“行動に移す” がテーマのミーティングで、あらましこんなことを語ってくれた仲間(仮にAさんとします)がいました。
「アルコール専門病院を退院して、現在、7ヵ月目になります。会社は休職扱いになっていますが、そのうちきっと自主退職を求めてくると思っています。そうなったら応じざるを得ないと考えています。
二人の子供は高校、中学に通っていて、失業したらこの先学校はどうなるか、・・・生活自体がどうなるか、・・・そんなことばかり考えています。
行動に移さなきゃ・・・というのはわかるのですが、どうしたものか(途方に暮れ)、なかなか考えられないでいます。」
自分にも覚えがあるだけに、淡々と語ったAさんの辛さは身につまされるものでした。もし助言を求められたら何をどう話すべきか? と考えてはみたものの、言葉が見つからないままどこか引っかかるモノだけが残りました。
私が違和感を覚えたのは、自主退社をすんなり受け容れるというAさんの淡泊な考え方でした。
大事なモノを手放さざるを得ないという、これと似た状況にかつて私も途方に暮れたものです。アルコール問題で妻に家を追い出されてやむなく別居となったとき、私も暗澹たる気持ちに落ち込みました。それでも崩壊した家庭の再建には意外に楽観的でいられました。
先ず私が考えたのは、息子たちを何としても守らなきゃならないということでした。そのためには金が必要であり、仕事を辞めるなど考えもしなかったのです。何かにつけだらしなくなっていた自分に一定の非があったことは認めていましたが、それでもそれは酒のせいで、アル中などとは考えもしませんでした。妻に未練もありましたし、こんなことでは終われないというプライドもありました。これらが私を後押ししてくれたのです。ただ、まだアル中ではないと否認していたことが後に尾を引いたのだと思います。
ミーティングから大分後になって気づいたのですが、あのときのAさんの話は “自己憐憫” だったのでは(?)でした。「なぜ自分がこんな目に・・・」と、言外に臭っていたのです。
断酒歴9~10ヵ月ということは、ドライドランク(PAWS)の好発時期に当たります。恐らくAさんは、ドライドランク(PAWS)の真っ最中にあったのではないでしょうか。その一方で、自分に非があったとハッキリ認め、ジタバタしてもしょうがないとも考え始めていたのでしょう。そんな微妙なところにあってなお “自己憐憫” の気持ちの方が勝ってしまい、「どうしたものか分からない」という言葉になったものと思われます。ドライドランク(PAWS)の最中ならこれもあり得る話です。
渦中にあると、ドライドランク(PAWS)とはなかなか自覚できないものです。そんな状態では助言など聞いてくれませんし、むしろ反感を持たれるのがオチです。そんなときは黙って聞いてやるのが一番です。
そんな状態でも声に出して話したことで、Aさん自身も “自己憐憫” に気付けたのではないかと思います。黙って聞いてもらえるミーティングは、ガス抜きと “気づき” の一挙両得にもってこいなのです。
アルコール専門病院に入院していたのなら、病気についての教育は受けていたはずです。再飲酒に誘う否認やドライドランク(PAWS)の危うさも学んでいたことでしょう。断酒中にやってはいけないこと、是非やってみるべきことも知っていたはずです。
それらの知識を土台にミーティングに参加し、自分の頭を整理して悩みをありのままに語ったのですから実に理に適った行動でした。Aさんの採った行動は立派の一言に尽きます。
断酒継続には、“最初の一杯” を何としても避ける強い意志を持ち、規則正しい生活リズムを刻むだけで十分です。そのためなら心を鬼にして非情に徹することも必要です。断酒を続けさえすれば状況は変わり、状況によって考え方も変わります。あれもこれもと浮気していては、どれも手にすることはできません。
将来への不安は色々あっても、今やるべきことはただ一つ、アルコールが抜け切るまで断酒一つに絞ること。酒を一切飲まないでいれば必ずアルコールは抜け切ります。万が一、助言を求められることがあったなら、このように私は言うつもりです。
