習はない,弁護実務修習も2ヶ月のみ,後期修習2ヶ月はもっぱら二回試験対策ということになると,こういう非常識な実務知識レベルのまま弁護士になってしまう人が相当数出てくる,ということを意味しています。
最近,日弁連(?)では法曹の質について議論するシンポジウムを開くなどと言っていますが,現在の状態は本当に市民にとって必要な法曹の質とは何かなどと議論する以前の問題で,社会のニーズに応える前提となる最低限の法律知識・実務知識の習得すらもおろそかになっているというのが,今日における法曹の「質」の問題になってしまっているのです。
弁護士会の広報誌にさえ,新しい法曹養成制度に対する関係者の悲痛な叫びが公然と書かれるようになった今日において,弁護士業界自体の浮沈を決しかねない法曹の「質」の問題について,今なおろくな答えを出そうとしない現在の日弁連執行部は,弁護士の業界団体としての役割を果たしているとはとても言えないでしょう。
追記:このブログでは,新司法試験出身の修習生や新人弁護士さんたちをむやみに攻撃するつもりはありませんし,知識レベルが水準に達していないというのも,本人の問題というよりは法曹養成制度上の欠陥に起因するものであると考えていますが,該当する方々については,自分たちがこのように言われるくらいの過酷な状況に置かれているということを十分自覚された方がよいと思います。
そうしなければ,法曹界では絶対生き残って行けませんから。
ところで,東弁の『LIBRA』6月号と一緒に送られてきた『関弁連会報』99号では,「司法修習制度の変更司法修習生の増員と各会の取り組み」というテーマで,所属単位会(関東弁護士会連合会には,東京三会と関東十県の弁護士会が所属しています)からの報告が載せられていますが,その中身をみると,これはブログで紹介しないわけにはいかないな・・・というような内容でした。以下,その概略について紹介します。
1 各弁護士会の指導体制
司法修習生の人数は,司法試験合格者の増加に伴い年々増加しており,当然ながら各単位会ごとの割り当て人数も増加しているわけですが,司法修習生の増加に伴い,指導担当弁護士の確保に頭を悩ませている単位会が増えているようです。
以下,数例を挙げてみます。
・東京弁護士会全体では,2007年末現在,約5500人の弁護士が登録しているが弁護修習の指導担当弁護士として,積極的に取り組んでゆくことのできる人はそれほど多くない。第60期及び第61期の各指導担当弁護士約250人を何とか確保できたというのが実情である。都会ゆえのスペース不足,事件の偏り,刑事事件取扱の減少等々,最近の傾向からすると,司法修習生を受け入れて一般事件を中心として充実した弁護修習が実施できる法律事務所はそれほど多くない。(東弁)
・当会の会員数は,現在3400名を超えているが,それでも,これまで毎年130名近くに上る指導担当弁護士の確保に四苦八苦しているのが実情である。当会では,平成17年度より,特別な事情で修習生の指導ができないとする会員を除き,原則として,7年以上の法曹経験を有し,かつ,弁護士経験5年以上の満70歳未満の全会員を指導担当者名簿に登載することとした(今のところ,経験年数をさらに短縮することは考えていない)。そして,名簿順に指導担当の依頼を行っているが,「事務所のスペースが狭い」,「専用の机がない」,「修習生にふさわしい事件がない」,「忙しい」,「指導する意思も能力もない」など,様々な理由により,拒絶されるケースが実に多いのである。後進法曹の指導は公益活動の一環であり,弁護士としての義務でもあると説き,無理を承知でお願いしているが,期限ぎりぎりまで指導担当の決まらないことが常態化してしまっている。(中略)なお,今後の課題として,指導担当者の員数の確保のほか,その質をどの様にして維持するか(修習生から指導弁護士に対するクレームが寄せられることもある),研修の実施の必要性等が俎上に上っているが,更なる負担となるため,指導担当者の理解が得られるか,頭が痛い。(二弁)
・裁判所と検察庁の受入人数に制限があるため,合格者増に比例しての大幅な増加はないが,個別指導担当の弁護士の確保は結構大変であった。新61期については,当初の予定は119名であったところ,合格者が予定より少なく,割り当てが108名に減ったため何とか確保できたという感じである。(横浜)
