ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)生田 武志筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
野宿者に対して「仕事をしようともしない(から野宿をしている)」という
発想は、「労働市場では捜せば仕事はあるはずだ」という前提の上で成立する。
しかし、失業がある程度以上増えれば、個人の努力にかかわらず非自発的「失業
者」は必ず存在する。
「家に帰ればいい」という発想は、「家族・親戚は無条件に相互扶助するもの
だ」という前提の上で成立する。しかし、世界的に進行する家族像の変容、多様化
は、そうした前提を徐々に無力化している。
「福祉とか、困った人が相談に行くところがあるはずだ」という考え方は、
「国家(行政)は、生活に困った人に対する社会保障を用意している」という
前提の上で成立する。しかし、社会保障給付費総額の対国民所得比を国際比較する
と、日本は先進諸国の中ではきわめて低い水準にあり続けてきた。一般に、日本の
社会保障の特徴は、それが「行政」ではなく「家族」と「会社」によって担われて
きた点にあるとされている。