黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

日弁連は,沈黙すべきか?

2013-04-05 17:26:58 | 弁護士会関係
 小林正啓弁護士が,『日弁連は,沈黙すべきである』という連載記事(大阪弁護士会月報に掲載した記事の修正版)を自らのブログに投稿されています。
<参 照>
日弁連は,沈黙すべきである(1/3)
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-5092.html
日弁連は,沈黙すべきである(2/3)
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-8690.html
日弁連は,沈黙すべきである(3/3)
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-3b8e.html

 記事の内容にはいろいろ言いたいこともありますが,日弁連が「発言するほど,分裂を露呈して嘲笑されるだろう」という指摘については,納得せざるを得ない面もあります。
 記事の内容とは異なる観点からの指摘になりますが,例えば東京弁護士会の場合,平成23年度の一般会計は実質的に約7000万円の赤字であり,実質的な繰越金は4億円ほどらしいです(参照:2013年度法友会政策要綱313頁)。東弁は日本最大の単位会で会員数も大幅に増えていますが,それでも数年後には弁護士会館特別会計のお金に手を付けないと資金繰りが厳しくなりそうです。会員数が東弁の6割強くらいしかいないのに事務職員の数が東弁より多いと言われる大阪弁護士会の財政状況は,おそらく東弁よりかなり悪いでしょう。
 最近は,若手を中心に極めて所得の低い会員が多くなっているので,経済的理由による会費の減免を認めるべきだという意見もありますが,年間所得300万円以下の会員が全体の約5割,年間所得70万円以下の会員でも全体の約4割を占めており,しかも弁護士会の運営が赤字という状況では,経済的理由による会費の減免を認めてしまったら,多くの弁護士会は財政破綻してしまうことになります。
 そのため,今の日弁連が法曹養成制度について発言しても,こういうことが起こります。

日弁連「急激な増員により多くの弁護士は経済的に困窮しており,このままでは法曹を目指す者がいなくなります。司法試験の合格者数を減らすべきです」
政府「それならまず,日弁連と各単位会が,あまりに高額でしかも不透明な会費負担を減免してはどうかね」
日弁連「うう,それやるとうちも単位会も潰れちゃうんです。それだけは勘弁して下さい・・・・・・」
(※法曹の養成に関するフォーラムでは,実際にこのような事態が起こっています)

日弁連「弁護士や法科大学院においても,男女共同参画をさらに促進すべきです」
政府「それならまず,日弁連が育児期間中の会費免除を認めてはどうか。日弁連の第二次男女共同参画基本計画によれば,日弁連では育児期間中の会費免除を認めておらず,単位会でもこれを認めているのは53単位会中15単位会(2012年11月5日現在)にとどまっているそうではないか」
日弁連「うう,それは現在ほとんど収入がないのに会費を納めている会員もたくさんおりまして,育児期間中というだけで会費免除を認めるのは説明が付かないという事情がありまして・・・・・・」

日弁連「地方自治体への弁護士進出をもっと活性化すべきです」
政府「だが,自治体に任期付職員として勤務する者が弁護士資格を維持する場合,弁護士会費や公益活動の負担が重くなっている。任期中は会費負担の減免や公益活動の免除を認めるべきではないか」
日弁連「うう,それは他の会員からの納得を絶対に得られないと思います・・・・・・」
(第9回検討会議の資料2を参照)

 こんなことをやるくらいなら,いっそ沈黙していた方がましかも知れませんね。いや,わざわざ沈黙すべきと主張するまでもなく,今の日弁連会長は何をやりたいのか良く分からないブログの更新に努めるばかりで,実質的に沈黙しているとも言えます。
 ただし,『法曹養成制度の未来』に関する記述は,実情に照らし以下のように改めた方がいいと思います。

(修正前の記事)
 予備試験枠が200名になれば、最高裁にとって、司法研修所は不要になる。予備試験組の最高裁事務総局付判事が「デキの悪い1800人に出す予算があるなら、判事補100人の養成に使うべきだ」と言い出すのは、時間の問題だ。下位合格者は弁護士以外に職を求め、研修所にすら行かない者も増えて、不要論に拍車をかけるだろう。すでに、裁判所と検察庁は、立派な研修施設を擁している。
 他方、法科大学院組も、上位合格なら厚遇が期待できるから、「司法試験」より「合格順位」が重要になる。上位校では、合格率の高さが優秀な学生を集め、さらに合格率を高める好循環となり、修了一年目の合格率が8・9割に達する。優秀者が上位校に集中する結果、合格率7割以上を保つ法科大学院は30校以下、そのうち、上位者輩出校は10校以下になるだろう。その他の多くは廃校するだろうが、もともと合格率ゼロだから、法曹養成と無関係である。
 つまり、日弁連が発言しても沈黙しても、法科大学院は、実質、半数以下に減る。優秀な学生と教員が集中することにより、教育の質は向上するし、奨学金等の支援も集中するから、人材の多様性(南[1])も確保できる。最優秀の学生が来ない点を除けば、当初の理念が実現するわけである。
めでたし、めでたし。