・埼玉弁護士会では,従来司法修習生にアンケートを実施し,その希望するタイプの事務所に配属するよう努力してきたが,もはやそのようなことを行う余裕はなく,司法修習委員会側で一方的に配属事務所を決めることにした。(中略)また従来は弁護士経験10年以上の弁護士に指導担当をお願いしてきたが,それではまかないきれないので,7年以上の経験者に変更した。それでも新61期については,現在なお最終の班については若干名配属先が決まっていない実情にある。(埼玉)
・従前,指導担当弁護士の資格要件として,弁護士登録満8年経過していることを必要としておりましたが,平成18年度からこれを7年に変更致しました。また,かつては,同一事務所に複数の弁護士が所属している場合であっても,複数の司法修習生を配属することは実施していませんでしたが,現行60期から複数の弁護士が所属している一部の事務所について2名の司法修習生を配属するようになりました。(千葉)
・当会において,修習指導担当弁護士の正式な資格要件が定まっているわけではない。十年以上前には,弁護士登録後十年を経過した弁護士が,期の古い順に従って,修習生を担当するという慣習であった。
しかし現在は,修習生を担当している弁護士の内,もっとも期の若い弁護士は50期であり,弁護士登録後10年経つか経たないかというくらいの弁護士が指導担当となっている。実質的に副会長を経験した後は,順に修習生を担当するという慣習ができあがりつつある。(中略)さらには,そろそろ免除してもらいたいという申し出があるにもかかわらず,20期代の前半の弁護士にも指導担当を受け持ってもらっている状況である。(中略)今後,修習生が現在の人数枠よりさらに多く配属される事態になれば,弁護士登録年数とは無関係に,副会長経験者はもちろんのこと,さらに多くの各支部の弁護士に指導担当を割り当てざるを得ない。(水戸)
・修習生数の増加により,従前,長野地裁本庁の法律事務所においてのみ受け入れていた弁護修習を,57期からは上田支部管内の法律事務所でも2名(新61期からは3人)受け入れるようになり,59期からは松本支部管内の事務所でも3人(現行60期からは5人)を引き受けるようになった。
(中略)司法研修所からは通勤費として普通運賃相当額しか支給されないので,長野県弁護士会で,新幹線「あさま」自由席相当額と,特急「しなの」自由席相当額を負担し,上田2人,松本5人の60期では,合計で約100万円となっています(当会の一般会計における支出の規模は5000万円弱です)。(中略)地方の場合,普通電車が2時間に3本くらいしかないこと,通勤時間などもあって,支部修習を避けたいと思っている修習生にインセンティブを与えたり,修習生間の実質的公平を図る目的から,現在のところ,普通運賃を超える分は,弁護士会の負担としています。(長野)
紹介しなかった単位会の報告も概ね似たりよったりで,どこの単位会でも,司法修習生の引受人数は限界に近付いているようです。指導する能力も意思もないと明言している弁護士や,老齢ゆえ辞退を申し出ている弁護士にまで無理に指導担当をお願いせざるを得ない現状にも,果たして中身のある修習が出来ているのかという点において大いに問題があると思いますが,さらに人数が増えれば,指導担当弁護士の質の問題もさらに顕在化してくる可能性があります。
他の地方では,既に法曹増員反対決議を可決している連合会もありますが,このまま年間合格者数3000人を強行すれば,修習生の引受拒否・引受不能といった最悪の事態もあり得るでしょう。
2 修習生の質に対する感想
・新修習生は法科大学院から直接実務にやってくるため実務文書起案や実際の訴訟手続理解に不足するところが散見される。法科大学院設立の当初の理想は,法科大学院で前期集合修習終了程度の実務教育の導入まで済ませるというものであったが,実際にはそうなっていない。多くの新修習生たちは司法試験合格のための実体法,訴訟法の試験勉強に大変なエネルギーを割いているのだから無理はない。ただ,法科大学院で導入されているソクラテス学習方式などは一定の成果を上げているようで,新修習生たちは,討論,発表などについては,比較的慣れているというのが実務指導にあたった先生方の大方の感想である。
