Wind Letter

移りゆく季節の花の姿を
私の思いを
言葉でつづりお届けします。
そっとあなたの心に添えてください。

北陸の街

2024-01-11 15:39:52 | 詩作品
2024年1月11日(木)
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 元旦から石川県に起きた大地震には驚かされました。
石川県の地形のなせる被害状況を知るたびに胸が痛くなります。
早い復興と被災者の皆様の日常が戻られることを
そして、心の安寧を願うばかりです。これからの寒さをどう乗り切ればよいか案じられます。

輪島の朝市の街が延焼してしまった悲しい知らせを映像で見ました。
天災の被害による人間の悲しみを言葉で拭うことはできないかもしれませんが
輪島の旅を楽しませていただいた御礼に、その時書いた詩作品を掲載したいと思います。
                                                                                                     

                                          高安ミツ子
 
 
   
 
 

 時の嵐に壊されることなく

 その歳月を共に語れる喜びを

 二組の夫婦は

 老いる思いを後ろに回し

 旅の風に愛おしさを結びながら

 粉雪が舞う北陸の街に下りました


 雪に包まれた

 町も山も海も静かに生きています

 打ち寄せる荒波と共に

 重ねた塗り物の伝統は澄んだ声で

 私の心に美しいかんざしをつけてくれます

 輪島の冬は時計が止まっています


 ゆきずりの私には見えないけれど

 この町が流したいくつもの涙が作る優しさなのか

 雪の静けさは赤い椿を連想させ

 私に生きるめがねをかけてくれます


 弟夫婦の肩にも

 雪は降りかかり

 過ぎてきた時間だけ

 鬢(びん)が白くなっています

 弟の後姿には疲れがみえます


 雪女に操られているように

 降り続ける雪 雪 雪

 忘れていた母の声が落ちてきます

 凍えている弟の心に

 母よあなたの温かい息をふきかけてほしいのです


 ブリの丼を食べる今日の旅は

 海鳴りが遠くに聞こえます

 輪島の雪は正月を降り続いています
 



                 

コメント (1)
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