“棚卸し” というのは手持ちの在庫を調べて明細表を作り、在庫の価値を把握することだそうです。負債の明細作りも “棚卸し” というのでしょうか?
酒浸りになるずっと以前から、お酒類の在庫管理には長けていました。サイドボードにはウイスキーかブランディー、冷蔵庫にはビール、以前は自宅でお酒類を切らしたことがありません。残り少なくなった瓶や缶があると、すかさず新品を補充していました。たまに空瓶が見えて切らしたと知ると、別に飲みたいわけでもないのに、妙に落ち着かなかったものです。退職が間近になる頃からは、専ら低アルコールの発泡酒を飲んでいました。アルコールで荒らしていた胃へ少しでも負担をかけたくなったからでした。冷蔵庫には発泡酒の缶がいつも半ダース以上は確保していました。マメマメしくやっていた在庫管理は病的でもありました。
いつでも品物を切らさないよう買い置きするクセは、断酒後の今も意外なところに残っています。すっかり甘党に変身してしまったので、対象が酒から菓子類に代わりましたが・・・。初めは “どら焼き”、次いで小振りの “チーズ・ケーキ”、再び “どら焼き” に戻り、今は “フルーツ・サンド” に移りつつあります。糖尿病を抱えているので、菓子1個当たりのカロリー含量は200 kcalまでを目途としています。カロリー制限から1個だけ、せいぜい2個までしか食べられないにもかかわらず、いつも余剰在庫を抱え続けています。お酒のときと同じで、買い置きが切れそうになると不安になるのです。意識・無意識にかかわらず、身に染みついたクセはなかなか変わるものではありません。
さて、本題の “棚卸し” のことです。買い置きのクセはまだ残っていますが、もう一方で飲酒問題が原因での心の負債も残っていて、その整理にも取り組んでいます。自分自身も苦しみ、周りの人々をも傷つけた負の資産です。
“棚卸し” という言葉をここに出したのは、自助会Alcoholics Anonymous(AA)の回復のプログラム・ステップ4にある次の一節が思い浮んだからです。
「恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った Made a searching and fearless moral inventory of ourselves.」
AAの発祥の地は米国で、キリスト教圏です。AAでは、本能の赴くままに欲望を駆り立てる性格上の欠点として、カトリックの七つの罪源を挙げています。七つの罪源とは傲慢(pride)、強欲(greed)、色欲(lust)、憤怒(anger)、暴食(gluttony)、嫉妬(envy)、怠惰(sloth)の七つです。その中でも特に傲慢(pride)が最も御しがたく手強いとしています。
私はキリスト教徒ではありませんが、これらのどれにも腑に落ちるところがあり、傲慢(pride)が最悪ということには全面的に同意します。ただ傲慢(pride)については、完全に日本語化した観のあるプライドとした方がより分かりやすいと思います。プライド、言い換えると他人よりも上になりたいという自尊心/我欲が、上昇志向となって私を駆り立てていたのだと納得できたのです。上昇志向が煽ったのは、金銭欲、名誉欲、権力欲という月並みな欲望でした。
想えば在職時代、先輩社員に “嫉妬” し反発したのも、私のプライドが許さなかったからだと思い当たりました。マイナス感情の “嫉妬” に思い当たったのは、“他罰(責)的” と “人付き合い” という二つの言葉の出会いがキッカケでした。
“他罰(責)的” というのは、飲酒が止められない理由(動機)を自分以外の他者の所為とする、アルコール依存症者に顕著な心の障害のことで、専門クリニックの教育プログラムで教わりました。もう一方の “人付き合い” は、AAのある日のミーティングで出されたテーマでした。
これら二つの言葉を耳にしたのは別々の日です。さして意識しないままに何日か経った後、両者が熟成されて融合し、渾然となった結果、思いがけず浮かんできたのが先輩社員に “嫉妬” した在職時代の思い出でした。“嫉妬” は、年齢で3歳しか違わず、学歴でも決して劣っていない、にもかかわらず若くして見事な実績を上げ、遥か上級の幹部まで昇進・昇格した先輩社員の傲慢な態度に向けられたものです。私としては、あまり触れたくない記憶でした。この出来事がキッカケとなり、自分史を綴ることになったのです。
