21回目

大きい声が外まで漏れている。
決して喜びの声ではなく
怒りと悔しさの声である。
数分して、鼻を啜りながら出てきて
泣いた後がわかる。
この人は、母親だろうか？
それとも奥さんなのか？
兄妹なのか？
ここへ来るまでに、心の整理が
できていなかったのだろうか？
私も去年、6月頃には
泣き叫び、息子へ悔しさを
ぶつけたのを覚えている。
この人も、同じ気持ちなんだと思う。
誰にも相談できなくて
家族の秘密が増える。

息子は笑顔であったが
少し元気がないように思えた。
この子に、どんな辛い目に
あっているのか、予測できないまま
時間が過ぎて
蝉が鳴き出し、暑い夏が
やってくる。
どうか、今年は涼しい夏に
なってほしいと願う。

20回目

息子へ会いに行くのに電車待ち
していたら、今回の件で出会った人から
電話があった。
ドキドキしながら電話に出る。
少しの期待を抱きながら
内容としては、特に期待するものでは
ないが、会いたいとのこと。
それでも、１%の可能性を自分の中で
駆け回る。

息子と16日振りに会い
相変わらずの生活に
私と会うことに嬉しそうに
している姿は、少しホッとする。
ただ、いつも思う。
何故？こんな事になって
未来に対しても不安を抱いてしまうのか？
私の息子で、いつまでも
いてくれるだろうか？

先日、仕事場でお客様から
嬉しい言葉を頂いた。
介護の仕事をしてて
一番嬉しい瞬間である。
「あなたは、良く気がつき配慮が
あって、すごく好き。辞める人が
多いけど、辞めずに上を目指しなさい」と
以前の職場でも、ご家族から
嬉しい言葉やお手紙をいただいたり
資格よりも、一番嬉しい。
長く介護をやっていると
どこか流れ業務になりがちで
一呼吸を取る必要があるように思う。
その一呼吸、ペースを落とした時に
何よりお客様に目を向けようと思う。