黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

『僕は依頼者が少ない』第3話(3)

2013-05-11 19:45:55 | パロディ小説『僕は依頼者が少ない』
 『僕は依頼者が少ない』第3話のラストです。どんな結末になるかは読まなくても分かるとか言われそうですが・・・・・・。
※ 本日投稿した第3話(2)に続くお話ですので,読まれる方は同じカテゴリーの記事である第3話(1)と第3話(2)を先に読んで下さい。ブログのシステム上の問題とはいえ,記事の表示される順番が紛らわしくて申し訳ありません。
※ くどいようですが,このお話はフィクションです。作中にある『大逆転裁判7』というゲームは,一応カプコンの『逆転裁判4』を元ネタにしていますが,内容は相当改変しているので基本的には全く別のゲームだと考えて下さい。
※ 残虐シーンの描写や法科大学院に対する悪意に満ちた誹謗中傷が含まれていますので,残虐シーンの描写がお嫌いの方や法科大学院擁護派の方はご遠慮下さい。


「よし,それでは事件現場に行くぞ」
 京香が言った。ちなみに事件現場というのは,本物の刑事事件の現場というわけではなく,『大逆転裁判7』の探偵モードで向かう事件現場という意味である。
 京香が目的地に向かって自分のキャラを走らせ,僕もそれに続こうとした次の瞬間。
 ズバシュッ!!
 聖菜のキャラが持っている,身の丈ほどもある巨大な両手剣が,京香のキャラの背中を引き裂いた!
「はあ!?」
 素っ頓狂な悲鳴とともに,派手な血しぶきを上げて倒れる京香(のキャラ)。
 どうやら京香は一撃で死亡してしまったらしく,全員の画面が暗転し,探偵モードのスタート地点に戻された。
 ちなみに,探偵モードの協力プレイでは,プレイヤーのいずれかが倒されるとやり直しになり,3回倒されるとゲームオーバーになる。一応探偵モードに入る前にセーブはしてあるが,さすがに無意味なやり直しは避けたい。
「なにすんだ馬鹿肉!」
「あは,ごめんごめん。ちょっと操作をミスしちゃったわ。さ,気を取り直して事件現場に向かいましょ♪」
 しれっと答える聖菜だったが,探偵モードを何十時間もプレイした聖菜が,いまさらそんな操作ミスをするわけがない。今のはどう考えても故意だろう。まさか,聖菜はこれをやるために,探偵モードばかり50時間以上も一人でプレイしてランクを上げたんじゃないだろうな・・・・・・?
 ネットゲームなどでは,他のプレイヤーを攻撃することもできる仕様になっていることもあり,PKと言って他のプレイヤーを倒すことを生き甲斐にしている人もいるけど,『大逆転裁判7』は架空の刑事裁判をモデルにしたミステリーゲームであり,間違ってもそんなゲームではないはずだ。
「・・・・・・操作ミスなら仕方ないな・・・・・・じゃあ,行くか」
 明らかに負の感情を押し殺した声で京香が言った。
 聖菜のキャラが走り出し,僕と京香のキャラもそれに続く。
 やがて,銃を持った黒服の男(おそらく,事件の真相解明を阻む悪の組織とかいった設定だろう)が何人か現れ,僕たちの行く手を阻もうとする。聖菜が愛用の大剣(さっき京香を斬り殺したもの)で,敢然と男たちに斬りかかろうとしたそのとき。
 ぶすっ!
 いつの間にか距離を取っていた京香(のキャラ)が聖菜(のキャラ)めがけてボウガンを放ち,聖菜の頭にボウガンの矢が突き刺さった。勢いよく血が噴き出す。
「ちょっと! 今のどう考えても狙ったでしょ!」
「狙ってない。援護しようとしてちょっと狙いが外れただけだ」
「・・・・・・ふん,まああたしは優しいから今回だけは許してあげるわ」
 頭にボウガンの矢が直撃したにもかかわらず,むくりと起き上がって回復アイテムを使う聖菜。さすがはランク5だけあって,一撃では死ななかったらしい。
「ちっ・・・・・・」
「ちょっと,いま舌打ちしたわね!? やっぱりわざとでしょう!」
「あの,敵が目の前にいるんだし,ケンカしてる場合じゃないと思うんだけど・・・・・・」
「ふん,ランク1の底辺太郎はどっかに隠れてなさい。ザコの黒服なんて,このあたしがまとめて始末してあげるわ」
 大剣を構えて黒服の男達に向かっていった聖菜(のキャラ)は,銃の攻撃などものともせず,黒服の男達を次々と斬り倒していった。
「あははっ。ザコ黒服の分際であたしに逆らおうなんて百億年早いのよバーカバーカ!」 
