蔵書目録

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「料理 一週間の惣菜」、「西洋菓子の製法」 (1905.3)

2020年09月07日 | 趣味 2 絵葉書、鉄道、料理、関東大震災他

 

 料理     石井泰次郎

   一週間の惣菜

一日
  朝。《煎 いり 物》    かさご。
    《汁 しる 》     摺 すり 流し魚、つみ若布 わかめ。
    《香物 かうのもの 》 何にても。
    《煮物》        はんぺい、つくいも、みつ葉。
    《飯 めし 》
  晝 ひる 。《ぬた鱠 なます 》 あさりむきみ、うど、ちさ、からし酢みそ。
    《汁》         小つみ入 いれ 、五分菜 ごぶさい 。
    《香物》        何にても。
    《煮物》        火取 ひどり うを、れんこん、ひじき。
    《飯》
  夜 よ 。《皿》      今出川豆腐、すりせうが。
    《香物》。
    《湯漬飯 ゆづけめし》
二日
  朝。《煮物》        あげ豆腐、靑菜、からし。
    《汁》         干 ほし 大根、若布。
    《香物》。
    《千代久 ちよく 》  白和 しらあへ のうど。
    《飯》
  晝。《酢和 すあへ 》   油揚皮 あげかわ 、こんにやく、大こん、九年母 くねんぼ 。
    《汁》         燒豆腐、小椎茸。
    《香物》。       
    《煮物》        飛龍頭、きざみこんぶ。
    《飯》
  夜。《濃醬 こくしやう 》 さゝげ、里いも、蓮根、木耳 くきらげ 。
    《香物》。
    《湯漬飯》
三日       
  朝。《皿》         淺葱 あさつけ 、うど、からし酢みそ。
    《汁》         干大根、ちさ。
    《香物》。
    《煮物》        大和芋、そぎこんにやく、せり、葛引 くづひき 。       
    《飯》。
  晝。《膾》         わらさ、白髪大根、靑海 あをみ 海苔、せうが。
    《汁》         竹輪、さゝかしうど。
    《香物》。       
    《煮物》        いか、小口里芋、みつ葉せり。
    《飯》
  夜。《燒物》        せいご。
    《猪口 ちよく 》   ほし大根、五分菜。
    《平皿》        石燒とうふ、こんぶ、からし。
    《香物》。
    《湯漬飯》
四日。
  朝。《平皿》        ぶり、ちりめん麩 ふ 、漬 つけ わらび。
    《汁》         獨活 うど 、燒海苔。
    《香物》。
    《田夫 でんぶ 煮》  黑豆、氷ごんにやく、小梅干 こうめぼし 、生姜。
    《飯》
  晝。《三鹽漬 みしほづけ 》  わらさ、蓮根、せうが。
    《汁》         くづし豆腐、若布。
    《香物》。       
    《煮物》        つとはんぺい、にんじん、きざみさがらめ。
    《飯》
  夜。《蕎麥切 そばきり 》  こんにやく、紅おろし。
    《香物》。       
    《湯漬飯》
五日
  朝。《煮物》        竹輪、里いも、ひじき。
    《汁》         むきみ、大根。
    《香物》。
    《浸物 ひたしもの 》 ほうれん草、胡麻。
    《飯》。     
  晝。《煎物》        いしもち。
    《汁》。        燒どうふ、わり菜。
    《香物》。       
    《煮物》       たらもどきのかさご、靑こんぶ、こせうの粉 こ 。
    《飯》
  夜。《濃醬》        角豆腐 かくどうふ 、もみ海苔、花かつを。
    《香物》。
    《湯漬飯》
六日
  朝。《煮物》        小串鰤 ぶり 、燒どうふ、くき菜。
    《汁》         干大こん、若布。
    《香物》。
    《猪口》        蓮根、こま山椒。
    《飯》。     
  晝。《和膾 あへなます 》 むきみ、うど、ちさ、酢みそ。
    《汁》         小つみ入 いれ 、みつ葉。
    《香物》。       
    《煮物》        はんぺいの餡 あん かけ、すり生姜。
    《飯》
  夜。《平皿》        貝の柱、とうふ、柚子。
    《香物》。
    《湯漬飯》
七日
  朝。《平皿》        火取うを、蓮根、きざみこんぶ。
    《汁》         はんぺい、春菊。
    《香物》。
    《猪口》        切干大根、みつ葉。       
    《飯》。
  晝。《膾》         ぶり、たんざく大根、せうが。
    《汁》         つと豆腐、わり菜。
    《香物》。       
    《煮物》        赤貝、ぜんまい、里いも。
    《飯》
  夜。            八盃 はちはいとうふ 、もみのり、紅おろし。
    《香物》。
    《湯漬飯》。

