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歌劇「ホフマン物語」を観る

2023年03月07日 | オペラ・バレエ

プレミアムシアターで放映していたハンブルク国立歌劇場 歌劇「ホフマン物語」を録画して観た。2021年9月19・22日の公演だ。

このオペラの原作はE.T.A.ホフマン(1776-1822)の3つの短編小説「砂男」「クレスペル審問官」「大晦日の夜の冒険」だ。光文社文庫「砂男/クレスペル審問官」にはこの3作が含まれている。この本の解説を読むと、E.T.A.ホフマンは法律家として社会人生活をスタートさせたが、音楽や絵画が好きだった、その後、ナポレオン戦争でプロイセンが負けて失職し、ドレスデン巡回オペラ団の指揮者になるが劇団長と衝突して解雇、音楽雑誌への寄稿などで糊口をしのぎ、プロイセンの法務省へ復職を果たす。その後、昼は法律家として、夜は酒場に出入りする生活しながら作曲活動をして、あるときから突然社交界で注目されるようになり、46才の若さでなくなるまで70編にわたる短編小説といくつものオペラ作品を残した。

E.T.A.ホフマンの小説がベースとなったオペラ・バレエは多くある、「くるみ割り人形」、「コッペリア」などだ。音楽に詳しい同じドイツの作家には「魔の山」を書いたトーマス・マン(1875-1955)がある。マンはマーラーの交響曲8番の初演を聞きマーラーと知り合い、マーラーの死後「ヴェニスに死す」を書く。ビスコンティーはこれを映画化し、主人公のエッシェンバッハをマーラーに見立て、音楽としてマーラーの交響曲5番の第4楽章アダージェットを使った。これが本当に良い曲で映画のシーンにぴったりだった。

話が少し横道にそれた。

「ホフマン物語」の作曲はオッフェンバック(1819-1880)で彼の唯一のオペラだ、オッフェンバックはオペレッタを数多く作曲しており、先日の彼の作曲のオペレッタ「天国と地獄」を観たばかりだ。このオペラは彼が作曲の途中でなくなり未完であるため様々な完成版が流通してきた、現在は作曲家自身の草稿や初演時の楽譜に基づくケイ&クック版が主流になりつつある、このケイ&クック版はいくつかの場面に関して曲の選択が演奏者に委ねられているため、上演のたびに新しい構成が生まれる、と放送では解説されていた。

演出はダニエレ・フィンツィ・パスカで、この人はシルク・ド・ソレイユや2006年トリノオリンピック閉会式の演出を手がけた人だ、このオペラでもその特徴が発揮されているようでカラフルでファンタスティックな演出がなされた。色彩豊かな点は好きだが、ところどろろ理解に苦しむ演出があったのは後で述べよう。

【出演】   

  1. ホフマン:バンジャマン・ベルネーム (仏、37)
  2. オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ(いずれもホフマンの恋人):オルガ・ペレチャツコ (露、43)
  3. ミューズ(詩神)/ニクラウス(友人):アンジェラ・ブラウアー (米、39)
  4. リンドルフ/コペリウス/ミラクル/ダッペルトゥット(いずれも悪役):ルカ・ピザローニ 
  5. アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ(いずれも召使):アンドリュー・ディッキンソン

このキャストの特徴は、一人何役も兼ねる配役であろう。ホフマン物語ではこれが普通なのかどうか知らないが、面白い試みだと思う。歌舞伎では一人二役というのはあるけど今回は一幕毎の役割変更なので、歌舞伎ほどの早替りは必要なかった。

管弦楽はハンブルク国立歌劇場管弦楽団、指揮はケント・ナガノ

簡単なあらすじは、主人公の詩人ホフマンが、歌う人形のオランピア、瀕死の歌姫アントニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタと次々に恋に落ちるが何れも破綻する自身の失恋話を語り、最後には現在想いを寄せる歌姫ステラへの恋にも破れる内容。

観た感想を述べよう

  • 第3幕でなぜアントニアが蝶のように大きな羽をつけているのか、蝶の標本が飾ってある円筒形の部屋ににいてアリアを歌う、「キジバトが逃げた、甘い思い出があった、あまりに苦いその残像、咲いたばかりの花よ、私に教えてくれ、あの人が今でも愛しているか」というようなもの、自分は蝶で花に聞いている、ということか。
  • 第4幕の中で、舞台に絨毯を丸めたものを持ってきて広げるところがあるが、この絨毯というか床敷はどういう効果を狙ったものなのか最後までわからなかった。
  • 第1幕と第5幕で友人のニクラウスが黒の上下の衣装を一瞬で上下の赤の衣装のミューズに変るところがある。歌舞伎の「引き抜き」のようなイメージだが歌舞伎の場合、役者の後ろに後見がいてさっと衣装を引き抜き持ち去るというものだが、このオペラの場合、ニクラウスが一人でやってのけたのはすごいと思った。これは歌舞伎のアイディアをオペラでも応用したものなのか、その逆なのか?
  • 最初から最後まで天井から見えないひもでつるされて空中をさまよう役者がいるが、それが何を意味しているのかわからなかった。ただ、ミューズが最初に現れるときに一緒に少し背の低いもう一人の同じ服を着た同じイメージの女性がでていたので、その彼女が空中をさまよっていたのか。最後のカーテンコールの際にミューズ(アクロバット)、ホフマン(アクロバット)として紹介されていたので、やっぱり役割はそういうことなのだろうとわかったが、なぜこの役が必要なのかはわからなかった。
  • 色彩豊かな演出だが、幕が進んで行くに従い、地味になっていった、特に4幕はヴェニスが舞台だが夜のイメージで暗く、ライトアップでカラフルにもしていないが、ヴェニスのイメージには合わないと思った。
  • カーテンコールの際、客席が映るが空席が目についた


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