狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

Call Me Call Me

2020年04月29日 15時14分38秒 | 曲名がタイトルの日記
 又あすこへ来たな。という寒い様なぞくぞくする様な魅力が狐を慄かせた。
 又あの夢だ。

 銀色の暗闇が狐の全世界を覆い尽していた。
 音も匂ひも触覚さえもが狐の身体から蒸発して了つて煉羊羹の濃やかに澱んだ色彩ばかりが狐の周囲を包んでいた。
 頭の上には夕立雲の様に真つ暗に層をなした木の葉が音もなく鎮まり返つて、其処からは巨大な黒褐色の樹幹が滝をなして地上に降り注ぎ、観兵式の兵列の様に目も遙かに四方にうち続いて末は奥知れぬ暗の中に消えていた。
 幾層の木の葉の暗の其の上にはどの様な麗らかな日が照つているか或いはどの様な冷い風が吹き荒んでいるか、狐には少しも分らなかつた。
 ただ分つていることは狐が今、果てしも知らぬ大森林の下で闇を行方定めず歩き続けている、其の単調な事実だけであつた。

 歩いても歩いても幾抱えの大木の幹を次から次へと迎え見送るばかりで景色は少しも変らなかつた。
 足の下には此の森が出来て以来、幾百年の落葉が湿気の充ちた絨毯を為して、歩くたびにじくじくと音を立てているに相違なかつた。
 聴覚の無い薄暗の世界は、此の世からあらゆる生物が死滅したことを感じさせた。
 或は又、不気味にも森全体が盲たる魑魅魍魎に充ち満ちているが如くにも思われないではなかつた。
 蛇の様な山蛭が真つ暗な天井から雨垂れを為して狐の襟首に注いでいるのが想像された。
 狐の眼界には一物の動くものとてなかつたけれど、背後には海月の如き妖しの生き物がうようよと身を擦り合せて声無き笑いを合唱しているのかも知れなかつた。
 でも暗闇と暗闇の中に住むものとが狐を怖がらせたのは云うまでもないけれど、其れ等にも増していつも乍ら此の森の無限が奥底の知れぬ恐怖を以つて狐に迫つた。
 其れは生れ出たばかりの嬰児が広々とした空間に畏怖して手足を縮め恐れ慄くが如き感じであつた。
 狐は叫びそうになるのをやつと堪え乍ら一刻も早く暗の世界を逃れ出そうと足掻いた。
 併し足掻けば足掻く程、森の下闇は益々暗さを増していつた。

 どれ程の間、狐は其処を歩き続けたことであらう! 
 其処には時というものがなかつた。
 日暮れも夜明けもなかつた。
 歩き始めたのが昨日であつたか、何十年の昔であったか、其れさえ曖昧な感じであつた。
 狐は、ふと未来永劫の森の中に大きな大きな円を描いて歩きつづけているのではないかと疑い始めた。
 外界の何物よりも私自身の歩幅の不確実が恐しかつた。
 狐は嘗て右足と左足との歩き癖にたつた一吋の相違があった為に沙漠の中を円を描いて歩き続けた旅人の話を聞いていた。
 沙漠には雲が晴れて陽も出よう。
 星も瞬こう。
 併し、暗闇の森の中には何時迄待つても何の目印も現れては呉れないのだ。
 世に試し無き恐れであつた。
 狐は其の時の心の髄からの慄きを何と形容すればよいのであらう。
 狐は生れてからこの同じ恐れを幾度と知れず味わつた。
 併し、一度たび毎にいい知れぬ恐怖の念は、そして其れに伴うあるとしもなき懐かしさは共に増しこそすれ決して減じはしなかつた。
 其の様に度々の事乍ら、どの場合にも不思議なことには何時何処から森に入つて何時又何処から森を抜け出すことが出来たのやら少しも記憶していなかつた。
 一度ずつ全く新たなる恐怖が狐の魂を圧し縮めた。
 巨大なる死の薄暗を豆粒の様な狐という獣が息を切り汗を流していつまでもいつまでも歩いていた。

 ふと気がつくと、狐の周囲には異様な薄明りが漂い初めていた。
 其れは例えば幕に映った幻燈の光の様に此の世の外の明るさではあつたけれど、でも歩くに随がって闇はしりえに退いて行つた。
 何だ。これが森の出口だつたのか。
 狐は其れを如何して忘れていたのであろう。
 そしてまるで永久に其処に閉じ込められた者の様に怖じ恐れていたのであろう。
 狐は水中を駈けるに似た抵抗を感じながら、でも次第に光りの方へ近づいて行つた。
 近づくに従って森の切れ目が現れ懐しき大空が見え初めた。
 併し、あの空の色はあれが私達の空であつたのだろうか?
 そして其の向うに見えるものは、嗚呼、狐はやつぱりまだ森を出ることが出来ないのだつた。
 森の果てとばかり思い込んでいた所は、その実、森の真中であつたのだ。
 其処には、直径一町ばかりの丸い沼があつた。
 沼の周囲は少しの余地も残さず直ちに森が囲んでいた。
 其の何方の方角を見渡しても末は菖蒲も知れぬ闇となり、今迄、狐の歩いて来たのより浅い森はない様に見えた。

