春は忙しそうですが
私は急ぎません
ここちよい風に吹かれて
ゆっくりと春の幻想に酔いしれたいのです
校舎の窓から見下ろした10代の景色が
ふと蘇(よみがえ)ります
ひと組の男女が歩いていく後ろ姿を
菜の花が優しく包むように咲いて
春は大画面にねそべっています
色の白い女学生が
学生服に寄り添って歩いています
うらうらした思いが
うらうらした感情がみえていました
何故か女学生の右足は細く
歩くたびにスカートが激しく揺れるのは
足が悪いからでしょうか
陽炎のように遠のいていった二人の姿
映像を切り落としたような二人の春の輝きに
南風が運ぶオカリナの音色が聞こえ
春に潜む哀しさを知りました
過ぎて行く時をはかるように
陽ざしは校舎を明るく包んでいましたが
私の未来は見えないままでした
町を囲む連山は
二人の恋心を包んでくれたでしょうか
遠い時間の二人の姿が今も美しく思えるのは
言葉を越えた私のあこがれでしょうか
春の匂いはひらひらと私をまさぐっています
蝶が菜の花にとまって
フフフフとくすぐっています
変わることなく 今年も春は
空や樹木や大地を絡め
人の心に生きる息吹を塗りこめています
3月も終わりになりあと数日で新しい元号に変ります。
私もずいぶんの時間を生きてきたものだと思います。
87歳で他界した義父が人生はあっという間であったと
よく話していましたが
正しくその心境になりつつあります。
この頃テレビはあまり面白くないと思っていますが
【ポツンと一軒家】という番組を見ています。
山の中の一軒家を訪ね、そこで生活している人を紹介する番組
であります。
そこには高級ブランド品を集めたような派手さはありません。
しかし、それでいて生きていくことの美しさを感じるのです。
愛しているというような安い言葉を使わずとも長い時間を夫婦
として寄り添ってきた輝きがあるのです。
自然に囲まれ自然と共に暮らしている中にはご苦労もあろうが、
実に良いお顔のご夫婦に胸が熱くなるのです。
雄弁に語らないだけ生きることの深さを感じるのです。
CMで放映されている健康食品や美容化粧品等は人の気持ちを
あおるように、たえず騒いでいますが、
それとはかけ離れた静かな生き方をそこには感じるのです。
春の花々が咲きだしました。ミモザアカシア、諸葛菜 木瓜(ボケ)、
貝母(まいも)が咲いてこれから春は忙しそうです。
(2019.3.27)