そして,ソクラテス学習方式や受験では経験できない実務文書起案,特に訴状,準備書面,弁論要旨などの起案についての訓練が不足しているとの感想が出されている。(東弁)
・司法修習生に聞いてみると,法科大学院では判決あるいは準備書面の起案の機会が極めて少ない実情にある。しかも私が見聞した範囲内のことであるが,法科大学院で刑事関係の起案をした経験のある司法修習生は皆無であった。そして実務修習中に起案の機会の不足を補うにしても期間が2ヶ月であるから,補うには限度がある。(一弁)
・平成19年度の二回試験不合格者は,現60期で71名,新60期で76名(いずれも再チャレンジ組を含む)という人数に達している。見聞するところによると,「そもそも起案が日本語になっていない」とか,「法律知識がない」とかいうことが,二回試験不合格の理由であるようである。仮に,このようなことが事実とすると,もはや二回試験の問題ではなく,司法試験において,白表紙起案をさせるとか,法科大学院教育を抜本的に見直すというような対策を考える必要があると思われる。(一弁)
・当会に配属された新修習生の多くは,現行と比較し顕著にレベルが劣るということはない。しかし,全体的にみて,民・刑事の基本法に関する体系的知識と理解に不十分な者が見受けられるし,起案能力に乏しい者も目立つ(多くの委員から「弁は立つが,筆は立たない」との指摘がなされている)。そのような意味で,新司法試験の本来の合格水準に必ずしも達していない者が,合格者枠により合格しているのではないかとの危惧さえ抱くこともある。(二弁)
・当会では新61期生がこれまでの現行の修習生と比較してどうかという議論はまだなされていない。
しかし,日弁連で行われた地弁協,弁修協などにおける研修所教官の話を聞くと大体同じ内容であり,非常に参考になる。概ね,①民法・刑法の実体法の知識がない修習生が増えている。だから,記録から事実を拾えないし,試験では救いようのない答案を書いてしまう。予備校のテキストを使っていて基本書を読まないこと,以前のような択一の勉強をしなくなったことが原因のように思われる。②法科大学院で鍛えられているせいか話すことはうまいが,文章は下手である。主語と述語が対応していないものも多い。
これを個別弁護修習でどのように指導していくかであるが,やはり起案を多く書かせることと,実体法の知識が足りないと思われる場合には二回試験でも,実務についてからも命取りになりかねないことを忠告して勉強させるということになろうか。(横浜)
ここでは紹介していない単位会の感想も,言及されている内容は概ね異口同音で,話すことはできても起案は全然だめ,「弁は立てども筆は立たず」というのが新61期に対する感想のようです。
実際,弁護士の仕事は,話すことが決定的に重要になる場面はあまりなく,とにかく法律文書を起案することが主なものですが,そこへ「弁は立てども筆は立たず」という新人が入ってきても,ものの役に立たないことは言うまでもありません。仮に採用されても,仕事もできないくせに口答えだけはうるさいと言われて,短期間でクビになる人も少なくないでしょう。
そもそも,平成19年の新司法試験については,考査委員が司法試験委員会のヒアリングで「合格すべき水準に達していない答案の割合が過半数を上回っており,実務修習を受けるに至る能力を備えていないような合格者が多数出てしまうのではないか,こういう厳しい意見も複数あった。」「文書が箇条書きのようにぶつ切りで,論理に脈絡のないものもあり,また,誤字が非常に多かったり,極めて読みにくい略字を使ったり,あるいは走り書きになっている答案もあった。およそ他人に読んでもらう文書を書くという試験以前の常識に欠けている答案が少なくないと感じており,このことは非常に大きな問題である。」などとコメントしているくらいですから,政府目標を強引に「達成」するために,本来実務修習を受ける能力のなさそうな人も敢えて新司法試験に合格させてしまっているのが実情であり,修習指導担当者が頭を抱えるような出来の悪さも,ある意味では当然といえます。
