2月25日付けで書いた記事「61期以降の質は大丈夫か・・・?」については、ずいぶん多くのコメントが寄せられていますが、そのうち上から3番目と4番目のコメントに気になるところがあったので、引用します。
(3番目のコメント)
ロー生が遊んでいるって何の根拠があって言ってるんでしょうか。ロー生はかなり真剣に勉強していますよ。実績値で言えば、飲み会の数なんて1学期に10回くらいしかしてないですし、バイトだって週3回くらいしかしてません。
彼女がいてもデートなんて1週間に1回くらいしかしてない人が多いですし、クラスメイトの誕生会だって学期に10回くらいなもんですよ。
クリスマスだってオールしないで、終電で帰って翌日は勉強してます。
ロー生はかなり本気ですよ。就職した人と比べてほんと遊んでない。かなりマジですよ。
(4番目のコメント)
クラスが終って、夜7時とか8時まで自分の勉強を1日2時間も3時間もみんなちゃんとやってます。こんなに勉強してる大学院生なんてロー生くらいなもんじゃないでしょうか。
新しい法曹養成時代においては、従来の試験秀才を法曹にするのはやめたんです。社交性があって、初対面の人ともすぐ打ち解けられる人間的魅力を持ち、余暇には趣味をたしなみ、そういう人間こそが法曹にふさわしいという判断があって、試験で法曹をとるのは止めようということになったわけです。
事件は現場で起きています。丸暗記するのでは駄目なんです。もう古い試験秀才の時代は終ったんです。話が面白くて、人生経験豊富で、そういう人材になるには勉強はむしろ有害ですらあるわけです。その辺のことをロー生はよくわかってると思いますよ。
この2つのコメントは、文脈からしておそらく同じ人が連続投稿したものと思われますが、投稿者が冗談か皮肉の趣旨で書いたものか、それとも本気で書いたものか判断に苦しむところがあります。以下にポイントを列挙してみます。
1 飲み会等について
3番目のコメントに「飲み会の数なんて1学期に10回くらいしかしてない」「クラスメイトの誕生会なんて学期に10回くらい」といった記述がありますが、1学期に10回ということは、大体2週間に1回前後は、飲み会やらクラスメイトの誕生会やらをやっているということになります。
黒猫が司法試験の受験生だった頃の常識で考えれば、2週間に1度も飲み会に行くなんて、真面目に司法試験を受けようとする人のやることではないですね。黒猫自身、受験生時代に飲み会などに行った記憶はほとんどありません。クラスメイトの誕生会なんて論外です。
2 バイトについて
同じく「バイトだって週3回くらいしかしてません」という記述がありますが、実際旧試験時代にもアルバイトをしながら受験勉強をしている人は相当数いたものの、それは通常受験勉強中に大学を卒業してしまい、親などに迷惑をかけないためにアルバイトをしながら受験勉強を続けていたという人だと思います。
法科大学院に通いながら、週3回もアルバイトをしていては、勉強に回せる時間はどう考えてもたかが知れているでしょう。
3 彼女とのデートについて
同じく「彼女がいても1週間に1度くらいしかデートしてない人が多い」という記述がありますが、黒猫の同期の修習生には、たしかに受験時代から彼女がいたという人もいたものの、そういう人は大抵合格まで5~6年以上かかっている人であり、彼女と付き合いながら司法試験に短期合格したという人の話はあまり聞いたことがありません。
そもそも、受験勉強中に彼女を作ること自体、真面目に勉強する気があるのかと白眼視されても仕方のない状況だったように思います。
4 クリスマスについて
同じく「クリスマスについてもオールしないで、終電で帰って翌日は勉強してます」という記述がありますが、旧司法試験の受験生については、早稲田セミナーの成川学院長の言葉を借りれば「受験生には盆も正月もない」というのがむしろ常識で、クリスマスの日に終電まで遊んでいるなんて、一体何を考えているのかと思います。
5 勉強について
4番目のコメントで、「クラスが終わって、夜7時とか8時まで自分の勉強を1日2時間も3時間もみんなちゃんとやってます」という記述がありますが、黒猫の受験時代は、昼間は大学の授業に出て、夕方になると予備校の授業や答練を受け、その後自分の勉強を午前2時か3時くらいまでやるなんてことはざらにありました。
他学部の院生がどのくらい勉強しているかは、大学によっても学部によってもかなり実情は異なるでしょうから一概に比較は出来ませんが、少なくとも難関の旧司法試験を通過してきた現役の法曹実務家の目から見れば、そんなに大したことやってないじゃないか、という印象になると思いますね。
このような具体例を挙げて、「ロー生はかなり本気ですよ」などと言われても、少なくとも黒猫には全く説得力が感じられません。むしろ黒猫の感覚からいえば、「勉強は適当にやって後は遊び呆けている」と評すべき学習態度だと思います。
6 4番目のコメントの第2段落以降について
それ以前の記述について、ロー生は勉強しているなどと一生懸命主張しておきながら、勉強はむしろ有害だなとというのはそもそも論理矛盾ではないかと思いますが、そもそもこの人は、法科大学院制度の設置趣旨について、勝手な独自の解釈を施しているだけだと思われます。