(修正後の記事)
 予備試験枠が200名になれば,最高裁にとって,司法試験は不要になる。予備試験組の最高裁事務総局付判事が「デキの悪い1800人に出す予算があるなら,判事補100人の養成に使うべきだ。予備試験をそのまま司法試験にしてしまえばよい」と言い出すのは,時間の問題だ。下位合格者は司法修習を終えても,弁護士以外に職を求めることもままならず携帯を持って徘徊する者,弁護士登録すらしないもの,さらには司法修習にすら行かない者も増えて,不要論に拍車をかけるだろう。
(※ 司法研修所は,司法修習生だけでなく任官者の養成も行っているので,研修所自体が不要になることはない)
 他方,法科大学院組も,上位合格なら何とか法曹としての職が期待できるから,仮に現行の司法試験が存続したとしても,「司法試験の合否」より「合格順位」が重要になる。上位校でも予備試験組が抜けるため全体的な質は低下し,一部の成績優秀者は何とか法曹として生き残るが,それ以外は弁護士を名乗るワーキングプア若しくはニート,または法務博士を名乗るワーキングプア若しくはニートになるだけだ。優秀者が上位校に集中する結果,法科大学院のうち上位者輩出校は10校以下になるだろう。その他の多くは廃校するだろうが,もともと司法試験の合格率に関わりなく修了者が実働法曹になれる可能性はほとんどゼロだから,法曹養成とは無関係である。
(※ 司法試験の合否より合格順位が重要になる以上,合格率を問題にするのは論理矛盾である)
 つまり,日弁連が発言しても沈黙しても,法科大学院は,いずれは大半が廃校に追い込まれる。優秀な学生は予備試験か他の進路に流れ,法科大学院を置く大学の数が減ることで法科大学院関係者の政治的発言力も低下し,予算や奨学金等の支援も次第に減らされ,いずれは当初の理念など何も実現しないまま,制度自体が廃止に追い込まれる。もちろん,そこに至るまでには莫大な国家予算と人的資源が虚しく浪費されることになるが,政策を実行するのは政府,その是非を判断するのは一般国民であり,いずれにせよ傍観者たる日弁連には何の責任もない。
 めでたし,めでたし。
 もっとも,そのときまで日弁連が存続しているという保証はできないが。

23 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
意地を張るのは辞めればいいのに (Unknown)
2013-04-05 19:26:46
りぶら見たけど,
トウベンって,クラス担任制度とかしてんのね。
まあ,いいけど。

「法科大学院教育の成果として多様な人材が法曹界に参入し・・・」って枕詞は,つけなければいけないみたいなんだけど,こうなった原因がそもそも法科大学院制度なのにね。
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 01:12:14
しかし、間違えてもらっては困るのですが、ロースクールに入ったら、ひたすら司法試験合格に向けて受験勉強にいそしめ、と言っているのではありません。ロースクールの授業に背を向けて、1人閉じこもって、予備校本を頼りにひたすら受験勉強に明け暮れることは、かえって合格から遠ざかっていく、ということをしっかりと認識しておいてほしいと思います。皆さんは、法曹としてこの社会を担っていく、そういう決意を持ってロースクールに入学したのです。司法試験合格が最終目標なのではありません。

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独自の法曹養成をこの国に是非! (Unknown)
2013-04-06 05:46:13
イギリスには、「事務弁護士」なる司法代書人が存在するが、裁判所の外でも弁護士業としての書面を通じての本人代行である。法廷弁護士と事務弁護士とに別れている古い伝統に根ざした独自の司法制度だ。司法書士と似たものだが、アメリカのような訴訟社会ではない他の欧州の国ではこのような一元的でない手続き制度が見られる。フランスでも最近まであったが、弁護士と統廃合され、代書人のような事務弁護士は廃止された。このようなアメリカとは全く異なる弁護士制度を日本の政府は採用しなかった。しかし、現状と今後はどうなるのだろうか。

日本も古くからある司法書士だが、いろいろ言われているが、士業を根底から覆すかもしれないと思う。司法書士の団体で、「司法書士政治連盟」があって、これが強力な政治的影響力を持っていて、司法書士会とともに従来から発言してきた。簡裁代理権は、まさに弁護士業務の一角を崩したが、今後、家事代理、民事執行代理権の付与、弁護士と変わらない法律相談などの全面解禁を法改正に求めてきている。弁護士が司法書士に吸収されるとは思わないが、業界での将来見通しと現実味に
向き合わなくてはならない町弁は、本当に司法書士と統合されるかもしれない。