自分の半生の記憶を辿り、過去の自分自身に何故(なぜ?)と問いかけ、時間軸に沿って互いに関連する出来事を物語風に叙述しました。こうした対話を続けることによって、心の反応パターンが把握できるようになりました。心の反応パターン――どのような状況に置かれたら、どのような感情が湧いて来るのか、その際の心の動き方です。嫉妬や怒り、悔しさなどのマイナス感情には手こずってばかりで、その都度飲酒で紛らわせていたのですが、マイナス感情に襲われるときのパターンもしっかり理解できるようになりました。
正体がはっきりせずにモヤモヤしていたことが、言語化することによってはっきりとし、その正体が見えるようになったのです。ものごとを客観的に見ることができ、ありのままに受け入れられるようになりました。この作業を続けたことで、思わぬオマケもありました。自分のしたことが、決して捨てたものではなく、むしろ誇れるものもあったと見直しできたことです。私はこれで心の落ち着きが得られ、平常心を保つことができるようになりました。「ありのままを、ありのままに受け入れる」いつもこの心構えでいることが大切だと分かりました。
私は酒害体験を綴った自分史( “アルコール依存症へ辿った道筋” 35回シリーズ)をこのブログに公開してきました。人間の欲求の中でも最も強いとされるのが承認欲求だといいます。この承認欲求がプライドをけしかけているからこそ、プライドが最も御しがたく手強いとされるのだと思います。ブログに公開することで多くの方に読んでもらうことができ、私の承認欲求は満たされています。とても幸せなことです。
叙述するのではなく、箇条書きや表中への書き込みだけにし、因果関係や相互の繋がりを書かずに済ましていたら、これらの成果は決して得られなかったものと考えています。ですから、ステップ4の訳文の “・・・それを表に作った” の翻訳部分には疑問を感じています。“Made a searching and fearless moral inventory of ourselves.” は、次のように言っているように思えて仕方ありません。
「心にある道徳的な負い目(負債)の仔細を叙述しなさい。恐れずに、その道徳的な負い目(負債)の正体を暴きなさい。」
さらに、私はこのステップ4を、次のように折り紙作りに譬えるのも、考え方をより分かりやすくするのではないかと思っています。
「心の奥で泥に埋まっている過去の記憶をすべて掘り出しなさい。泥をきれいに拭き取って、それぞれの本来の形の折り紙に畳みなさい。そのあとで、ありのままの姿の思い出として再び心の引き出しにキチンとしまいなさい。」
『“心の落ち着き(serenity)”が分かる』と『回復へ―アル中の前頭葉を醒まさせる』も併せてご参照ください。
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酒浸りになるずっと以前から、お酒類の在庫管理には長けていました。サイドボードにはウイスキーかブランディー、冷蔵庫にはビール、以前は自宅でお酒類を切らしたことがありません。残り少なくなった瓶や缶があると、すかさず新品を補充していました。たまに空瓶が見えて切らしたと知ると、別に飲みたいわけでもないのに、妙に落ち着かなかったものです。退職が間近になる頃からは、専ら低アルコールの発泡酒を飲んでいました。アルコールで荒らしていた胃へ少しでも負担をかけたくなったからでした。冷蔵庫には発泡酒の缶がいつも半ダース以上は確保していました。マメマメしくやっていた在庫管理は病的でもありました。
いつでも品物を切らさないよう買い置きするクセは、断酒後の今も意外なところに残っています。すっかり甘党に変身してしまったので、対象が酒から菓子類に代わりましたが・・・。初めは “どら焼き”、次いで小振りの “チーズ・ケーキ”、再び “どら焼き” に戻り、今は “フルーツ・サンド” に移りつつあります。糖尿病を抱えているので、菓子1個当たりのカロリー含量は200 kcalまでを目途としています。カロリー制限から1個だけ、せいぜい2個までしか食べられないにもかかわらず、いつも余剰在庫を抱え続けています。お酒のときと同じで、買い置きが切れそうになると不安になるのです。意識・無意識にかかわらず、身に染みついたクセはなかなか変わるものではありません。