 度々森をさ迷いながら狐は斯様な沼のあることを少しも知らなかつた。
 それ故、森を出離れて沼の岸に立つた時、其処の景色の美しさに狐は眩暈を感じた。
 万花鏡を一転して、ふと幻怪な花を発見した感じである。
 併し、其処には万花鏡の様な華かな色彩がある訳ではなく空も森も水も、空はこの世のものならぬ燻銀、森は黒ずんだ緑と茶、そして水はそれらの単調な色どりを映しているに過ぎないのだ。
 其れにも拘わらず、此の美しさは何物の業であらう?
 銀鼠の空の色か、巨大な蜘蛛が今、獲を目掛けて飛びかかろうとしている様な奇怪なる樹木達の枝ぶりか、固体の様に押黙って無限の底に空を映した沼の景色か、其れもさうだ。
 併しもつと外にある。
 得体の知れぬものがある。
 音もなく匂いもなく肌触りさえない世界の故か?
 そして、それらの聴覚、嗅覚、触覚がたった一つの視覚に集められている為か? 其れもさうだ。
 併しもつと外にある。
 空も森も水も何者かを待ち望んで、はち切れそうに見えるではないか?
 彼等の貪婪極りなき慾情が息吹となつて吹き出しているのではないか?
 併し其れが何故なれば斯くも狐の心をそそるのか?

 狐は何気なく眼を外界から狐自身の訝しくもすつぽんぽんの裸の身体に移した。
 そして其処に人の体を見出した時、狐は獣であつたことを打ち忘れてさも当然の様に微笑んだ。

 嗚呼。此の肉体だ!
 狐は余りの嬉しさに心臓が喉の辺まで飛び上るのを感じた。
 狐の肉体は極貧層な体であった。
 ちんちくりんな五体、蛇の腹の様に艶やかに青白き皮膚の色、此の肉体を以て狐は目立たぬよう世界に溶け込んでいた。
 狐は誰にも意識されることなく世界を回遊してきた。
 今こそ何もかも明白になつた。
 狐は不思議な沼の美しさを漸く悟ることが出来たのだ。
 「嗚呼。貴方達はどんなに私を待ちこがれていたことであらう。幾千年? 幾万年? 空も森も水もただ此の一刹那の為に生き永らえていたのではないか。さあ私は今、貴方達の烈しい願いを叶えてあげるのだよ」
 此の景色の美しさは其れ自身完全なものではなかつた。
 何かの背景としてそうであつたのだ。
 そして今、狐が禍々しき演者として彼等の前に現れたのだ。

 闇の森に囲まれた底なし沼の深く濃やかな灰色の世界に狐の青白の肌えが如何に調和よく如何に輝かしく見えたことであらう。
 何という大芝居だ。
 何という奥底知れぬ美しさだ。
 狐は一歩沼の中に足を踏み入れた。
 そして黒い水の中央に同じ黒さで浮んでいる一つの岩を目掛けて静かに泳ぎ初めた。
 水は冷たくも暖かくもなかつた。
 油の様にとろおりとろりとして手と足を動かすにつれて其の部分だけ波立つけれど、音もしなければ抵抗も感じない。
 狐は胸の周囲に二筋三筋の静な波紋を描いて丁度真白な水鳥が風無き水面を滑る様に音もなく進んで行つた。
 やがて、中心に達すると黒くぬるぬるした岩の上に這い上がる。
 其の様は例えば夕凪の海に踊る死神の様にも見えたであらうか?

 今、狐は其の岩の上にすっぽんぽんですつくと立上つた。
 嗚呼、何と素晴らしい世界。
 狐はあらん限りの肺臓の力を以て花火の様な叫びを上げた。
 胸と喉の筋肉が無限の様に伸びて一点の様に縮んだ。
 其れから極端な筋肉の運動が始められた。
 其れがまあどんなに素晴らしいものであつたか。

 青大将が真二つに千切られてのたうち廻るのだ。
 尺取虫と芋虫と蚯蚓の断末魔だ。
 無限の快楽に或は無限の痛苦にもがく獣だ。

 踊り疲れると狐は喉を潤す為に黒い水中に飛び込んだ。
 そして胃の腑の受け容れるだけ水銀の様に重い水を飲んだ。
 そうして踊り狂いながらも狐は何か物足らなかつた。
 狐ばかりでなく周囲の背景達も不思議に緊張を緩めなかつた。

 彼等はこの上にまだ何事を待ち望んでいるのであらう?
 さうだ。紅の一色だ!
 狐ははつと其処に気がついた。
 此の素晴らしい画面にはたつた一つ、紅の色が欠けている。
 若し其れを得ることが出来たならば獣の目が生きるのだ!
 奥底知れぬ灰色と蒼白い肌とそして紅の一点、其処で何物にもまして美しい獣の目が生きるのだ!