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「アルコール専門病院を退院して、現在、7ヵ月目になります。会社は休職扱いになっていますが、そのうちきっと自主退職を求めてくると思っています。そうなったら応じざるを得ないと考えています。
二人の子供は高校、中学に通っていて、失業したらこの先学校はどうなるか、・・・生活自体がどうなるか、・・・そんなことばかり考えています。
行動に移さなきゃ・・・というのはわかるのですが、どうしたものか(途方に暮れ)、なかなか考えられないでいます。」
自分にも覚えがあるだけに、淡々と語ったAさんの辛さは身につまされるものでした。もし助言を求められたら何をどう話すべきか? と考えてはみたものの、言葉が見つからないままどこか引っかかるモノだけが残りました。
私が違和感を覚えたのは、自主退社をすんなり受け容れるというAさんの淡泊な考え方でした。
大事なモノを手放さざるを得ないという、これと似た状況にかつて私も途方に暮れたものです。アルコール問題で妻に家を追い出されてやむなく別居となったとき、私も暗澹たる気持ちに落ち込みました。それでも崩壊した家庭の再建には意外に楽観的でいられました。
先ず私が考えたのは、息子たちを何としても守らなきゃならないということでした。そのためには金が必要であり、仕事を辞めるなど考えもしなかったのです。何かにつけだらしなくなっていた自分に一定の非があったことは認めていましたが、それでもそれは酒のせいで、アル中などとは考えもしませんでした。妻に未練もありましたし、こんなことでは終われないというプライドもありました。これらが私を後押ししてくれたのです。ただ、まだアル中ではないと否認していたことが後に尾を引いたのだと思います。
ミーティングから大分後になって気づいたのですが、あのときのAさんの話は “自己憐憫” だったのでは(?)でした。「なぜ自分がこんな目に・・・」と、言外に臭っていたのです。
断酒歴9~10ヵ月ということは、ドライドランク(PAWS)の好発時期に当たります。恐らくAさんは、ドライドランク(PAWS)の真っ最中にあったのではないでしょうか。その一方で、自分に非があったとハッキリ認め、ジタバタしてもしょうがないとも考え始めていたのでしょう。そんな微妙なところにあってなお “自己憐憫” の気持ちの方が勝ってしまい、「どうしたものか分からない」という言葉になったものと思われます。ドライドランク(PAWS)の最中ならこれもあり得る話です。
渦中にあると、ドライドランク(PAWS)とはなかなか自覚できないものです。そんな状態では助言など聞いてくれませんし、むしろ反感を持たれるのがオチです。そんなときは黙って聞いてやるのが一番です。
そんな状態でも声に出して話したことで、Aさん自身も “自己憐憫” に気付けたのではないかと思います。黙って聞いてもらえるミーティングは、ガス抜きと “気づき” の一挙両得にもってこいなのです。
アルコール専門病院に入院していたのなら、病気についての教育は受けていたはずです。再飲酒に誘う否認やドライドランク(PAWS)の危うさも学んでいたことでしょう。断酒中にやってはいけないこと、是非やってみるべきことも知っていたはずです。
それらの知識を土台にミーティングに参加し、自分の頭を整理して悩みをありのままに語ったのですから実に理に適った行動でした。Aさんの採った行動は立派の一言に尽きます。
断酒継続には、“最初の一杯” を何としても避ける強い意志を持ち、規則正しい生活リズムを刻むだけで十分です。そのためなら心を鬼にして非情に徹することも必要です。断酒を続けさえすれば状況は変わり、状況によって考え方も変わります。あれもこれもと浮気していては、どれも手にすることはできません。
将来への不安は色々あっても、今やるべきことはただ一つ、アルコールが抜け切るまで断酒一つに絞ること。酒を一切飲まないでいれば必ずアルコールは抜け切ります。万が一、助言を求められることがあったなら、このように私は言うつもりです。
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