さて、本題の “棚卸し” のことです。買い置きのクセはまだ残っていますが、もう一方で飲酒問題が原因での心の負債も残っていて、その整理にも取り組んでいます。自分自身も苦しみ、周りの人々をも傷つけた負の資産です。
“棚卸し” という言葉をここに出したのは、自助会Alcoholics Anonymous(AA)の回復のプログラム・ステップ4にある次の一節が思い浮んだからです。
「恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った Made a searching and fearless moral inventory of ourselves.」
AAの発祥の地は米国で、キリスト教圏です。AAでは、本能の赴くままに欲望を駆り立てる性格上の欠点として、カトリックの七つの罪源を挙げています。七つの罪源とは傲慢(pride)、強欲(greed)、色欲(lust)、憤怒(anger)、暴食(gluttony)、嫉妬(envy)、怠惰(sloth)の七つです。その中でも特に傲慢(pride)が最も御しがたく手強いとしています。
私はキリスト教徒ではありませんが、これらのどれにも腑に落ちるところがあり、傲慢(pride)が最悪ということには全面的に同意します。ただ傲慢(pride)については、完全に日本語化した観のあるプライドとした方がより分かりやすいと思います。プライド、言い換えると他人よりも上になりたいという自尊心/我欲が、上昇志向となって私を駆り立てていたのだと納得できたのです。上昇志向が煽ったのは、金銭欲、名誉欲、権力欲という月並みな欲望でした。
想えば在職時代、先輩社員に “嫉妬” し反発したのも、私のプライドが許さなかったからだと思い当たりました。マイナス感情の “嫉妬” に思い当たったのは、“他罰(責)的” と “人付き合い” という二つの言葉の出会いがキッカケでした。
“他罰(責)的” というのは、飲酒が止められない理由(動機)を自分以外の他者の所為とする、アルコール依存症者に顕著な心の障害のことで、専門クリニックの教育プログラムで教わりました。もう一方の “人付き合い” は、AAのある日のミーティングで出されたテーマでした。
これら二つの言葉を耳にしたのは別々の日です。さして意識しないままに何日か経った後、両者が熟成されて融合し、渾然となった結果、思いがけず浮かんできたのが先輩社員に “嫉妬” した在職時代の思い出でした。“嫉妬” は、年齢で3歳しか違わず、学歴でも決して劣っていない、にもかかわらず若くして見事な実績を上げ、遥か上級の幹部まで昇進・昇格した先輩社員の傲慢な態度に向けられたものです。私としては、あまり触れたくない記憶でした。この出来事がキッカケとなり、自分史を綴ることになったのです。
自分の半生の記憶を辿り、過去の自分自身に何故(なぜ?)と問いかけ、時間軸に沿って互いに関連する出来事を物語風に叙述しました。こうした対話を続けることによって、心の反応パターンが把握できるようになりました。心の反応パターン――どのような状況に置かれたら、どのような感情が湧いて来るのか、その際の心の動き方です。嫉妬や怒り、悔しさなどのマイナス感情には手こずってばかりで、その都度飲酒で紛らわせていたのですが、マイナス感情に襲われるときのパターンもしっかり理解できるようになりました。
正体がはっきりせずにモヤモヤしていたことが、言語化することによってはっきりとし、その正体が見えるようになったのです。ものごとを客観的に見ることができ、ありのままに受け入れられるようになりました。この作業を続けたことで、思わぬオマケもありました。自分のしたことが、決して捨てたものではなく、むしろ誇れるものもあったと見直しできたことです。私はこれで心の落ち着きが得られ、平常心を保つことができるようになりました。「ありのままを、ありのままに受け入れる」いつもこの心構えでいることが大切だと分かりました。
