黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

自ら「裸の王様」になろうとする弁護士会執行部

2013-05-15 21:09:20 | 弁護士会関係
 何を今さらと言われるかも知れませんが,最近の弁護士会執行部には,自ら敵を増やすような自滅的言動が目立つようになっているようです。
 まず,東京弁護士会の菊地祐太郎現会長は,日弁連法務研究財団の発行している『法と実務』への寄稿の中で,小林正啓弁護士の著書を引用した上で,次のように語っているそうです。
<参照> 敗因を「やる気のなさ」に求める指導者について(花水木法律事務所)
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-f3b2.html

「ここに象徴されている『反』ないし『嫌』司法改革の気分は、著者の思惑いかんに拘らず今後の司法改革運動ひいては日弁連のあり方に、以下のような大きな暗雲をもたらす」
 「ここ」というのは,新人弁護士の就職難,司法試験の合格率低下,法曹界からの人材離れなどを指摘している部分であり,「大きな暗雲」というのは,具体的には①改革意欲の減退,②内向きの消極的な議論,③日弁連の求心力低下を指すそうです。

 背景事情も含めて少し詳しく説明すると,現在の「司法改革」は,以下のような因果関係の流れが発生していると考えられます。

(1)明らかに間違った法曹養成制度(法科大学院,法曹人口激増,司法修習短縮)
              ↓
(2)弁護士制度に対する様々な悪影響
(司法試験合格者・新人弁護士の就職難,法曹の質の低下,弁護士に対する社会的信頼の低下,法曹界からの人材離れ等)
              ↓
(3)弁護士の間に『反』司法改革ないし『嫌』司法改革の気分が高まる
              ↓
(4)日弁連,各弁護士会のあり方にも大きな暗雲をもたらす

 もっとも,菊地会長の挙げる暗雲のうち「③日弁連の求心力低下」は,厳密には誤りでしょう。もはや日弁連の求心力はゼロであるためこれ以上下がりようが無く,日弁連に対する会員の反感(マイナスの求心力)が高まるだけです。
 それはともかく,菊地会長から批判的な引用を受けている小林弁護士は,一般的に『反』司法改革派の弁護士であるとは思われていません。著書やブログなどで,上記のうち(2)以下の事実については厳しく指摘するものの,(1)の問題点については執拗に言及を避け,司法改革の「打開策」をいろいろ考えておられるようです。
 また,小林弁護士は批判的なものでも「東弁の現会長が引用してくださるとは,名誉なことである」などと謝辞を述べられていますが,反司法改革派であることを隠しもしない黒猫が自分の著書やブログを批判的に引用されたら,おそらくこんなことは言いません。単なる政府・文科省のイヌに成り下がった東弁会長や日弁連会長に敬意を払うつもりはまったくありませんので,「この糞会長キモい死ね」くらいのことは平気で書きます。
 したがって,ちょっと風変わりではあるものの,司法改革推進派にとってはむしろ同志と思われる小林弁護士に対し,東弁の糞会長は上記(3)と(4)の事実だけを指摘します。つまり,上記(1)と(2)については全く言及せず,一部の弁護士が「反司法改革」または「嫌司法改革」的な気分にさせるような主張を繰り返すことにより,①改革意欲の減退,②内向きの消極的な議論,③日弁連の求心力低下,といった現象が生じていると批判しているのです。
 これは,要するに司法改革を推進する弁護士は,上記(2)で挙げたような悪影響を一切口にすべきではない,正面から司法改革を批判しているか否かにかかわらず,(2)のような事実を口にする弁護士はすべて司法改革の敵だ,と主張しているのと変わりありません。
 派閥と委任状に頼った日弁連や大規模単位会の運営が非民主的であることは今更言うまでもありませんが,最大の単位会である東弁のトップがこのような主張をしているようでは,これまで必死で司法改革を支えてきた弁護士すらも,「反司法改革」または「嫌司法改革」の方向に変えてしまう効果を生む一方,このような主張を聞いた「反司法改革」または「嫌司法改革」派の弁護士が,司法改革推進派に回るとはとても考えられません。菊地糞会長は自らの発言で自ら弁護士会の内なる敵を増やし,弁護士会を自滅に追い込んでいると評するしかありません。