そして,法科大学院による実務教育(前期修習の代替)は,今のところ空手形に等しい状態ですから,例えば二弁で借家における賃料不払い・明渡請求の事件記録を修習生に交付し,催告書,訴状,和解条項の即日起案及び保全手続き・執行手続きの小問に対する回答を起案させたところ,「民事保全に関し,明渡執行を前提とした占有移転禁止の仮処分に思いが及ばなかった者が数名おり,また,20万円程度の未払賃料につき仮差押の申立をすると回答した者が相当数いた。また,和解条項の起案については,執行力のことを考えない条項を起案した者が目立った。」などという結果になっています。
これが,前期修習の初めの段階であれば,まだ今後の修習で挽回できるという望みも持てるのですが,そもそも前期修習はない,弁護実務修習も2ヶ月のみ,後期修習2ヶ月はもっぱら二回試験対策ということになると,こういう非常識な実務知識レベルのまま弁護士になってしまう人が相当数出てくる,ということを意味しています。
最近,日弁連(?)では法曹の質について議論するシンポジウムを開くなどと言っていますが,現在の状態は本当に市民にとって必要な法曹の質とは何かなどと議論する以前の問題で,社会のニーズに応える前提となる最低限の法律知識・実務知識の習得すらもおろそかになっているというのが,今日における法曹の「質」の問題になってしまっているのです。
弁護士会の広報誌にさえ,新しい法曹養成制度に対する関係者の悲痛な叫びが公然と書かれるようになった今日において,弁護士業界自体の浮沈を決しかねない法曹の「質」の問題について,今なおろくな答えを出そうとしない現在の日弁連執行部は,弁護士の業界団体としての役割を果たしているとはとても言えないでしょう。
追記:このブログでは,新司法試験出身の修習生や新人弁護士さんたちをむやみに攻撃するつもりはありませんし,知識レベルが水準に達していないというのも,本人の問題というよりは法曹養成制度上の欠陥に起因するものであると考えていますが,該当する方々については,自分たちがこのように言われるくらいの過酷な状況に置かれているということを十分自覚された方がよいと思います。
そうしなければ,法曹界では絶対生き残って行けませんから。
日本人は喋りが下手な奴多いから。
検索したらひっかかりました。
新試験出身で2回試験を合格した人と、旧試験出身で2回試験を合格した人の実力を比較しないと意味がない。
新試験出身で2回試験を合格した人と、旧試験出身で2回試験を合格した人の実力を比較しないと意味がない。
そして、より多くの市民に被害を与えていくことが予想されます。質の悪い弁護士の絶対数が減ることはありません。
また、企業ならともかく、一生に一回頼むかどうかの一般市民に、良質な弁護士を選ぶことはできませんので、市場原理を持ち出しても仕方ないと思うのですが・・・・。
司法試験を通ったプライドからか、今の弁護士はタカビーなのが多くて嫌になるけど、絶対数が少ないため頼まざるを得ないのが現状でしょう。
新司法試験はそこまで難関じゃないので(馬鹿にしてるわけではないですよ)、そういった鼻につくプライドがない点がサービスの向上に繋がるのではないかと期待してます。
弁護士がそうやって紳士的でいられたのも、経済的にゆとりがあったからです。今後は目先の金銭的利益のために、脅迫、恫喝、有形力の行使等が頻発するようになるかも知れません。
そして、また筋の悪い事件の依頼をしてきますが、負い目のある弁護士は、依頼を断れなくなります。
このようにして筋悪弁護士が出来上がります。
筋悪弁護士は、最終的に弁護士資格を剥奪されるなどして、市場で淘汰されていくことになるのでしょうが、それ以上のスピードで筋悪弁護士が増加していくと思われます。
事実、そのような弁護士が増加していることは弁護士会でも問題になっています。
これも弁護士増員のおかげですね。
社会全体から見ると、由々しき状況だと思われます。
しかし、私個人としては、筋の悪い人(相手方)に弁護士がついてくれた方が事件処理が簡単になります。さすがに弁護士であれば、クライアントの所や弁護士事務所に怒鳴り込んできて暴れたりしませんからね。
そういった意味では、筋悪弁護士の増加は、社会秩序の維持に役立つ面もあるのかもしれません。
これも弁護士増員のおかげですね。