 〇摺流し魚      魚肉をおろし、皮をさり、細かくきりたゝきて、擂鉢 すりばち にてすり、汁の内に入れたるなり。
 〇つみ若布      若布を水につけ洗ひて、指にてつみてもちふ。
 〇半ぺい       魚のすり肉 み 半分、薯蕷 やまのいも 半分をよくすりまぜ、丸く取 とり て湯煮したるなり。
 〇ぬたなますのうど  たんざくに切り、からし酢みそは、味噌三十匁 もんめ 、砂糖十二匁、水六勺を合 あは せ煮て、後に酢三勺、からしとを合せてつくる。
 〇五分菜 ごぶな   菜 な を五分に切りたるなり。     
 〇火取うを      金網にてあぶりたるなり。
 〇れんこん      小口切にして、面をとりて煮る。
 〇干大根       湯煮してもちふべし。       
 〇白和        味噌と豆腐にてつくる。砂糖を入れる。
 〇あげかは      あげを二枚にへぎて、中の白を出 いだ し、皮のみを切りて用ふ。
 〇濃醬        白味噌を十分に、やまのいもを湯煮し漉 こし たるを五分合せて、砂糖とだしを合せ、汁に仕立てる。
 〇葛引        葛粉十匁を水八勺にとき、だし四分 しがふ 、醬油とき品二勺、みりん一勺二夕 せき 、鹽五分 ごぶ を合せて煮たてたる汁の中に入れ、かきめぐらしてつくる。     
 〇石燒どうふ     豆腐を薄く切 きり て、玉子燒なべにて燒き、こげめをつけ、味をつけて煮る。     
 〇黑豆        湯煮をよくし、砂糖と水につけて、鹽少し入れて煮るべし。前夜より水につけ置き、又は蒸 むし て煮る。
 〇紅おろし      大根の中にあなをほそくつくりて、蕃椒 とうがらし をさしこみ、おろし金にておろしたる物。

 西洋菓子の製法  畔居田郎

 日本流の臺所では、歐米諸國の樣に、ストーブの設備がないので、七輪とテンピとで代用させるのですから、勿論立派な大袈裟な事は出来ないのみならず、加減の判らぬ初めの程は兎角失敗するものです。然し乍ら苟 いやし くも二十世紀の新家庭に主婦たらむ方々は、大膽に毎度仕損じる覺悟で試して御覽なさへ。

      ●珈琲 こーひー のたて方  

 珈琲をたてる器に、二重になつて居て、中のに珈琲粉を入れて、湯を注 つ ぎ込む樣に出來てるのがある。此器を用ふる時には、茶を出す時の樣に、善く激 たぎ つた湯を一旦湯冷ましに移し、暫くして注ぐ方宜し。煮立ちて居る湯を注ぐ時は、一度に色が出過ぎて香りが乏しくなる。
 然し此器の缼點は、最初湯を注いだ當座は、夥 おびたゞ しく早く通るけれど、珈琲粉が漸く濕 うるほ ふて膨 ふく れて來ると、底の小孔 こあな が塞 ふさが りて湯の通りが悪くなる。之を自然に任せて置けば冷め過ぎるし、攪き立てれば粉が一所に下 お りるのである。
 其れ故、木綿の袋に珈琲粉を包んで煮る方が宜し。其法、先づ湯を沸かし、暫らく煮立たせたる後、珈琲の袋を入れ、遠火で煮立たない限りで溫 あたヽめ置く。此中に鷄卵 たまご を一個割りて、身も殻も諸共 もろとも に入れば、黒き濁りが取れて澄んだ良き色に出る、若し何なら殻計り入れても宜し。
 珈琲の粉 こ と湯の分量は、コップ一杯の湯に對し、スープの匙 さぢ に山盛一杯の珈琲粉の割合で丁度宜し。
 珈琲粉は、永くも一週間位で気が抜けて香りが無くなるから、時折にしか用いない家では、豆の儘 まま で買ひ求め置き、珈琲挽 ひき 機で其時々必要丈け挽いて用ふる方宜し。

 珈琲挽機の最小のものは、壹圓貮拾錢位、銀座の龜屋、其他西洋食品等を販賣する店にあり。

      ●ドーナツ

 是は米利堅粉 めりけんこ に砂糖や鷄卵等を混ぜて、油煎 あぶらいり した菓子の總称で、數種ある。其一つ 
    ニュー、エングランド、クッキング
    スクール、ドーナツ