法科大学院制度導入の元になった司法制度改革審議会の意見書では、「21世紀の司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等の基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力等が一層求められるものと思われる。」という記述があり、むしろ専門分野や外国法に至るまで幅広く勉強しろと言っているのであって、勉強が有害だなどということは一言も言っていません。
いくら社交性があって話が面白く、人生経験が豊富であったとしても、法律の専門家としての知識や能力が十分に備わっていなければ、法律の専門家とはいえません。いくら社交的で話が面白く魅力のある人でも、専門的な医学の知識や技能を持たない人をまともな医師とは呼べないのと同じことです。
そのような態度で法科大学院を卒業し法曹実務の現場に出ても、法曹実務家にも依頼者にもまともに相手にされないのは目に見えています。
旧司法試験の合格者の中には、勉強期間2~3年程度という短期合格者もいますが、5~6年ないしそれ以上勉強してやっと合格したという人も結構います。
合格までかなりの長期間を要した人は、おそらく何か勉強のやり方に問題があったのか、それほど根を詰めて勉強できない性格だったのか、あるいは何か資質上の問題があったのではないかと思われますが、法科大学院・新司法試験のルートは、旧司法試験における短期合格者並の勉強期間で、少なくとも旧試験合格者以上の実力を身につけることが制度上要請されています。常人並の勉強の仕方では、そのようなことは到底不可能なはずです。
実際のロースクール生がどの程度勉強しているかは、大学によってもかなり事情は異なるでしょうし、個人差も大きいでしょうから一般論としては何ともいえませんが、もし冒頭に引用したコメントと同じくらいの勉強で「真剣に勉強している」と本気で思っているロースクール生がいるとしたら、その人は本当の馬鹿であり、仮に就職先が見つからなくても自業自得と言うほかはないと思われます。
(3番目のコメント)
ロー生が遊んでいるって何の根拠があって言ってるんでしょうか。ロー生はかなり真剣に勉強していますよ。実績値で言えば、飲み会の数なんて1学期に10回くらいしかしてないですし、バイトだって週3回くらいしかしてません。
彼女がいてもデートなんて1週間に1回くらいしかしてない人が多いですし、クラスメイトの誕生会だって学期に10回くらいなもんですよ。
クリスマスだってオールしないで、終電で帰って翌日は勉強してます。
ロー生はかなり本気ですよ。就職した人と比べてほんと遊んでない。かなりマジですよ。
(4番目のコメント)
クラスが終って、夜7時とか8時まで自分の勉強を1日2時間も3時間もみんなちゃんとやってます。こんなに勉強してる大学院生なんてロー生くらいなもんじゃないでしょうか。
新しい法曹養成時代においては、従来の試験秀才を法曹にするのはやめたんです。社交性があって、初対面の人ともすぐ打ち解けられる人間的魅力を持ち、余暇には趣味をたしなみ、そういう人間こそが法曹にふさわしいという判断があって、試験で法曹をとるのは止めようということになったわけです。
事件は現場で起きています。丸暗記するのでは駄目なんです。もう古い試験秀才の時代は終ったんです。話が面白くて、人生経験豊富で、そういう人材になるには勉強はむしろ有害ですらあるわけです。その辺のことをロー生はよくわかってると思いますよ。
この2つのコメントは、文脈からしておそらく同じ人が連続投稿したものと思われますが、投稿者が冗談か皮肉の趣旨で書いたものか、それとも本気で書いたものか判断に苦しむところがあります。以下にポイントを列挙してみます。
1 飲み会等について
3番目のコメントに「飲み会の数なんて1学期に10回くらいしかしてない」「クラスメイトの誕生会なんて学期に10回くらい」といった記述がありますが、1学期に10回ということは、大体2週間に1回前後は、飲み会やらクラスメイトの誕生会やらをやっているということになります。
黒猫が司法試験の受験生だった頃の常識で考えれば、2週間に1度も飲み会に行くなんて、真面目に司法試験を受けようとする人のやることではないですね。黒猫自身、受験生時代に飲み会などに行った記憶はほとんどありません。クラスメイトの誕生会なんて論外です。
2 バイトについて
同じく「バイトだって週3回くらいしかしてません」という記述がありますが、実際旧試験時代にもアルバイトをしながら受験勉強をしている人は相当数いたものの、それは通常受験勉強中に大学を卒業してしまい、親などに迷惑をかけないためにアルバイトをしながら受験勉強を続けていたという人だと思います。
法科大学院に通いながら、週3回もアルバイトをしていては、勉強に回せる時間はどう考えてもたかが知れているでしょう。
3 彼女とのデートについて
同じく「彼女がいても1週間に1度くらいしかデートしてない人が多い」という記述がありますが、黒猫の同期の修習生には、たしかに受験時代から彼女がいたという人もいたものの、そういう人は大抵合格まで5~6年以上かかっている人であり、彼女と付き合いながら司法試験に短期合格したという人の話はあまり聞いたことがありません。
そもそも、受験勉強中に彼女を作ること自体、真面目に勉強する気があるのかと白眼視されても仕方のない状況だったように思います。
