将棋の天才プロ棋士 羽生善冶さんが昨日 王座戦で15連覇を達成した。天才がひしめく将棋界で、ひとつのタイトルを15年保持するのはたいへんなことだ。
昨日の夜、インターネットで対局をライブ中継(一手指すたびに上の将棋盤の駒が動く)をしていたので、自宅のパソコンでメールしながら見ていた。
序盤から見たこともないような展開で、中盤になっても難解そのもの。白熱した終盤はまさしく手に汗握るって感じだった。
情報化社会になった今、前日の棋譜でもすぐ入手できる。棋譜を「データベース化」することで分析力は飛躍的に向上する。また離れていても、夜中でもネットで対局できるようになっているから、実戦で試してみることも容易に行えるようになった。
天才棋士 羽生さんはこの状況を「将棋上達への高速道路が通った」と表現している。しかし、みんながそれを使うようになるとどうなるか。ある一定レベルまで強くなったその先に「大渋滞が起こる」という。そこから先に抜け出して、一歩先に行くには「インターネットとかそういうものと違うアプローチの仕方をしないといけない」。
心血注いで構想した作戦で勝ったとしても 翌日には若手棋士が分析して「高速道路を走ってくる」ような状況の中で、15年間TOPを保持するのは並大抵のことではないし、事実今回の王座戦5番勝負はこれまで見たこともないような戦形の将棋ばかりだった。
3-0で防衛を決めた第3局に自分はネットを介して立ち会うことができたけど、「これまでのデータベースによれば、こう指すところ」というような分析を超えたところで、2人の天才が戦っていると思った。見たこともない序盤、複雑で難解極まりない中盤、白熱の終盤。そこはまさしく「人間対人間」の戦いだったと思う。
ビジネスの現場でもITやネットを駆使して「高速道路にのる」ことにはもはや異論はあるまい。将棋の世界で言えば「そんな手、知らなかった」では済まされないし、一手で負けになってしまう。これを活かすかどうかは明暗を分けると思う。
ただ、どの世界でもTOPといわれる人たちは「高速道路の先の大渋滞」を抜け出すためにネットを離れたところで努力していると思う。「そこから先は人間力」「人間としての魅力」で差別化する。「人間対人間の競争ってもともとそうだったよね」というところに原点回帰しているように思う。これがTOPを行く人たちの「最先端の感覚」なのだと思った。
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