 したが狐はどこに其の絵の具を求めるべきか?
 此の森の果てから果てを探したとて一輪の椿さえ咲いてはいないのだ。
 立並ぶ彼の蜘蛛の木の外に木はないのだ。

 待ち給たまへ。
 其れ其処に素晴らしい絵の具があるではないか。
 心臓という搾り出し。こんな鮮かな紅を何処の絵の具屋が売つている?

 狐は薄く鋭い爪を以て、全身に縦横無尽の掻き傷を拵らえた。
 傷口から滴る血糊が川を為して狐の身体は真赤な彫り物に覆われた。
 血潮の網襯衣を着た様だ。
 其れが沼の水面に映つている。

 火星の運河!
 狐の身体は丁度或の気味悪い火星の運河だ!

 其処には水の代りに赤い血糊が流れている。
 さうして狐は又狂暴なる舞踊を初めた。

 きりきり廻れば紅白だんだら染めの独楽だ。
 のたうち廻れば今度こそ断末魔の長虫だ。
 或る時は胸と足を後ろに引いて極度に腰を張り、むくむくと上つて来る太股の筋肉の塊を出来る限り上の方へ引きつけてみたり、或る時は岩の上に仰臥がして肩と足とで弓の様に反り返り尺取虫が這う様に其の辺を歩き廻つたり、或る時は股を広げ其の間に首を挟んで芋虫の様にごろごろと転つてみたり、又は切られた蚯蚓を真似て岩の上をぴんぴんと跳ね廻つて腕と云わず肩と云わず腹と云わず腰と云わず所嫌わず力を入れたり抜いたりして、狐はありとあらゆる曲線表情を演じた。
 快楽に身を包む浅ましく淫らな血塗れの舞踏。
 奥底知れぬ灰色に肌えの蒼白色と血の深紅が舞い踊る。

 狐はこの世界を慰める為、命の限り此の素晴らしい大芝居のハレの役目を勤める……………………………。
 狐の眼は狂気に満ちた金色に輝いていた……。




 狐はこの夢が何を暗示しているのか知らない。
 狐は狐の心の内に潜む獣を恐れる。
 浅ましく凶暴で淫らで恥知らずで狂気に満ちた獣を恐れる。



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炎のさだめ

2020年04月26日 22時22分22秒 | 曲名がタイトルの日記
  今昔物語集 巻27第40話 狐託人被取玉乞返報恩語 第四十

 今昔、物の気病為る所有けり。
 物託の女に物託て云く、「己は狐也。祟を成て来れるには非ず。只、『此る所には自然ら食物散ぼふ物ぞかし』と思て、指臨て侍るを、此く召籠られて侍る也」と云て、懐より白き玉の小柑子などの程なるを取出て、打上て玉に取るを、見る人、「可咲気なる玉かな。此の物託の女の、本より懐に持て、人謀らむと為るなめり」と疑ひ思ける程に、傍に若き侍の男の勇たるが居て、物託の女の玉を打上たるを、俄に手に受て、取て懐に引入れてけり。 
 然れば、此の女に託たる狐の云く、「極き態かな。其の玉、返し得せよと」と切に乞けれども、男、聞きも入れずして居たるを、狐、泣々く男に向て云く、「其は其の玉取たりと云ふとも、持つべき様を知らねば、和主の為には益有らじ。我れは、其の玉取られなば、極き損にてなむ有るべき。然れば、其の玉返し得しめずば、我れ、和主の為に、永く讐と成らむ。若し、返し得しめたらば、我れ神の如くにして、和主に副て守らむ」と云ふ時に、此の男、由し無しと思ふ心付て、「然は、必ず我が守と成り給はむや」と云へば、狐、「然ら也。必ず守と成らむ。此る者は、努々虚言為ず。亦、物の恩、思知らずと云ふ事無し」と云へば、此の男、「此の搦させ給へる護法、証せさせ給ふや」と、云へば、狐、「実に護法も聞こし食せ。給を返し得せたらば、慥に守と成らむ」と云へば、男、懐より給を取出して、女に与へつ。
 狐、返々す喜て受取つ。
 其の後、験者に追はれて、狐去ぬ。 

 而る間、人々有て、其の物託の女を、やがて引へて立たしめずして、懐を捜けるに、敢て其の玉無かりけり。
 然れば、「実に託たりける物の持たりける也けり」と、皆人知にけり。 

