いずれは崩壊するだろうと覚悟(期待?)している日弁連ですが,最近立て続けに,財政的自滅につながるような施策を2つほど動かしているようです。
1 まさかの「保釈保証書事業」スタート
詳細は,『全弁協「保釈保証書事業」見切り発車への疑問』(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)で取り上げられていますが,全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が,今年の6月にも保釈保証書事業をスタートさせるという話になっているそうです。
そもそも保釈保証書事業って何だ,という人のために若干説明しておきます。
刑事事件で被告人が身柄を拘束されたまま起訴された場合,そのままでは裁判が終わるまで被告人は拘置所や警察署の代用監獄に身柄を拘束されることになりますが,裁判所に保釈の請求をして認められれば,被告人は釈放されて自由の身となることができます。ただし,一定の重罪事件や罪証隠滅のおそれがある事件等については保釈請求が認められない場合があるほか,保釈が認められる場合でも,一定の「保釈保証金」を裁判所に納める必要があります。
この保釈保証金は,要するに保釈した被告人が逃げ出したりせず,きちんと裁判所へ出頭することを保証するためのもので,無事に刑事裁判が終われば保証金は返還されますが,被告人が期日に裁判所へ出頭しなかった場合や逃亡した場合には,裁判所の決定で保証金を「没取」されてしまいます。なお,刑事訴訟法では,刑法上の没収と区別するため「没取」(「ぼっしゅ」と読む。実務上は「ぼっとり」と読まれることもある)という用語が使われていますが,実質的な意味は没収と変わりません。
保釈保証金の金額は,犯罪の性格等のほか被告人の資産状況も考慮され,当然ながら容易には払えない金額が定められます。そこで,日弁連は被告人の身柄解放(いわゆる人質司法の打破)を促進するために,保釈保証書事業という構想を長年進めていました。
今回運用されるらしい保釈保証書制度は,例えば保証金の金額が200万円である場合,保釈請求者は10%の自己負担と2%の手数料,合計24万円を全弁協に支払えば,全弁協が裁判所に保証書を提出し,それによって裁判所が保釈を認める,というシステムのようです。
もっとも,この制度にはいくつかの重大な問題があります。刑事訴訟法には,裁判所がこのような保証書をもって保証金に代えることを「許すことができる」という規定があるのですが(94条3項),本当に裁判所が保証書で保釈を認めてくれるかどうかは分かりません。裁判所は,別にお金が目的ではなく被告人の出頭を確保するために保証金を要求しているのであり,被告人の実質負担24万円では被告人の出頭を確保できないと考えた場合には,そもそも保釈を許可しないかも知れませんし,保証書による場合の保釈金を200万円ではなく2000万円にしてしまうかも知れません。
アメリカでは保釈保証事業というものが実際にありますが,やはり保証書では抑止力が十分でなく,かえって保釈金額が必要以上に釣り上げられる結果になっているそうです。保証書では肝心の保釈金額が上がってしまうというのであれば,結局保釈保証書制度なんて誰も利用しなくなるでしょう。
しかし,この問題以上に深刻なのは,制度を利用した被告人が逃亡し,保証金が「没取」されてしまった場合の取り扱いです。全弁協がある被告人について200万円の保証書を裁判所に差し入れ,その被告人が逃亡してしまった場合,被告人の自己負担分を除く180万円は全弁協の損失になります。法律上は被告人に求償することもできますが,逃亡するような被告人への求償にほとんど実効性がないことは,刑事事件をやっている弁護士であれば誰でも容易に理解できるでしょう。
