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焦点-2月14日=「金融安定化策の現状の問題点」

2009-02-14 17:46:48 | ヘッドライン
10日、合衆国新政権から、不良資産処理や個人向け融資促進に向けた金融安定化策が発表されたが、
世界の株式市場は、これに失望の声を上げてしまった。
現状の問題点を整理してみたい。
ガイトナー新財務長官の発表は、何故、このような後ろ向きの評価となったのだろうか?
それは、同長官を含むオバマ政権の当局者らが、細部の準備ができているという期待を、
市場関係者に事前に与えてしまったが故だ。
同長官は、「見解を語ることで失望を招かないよう人々の期待を管理する」という
ワシントンで守るべき大原則に反したのである。
彼は11日の上院予算委員会で、詳細を知りたいという気持ちは理解できるとした上で、
「ただ、一からやり直さなくても済むよう、慎重の上にも慎重を 期して各方面に相談してから」
戦略を決めたいと語った。
確かにその通りだ。しかし、10日の発表前にメディアに伝えておくべきだった。
そうすれば、金融安定化策の発表や予算委員会での証言が具体性に乏しくても、
これほど厳しく批判されずに済んだだろう。
もちろん、ガイトナー新財務長官の発言にも耳を傾けるべき点はある。
ポールソン前財務長官はあまりにも急にギアチェンジしたため、金融安定化策の
7000億ドル(約63 兆9000億円)の最初の半分を金融機関への資本注入に活用しただけで、
不良資産買い取りに利用できなかった。
金融システムの安定化には、不良資産を銀行のバランスシート上から切り離すことが不可欠だ。
ガイトナー新財務長官の金融再生案には、最大1兆ドル規模の官民共同の投資ファンドを通じて
不良資産を買い取る計画が柱の一つとなっている。
この点に於いて、彼は、前任者の誤りを正した、と言って良い。
しかし、この計画の詳細はほとんど公表されていない。また不良資産買い取り価格の設定方法等の
問題も不透明であり、大きな疑問が残る。
例えば、買い取り価格の設定は民間の買い手が行うとされているが、この計画では
景気悪化を乗り切るのに十分な資本を持っているのかを調べる大手金融機関の
包括的な財務検査が新たに必要となる。その前提として、銀行が保有する不良資産に
価格を付けなければならない。
金融安定化策は当局者に対し、銀行のバランスシートに関するリスク開示改善を義務付けるよう求めている。
しかし財務省当局は、「これらを実施する際、監督者は過度に保守的な姿勢を取ったり、
不適切な貸し渋りを促すような措置を講じるべきではないと認識する」としている。
まるで、銀行の融資や事業の存続のために帳簿をごまかすのを奨励しているようだ。
それに財務検査をパスしなかった銀行をどうするかについての言及もない。
財務省当局によれば、財務検査をパスした金融機関は米財務省から公的資金注入を受ける資格を得る。
確かに、資本注入は、民間から資本が十分集まるようになるまで財務改善に役立つだろう。
しかし、民間から資本が集まる具体的展望はあるのだろうか?

当局者はかなり前から、大手金融機関の保有する資産価格が急落した場合どうなるか
検証するべきだと主張してきた。しかし、従来の検証の際のシナリオで、過去 1年半に
実際に起きた状況の半分程度の悲惨さですら、想定した金融機関は皆無だろう。
民間の資本が集まる為の前提として、現実的に、今後どのような経済情勢が想定できるのか
という問題が残る。デッドデフレの到来なのか、或いは、実態経済は序所に改善に向っていくのかどうか。
今回のガイトナー新財務長官の発表が、市場にもっと前向きに捉えられていれば、
後者をシナリオとして、資金の流れが順回転して行ったと予想できる。
その意味で、内容の具体性の欠如よりもむしろ、彼のパブリックリリースの方法論の誤りにこそ、
今後の展開の不透明さの本来の原因がある、とも言えるだろう。
現状の最大の問題点は、市場関係者誰もが、今後の経済情勢に「経験した事の無い恐怖」を持っている事
であり、オバマ新政権下での、新財務長官の最初の役割は、その恐怖を和らげる、という極めて、
心理的なものであるべきだったのでは無いか。

金融安定化策のもう一つの柱が、ターム物資産担保証券ローン制度(TAL F)の規模拡大である。
財務省は当初、連邦準備制度理事会(FRB)が自動車ロー ンなどを裏付けに新たに組成された
最上級のAAA格付け証券を最大2000億ドル買い取るに際し、金融安定化策の200億ドルを活用する予定だった。
この計画の規模は1000億ドル(レバレッジを効かせた場合は1兆ドル)に 拡大し、
商業用不動産ローン担保証券なども含まれる見込みだ。TALFは融資拡大に寄与するはずだ。

但し、これらの措置が金融安定化につながるかどうかは、市場関係者の「投資意欲の回復」が前提であり、
その意味でも、前述の、「経験した事の無い恐怖」からの解放が、10日の発表でもなされなかった、
という現実は、バラク・フセイン・オバマ・ジュニアという、史上初の、非白人の合衆国大統領の船出は、
決して、シャンパンと花束で祝福されたもの、とは言いがたい、という認識を新たにせざるを得ない。

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