ボランタリー画廊   副題「げってん」・「ギャラリーNON] 

「げってん」はある画廊オーナとその画廊を往来した作家達のノンフィクション。「ギャラリーNON]は絵画を通して想いを発信。

ギャラリーNON(16)-原画・寺田竹雄-

2007年05月10日 | 美術

 私のところにフクニチ新聞掲載の寺田竹雄(1908~1993、福岡市生まれ、二科会会員、サンフランシスコ美術協会会員)の原画が舞い込んだ。
もう亡くなられたのだが、元フクニチ新聞の記者が持っておられたもの。
この原画が新聞記事「着物の女性」になったところを切り抜きで示しましょう。
 読みやすくするため寺田竹雄の文をそのまま書き写すと次の通り。

 正月らしく花びらのような雪が舞っていた。年始の友人達と飲んでいると玄関のベルが鳴った。「S君だよきっと」とみんな玄関の方に心を向けながら待った。だが、はいって来たのは女性だった。鮮やかな色彩の着物を着飾ったその女性がはいって来ると一時に部屋が明るくなったかと思われる程だった。「なあんだ。K子さんじゃないか」と私がいうと「なあんだとは随分しつれいね。お正月早早」と早速しっぺ返しを食わす。いつも洋装で、スラックスなどの時には人前でも平気であぐらをかくK子なのだが、日本の女性は矢張り着物を着ると美しいとつくづく思った。

 文は正月の華やいだ雰囲気が見事に表現されている。それに「・・とか、・・みたい、・・けれども、・・ぜんぜん、めちゃくちゃ・・、・・っていうか、なので・・」といった奇妙な日本語にへきへきしているストレスをかき消してくれて、懐かしいような、癒されているような思いが拡がる。
 原画を写真で示しても原画の持つ生々しい息使いを伝えることはできないのが残念だが、鉛筆の線は生きいきとして気持ちよい。