一応,そのようなリスクに備えて2%の手数料を取っているつもりでしょうが,事業全体の損失が手数料で賄える範囲に収まるかどうかは誰にも分かりません。保証書制度が誰にも利用されずに形骸化するならまだマシですが,下手に利用されて全弁協が巨額の損失を出したら,その損失は弁護士である組合員の持ち出しになります(全国にある弁護士会の協同組合は任意加入の団体ですが,弁護士の約93%が加入し,出資金を支払っています)。
黒猫は,この保釈保証書制度については,検討されているという話を聞いてもあまり本気にしていなかったのですが,6月から本当に施行されるということになると,その運用状況が心配になってきます。まあ,5年後くらいに利用状況を調べてみたら,「大丈夫です。利用されているのは年に数件くらいですので,このくらいで全弁協が潰れる心配はありません(キリッ)」という回答が返ってくるオチかも知れませんが。
2 預り金の取り扱いに関する規程
保釈保証書制度については,運が良ければいつぞやの空港当番弁護士みたいに一部の部署がお金と手間の無駄遣いをするだけで,大勢に影響を与えるほどではないという結論になるかも知れませんが,もっと深刻な「明白かつ現在の危険」をはらんでいるのが,5月31日の日弁連臨時総会で審議されるという「預り金の取り扱いに関する規程」案です。
この規程は要するに,最近弁護士による預り金の横領事件等が多発しているので,弁護士による預り金の取り扱いについて会規で規制し,弁護士会による監督権限を認めるという内容のものですが,別にこのような会規が出来たところで,全国に3万人以上もいる弁護士が依頼者から預かっているお金の流れを,各弁護士会が逐一チェックはずはありません(そんなことが出来るマンパワーは,日弁連にもどこの弁護士会にもありません)。
そして,最近は弁護士が預り金横領などの不祥事を起こすと,被害者が所属弁護士会に損害賠償請求の訴訟を起こす例も次第に増えてきましたが,奈良地判平成20年11月19日判時2029号100頁は,弁護士会には個々の弁護士に対する監督権限がないことを理由に,詐欺・横領事件を起こした弁護士の所属弁護士会に対する損害賠償請求を棄却しています。
しかし,「預り金の取り扱いに関する規程」が実際に施行されると,弁護士会に監督権限が認められることになり,監督権限の不行使による弁護士会の損害賠償責任が認められる可能性も生じてきます。岡山弁護士会などは,副会長経験者による億単位の横領事件で大変なことになっているみたいですが,実際に損害賠償請求が認められる事態になったら,損害賠償請求を受けた弁護士会は破産状態になってしまう可能性があります。
最大規模の東京弁護士会でさえ,一般会計の繰越金は10億円にも満たないレベルですし,法律上使用できないお金を含む会館特別会計の積立金などを合わせても100億円には達しません。会員数の差を考えると,手持ち資産が1億円にも満たない単位会は結構多いのではないかと思いますから,億単位の横領事件を起こす弁護士が1人出たら一発でアウトです。東弁は規模が大きくても,会員が不祥事を起こすリスクもそれだけ高いわけですから,やはり安心は出来ません。
弁護士による預り金の横領事件が全国的に多発し,最近は『成年後見,弁護士の標的に 預かり金横領相次ぐ』という日経の記事が出るくらいですから,日弁連として何らかの対策をする必要があるのは分かりますが,実際の効果はおそらく,各地の弁護士会が財政破綻で壊滅状態になるだけでしょう。
かと言って何もやらなければ,日弁連はマスコミや世論の凄まじい批判に曝され,下手をすれば弁護士会の強制加入制度を廃止されて日弁連が崩壊してしまうかも知れませんから,今さら規程案を引っ込めることもできないでしょう。「進むも地獄,退くも地獄」とはまさにこのことです。
もとを正せば,中坊公平とかいうアホが,ろくに考えもせず「司法試験合格者数年間3000人」などという無茶な構想を言い出し,消極的な他の委員を強引に説得してそれを司法審の意見書に取り上げさせ,日弁連執行部も中坊の尻馬に乗ったことで弁護士の質を劇的に低下させたのが原因ですから,自業自得と言えばまさにそのとおりなのでしょうけど・・・。
法科大学院と日弁連,潰れるのはどちらが先になるでしょうか?