 其の後、此の玉取の男、太秦に参て返けるに、暗く成る程に御堂を出て返ければ、夜に入てぞ、内野を通けるに、応天門の程を過むと為るに、極く物怖しく思えければ、「何なるにか」と怪く思ふ程に、「実や、『我れを守らむ』と云し狐有きかし」と思ひ出て、暗きに只独り立て、「狐、々」と呼ければ、こうこうと鳴て出来にけり。
 見れば、現に有り。
 「然ればこそ」と思て、男、狐に向て、「和狐、実に虚言為ざりけり。糸哀れ也。此を通らむと思ふに、極て物怖しきを、我れ送れ」と云ければ、狐、聞知顔にて、見返々々行ければ、男、其の後に立て行くに、例の道には非で、異道を経て行々て、狐、立ち留まりて、背を曲て抜足に歩て、見返る所有り。
 其のままに男も抜足に歩て行けば、人の気色有り。 
 和ら見れば、弓箭・兵仗を帯したる者共、数立ちて、事の定めを為るを、垣超しに和ら聞けば、早う盗人の、入らむずる所の事定むる也けり。
 此の盗人共は、道理の道に立る也けり。
 然れば、其の道をば経で、迫より将通る也けり。
 狐、其れを知て、其の盗人の立てる道をば経たると知ぬ。其の道、出畢にければ、狐は失にけり。
 男は平かに家に返にけり。 

 狐、此れのみに非ず、此様にしつつ、常に此の男に副て、多く助くる事共ぞ有ける。
 実に守らむと云けるに、違ふ事無ければ、男、返々す哀れになむ思ける。
 彼の玉を惜むで与へざらましかば、男、吉き事無からまし。
 然れば、「賢く渡てけり」とぞ思ける。 

 此れを思ふに、此様の者は、此く者の恩を知り、虚言を為ぬ也けり。
 然れば、自然ら便宜有て助くべからむ事有らむ時は、此様の獣をば、必ず助くべき也。
 但し、人は心有りて、因果を知るべき者にては有れども、中々獣よりは者の恩を知らず、実ならぬ心も有る也となむ語り伝へたるとや。

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Astral Traveller

2020年04月25日 22時03分18秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、イエスのコンピレーション・アルバム『Yesterdays』を聴いていました。
 確かこのアルバムを聴いて「イエスって凄い!」と思ってイエスの他のアルバムを聴いてそれからプログレ好きになったんだっけ。
 今は昔。懐かしいです。

 収録されている曲は、
 1 America
 2 Looking Around
 3 Time and a Word
 4 Sweet Dreams
 5 Then
 6 Survival
 7 Astral Traveller
 8 Dear Father
 の8曲です。

 幻想的でメロディアス。
 うっとりです。どの曲も素晴らしいのです。


 名盤ですよ。
 お勧めです。


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Set The Controls For Heart Of The Sun

2020年04月18日 14時19分28秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、ピンク・フロイドの『Pink Floyd: Live at Pompeii』のDVDを観ていました。

 収録されている曲は、
  1 Echoes Part I
  2 Careful With That Axe Eugene
  3 A Saucerful Of Secrets
  4 Us And Them
  5 One Of These Days
  6 Mademoiselle Nobs
  7 Brain Damage
  8 Set The Controls For Heart Of The Sun
  9 Echoes Part Ii
 の9曲です。

 撮影されたのは1971年10月。
 約2000年前に建立された円形劇場が舞台。
 入場者が誰もいない空虚な舞台での演奏となっております。

 人によっては不気味で不安をかきたてられると表現する、太古を思わせる幻想的な曲が揃っております。
 意味を探ると袋小路に陥ってしまいそうになるので、感じたままで捕らえた方が良いですね。
 私にとっては非常に心地良いです。

 良い映像でありますよ。
 お勧めであります。


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Careful with That Axe, Eugene

2020年04月17日 21時36分05秒 | 曲名がタイトルの日記
 本日4月17日は、天智天皇が近江宮に遷都した日で、対馬の国司が日本で初めて産出された銀を朝廷に献上した日で、豊臣秀吉が吉野の花見を開催した日で、文部省博物局が湯島聖堂の大成殿を文部省博物館として日本初の博覧会を開催した日で、日清戦争の講和条約である下関条約が調印された日で、シベリアのレナ川付近でストライキを行っていた金鉱労働者をロシア帝国軍が射殺した日で、前日にロシアに帰国したばかりのウラジーミル・レーニンが四月テーゼを発表して戦争を続ける臨時政府の全権をソビエトが握るべきと主張した日で、日本政府が憲法改正草案を公表した日で、コミンフォルムが解散した日で、アポロ13号が地球に帰還した日で、カンプチア民族統一戦線がプノンペンを制圧してロン・ノル率いるクメール共和国が崩壊してポル・ポト率いるクメール・ルージュが実権を掌握しやがった日で、阪神甲子園球場で行われたプロ野球・阪神タイガースVS読売ジャイアンツの試合でランディ・バース選手と掛布雅之選手と岡田彰布選手がバックスクリーン3連発を放った日で、オランダとシリー諸島の間の三百三十五年戦争の終結が宣言された日で、長崎駅前で長崎市市長の伊藤一長が山口組系暴力団員に銃撃された(翌18日未明に胸部大動脈損傷等による大量出血により死亡)日で、シアトルマリナーズのイチローがアナハイムエンゼルス戦で日米通算3086安打を達成して張本勲の持つ日本プロ野球最多記録を更新した日です。