4 クリスマスについて
同じく「クリスマスについてもオールしないで、終電で帰って翌日は勉強してます」という記述がありますが、旧司法試験の受験生については、早稲田セミナーの成川学院長の言葉を借りれば「受験生には盆も正月もない」というのがむしろ常識で、クリスマスの日に終電まで遊んでいるなんて、一体何を考えているのかと思います。
5 勉強について
4番目のコメントで、「クラスが終わって、夜7時とか8時まで自分の勉強を1日2時間も3時間もみんなちゃんとやってます」という記述がありますが、黒猫の受験時代は、昼間は大学の授業に出て、夕方になると予備校の授業や答練を受け、その後自分の勉強を午前2時か3時くらいまでやるなんてことはざらにありました。
他学部の院生がどのくらい勉強しているかは、大学によっても学部によってもかなり実情は異なるでしょうから一概に比較は出来ませんが、少なくとも難関の旧司法試験を通過してきた現役の法曹実務家の目から見れば、そんなに大したことやってないじゃないか、という印象になると思いますね。
このような具体例を挙げて、「ロー生はかなり本気ですよ」などと言われても、少なくとも黒猫には全く説得力が感じられません。むしろ黒猫の感覚からいえば、「勉強は適当にやって後は遊び呆けている」と評すべき学習態度だと思います。
6 4番目のコメントの第2段落以降について
それ以前の記述について、ロー生は勉強しているなどと一生懸命主張しておきながら、勉強はむしろ有害だなとというのはそもそも論理矛盾ではないかと思いますが、そもそもこの人は、法科大学院制度の設置趣旨について、勝手な独自の解釈を施しているだけだと思われます。
法科大学院制度導入の元になった司法制度改革審議会の意見書では、「21世紀の司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等の基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力等が一層求められるものと思われる。」という記述があり、むしろ専門分野や外国法に至るまで幅広く勉強しろと言っているのであって、勉強が有害だなどということは一言も言っていません。
いくら社交性があって話が面白く、人生経験が豊富であったとしても、法律の専門家としての知識や能力が十分に備わっていなければ、法律の専門家とはいえません。いくら社交的で話が面白く魅力のある人でも、専門的な医学の知識や技能を持たない人をまともな医師とは呼べないのと同じことです。
そのような態度で法科大学院を卒業し法曹実務の現場に出ても、法曹実務家にも依頼者にもまともに相手にされないのは目に見えています。
旧司法試験の合格者の中には、勉強期間2~3年程度という短期合格者もいますが、5~6年ないしそれ以上勉強してやっと合格したという人も結構います。
合格までかなりの長期間を要した人は、おそらく何か勉強のやり方に問題があったのか、それほど根を詰めて勉強できない性格だったのか、あるいは何か資質上の問題があったのではないかと思われますが、法科大学院・新司法試験のルートは、旧司法試験における短期合格者並の勉強期間で、少なくとも旧試験合格者以上の実力を身につけることが制度上要請されています。常人並の勉強の仕方では、そのようなことは到底不可能なはずです。
実際のロースクール生がどの程度勉強しているかは、大学によってもかなり事情は異なるでしょうし、個人差も大きいでしょうから一般論としては何ともいえませんが、もし冒頭に引用したコメントと同じくらいの勉強で「真剣に勉強している」と本気で思っているロースクール生がいるとしたら、その人は本当の馬鹿であり、仮に就職先が見つからなくても自業自得と言うほかはないと思われます。
実務では、常時、数十件の事件について事情聴取し、分析し、調査し、対策を練り、起案し…という作業を繰り返します。医師と違って分野の限定がなく、(表向きは)刑事事件からM&Aまで何でも扱うので、新しい分野の事件は一から勉強しなければなりません。しかも、依頼人は当然として、その家族や相手方の行動まで理解してよりよい結論を得ようとすれば、時間はいくらあっても足りません。ですから、丸暗記と言われようと、基本的な法律知識などは身体に叩き込んで、いつでも使える状態にセットアップしておかなければならないのです。
したがって、人の人生を左右する可能性がある仕事に就く以上、「豊かな人間性」などという抽象的な言葉に踊らされることなく、しっかりと基礎を積んでもらいたいものです。
黒猫先生がおっしゃっていることは、多くの法曹関係者が口にこそださねど内心思っていることだと思います。
>ツカエナイ人間を含めて自分らより数段レベルが落ちる奴らが大量にウジャウジャ出てきたってね痛くも痒くもないよ。まじめな話。なんの影響もないと
それはどうかなと思いますが。レベルが落ちる奴らのせいで、「弁護士一般が使えない」と思われたら困りますw
わざわざ記事にされていたので笑ってしまいました。
記事にもたまの息抜きが必要ですもんね。
うげー
たまにはこんなシュールなのも読者としてはうれしい限りです。
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