1 まさかの「保釈保証書事業」スタート
詳細は,『全弁協「保釈保証書事業」見切り発車への疑問』(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)で取り上げられていますが,全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が,今年の6月にも保釈保証書事業をスタートさせるという話になっているそうです。
そもそも保釈保証書事業って何だ,という人のために若干説明しておきます。
刑事事件で被告人が身柄を拘束されたまま起訴された場合,そのままでは裁判が終わるまで被告人は拘置所や警察署の代用監獄に身柄を拘束されることになりますが,裁判所に保釈の請求をして認められれば,被告人は釈放されて自由の身となることができます。ただし,一定の重罪事件や罪証隠滅のおそれがある事件等については保釈請求が認められない場合があるほか,保釈が認められる場合でも,一定の「保釈保証金」を裁判所に納める必要があります。
この保釈保証金は,要するに保釈した被告人が逃げ出したりせず,きちんと裁判所へ出頭することを保証するためのもので,無事に刑事裁判が終われば保証金は返還されますが,被告人が期日に裁判所へ出頭しなかった場合や逃亡した場合には,裁判所の決定で保証金を「没取」されてしまいます。なお,刑事訴訟法では,刑法上の没収と区別するため「没取」(「ぼっしゅ」と読む。実務上は「ぼっとり」と読まれることもある)という用語が使われていますが,実質的な意味は没収と変わりません。
保釈保証金の金額は,犯罪の性格等のほか被告人の資産状況も考慮され,当然ながら容易には払えない金額が定められます。そこで,日弁連は被告人の身柄解放(いわゆる人質司法の打破)を促進するために,保釈保証書事業という構想を長年進めていました。
今回運用されるらしい保釈保証書制度は,例えば保証金の金額が200万円である場合,保釈請求者は10%の自己負担と2%の手数料,合計24万円を全弁協に支払えば,全弁協が裁判所に保証書を提出し,それによって裁判所が保釈を認める,というシステムのようです。
もっとも,この制度にはいくつかの重大な問題があります。刑事訴訟法には,裁判所がこのような保証書をもって保証金に代えることを「許すことができる」という規定があるのですが(94条3項),本当に裁判所が保証書で保釈を認めてくれるかどうかは分かりません。裁判所は,別にお金が目的ではなく被告人の出頭を確保するために保証金を要求しているのであり,被告人の実質負担24万円では被告人の出頭を確保できないと考えた場合には,そもそも保釈を許可しないかも知れませんし,保証書による場合の保釈金を200万円ではなく2000万円にしてしまうかも知れません。
アメリカでは保釈保証事業というものが実際にありますが,やはり保証書では抑止力が十分でなく,かえって保釈金額が必要以上に釣り上げられる結果になっているそうです。保証書では肝心の保釈金額が上がってしまうというのであれば,結局保釈保証書制度なんて誰も利用しなくなるでしょう。
しかし,この問題以上に深刻なのは,制度を利用した被告人が逃亡し,保証金が「没取」されてしまった場合の取り扱いです。全弁協がある被告人について200万円の保証書を裁判所に差し入れ,その被告人が逃亡してしまった場合,被告人の自己負担分を除く180万円は全弁協の損失になります。法律上は被告人に求償することもできますが,逃亡するような被告人への求償にほとんど実効性がないことは,刑事事件をやっている弁護士であれば誰でも容易に理解できるでしょう。
一応,そのようなリスクに備えて2%の手数料を取っているつもりでしょうが,事業全体の損失が手数料で賄える範囲に収まるかどうかは誰にも分かりません。保証書制度が誰にも利用されずに形骸化するならまだマシですが,下手に利用されて全弁協が巨額の損失を出したら,その損失は弁護士である組合員の持ち出しになります(全国にある弁護士会の協同組合は任意加入の団体ですが,弁護士の約93%が加入し,出資金を支払っています)。
黒猫は,この保釈保証書制度については,検討されているという話を聞いてもあまり本気にしていなかったのですが,6月から本当に施行されるということになると,その運用状況が心配になってきます。まあ,5年後くらいに利用状況を調べてみたら,「大丈夫です。利用されているのは年に数件くらいですので,このくらいで全弁協が潰れる心配はありません(キリッ)」という回答が返ってくるオチかも知れませんが。
