晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

山と本が好きな人へのオススメ 辻原登作『闇の奥』

2010年05月26日 | 
太平洋戦争末期、北ボルネオで気鋭の民族学者・三上隆が忽然と姿を消した。彼はジャングルの奥地に隠れ住むという倭人族(ネグリト)を追っていたという。三上の生存を信じる者たちによって結成された探索隊は調査をすすめるうち、和歌山からボルネオ、チベットへと運命の糸に導かれていく。(ブック紹介より)

土日以外はほとんど家に引きこもり、本、映画の世界に浸かりこむ私を気遣って、poleが出勤前に「不健康な時間を送らぬように・・」と釘を刺して出かけたのに、またもや和歌山県熊野地方の大塔山、それからボルネオ、最後にはチベットまで彷徨ってしまいました。

『闇の奥』を読み進みながら、私は小学生の頃読んだ「床下の小人たち」を思い描きました。家の中でボタンやピンが無くなってしまうのは、コロポックルという小人達が住んでいるからと云うお話しにすっかり魅了されたのは昔のこと。
ネグリトは蝶と縁が深く、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、ネウエモゲニアゲハなどのプクプク(蝶の意味)が飛翔する所に住んでいるのでした。
探検隊はキリシマミドリシジミが群れ飛ぶ蝶道に導かれジャングルの奥深くまで分け入って行きます。私もずっと彼らと一緒に行動しているような錯覚に陥りました。ボルネオのシャクナゲやブナに似た神ノ木と呼ばれているマンガリスの大木などは、その入り口に通じる道がありそうですもの。なぜなら、私もいつか3次元への世界や、タイムスリップできる扉にぶつかるのではと、想像して山中を歩いている一人だからです。
和歌山で起きたカレー殺人事件や、中国とチベット自治区との政治的なリアルな問題も含まれてあると、ネグりト族が現実味を帯びて来て、奇譚とは片付けらなくなってきます。会話にスケアクロウの映画シーンなども織りまぜられ、映画好きな私は「そんなシーンがあったっけ?」ともう一度見直したくもなりました。



さて、この三上隆には鹿野忠雄なる実在するモデルがいました。
同題名で『闇の奥』が英国人コンラッドによって書かれていますが(コッポラによって『地獄の黙示録』と映画化)辻原さんは敢えてこのタイトルを引用したようです。
彼は故郷和歌山を愛し、山を登る作家さんだろうと確信しています。山の描き方、道迷いした時の恐怖、V字谷を遡行する描写など山への畏敬が随所に溢れていました。
山好きで本が好きな人ならよりはまりそうです。
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