以下の文は、週刊新潮の2018年7月26日号に「『災害警戒区域がハゲ山に… 西日本豪雨が浮き彫りにする「太陽光エネルギー」という人災』という題で掲載された記事の転載であります。
「『災害警戒区域がハゲ山に… 西日本豪雨が浮き彫りにする「太陽光エネルギー」という人災』
夢物語はあくまでも夢のなかの話で、現実ではない。
クリーンで環境への負荷がないと喧伝された太陽光エネルギーも然り。
環境へ配慮すべく、日本列島のそこかしこに敷きつめられた太陽光パネルがいま、人災として私たちに襲いかかろうとしている。
人は切羽詰まると「藁にもすがる」という。
たとえば2011年の東日本大震災では、多くの人の心が潰えた。
とりわけ福島第一原子力発電所の事故では、漏れ出した放射能に世界が震撼した。
太陽光エネルギーを中心とした再生可能エネルギーに過剰なまでにすがったのも、無理はない面がある。
原発の有用性を説くことがタブーとなる一方で、代替策として再生可能エネルギーを導入すれば、ばら色の未来が開けるかのように説かれた。
その際、先頭に立ったのが、当時の菅直人総理である。
経済部記者が解説する。
「政府は12年、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が高値で買い取る固定価格買取制度を拡充。
当時、電力会社が既存設備で発電する際の単価は1キロワット時当たり6円程度だったのに、菅政権は再生可能エネルギーにかぎって、同42円という破格の値段で買い取ることにしたのです。
買い取りの単価自体は現在、20円ほどにまで下がりましたが、国民が賦課金として負担している再生可能エネルギーの買い取り総額は昨年、2・7兆円にも達しました」
現在、太陽光エネルギーによる電力は日本の総発電量の3%。
そのためにこれほどの費用を国民が負担しているのだ。
ちなみに電力の総売り上げは20兆円程度。
それでも、夢物語を地上に現出させるための原資であるなら価値もあろうが、「藁」にすぎなかったとしたら――。
施設が3600平方メートルにわたって崩落
15年9月、茨城県を流れる鬼怒川の堤防が豪雨によって決壊した。
実は、民間の太陽光発電事業者がパネルを設置するため、自然堤防を掘削したことが要因だった旨が明らかになっている。
これでは夢物語どころか悪夢だが、今回の豪雨でも事故は起きていた。
7月5日には、神戸市須磨区の斜面に設置された太陽光パネルが、約400平方メートルにわたって崩れ、すぐ下を通る山陽新幹線が一時、運行を見合わせた。
続いて7日には、兵庫県姫路市の傾斜地で、太陽光発電施設がおよそ3600平方メートルにわたって崩落した。
「あそこは太陽光発電所ができてから、土砂が国道に流れこんで問題になっとったんや。
この辺りには太陽光の発電所が3つあって、2カ所は山崩して造っとるから怖いよな」
と語るのは姫路市の現場の近隣住民。別の住人も、
「今回崩れたのはたまたま全体の真ん中でしたけど、下のほうが崩れていたら、国道を走るクルマや、国道沿いの家にぶつかっていたかもしれません。
次の大雨のときにどうなってしまうか、怖くて不安です」
しかし、同様に危険な箇所がいま、全国にどれだけあるか、もはや見当もつかない。
太陽光パネルはそれほど全国津々浦々で国土を侵食しているのだ。
「菅政権の政治主導で、太陽光パネル設置の規制が緩和され、事実上、無許可でどこにでも設置できるようになった。
その結果、全国各地で森林が伐採され、パネルで覆われ、国民負担のもとに環境が破壊されることになったのです」
と、先の記者。
東京工業大学特任教授の奈良林直氏も、こう語る。
「固定価格買取制度が合法的な搾取システムなのです。
電気を使えば、いままでより電気代を約10%余計に徴収され、生活弱者にとっては迷惑な話。
一方、お金持ちにとっては、いまも年11%の利回りになる、よい投資先です。
このため太陽光バブルは続き、太陽光パネルの乱設につながっているんです」
災害警戒区域をハゲ山に
残念ながら、当時の菅総理たちは太陽光エネルギーが「藁」である可能性、すなわち負の側面には一切目を瞑った。
菅氏にせよ、小泉純一郎元総理にせよ、いまなお「太陽光発電を増やせ」の一点張りで、藁にすがり続けるかのように、負の面が目に入らないらしいのは、不思議である。