司法研修所の機能は昔と比べ、だいぶん落ちている。ここは裁判官の研修機能だけ残して、昔のような、高等文官試験を復活させればいいと思う。裁判所事務官、副検事経験者など、司法試験と全く劣らない試験と研修を義務付けるなどの特認制度から優秀な人に弁護士の資格を与えればいい。

国民にとって最も合理的なはずの案が昔から出ては消えの繰り返しだったこと、明治以来の悪しき慣習を見直す時期がきていることは間違いないのでは。
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Unknown (若手弁護士)
2013-04-06 06:38:06
というか日弁連も単位会も潰した方がいいと思いますよ
高い会費の割にメリットがない
弁護士自治など左翼的活動をする人以外不要ですから
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 10:14:35
頼りにならない弁護士会を脱退して政治力があって頼りがいのある司法書士会に入会させてもらいましょう。
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 13:12:05
弁護士会にも競争が必要ですよね(笑)
ここも規制緩和ですよww
司法書士会に参入してもらって新日弁連作ってくれないかな。
別に弁護士会強制加入制にも弁護士自治にも反しないよね。「弁護士会」は存在するわけだし。。。
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 13:48:07
弁護士会の高い会費は参入規制になっています。
払えない人は、退出を強制されるという。
ですので、司法試験合格者数が増え続けても、会費が払えなくて登録できないor登録を続けられない弁護士が退場を迫られることになるので、弁護士数の調整に一役かっていると思われます。

某弁護士が、発言していたタクシー運転手兼務弁護士では、この会費が払えないので(タクシーの売上でバカ高い弁護士会費を払い続けるのは無理です)、実現はしないでしょう(キャバ嬢弁護士は実現するかもしれませんが、信用の問題もあるので難しいとは思います)。

そして、ここで弁護士会費が馬鹿安い弁護士会が誕生したとして(ex.東京第三弁護士会)、おそらくしばらくは既存の弁護士の登録変更は様子見かと思います。

なぜなら、そこに登録すると「通常の回避もろくに払えない貧乏弁護士」とのレッテルを貼られるレピュテーションリスクがあるからです。
馬鹿安弁護士会のレピュテーションリスクがあまりないことが判明すれば、次第に登録変更は増えるかもしれません。
リスクがあれば、即独・宅弁・携弁のるつぼと化すでしょう。
そんなところに登録したが最後、「底辺弁護士」と揶揄されるだけで、まともな客(依頼者)はそんな揶揄される弁護士には仕事を頼まないでしょう。頼むのは貧乏人だけです(安くやってくれるのでないかと期待するからです)。
ですので、こんな弁護士会に登録したが最後、来る日も来る日も安く筋の悪い事件を続けることになるだけです。しかも、一度登録したら、途中で登録変更しても「前科」のようにスティグマとして残ることになります。

>司法書士会に参入してもらって新日弁連作ってくれないかな

馬鹿安弁護士会に登録した場合と50歩100歩かと思います。
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 19:15:56
一般の人にはそんなことわからんさ。
発泡酒が売れるのと同じ。
企業の値引き圧力が強まれば、背に腹は代えられないってことで安い弁護士会になるかもしれない。「なんで値引きできないの?弁護士会変えればいいじゃん」って感じで、逆に登録替えの圧力が客側からかかることもありうる。現行弁護士会に登録していることは一般人からすれば何のステータスにも見えないよ。


まあ、法改正して、とにかくやってみればいいwww


そういえば、図書館に弁護士っていう学者さんがいましたっけ?
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 20:21:19
最近相談に来た人に厳しい見通しを説明し,これを前提にやや高めの報酬の見積もりをしたところ,
結局,あり得ない甘い見通しを前提とした安い見積もりをした司法書士に依頼することになったらしい。

これが自由競争だね。
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Unknown (旧弁の端くれ)
2013-04-06 22:45:48
一般人は依頼した仕事さえまともにやってくれればいいわけですよ。私はローが出来て、新司法試験が実施されれば、合格倍率をみた一般人は新司合格弁護士に仕事依頼するのかな~と思っていましたが、実際は新司弁護士も依頼を受けてる。私よりも信頼を勝ち得てる方もいるでしょう。

これと同じで所属弁護士会の会費が安かろうが、あるいは、弁護士が貧乏だろうがあまり関係ない、要は仕事が出来ればいいのでしょう。
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