 本日の倉敷は曇りでありましたよ。
 最高気温は十八度。最低気温は八度でありました。
 明日は予報では倉敷は晴れとなっております。



 あれは……白昼の悪夢であつたか……それとも現実の出来事であつたか。
 晩春の生暖い風がおどろおどろと火照つた頬に感ぜられる、蒸し暑い日の午後であつた。
 用事があつて通つたのか、散歩の道すがらであつたのか、其れさえぼんやりとして思い出せぬけれど、私・狐は或る場末の見る限り何処までも何処までも真直ぐに続いている広い埃つぽい通りをてくてくと歩いていた。
 洗い晒した単衣物の様に白茶けた商家が黙つて軒を並べていた。
 三尺のショウウインドウに埃で段だら染めにした小学生の運動服が下つていたり、碁盤の様に仕切つた薄つぺらな木箱の中に赤や黄や白や茶色などの砂の様な種物を入れたのが店一杯に並んでいたり、狭い薄暗い家中が天井から何処から自転車のフレイムやタイヤで充満していたり、そして其れらの殺風景な家々の間に挟まつて細い格子戸の奥に煤けた御神燈の下つた二階家がそんなに両方から押しつけちや厭だわという恰好をしてぼろんぼろんと猥褻な三味線の音を洩していたりした。
 『かつて賢き女ども座せり。此処彼処に。或る者は縛めの鎖を整え、或る者は敵の軍兵を押さえ、或る者は鎖を毟り取れり。「縛めを脱し、敵を逃れよ!」』
 お下げを埃で御化粧した女の子達が道の真中に輪を作つて謡つていた。
 『縛めを脱し、敵を逃れよ!』という涙ぐましい旋律が、霞んだ春の空へのんびりと蒸発して行つた。
 男の子等は繩飛びをして遊んでいた。
 長い繩の弦が粘り強く地を叩いては空に上つた。
 田舎縞の前を肌蹴た一人の子がぴよいぴよいと飛んでいた。
 其の光景は高速度撮影機を使つた活動写真の様に如何にも悠長に見えた。
 時々、重い荷馬車がごろごろと道路や家々を震動させて狐を追い越した。
 ふと狐は、行手に当つて何かが起つているのを知つた。
 十四五人の大人や子供が、道端に不規則な半円を描いて立止つていた。
 其れらの人々の顔には、皆一種の笑いが浮んでいた。
 喜劇を見ている人の笑いが浮んでいた。
 或る者は大口を開いてげらげら笑つていた。
 好奇心が狐を其処へ近付かせた。
 近付くに従つて、大勢の笑顔と際立つた対照を示している一つの真面目くさった顔を発見した。
 其の青醒めた顔は、口を尖らせて何事か熱心に弁じ立てていた。
 香具師の口上にしては余りに熱心過ぎた。
 宗教家の辻説法にしては見物の態度が不謹慎だつた。
 一体、之は何事が始まつているのだ?
 狐は知らず知らず半円の群集に混つて聴聞者の一人となつていた。
 演説者は、蒼白い肌に漆黒の髪が艶やかな若く美しい女であつた。
 鬘の様に綺麗に光らせた頭髪の下に蒼白く冷めた顔。ぱつちりと大きく見開いた瞳。妖艶な真赫な脣。高い鼻。そして着物の裾からは砂埃に塗れた跣足の足が覗いていた。
 「……私はどんなに夫のことを愛していたか」
 演説は何度も繰り返されて今や高潮に達しているらしく見えた。
 女は無量の感慨を罩めてこう云ったまま、暫く見物達の顔から顔を見廻していた。
 「殺す程に愛していたのです。……。でも悲しい哉、あの男は浮気者だつた」
 どつと見物の間に笑い声が起つたので、其の次の「いつ余所の女とくつつくかも知れなかつた」という言葉は危く聞き洩す所だつた。
 「否。もうとつくにくつついていたかも知れないのです」
 そこで又、前にもました高笑いが起つた。
 「私は心配で心配で」
 彼女はそう云つて首を振つて「気が狂いそうでした。私は毎晩寝床の中で夫に頼みました。手を合せて頼みました」笑声。「どうか誓つてお呉れ。私より外の女には心を移さないと誓つてお呉れ……。……。併し、あの男は如何しても私の頼みを聞いては呉れない。手練手管で其の場其の場を誤魔化すばかりです。でも……其れが……其の手練手管が……どんなに私を惹きつけたか……」
 誰かが「ようよう。御馳走様!」と叫んだ。
 そして、笑声。
 「皆様」女はそんな半畳などを無視して続けた。
 「あなた方が、若し私の境遇に遭つたら一体如何しますか? 之が殺さないでいられましやうか? ……。あの男は寝顔が可愛いのです。につこりと笑つて寝る姿はとても可愛いのです」
 女は顔を上げて笑顔を見せた。
 赤い唇が半月状に吊り上がる。
