ボランタリー画廊   副題「げってん」・「ギャラリーNON] 

「げってん」はある画廊オーナとその画廊を往来した作家達のノンフィクション。「ギャラリーNON]は絵画を通して想いを発信。

げってん(その8)

2007年05月13日 | 随筆
 画廊開設5年(1970年)ごろから、出品者の幅が広がり始めた。
先に登場した、森鐵蔵のクレパス画をはじめとして、秋枝義幸の写真、片山正信の版画、木内廣の淡彩画、火野葦平(芥川賞作家・1960年没)の色紙・縁品、久保田華房の南画などなど。
又、作家達の海外取材旅行なども頻繁になって旅のスケッチ展、さらに、女性の美術教師らの作品発表、夫婦展、あるいは絵画教室も盛んになってきたのでグループ展。流れができたのである。
 1973年9月に行われた女性美術教師の作品展案内状の文面を紹介しよう。
 
 「宮嶋千鶴子油絵展」 福岡県女子師範学校本科一部卒、中学校教諭、54歳。
 絵を描くことが好きで、いつも思いっきり描いてみたいと考えている。しかし、教師、主婦、母親、この頃は七人の孫の祖母という役目まで加算されてくると、思いっきり描きたいという切なる念願はだんだん儚くなるばかり、筆を握るのは一ヵ年の間ほんの僅か・・・。
 バラも、紫陽花も、ドイツ薊も、コスモスも、我家の庭では絢爛と美しく、キャンバスの中では、なんとなく洞ろに変わり、気になる作品ばかり、でもこれを第一回作品展として、今からの新しいスタートにしたいと考えている。

 私は健気な姿に弱く、この文はどにか切ない。
 宮嶋先生は教え子らの絵画作品を多数もっておられたので3年前、その作品展を催した。作品と同世代の子を持つようになった教え子らが画廊を訪れ、思い出話が尽きなかった。
 私も、先生と話す機会があった。
 先生は退職すると直ぐに
 「私、今度は生徒になる」 
と宣言して、朝日カルチュアーの文章教室へ通い始めた。その教室の生徒らの作品集を読ませていただいた。先生の書かれた、じつにきれいな文脈の随筆があった。挿画とカットはもちろん宮嶋先生の役どころ。
 今年の新春色紙展には先生からの出品がなかったのだが、お元気に作文を楽しんでおられることと思う。