 これと関連する話ですが,最近の司法改革推進派に属する弁護士たちは,「司法改革に反対する人は委員会活動やその他の会務活動をしない」などと喧伝して回っているそうです。
 黒猫の聞いた話によると,日弁連業務改革委員会に所属していたとある先生は,「どの分野でどれだけの経済規模のマーケットがあるのか教えてもらいたい」「ニーズがないならニーズがないと世間に率直に申し上げるべきではないのか」「ろくに成果もないのにシンポジウムを開いて自画自賛するのは会費(2000~3000万円)の無駄遣いではないか」などと発言したところ,所属弁護士会から二度にわたり委員からの退任を打診され,これを拒絶すると委員の推薦から外されたそうです。
 この先生に限らず,司法改革に批判的な弁護士のうち所属単位会内で少数派となっている人は,多かれ少なかれ所属単位会から嫌がらせを受け,多大な精神的苦痛を受けながらの会務活動を余儀なくされており,黒猫の知っている中でも,最近委員会活動からの撤退を表明された方が何人かいらっしゃいます。
 黒猫自身も,反司法改革ではなく体調不良が主な理由ではありますが,最近法制委員会の活動には出る気がなくなりました。資料が出る度に徹夜してまで弁護士会の存続を支える意義も感じられませんし,民法改正についても常議員会で一度意見書が出てしまうと,その後は何を言っても「常議員会で決まったことだから」で押し通されてしまうので,議論に参加する意義も感じられませんし。
 そのため,原因を無視して結果だけを見れば,反司法改革派・嫌司法改革派に分類される弁護士の会務活動参加率は,司法改革推進派の弁護士よりやや低い,という結論が出るかも知れませんが,反司法改革派であっても会務活動の参加義務はある以上,全く参加していないというわけではありません。また,司法改革に批判的な先生の中にも,そのような誹謗中傷を恐れて,反司法改革派であっても委員会や常議員会などの会務活動に積極的に参加するよう呼び掛けている方もいらっしゃいます。
 もっとも,弁護士会の古き良き時代を知る40期台くらいの先生であれば,「反司法改革派は会務活動に参加しない」といった誹謗中傷を恐れる良心も持ち合わせているのでしょうが,黒猫(55期)くらいの世代になると,おそらくそんな誹謗中傷は意に介しない人が多いのではないかと思います。法科大学院世代である60期台の弁護士はもっと気にしないでしょう。
 弁護士に事件を依頼する人が,委員会への出席率の高い弁護士や弁護士会の公益活動・会務活動へ積極的に参加している弁護士を優先的に選んでいるという話は,およそ聞いたことがありませんし,そもそも一般市民の中には,弁護士会の行っている委員会活動やや公益活動の存在すら知らない人が多いくらいです。
 しかも,最近は「弁護士会の公益活動で仕事が出来なかった」などと言い訳をして依頼者のお金を横領する悪徳弁護士(しかも副会長経験者等)が急激に増加しているため,あまり積極的に公益活動に参加していると,依頼者からもそれを言い訳にしてお金を横領するのではないか,そこまではいかなくても自分の事件をおろそかにするのではないかなどと思われかねず,弁護士業務にとってプラスにならない委員会活動等に尽力するのは,かえって自殺行為になりかねません。
 それでも,弁護士が所属弁護士会の公益活動に参加するのは義務なので,免除が認められている人以外は参加せざるを得ませんが,もし「反司法改革派は日弁連の気に食わないことばかり喋るから会務活動をしなくてもよい」ことにしたら,若手弁護士の大半はむしろ嬉々として「自分は反司法改革派だから会務活動はやらない」と宣言するのではないかと思います。
 司法改革推進派の弁護士が,「自分たちは会務活動を熱心にやる勤勉な弁護士だ。反司法改革派は会務活動をやらない怠け者の弁護士だ」などというネガティブキャンペーンを行ったところで,今更大した効果は無く,「自分は反司法改革派だから会務はやらない」と開き直る弁護士を増やすだけのような気がします。
 類似のネガティブキャンペーンとしては,「司法改革に反対するのは儲からない腕の悪い弁護士だ。自分は腕の良い弁護士だから司法改革に反対しない」というものも過去に行われましたが,現実には「腕の良い」と自称する弁護士がそのように主張しても失笑を買うだけで,さしたる効果はなかったように思います。会務活動云々というのは,これ以上に一般市民の共感を呼ばないネガティブキャンペーンであり,前述した菊地糞会長の妄言と同様,司法改革推進派にとってはさらに味方を減らし,弁護士会を「裸の王様」にする効果しか生まないでしょう。

18 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-05-15 21:24:10
勉強になります。
いつもブログの更新を楽しみにしてます。
笑えるネタのときが特に好きです。
法科大学院依存症は、考えさせられるし、おもしろい!(*^^*)
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 21:49:19
弁護士の年収が職業ランキングでトップになりましたね。
黒猫さんは事務所開かないんですか?
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 21:57:50
しろねこさん、くろねこさん

法科大学院という汚らしいネズミどもを追い詰め、なぶり殺しにしてやりましょう
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 21:59:28
全くそのとおり。
座布団1枚!

会務には出ていますが、全く発言はしません。
無論、委員会に出る以上のことは一切しません。
エクスターンは受け入れませんし、会員向け研修の担当はしません。修習生は受け入れませんし、理事者にはなりません。
以上当たり前のことを当たり前に言ってみました。
一日も早く、日弁連が任意加入団体になり、司法改革を推進した戦犯が路頭に迷う日が来ることを願って止みません。
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 22:04:33
こんなホームページを行政書士会の支部が公開してますね。

http://nakano-lawyer.org/gyousai.html

日弁連や弁護士会は、こういうひどいやり方には、きまってくちをつぐみ、放置します。

自分たちの利益や権利を守ろうとしない団体に未来はありません。

それにしてもこのホームページは悪質かつ詐欺的ですね。。ドメインにlawyerと入ってるあたり、知っていてやってるんでしょうけどえげつなー。
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 22:29:25
糞会長www
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Unknown (Unknown)
2013-05-15 23:31:19
政府・文科省のイヌですか...。今からだって法科大学院の終了を司法試験の受験資格要件から外しさえすれば、受験者数も増えて優秀な人材を確保することができるはずなのに。文科省や大学が自ら法科大学院の廃止を主張するとはとても考えられないので、一番悪影響を受けているはずの弁護士会がこのような態度では、現在の制度がズルズル続きそうですね。本当に不思議です。
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Unknown (Unknown)
2013-05-16 01:18:47
やつらは、現実より理想が大事なんです。
わかるでしょ?

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Unknown (Unknown)
2013-05-16 08:24:54
> やつらは、現実より理想が大事なんです。

「理想」という皮をかぶった権威ですね。
法学部のエゴ学者どもと本性は同じということです。
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Unknown (芳賀)
2013-05-16 09:44:08
強制加入団体の上にあぐらをかいてやりたい放題
ですよ。

弁護士会が強制加入なんで、増えれば増えるほど
みかじめ料は増えるからノープロブレムというの
が増員派の本心なのではないですか?

ちなみに、医師会と歯科医師会は任意加入団体ですね。
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