 いかにもノリノリといった調子で,黒服の男達を蹴散らしていく聖菜。大剣は威力が高い代わりに攻撃速度は低いはずなのだが,聖菜のキャラは大剣装備とは思えない素早い動きで黒服の男達を確実に血祭りに上げている。たしかに強いと言えば強いが,その姿は凶悪殺人犯以外の何者でもない。
「ラスト一匹!」
 聖菜が,もはや戦闘を諦めて逃走している最後の黒服(もはや人間扱いされていない)に向かって走り出した瞬間,
 ドスッ! ドスッ! ドスッ!
 後頭部に一本,背中に二本の矢を受けて,聖菜は血を噴き出して倒れた。
 犯人(京香であることは言うまでもない)が笑みを浮かべる。
「よし,今度こそ仕留めた・・・・・・じゃなかった,お前を援護しようとしたがまた狙いが外れてしまった。悪いな」
 聖菜が力尽きたので,再び僕達はスタート地点に戻された。
「あんた絶対わざとでしょ!」
 スタートした瞬間に聖菜が京香に斬りかかり,一撃で京香(のキャラ)を惨殺。
 合計三回ミスで,敢えなくゲームオーバーとなった。
「・・・・・・貴様・・・・・・肉・・・・・・」
「なによ馬鹿キツネ・・・・・・」
 ぴくぴくと頬を引きつらせ,もの凄い形相で睨み合う京香と聖菜。このままだとリアルファイトに突入しそうだった。
「えーと,探偵モードの直前でセーブしてあるから,そこからやり直そうと思えばやり直せるけど,せっかくの協力プレイなんだから,協力した方がいいと思うな・・・・・・」
 おそるおそる説得を試みる僕。無視されるのは覚悟の上だったが,意外にも二人は頷いた。
「・・・・・・そうだな。出直しプレイでは協力して頑張ろう」
「ふん,ランク5の天才美人弁護士様がゴミカス弁護士のあんたを助けてあげるわ,感謝しなさい」
 僕は不安を覚えつつ,ゲームをロードして再び探偵モードが始まる。
「死っねええええええ~~!!」
 もはや取り繕おうとする素振りすら見せず,画面が切り替わった直後から聖菜が全力で京香を殺しにかかった。
「ふん,バレバレだ!」
 京香は咄嗟に横飛びで聖菜の攻撃を回避。素早く聖菜から距離を取り,立て続けにボウガンを発射した。
 一本の矢が聖菜の腹部を貫くも,それ以外は回避し,さらに距離を置こうとする京香を追おうとする聖菜だったが,なぜかその足取りはふらついている。
「ちょ,えっ!? なんで麻痺になってんのよ!? 味方に毒矢撃つなんて信じらんない馬鹿じゃないの?」
 悲鳴を上げる聖菜に,京香は殺る気満々の表情で,
「私は,貴様を味方だと思ったことは一度もない。貴様は・・・・・・ただの肉だ」
 そう言い放ち,麻痺状態の聖菜に向かって容赦なく矢を撃ち込む。それも聖菜が死ぬまで連発で。
「こんのキツネ・・・・・・,狩ってやる!」
 画面が暗転し再スタートすると,聖菜はまたしても京香に襲いかかる。
 京香はその攻撃を回避して距離を取り,獰猛な笑みを浮かべた。
「肉が動き回るなど不快だ。挽肉にしてやろう」
「畜生風情が神に挑んだことを後悔させてあげるわ!」
 京香と聖菜の同士討ちは延々と続いた。
 ランクは3と5で聖菜の方が上なのだが,京香は毒矢や爆弾,トラップなどの使い方が非常に巧妙で,ランク5の聖菜に対してもほぼ互角にやり合っている。画面の死角を利用したトラップの仕掛けなどは,あらかじめこうなることを予期して作戦を立てていたとしか思えないが,そうすると京香も聖菜との対決に備えて,ひたすら探偵モードばかりやり込んでいたことになる。
「さあ死ね! 貴様を殺すときだけ生きていると実感できる!」
 人間としてアレな台詞を吐きながら,巧みな罠で聖菜を追い込んでいく京香。
「カスはカスらしく跪いて足を舐めなさい!」
 聖菜も負けてはいない。悪の帝王のような台詞を吐きながら,京香の使ってくるアイテム対策に,状態異常を無効化する薬やレアな自動回復アイテムを惜しげもなく投入してくる。人間を罠にはめる技術なら京香の方が上だが,総合力では聖菜の方が勝っているので,懐に入り込めば必殺の一撃で京香を一刀両断にする。
 両者一歩も譲らない名勝負だが,どう考えても『大逆転裁判7』はそういうゲームではない。
「この法科大学院肉め,無様にのたうち回って苦しんで死ぬがいい!」
「腸をぶちまけろ,ロースクール馬鹿ギツネ!」
 ちょうど,お互いに相手の手の内が分かるようになり,一回あたりの決着を付けるのに時間がかかるようになっていたので,僕はアホ二人を放置して一人で事件現場に到着し,裁判に必要な証拠写真などをゲットした。
 これで,不毛な探偵モードもやっと終わる・・・・・・。