 「……。あの男の寝姿を視ているうちに私は今だと思いました。此の好もしい姿を永久に私のものにして了うのは今だと思いました。……。用意していた千枚通しを、あの男の胸に力任せに叩き込みました。笑顔の消えぬ内にあの男は……死んで了いました」
 賑かな広告の楽隊が通り過ぎた。
 大喇叭が頓狂な音を出した。
 『蛇が這い来たりて人傷つけたり。ウォーデン 九つなる栄光の枝を取り、蛇を打ちつくるに、これ九つに砕け散りぬ。此処において林檎は毒に打ち克ちて、以後蛇人の家に住まうことを欲さざるなり』子供等が節に合せて歌いながら、ぞろぞろと付いて行つた。
 「皆様。あれは私のことを触れ回つているのです。私のことを人殺しだ人殺しだとそう云って触れ回つているのです」
 又、笑い声が起つた。
 楽隊の太鼓の音だけが、女の演説の伴奏ででもある様に、いつまでもいつまでも聞えていた。
 「……。私は夫の死骸を五つに切り離しました。胴が一つ。手が二本。足が二本。之で五つ」
 「……。あなた方はあの水の音を聞かなかったですか?」女は俄かに声を低めて云つた。
 首を前に突き出し目をきよろきよろさせながら然も一大事を打開けるのだと云わぬばかりに、「三七二十一日の間、私の家の水道はざーざーと開けつぱなしにしてあつたのですよ。五つに切った夫の死体をね、四斗樽の中へ入れて冷していたのですよ。之がね皆様」此処で女の声は聞えない位に低められた。
 「秘訣なのよ。秘訣なの。死骸を腐らせない。……屍蝋というものになるの」
 屍蝋……。
 或る医書の「屍蝋」の項が、狐の目の前に其の著者の黴くさい絵姿と共に浮んで来た。
 一体全体この女は何を云わんとしているの?
 何とも知れぬ恐怖が狐の心臓を風船玉の様に軽くした。
 「……。夫の胴体や手足が可愛い蝋細工になつて了つた……」
 「ははははは、お極りを云つてらあ。お前それを昨日から何度おさらいするんだい」誰かが不作法に怒鳴つた。
 「皆様」女の調子がいきなり元に戻つた。
 「私が述べていることを理解してくださらないのですか? 皆様は夫が家出をした。私は捨てられた女だと信じ切つているのでしやう。しかし私はあの男を殺したのです……」
 ……。断切つた様に笑声が止んだかと思うと、女は俯き、又囁き声で始めた。
 「それでもう、あの男は本当に私のものになり切つて了つたのです。ちつとも心配はいらないのです。接吻のしたい時に接吻が出来ます。抱き締めたい時には抱き締めることも出来ます。私はもう此れで本望です」
 「……。でも用心をしないと……。私は人殺しなのだから……。いつ巡査に見つかるかしれない……」
 女は顔をゆつくりと上げた。
 そして狐の顔を見詰めた。
 女の声はか細く小さくなつていた。
 「……。私は、夫の遺骸を隠すことにしました……」
 女は低く笑つて幽かな声で云う。
 その声は誰にも聞こえていないかのようだつた。
 「ほら……あなた……見て御覧。夫の死骸は……私の店先に飾つてあるのよ」
 狐ははつと後ろを振り向いた。
 今の今迄、気の付かなかつたすぐ鼻の先に日覆い……「薬」……「請合薬」……見覚えのある丸ゴシツクの書体……そして其の奥の硝子張りの箱の中の人体模型……。
 其の女は薬屋の女主人であつた……。
 「あすこなら……誰も気が付かないでしやう」
 周囲の人達、大勢の人達はもはや女の声が聞こえていないのだろうか?
 女の囁きは小さくか細く聞き取りにくい。
 何がそうさせたのか。狐はいつの間にか日覆の中へ這入つていた。
 目の前の硝子箱の中に若く美しい男の顔があつた。
 目を瞑りにつこりと笑つている。
 精巧な蝋細工の人形……。のはずだ……。人の首ではないはずだ……。
 すーつと心臓が喉の所へ飛び上つた。
 狐は倒れそうになる身体を危く支えて日覆から逃れ出た。
 女の演説は又、最初に戻つたやうだ……。
 「……私はどんなに夫のことを愛していたか」
 狐は女に見つからない様に注意しながら群集の側を離れた。
 ……。
 振り返つて見ると、群集の後ろに一人の警官が立つていた。
 彼も他の人達と同じ様ににこにこ笑いながら女の演説を聞いていた。
 狐は眩暈を感じながらひよろひよろと歩き出した。
 行手には何処までも何処までも果てしのない白い道が続いていた。
 陽炎が立並ぶ電柱を海草の様に揺つていた。