弁護士の競争が激しくなれば、依頼者の違法な依頼を断ることも困難になりますね。今後はそういう弁護士が増えると思います。現に、悪徳企業にも弁護士が付くことが多くなって、消費者センターも大変らしいです。これも弁護士増員のおかげですね。
学説や判例、法典自体もがフランスやらドイツやらアメリカのパクリ物、しかも極端な参入制限なんて韓国以下、中国並。
日曜の無料法律相談とか行ってみな。
俺はたまたま遭遇したんだけど、横暴な態度の弁護士が名前も名乗らずにおばあちゃんに説教たれてたから、思わず怒鳴ってやったわ。お前は一緒に物事を考えられないのかよって。
一方、うちの顧問弁護士に「利息制限法超過の請求書を送って」と頼んだら、そのまま送って、「払ってきたら儲けもんですな」なんて言ってたし。お前は依頼人の言いなりかよって思って、自分で相手方に訂正入れたわ。
法律知識の塊よりも、サービス業としての質を高めるのが先決。そのためには規制緩和して、踏ん反り返った勘違い弁護士の目を醒まさせん以外に方法ないよ。
国民は気持ちよく金を払いたいんだよ。
旧時代でも二回試験の不合格者はいたのにね。
旧も変わらないじゃねーか。
出来る奴は出来る、駄目な奴は駄目
それは、新も旧も一緒。
要は、その割合がどうなのかが問題。
そこには、あなたは触れていない。
だって、まだ分からないもんな(笑)
まぁ、長い目で見ろってこった。
司法修習のような徒弟的な後進育成制度はギルド社会でのみ維持できる例外的な制度ですかから、既に時代錯誤なものになりつつあると思われます。むしろ、私は、上の方の「税金で修習を受けた分は後進の育成ではなくて依頼者に対してよりよいサービスを提供することで還元すべき」という意見に全面的に賛成します。
そもそも、私たち弁護士が国民の側を向いてリーガル・サービスを提供しようとする場合、「打ち合わせに担当弁護士以外の第三者が同席してほしくない」という依頼者の希望は、企業であれ個人であれ、十分尊重されるべきではないでしょうか。本来、こういったインターン制度はインターンの人数が少なくて目立たないからこそ許容されるものですし、さらに言えば、今までの弁護士は司法修習生の同席を所与のものとして依頼者に説明していて事実上、同席拒否の機会をきちんと与えていなかったと思いますが、それは本当は芳しいものではないはずです。これからの弁護士と顧客との関係はそういう弁護士にとっての牧歌的な関係ではなくなっていくでしょう。
私は3000人時代では司法修習に変わる後進育成システムが求められると考えていますが、司法改革の趣旨からすると、それは競争による淘汰なのではないでしょうか?個人的には、ロースクール出身の弁護士の中には旧制度ではいないタイプの有能な弁護士もいて、その方たちはこの世界に新風を巻き起こしてくれるのではないか、と思っています。ただ、それは残念ながら新制度下の新人弁護士がみなこの仕事で食べていける、職にありつける、ということを意味するわけではないし、もしかしたら即独立して廃業する人・就職できずに転職する人が毎年、相当数、でてくるかもしれません。もちろん、旧制度の弁護士でも、当然、淘汰される人はでてくるでしょう。
それもまた、完璧な制度が存在しない以上、やむを得ないと思います。国民の選択、日本という国家の選択が、そういう新制度であることからすれば、既存の弁護士も新制度下の弁護士・修習生もまずはそういう時代に積極的に適応すべきではないでしょうか。(現時点で生じ始めている就職難や司法修習の機能不全、司法試験の合格率は結局のところ弁護士や修習生、法科大学院生側の問題であって、制度選択がサービスの利用者にとって正しいのか、間違っているのかはまだ分かりませんし、もししばらくたって間違っていることが分かったら、そのときに更に新たな制度にしていくよりないという気もします。)
指摘したら「きみ直しといて」だって。
酷いなー。
請求原因に記載されている意味が理解できず
とんちんかんな準備書面を書いています。
あーこわ。
自分たちがタダで教わっときながらそういうこと言うのはおかしい、ということですよ。この世界も世知辛い人間が増えたね。
人を見る前に「新」修習生であるというだけ拒否反応を示される先生方を見ると、
