入院治療ヲ請フ順序
第 一条 入院ヲ請フ者ハ患者ノ族籍姓名職業年齢ヲ記載シ医局ニ通シ医員ニ面会シ患者ノ既往現今ノ症状ヲ詳細ニ申述スヘシ
第 二条 患者入院ノ際証書ニ願主証人ノニ判ヲ以テ入院証書事務局ニ納ム可シ
第 三条 入院賄料並ニ看護人料共一日分 上等 三拾銭 中等 ニ拾銭 下等 拾五銭
第 四条 患家ノ貧ニシテ会計ノ乏キニ致ル者ハ入院患者ノ多少ニヨリ施療施薬タルベシ
第 五条 診察料患家ノ随意を以テ納ム可シ
第 六条 薬品或ハ牛乳鶏卵肉羹汁別菜等別ニ之ヲ計算ス可シ
第 七条 患者入院諸入費料前納ニシテ一周ノ費ヲ納ムヘシ
但シ患家ノ都合ニヨリ壹ヶ月或ハ二ヶ月分預ケ置ク可シ若シ入費遅滞スルトキハ証人ヲ督促スルコトアルヘシ
第 八条 狂症暴劇ノ患者ハ患家ノ請求ニヨリ往診スルコトアル可シ
但シ往診料ハ定則ノ通リ会計局ヱ納ムヘシ
第 九条 往診料 壹里以内里程金七拾五銭 壹里ヨリ以上 金壹円 壹里宛里程増スニ随ヒ金壹円ヲ増金ス
但シ途中附添看病人料車代別段患家ヨリ払フヘシ
第 十条 患者ノ衣類所持物ハ事務局ニ預リ尤衣類洗濯ハ患家ノ自費タルベシ
第十一条 入院料諸入費遅滞セシ者院内ニ差支在之時ハ何時ニ限ラス臨時退院セシムル事
第十二条 衣類ハ勉メテ浄潔ナルヲ要トス故ニ事務掛ヨリ衣類ヲ催促スル時ハ速ニ送致スベシ若シ遅滞スル時ハ患家ノ依頼ヲ待タズ假リニ院ノ雇手ニ命シテ直ニ之ヲ洗濯セシムルコト
第十三条 患者入院中一切医員指図ヲ受クハ素ヨリ父子兄弟患者ノ為ニ面会ヲ乞ト雖モ容体ニヨリ面会ヲ許サス帷簾ヲ隔テ容姿ヲ望マス者ナリ或ハ絶テ其形影ヲ視セ難キコト之ナキニアラズ是実ニ治療ノ力ヲ尽スノ真意ニシテ患家ハ決シテ医ノ之ヲ疎隔スルニアラザルヲ知ル可シ患者ニ面会スレバ喜哀共ニ精神ニ感動シ害アルガ故ニ面会ヲ許シ難キ者トス
第十四条 患者容体ニヨリ面会ヲ許ス者ハ永ク時間ヲ移スベカラズ且ツ患者ニ精神ヲ害スル事件ハ決シテ之ヲ語ルヘカラズ
但シ談事全ク終ラズト雖モ患者ニ害アルト認ムルトキハ中途ニ之ヲ謝絶スルコトアルヘシ
第十五条 病者ニ通スルノ信書ハ総テ放緘シテ送リ来ルベシ医局ニ於テ内検シ若シ害アリト認ムル者ハ之ヲ患者ニ渡スヲ得ス故ニ封緘ノ書ハ直ニ郵書ニ託シ返却スベシ
但シ入院患者ヨリ自宅ニ通ズル信書ハ同ジク内検スルコトトス
第十六条 患家ノ都合ニヨリ患者ニ附添フ者ハ院外ヘ勝手ニ外出スルヲ禁ス医ノ許ヲ得テ外出スベシ
第十七条 患者入院療養中容体ニ依リ総テ精神保養ノ為メ院外遠近ニ限ラス遊歩運動セシムルヲ要トス故ニ外出ノ節着スル衣類別段差入レ置ベシ
明治十五年十月十六日 京都上京区第三組木瓜原町
私立
木瓜原狂病院
寺町蛸薬師太田 印刷