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Love to Be Loved

2020年04月17日 15時40分38秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、ピーター・ガブリエルのアルバム『Us』を聴いていました。

 収録されている曲は、
   1  Come Talk to Me
   2  Love to Be Loved
   3  Blood of Eden
   4  Steam
   5  Only Us
   6  Washing of the Water
   7  Digging in the Dirt
   8  Fourteen Black Paintings
   9  Kiss That Frog
   10 Secret World
 の10曲です。


 ポップ路線だけど民族音楽の要素が入っていて面白いアルバムになっています。
 物悲しくて切なくて切実で誠実で、晴れ晴れとした寂しさを感じる曲が多いですね。
 「Come Talk to Me」、「Digging in the Dirt」、「Secret World」と名曲が揃っていますよ。
 私はピーター・ガブリエルのアルバムの中で『Us』が一番好きです。
 名盤でありますよ。
 お勧めであります。



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LAZY

2020年04月16日 22時38分05秒 | 曲名がタイトルの日記
 「いよいよ我らの真の力を開放する時が来た」と、友人は云った。
 「これまで我らは『もっと頑張れ!』と云われてきた」
 確かにその通りです。
 「『もっと頑張れ!』と云われなければ頑張らないことに群を抜いた定評がある我らだ。それ故に延々と『もっと頑張れ!』と云われ続けてきた」
 確かにその通りです。
 「しかしだ。今、『頑張るな!』と云われている」
 その通りです。
 「ならば、全力で頑張らない!」
 ふむ?
 「真に頑張らないこととはどのようなことなのか、真の怠け者である我らが皆の者に見せつけてやろうぞ!」
 ……。そんなに気張って頑張らないことに頑張らなくてもよいのではないですか? 
 「む?」
 頑張るな! と云われたならば、我らならば自然と頑張らない。怠け者ですから。
 「む?」
 そして、怠け者が怠けだすととことんまで怠ける。その姿を見せるだけで、他の者は驚愕の目を向けることでしょう。
 「む?」
 それでよいのでは? 気張る必要はありませんよ? 
 「むむむ? 頑張らないことを頑張らない……だと!?」
 怠け者ですから。



 「嗚呼。暫らくは頑張らなくてよいのだ……。まさか、こんな事態が起こるとは思わなかった……」と、友人は云った。
 人生、何が起こるか分からないものです。
 「全くです。しかしですよ……。私には何も起こらない……」
 それでよいのです。あなたは幸せなのですよ。



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Shine On You Crazy Diamond

2020年04月10日 16時32分21秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、同人サークル『あんかけスパ』のアクションRPG「東方紅輝心」で遊びながら、ピンク・フロイドのアルバム『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい)』を聴いていました。

 収録されている曲は、
  1 Shine On You Crazy Diamond (Parts I–V)
  2 Welcome To The Machine
  3 Have A Cigar
  4 Wish You Were Here
  5 Shine On You Crazy Diamond (Parts VI–IX)
 の5曲です。

 私、疲れている時とか突かれている時とか憑かれている時とか落ち込んでいる時とか堕ち込んでいる時とか墜ち込んでいる時とかに無性に『Shine On You Crazy Diamond』を聴きたくなるのです。
 嗚呼。この曲はとても心地良い……。

 『Shine On You Crazy Diamond』は、ピンクフロイドのかつてのリーダー、シド・バレットへ捧げられた曲だといわれている曲です。
 同アルバムの『Wish You Were Here』も良い曲。
 泣きたくなるような切ないプログレッシブ・ロックのアルバムです。
 名盤でありますよ。


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Time Won't Wait

2020年04月04日 22時37分27秒 | 曲名がタイトルの日記
 本日4月4日は、海賊フランシス・ドレークがエリザベス女王からナイトの爵位を受けた日で、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが将軍連の反乱により退位させられた日で、ラフカディオ・ハーンが来日した日で、マーティン・ルーサー・キングが暗殺された日で、沖縄返還交渉の機密を漏洩した容疑で毎日新聞社の西山太吉記者らが逮捕された日で、ビル・ゲイツとポール・アレンがニューメキシコ州アルバカーキにMicrosoftを設立した日で、パキスタン前首相ズルフィカール・アリー・ブットーが処刑された日で、あんぱんの日で、ジョナサン・ジョースターのお誕生日で、天沢勇子のお誕生日で、ヤン・ウェンリーのお誕生日です。