情けないやら悲しいやら。
いくら競争激化といっても、「新」すべてを敵視するのはいかがなものかと。
そんな幼稚な弁護士は少数だと思いたいですが。
地方修習も、就職活動のため、あまり勉強に身に入っていないようです。
合格者は1500人が限界だと思いますが、法科大学院制度を前提にする以上、それでは少ないでしょうし、難しい問題です。
何か、新制度出身の修習生には、本能的に、違和感を感じるのですね。
合格者3000人が必要ならば、法科大学院のようなお金も時間もかかるしろものよりも、司法書士試験と弁理士試験を統合した上、司法試験として、合格者3000人にした方が、いいのではないかと思います。
司法修習は、しょせん村落共同体の善意をあてにした制度でしょう。司法改革によって、良くも悪くも、法曹界の村落共同体性を崩壊させるわけですから、これからの司法修習は厳しい状況に直面すると思います。
そう考えてみると、「個々」の弁護士に「縁もゆかりもない後輩」に対する育成義務が課されるのもおかしな話かもしれません。むしろ、今後は、「修習の意思も能力もない」と言って断る方が真っ当な感覚になるのではないでしょうか・・・
むしろ後輩の育成は、事実上、修習生全体に対してではなく、新人弁護士に教育を施そうとするボス弁によって、厳しい就職活動をくぐり抜けた新人弁護士に対してのみなされる、というシステムに変わっていくのかもしれませんね。これも1つの「点」による選抜から「プロセス」による淘汰への流れかもしれませんが・・・
そういうことはもう必要ない、というのが司法改革なのでは。後進の指導をするような余力があるなら、その分顧客に還元すべきでしょう。それに、競争社会である以上は、新人も商売敵になるわけですから、既存の弁護士からただで教わることが当然という考え方も当然おかしいです。今後は、修習生も、給料をもらうのではなく、授業料を払って修習を受けることになるのではないかと思います。
5年前と昨年とでは、状況がかなり違っています。以前は、クライアントも「超難関の司法試験に合格された方ですから、是非勉強に役立てて下さい。」と仰って修習生の立会や記録閲覧に協力的でした。
しかし、企業系のクライアントの殆どに拒絶されてしまいます。
うちは企業系のクライアントが殆どなので、これでは修習生に申し訳ないと思い、今年から辞退させてもらいました。
①修習生から就職口の紹介を期待されること。以前なら、責任をもって就職口を斡旋できたのですが、もう無理です。責任がもてません。
②修習生のごく一部に、司法試験に合格したんだから弁護士会も指導担当弁護士も責任もってくれるんでしょ、的な態度を示す人がいること。これも責任が取れませんので。
③修習生のごく一部に、簡単になったんで司法試験受けましたと言って憚らない人がいること。私たちが扱う事件には、依頼人や相手方の人生がかかっています。中途半端な覚悟の方に、依頼人の事件や情報を開示することには、少なからず抵抗を覚えます。
要するに、文部科学省と大学の権益を偏重した大量合格制度により、技能の継承の土台が崩れているのです。これが国民の利益にそぐわないことは、いまさら言うまでもありません。
「指導する意思も能力もない」←弁護士辞めたほうがw
まあ要は面どくさいってことでしょうけど。
司法修習生3000人というと、判事が10数人、検事が10数人、実働弁護士が100人強の小規模庁であっても、少なくとも年間30~40人以上の修習生を送り込むことになるんですよね??
ただ、一番の問題は人数が多過ぎて、充実した修習が実施できないという点です。人数を従前の500~1000人程度に戻す必要性を痛感しています。
それぞれバラバラ。
司法試験改革は見事に失敗。
法曹養成の実績のない(というより人間養成の資格のない)文科省や大学教授にやらせたのが失敗ですね。
世が世なら切腹ものでしょう。教授どもは。
http://www.makura.co.jp/
法曹会全体がこんなご時世ですから,合理的な判断力のある優秀な大学生は法科大学院はおろか,司法を仕事にしようとは思わなくなるでしょうね。
数百万の授業料と3年間の勉強期間を法律に掛けるなら,中国に4年留学したほうがコストパフォーマンスいいのは明白ですから。