ともかく、現実にはすでに述べた愚策のせいで、危険は差し迫っている。
今回の被災地の近くでも、大規模なメガソーラーの開発は目白押しだ。
岡山県美作市の作東地区では、来年秋の稼働をめざし、東京ドーム87個分相当の約410ヘクタールの斜面が削られつつあり、住民は悲鳴を上げる。
「いま木を伐採して根を掘り起こしてるから、ちょっとの雨でもな、土が山から落ちて川が濁るんよ。
完成したら土砂が大変なことになると思って反対しとったんやけど、土地を買われてしまうと、どうしようもないんやな。
業者は下に流れ出んように3つ、ダム造るって言うけど、豪雨がきたらたちまち埋まってしまうんやて。
木の根も掘り起こしてしまうけん、土がどんどん下に落ちるのは当たり前やな。
発電所が完成して豪雨が来たら、山が崩れ落ちてしまうわ」
また岡山市大井地区でも、東京ドーム39個分に当たる約186ヘクタールの森林を切り倒し、メガソーラーを設置する計画が進んでいる。
この地区の連合町内会長の萱野英憲さんが懸念する。
「昨年2月に計画を知ったのですが、東京の業者が木を切ってハゲ山にし、27万6千枚もの太陽光パネルを設置するそうです。
すでに土地の9割近くを取得したとか。
平地には適当な場所が少なくなっていますが、パネル自体が安くなっているので、山林が狙われている。
山を切り開く工事費を差し引いても儲かると考えているのでしょう。
日本中あちこちで同じことが起きています」
エコの旗印の下、防災より私企業の利潤が優先されているのである。
「今回、この辺りでも土石流が発生し、亡くなられた方もいます。
計画地の直下流域は、多くの場所が土砂災害警戒区域です。
専門の方に聞いても、開発予定地は真砂土という柔らかい土で、コナラなどが根を張ることで、なんとか地盤を支えているのだとか。
だから今回の豪雨では、着工前なのに土砂崩れが起きた。
それなのに広大な面積で木を切り倒せば、もっとひどい山崩れが起きそうで恐ろしい。
県や市にも、 要望書や反対決議書などを提出していますが、岡山は県を挙げて“晴れの国おかやま”と謳って、太陽光発電を誘致していますから……」
“晴れの国”が土砂災害ののちの炎天下のことだとしたら、洒落にもならない。
土木工学や防災工学を専門とする中央大学理工学部都市環境学科の山田正教授も言う。
「一般論として、山はそこに生えている木の根が表土を支え、斜面の表層の崩落や崩壊を抑え込んでいます。
だから、木がなくなれば表面が滑り、土砂崩れは起こりやすくなります」
もちろん、太陽光エネルギーに、こうした負の側面ばかりがあるわけではない。
重要なのは藁にすがらないこと、すなわち冷静でいることである。
特集「『西日本豪雨』暴虐の爪痕」より
転載終わり。
人類が起こした最大の環境破壊は農業による環境破壊です。
森林を切り開き原野を開拓して行われた農業は、それ以後の人類の活動よりもはるかに環境を破壊しています。
それと同じことが現在、太陽光発電システムの構築で行われています。
大規模な環境破壊と災害に弱い国土を作り出す行為をしてまで、太陽光発電システムを推進する必要があるのでしょうか?
さらに太陽光パネルは、廃棄される場合は有害物質となりその処理方法が定まっていません。
菅直人氏は、『農地を農業と太陽光発電に使うソーラーシェアリングについて試算したところ、全農地の半分でソーラーシェアリングすれば必要な電力は供給できるという結果が出ました』と述べています。
裏を返せば、太陽光発電システムでは、最低でも日本の全農地の半分の面積を使わなければ必要な電力を生み出すことができないということです。
それだけの面積の森林を切り開き田畑を潰すということです。
農地を農業と太陽光発電に使うソーラーシェアリングだと台風のような災害で農作物が全滅する可能性があります。
太陽光発電システムの土台をしっかりとしたものにするならその土地は田畑として使えません。
台風でパネルが倒れたら土壌が汚染される可能性もあります。
土砂災害が起こりやすい状態を作り、災害が起これば農作物は壊滅する可能性があり、災害時に発電できない状態になりやすく、災害時に被害を拡大させる可能性が高い、そのような発電システムを主軸にするのは危険だと私は思うのであります。