 原料
    米利堅粉 めりけんこ         コップ 二杯
    鹽 しほ               茶匙  四分ノ三杯
    酒石英 くりーむたーたー       仝   一杯
    肉豆蒄 なつめぐ (粉にしたるもの) 仝   四分ノ一杯
    肉桂  しんなもん(粉にしたるもの) 仝   四分ノ一杯
    バタ                 仝山盛 一杯
    砂糖                 コップ 半杯
    腐敗牛乳               仝   半杯
    鷄卵 たまご                 一個
    曹達 そうた             茶匙  四分ノ三杯

   若し腐敗せざる牛乳を用ふる時は曹達を用ひず、之れ曹達は牛乳の腐敗を戻す為に用ふるものなればなり

 丼 どんぶり の中に、砂糖とバタとを入れ、二本の指にて能 よ く練り混ぜ、之れに
 鷄卵を割りて加へ、どろどろになる迄攪 か き混ぜ、
 米利堅と酒石英とを一所に篩 ふる ひ込み、
 鹽、肉豆蒄、肉桂、牛乳、曹達等を加へ、五本の指先にて、静かに軽くまんべんなく濕 しめ り気が通る樣に攪き回し、
 板の上に粉を少し振り散 ま き、其上に取り出し、
 猶 なほ 又其上より粉を少し振りかけ、熨棒 ろーらー にて輕く押 おさ へ乍 なが ら、厚さ三分位に熨 の す、次に
 ドーナツ抜 ぬき にて、一つ宛 づヽ 輪に抜き取り、
 脂 へつど を沸かしたる中に入れて狐色に揚げる、ふつわりと膨 ふく れるなり、
 抜き取りたる中のぼちも揚げて良し、
 揚げたらば直 す ぐ砂糖にてまぶせる、

      ●スチウアップル

 林檎 りんご を煮て食する法なり、
 林檎の皮を剥 む き、程よく割りて核心 しん を去り、各々を薄く削 そ ぎ、
 鍋に入れて、林檎の七分目程水を入れて煮る
 煮立ち始めたら、焦げ付かぬ樣絶へず匙 さじ 又は杓子にて攪き回す、
 林檎は煮へるに従って軟 やはら かになり、熔 と けてどろゝとなる、
 其時火より下 おろ し、好みに砂糖少し加へ丼に移して冷 さま す、
 茶匙 ちゃさじ にて食す、暖きより冷 さ めたる方味宜し、

      ●ビスケット

 ビスケットにも色々の種類がある、

      ●ウエーファービスケット

 煎餅の樣に薄く小さく作るビスケットなり。
     米利堅粉  一斤
     砂糖    二百匁 もんめ 
     バタ    七匁
 を一所に丼に入れ、両手の掌にてよくゝ揉み混ぜ、
     鷄卵の白味 二個 ふたつ
 を鷄卵攪乱器にて充分泡となして加へ、猶
     牛乳又はクリーム 少々
 を加へて柔かき餅位にねたゝになし、布を掩 おほ ふて三十分計 ばか り置く、
 其後板の上に粉を少々振り散 ま き、其上に取り出して又其上より粉を振りかけ、熨棍 ろーらー にて煎餅の厚き位に展 のば し
 ビスケット切にて一つ宛 づヽ 抜き取り、ブリキの板に上に並べ、餘り強からぬ火加減にて、テンピにて、三四分間燒く、
  
  ビスケット切には、大小並に種々の型あれども、體裁を撰ばざれば、ナイフにて好む樣に小さく切りて宜 よろ し、

 ●ス井ートワインビスケット

     米利堅粉  一斤半
     バタ    二十八匁 
     砂糖    二十八匁
 を丼に入れ、両手の掌 てのひら にてよくゝ揉み合せ、
     鶏卵    二個
 を黄身と白味と別々に鶏卵攪乱器にて泡となして、一所に加へ、
     牛乳又はクリーム 少々
 を加へ、ねちゝする位の固さになし、
 板の上に取り出し、熨棍 ろーらー にて折り返すゝ熨 の し、薄く展 のば し、ビスケット切にて抜き取り、ブリキ板の上に並べ、テンピの餘り強からぬ火加減にて、五六分間燒く、

 上の「料理」と「西洋菓子の製法」は、明治三十八年三月一日発行の 『新家庭』 第一巻第四号 新家庭社 に掲載されたものである



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