 自分で証拠資料を取り終えてしまえば,不毛な探偵モードも終わる。そんな風に考えていた時期が僕にもありました。
 実際には,法廷モードに戻っても二人の勝負は終わることなく,ただ戦場が法廷内に移っただけだった。
「なんで法廷内に武器なんか持ち込めるんだよ!?」
「知らないのか,太郎? 東京地裁では弁護士バッジがあれば手荷物検査を受けないで済むのだ」
「そういう問題じゃないだろ!!」
 このゲームでは,なぜか法廷モードでも武器を使えるという迷惑な隠しコマンドがあるのだが,被告人質問の最中に京香が突然「異議あり」を使い,裁判長に理由を尋ねられると「異議があるのは貴様の存在だ,肉」などと叫びつつ,隠しコマンドを使って聖菜を奇襲。聖菜も「今こそ決着をつけてあげるは,馬鹿ギツネ」などと叫びつつこれに応戦し,探偵モードのときと大して変わらない激烈な同士討ちが繰り広げられた。
 法廷で弁護人同士が武器を使って殺し合い。現実の裁判でこれをやったら新聞の三面記事に取り上げられ,世界でも稀に見る馬鹿弁護士として後世まで名を残しそうであるが,人が多い法廷内という場所の特質上,二人の同士討ちは無関係の第三者をも巻き込まずにはいられない。
 びゅんっ!
 京香の放ったボウガンの矢が,危ういところで裁判長の顔を掠めて壁に突き刺さった。
「な,何をするのです! 東京地裁刑事部総括判事にして,××法科大学院の教授も務めるこの崔蕃緒(さい・ばんちょ)に矢を向けるとは何事ですか!」
 当然抗議する裁判長だったが,どこかの法科大学院教授(××の部分はよく聞こえなかった)をいう肩書きを聞いて,僕は思わずレイピアを裁判長に投げつけてしまった。続いて京香の放った矢が三本くらい立て続けに命中し,最後に聖菜が大剣で勢いよく裁判長の首を刎ねた。
「シツレイな弁護人には,ペナルティを与えます!」
 首を刎ねられたはずの裁判長の声が法廷に響き渡り,画面右上のゲージが一気にゼロになって画面が暗転,ゲーム・オーバーが表示された・・・・・・。

 こうして,『大逆転裁判7』の攻略は失敗に終わった(裁判長惨殺よるペナルティでセーブデータも消えていた)。各個人のデータは消えていないとはいえ,法廷モードの最初からやり直す気力は誰にも残っていなかった。
 僕も「法科大学院教授」と聞いて殺意が飛躍的に表動し,ついレイピアを投げつけてしまったが,冷静に考えればあまりに馬鹿なことをしたと思う。
「ふん,やっぱりゲームは駄目だな」
「ったく,無駄な時間を過ごしちゃったわ」
 PSVITAのスイッチを切り,不機嫌そうに京香と聖菜が吐き捨てた。
「大体,最近の携帯ゲームは通信プレイありきというのが気に入らない。どうして他人と一緒にゲームをやらなければならないのだ」
「ふん,まったくその通りね。ゲームの世界まで他人に気を遣わなきゃいけないなんてどうかしてるわ」
「ああ,ゲームくらい一人で好きなように遊ばせてほしいものだな」
 口々に勝手なことを言い合う二人。
「・・・・・・二人とも,いつ他人に気を遣ったの?」
「「あ゛あ゛?」」
「・・・・・・なんでもありません」
 二人に睨まれ,僕はげんなりして首を振った。

 こうして,やたら疲れる隣人部のゲーム特訓大会は終わった。弁護士なのに裁判ゲームの第1話で挫折というひどく不名誉な結果に終わったが,実際の裁判でもあの二人を一緒の法廷に立たせるのは極めて危険だと分かったというのが,せめてもの収穫だろう。・・・・・・せめてポジティブにそう考えることにしよう。
 以下余談だが,せっかく買ったソフトがもったいないので,僕は,家に帰った後も一人で『大逆転裁判7』をプレイし,その後何とかクリアした。通信協力プレイは正直余計な機能だと思うが,実際の裁判手続とあまりに異なるという点に目を瞑れば,ミステリーゲームとしてそれなりに良く出来ていると思う。
 なお,件の第1話だが,真犯人はなんとボス弁の牙流雲人弁護士だった。動機は分からないが自ら被害者を殺害し,成歩堂元弁護士に罪をなすりつけようとしたらしい。牙流弁護士は有罪判決を受けて弁護士資格を失い,主人公はその事務所を引き継ぐ形で独立し,新たな事件に挑むことになる,という展開になった。
 ・・・・・・ブラック事務所にも程がある。

(終わり。第4話に続く)
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-05-15 15:20:58
先輩方が本試験に立ち向かう中、少し後ろめたさを感じつつも3話連続で楽しませていただきました。
麻里奈嬢とかな恵ちゃんの声が聞こえてきそうです。
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