2 預り金の取り扱いに関する規程
保釈保証書制度については,運が良ければいつぞやの空港当番弁護士みたいに一部の部署がお金と手間の無駄遣いをするだけで,大勢に影響を与えるほどではないという結論になるかも知れませんが,もっと深刻な「明白かつ現在の危険」をはらんでいるのが,5月31日の日弁連臨時総会で審議されるという「預り金の取り扱いに関する規程」案です。
この規程は要するに,最近弁護士による預り金の横領事件等が多発しているので,弁護士による預り金の取り扱いについて会規で規制し,弁護士会による監督権限を認めるという内容のものですが,別にこのような会規が出来たところで,全国に3万人以上もいる弁護士が依頼者から預かっているお金の流れを,各弁護士会が逐一チェックはずはありません(そんなことが出来るマンパワーは,日弁連にもどこの弁護士会にもありません)。
そして,最近は弁護士が預り金横領などの不祥事を起こすと,被害者が所属弁護士会に損害賠償請求の訴訟を起こす例も次第に増えてきましたが,奈良地判平成20年11月19日判時2029号100頁は,弁護士会には個々の弁護士に対する監督権限がないことを理由に,詐欺・横領事件を起こした弁護士の所属弁護士会に対する損害賠償請求を棄却しています。
しかし,「預り金の取り扱いに関する規程」が実際に施行されると,弁護士会に監督権限が認められることになり,監督権限の不行使による弁護士会の損害賠償責任が認められる可能性も生じてきます。岡山弁護士会などは,副会長経験者による億単位の横領事件で大変なことになっているみたいですが,実際に損害賠償請求が認められる事態になったら,損害賠償請求を受けた弁護士会は破産状態になってしまう可能性があります。
最大規模の東京弁護士会でさえ,一般会計の繰越金は10億円にも満たないレベルですし,法律上使用できないお金を含む会館特別会計の積立金などを合わせても100億円には達しません。会員数の差を考えると,手持ち資産が1億円にも満たない単位会は結構多いのではないかと思いますから,億単位の横領事件を起こす弁護士が1人出たら一発でアウトです。東弁は規模が大きくても,会員が不祥事を起こすリスクもそれだけ高いわけですから,やはり安心は出来ません。
弁護士による預り金の横領事件が全国的に多発し,最近は『成年後見,弁護士の標的に 預かり金横領相次ぐ』という日経の記事が出るくらいですから,日弁連として何らかの対策をする必要があるのは分かりますが,実際の効果はおそらく,各地の弁護士会が財政破綻で壊滅状態になるだけでしょう。
かと言って何もやらなければ,日弁連はマスコミや世論の凄まじい批判に曝され,下手をすれば弁護士会の強制加入制度を廃止されて日弁連が崩壊してしまうかも知れませんから,今さら規程案を引っ込めることもできないでしょう。「進むも地獄,退くも地獄」とはまさにこのことです。
もとを正せば,中坊公平とかいうアホが,ろくに考えもせず「司法試験合格者数年間3000人」などという無茶な構想を言い出し,消極的な他の委員を強引に説得してそれを司法審の意見書に取り上げさせ,日弁連執行部も中坊の尻馬に乗ったことで弁護士の質を劇的に低下させたのが原因ですから,自業自得と言えばまさにそのとおりなのでしょうけど・・・。
法科大学院と日弁連,潰れるのはどちらが先になるでしょうか?
日弁連なんていらないでしょ。本当に。
理事者に自殺願望があるのは分かりましたが、一般会員を巻き込むなと言いたいですが。
預かり金口座なんて弁護士になった時から分離にするのは当たり前ですしね。口座に介入するんですね。
まあ、これで一部の老弁の自殺が早まれば適正人口に戻るのも早くなるかなとこちらは少し期待してはいるんですけどね。
ロクに仕事もせずブログで他人をクサすばかりの弁護士など誰も信用しませんからね~ ┐(´~`)┌
中央の通信教育から東大ロー未修に入学した芸人のブログがおすすめですよ。
こちらは、ローの批判はないですよ。
http://shamisen.jp/archives/324
気温が高くなると、こういうのが湧いてくる。
経済的に苦しい若手は新司弁は横領しないのにね。本当旧試弁の連中の質は問題だね~
岡山は規制権限の不行使が国賠の違法になりだね~
裁判官にも、代理人の口座への送金はちょっと、とか言われるんで。
イギリスのブックメーカーがすでにオッズをつけてそうだな。
崩壊大学院1.3
・・・orz