私は酒害体験を綴った自分史( “アルコール依存症へ辿った道筋” 35回シリーズ)をこのブログに公開してきました。人間の欲求の中でも最も強いとされるのが承認欲求だといいます。この承認欲求がプライドをけしかけているからこそ、プライドが最も御しがたく手強いとされるのだと思います。ブログに公開することで多くの方に読んでもらうことができ、私の承認欲求は満たされています。とても幸せなことです。
叙述するのではなく、箇条書きや表中への書き込みだけにし、因果関係や相互の繋がりを書かずに済ましていたら、これらの成果は決して得られなかったものと考えています。ですから、ステップ4の訳文の “・・・それを表に作った” の翻訳部分には疑問を感じています。“Made a searching and fearless moral inventory of ourselves.” は、次のように言っているように思えて仕方ありません。
「心にある道徳的な負い目(負債)の仔細を叙述しなさい。恐れずに、その道徳的な負い目(負債)の正体を暴きなさい。」
さらに、私はこのステップ4を、次のように折り紙作りに譬えるのも、考え方をより分かりやすくするのではないかと思っています。
「心の奥で泥に埋まっている過去の記憶をすべて掘り出しなさい。泥をきれいに拭き取って、それぞれの本来の形の折り紙に畳みなさい。そのあとで、ありのままの姿の思い出として再び心の引き出しにキチンとしまいなさい。」
『“心の落ち着き(serenity)”が分かる』と『回復へ―アル中の前頭葉を醒まさせる』も併せてご参照ください。
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分からない分野だから・・・
なら、コメントしなきゃいいんですが・・・
私は一滴も飲めません。
働いていた頃宴会の席が苦手でした
時代的に上司が回って来られ注がれると嫌と言えない・・・・
親切な男性が居て隣で口だけつけて・・・と
後は全部飲んで下さり料理の方を私に下さいます。
だから二人分食べて帰っていました。
先日の検査で脂肪肝が強いと言われ
飲めるなら即刻禁酒・・・
甘い物?間食ダメ!と言われ・・・・
きびしいですが、もうそんなに甘い物もいいかな~~と。今まで沢山食べて来たから。。。。
私は暗示にかけます。
甘い物嫌い!嫌い!嫌い!
すると本当に吐き気がして来たりします。
男社会と女社会とでは違うでしょうが・・・一皮むけば皆骸骨。
どんなに偉かろうと美人だろうと。
ならどこで勝負するか(*^。^*)
なんて生意気な事を考えて生きて来ました。
お酒を飲めない方ということなので、少し酒飲みの心理を説明します。
まず、イヤな気分を紛らわせるためお酒に手を出す人の多くは、好き嫌いが激しく、白黒を付けたがる性格の人だと考えてほぼ間違いありません。このことを本人は自覚していません。大体は無意識に隠しています。自分の思い通りにならないことが多いので、いつもウツウツ、モヤモヤした心の状態でいます。
次にアルコール依存症のことです。断酒後に禁断症状に苦しめられますが、長くてもせいぜい2週間ぐらいのものです。ところが、その後も情緒不安定な状態が相当長く続きます。想像以上に日常生活からのストレスに耐えられないのです。心が落ち着かない状態が長く続きます。再び酒に手を出したくなることが始終あります。
誰でもプライドがありますが、アルコール依存症者の場合、特にプライドが強く、思い通りにならないと我慢がならない傾向が強いのです。プライドが、思い通りにならないことをそのまま受け入れるのを邪魔しているのですが、このことに気付かなければウツウツ、モヤモヤした心の状態が続いたままです。
今回ご紹介したのは、AAの勧める心の落ち着きを得るための方法について、私の私見を述べたものです。
最後に検診で指摘されたという脂肪肝についてですが、余剰カロリーが肝臓に溜まった状態と考えられますから、運動でカロリーを消費すればよいと思います。特別なことをしなくとも、速足で毎日歩くことをお勧めします。最初は1回2 km、30分を1日2回歩いたらどうでしょう。これならあまり負担をかけず出来るはずです。ジョギングなど、走るのは心臓に負担がかかりますのでお勧めできません。