 本日の倉敷は晴れでありました。
 最高気温は十九度。最低気温は七度でありました。
 明日も予報では倉敷は晴れとなっております。





 4月になって春本番の今日この頃。皆様、如何お過ごしでしょうか?
 倉敷駅前商店街の中心で「でびるうぃ~んぐ!」と叫びたい獣。狐でございます。

 でびるうぃ~んぐ! と叫んだところで羽根が生えて空が飛べるようになるわけではないのですが。
 そして狐は高所恐怖症のけものなので羽根が生えて空が飛べたとしてもお空の彼方に飛んで行ってしまうといふことはないのですが。
 時々、狐は何かを失ってしまってもう取り戻せなくなってしまっているのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 或いは何かを忘れてしまっていて取り返しのつかない状態になってるのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 ぽんこつでぼんくらで怠惰な性でのほほんと深く物事を考えない質なので普段はそんなことは考えが浮かばないのですが、時々、妙に不安に陥ったりするのです。
 そんな時はつい倉敷駅前商店街の中心で「でびるうぃ~んぐ!」と叫びたくなるのです。
 お空を飛んで何処かに行ってしまいたい。と思うのです。
 でびるうぃ~んぐ! と叫んだところで羽根が生えて空が飛べるようになるわけではないのですが。
 そして狐は高所恐怖症のけものなので羽根が生えて空が飛べたとしてもお空の彼方に飛んで行ってしまうといふことはないのですが。
 時々、狐は何かを失ってしまってもう取り戻せなくなってしまっているのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 或いは何かを忘れてしまっていて取り返しのつかない状態になってるのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 ぽんこつでぼんくらで怠惰な性でのほほんと深く物事を考えない質なので普段はそんなことは考えが浮かばないのですが、時々、妙に不安に陥ったりするのです。
 そんな時はつい倉敷駅前商店街の中心で「でびるうぃ~んぐ!」と叫びたくなるのです。
 お空を飛んで何処かに行ってしまいたい。と思うのです。
 でびるうぃ~んぐ! と叫んだところで羽根が生えて空が飛べるようになるわけではないのですが。
 そして狐は高所恐怖症のけものなので羽根が生えて空が飛べたとしてもお空の彼方に飛んで行ってしまうといふことはないのですが。
 時々、狐は何かを失ってしまってもう取り戻せなくなってしまっているのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 或いは何かを忘れてしまっていて取り返しのつかない状態になってるのではないかと根拠のない不安に陥ることがあるのです。
 ぽんこつでぼんくらで怠惰な性でのほほんと深く物事を考えない質なので普段はそんなことは考えが浮かばないのですが、時々、妙に不安に陥ったりするのです。
 そんな時はつい倉敷駅前商店街の中心で「でびるうぃ~んぐ!」と叫びたくなるのです。

 私は御師匠様から「ループは3回」といつも言われているので3回繰り返してみました。
 失礼いたしました。


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The Revealing Science of God (Dance of the Dawn)

2020年04月04日 18時51分13秒 | 曲名がタイトルの日記
 今回ご紹介いたしますのは、イエスのアルバム『海洋地形学の物語』です。

 収録されている曲は、
 1 神の啓示 - The Revealing Science of God (Dance of the Dawn)
 2 追憶 - The Remembering (High the Memory)
 3 古代文明 - The Ancient (Giants under the Sun)
 4 儀式 - Ritual (Nous sommes du soleil)
  の4曲です。

 各曲とも約20分の大作。約20分の大作の曲を4曲並べるというかなりふざけた編成のアルバムです。
 約20分の曲が4曲並んでいるだけでも身構えてしまうのですが、曲の歌詞も難解で初見で理解しようとするとよほどのお方でない限り頭がパンクします。
 初期のイエスの特徴である緊迫感に溢れた疾走感はありません。

 私は最初にこのアルバムを聴いた時は「あかん。これはあかん。分からん」と匙をお空の彼方に高く高く放り投げたものでした。
 しばらく経って再びこのアルバムを聴いてみると「これはこれでYESじゃん」と思い直したものです。
 最初は頭で理解しようとして匙を投げ、2回目は何も考えずにリラックスして聴いていたのです。
 リラックスして聴いていると物凄く心地良いアルバムです。

 雄大で神秘的で優雅で美しい。
 自然と一体化したような不思議な心地良い気分に浸れます。

 曲のメッセージを正確に掴むのは難しいですが、よいじゃん、はっきりと分からなくても。
 正確に掴んだほうがより深く楽しめるのかもしれませんが、心地良い気分に浸れるので私は今のところはそれだけで充分です。


 お勧めはしませんが、このアルバムを聴いて匙を投げたお方はもう一度リラックスしてこのアルバムを聴いてみては如何? と思う次第であるのです。

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『Dream Fighter』

2020年03月16日 15時18分27秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、Perfumeの8thシングル『Dream Fighter』を聴いていました。
 最近、私はテンションが落ちているようなのでテンションが上がる曲が効きたいと思い聴いておりました。
 疾走感溢れる曲であります。

 昨晩は繰り返し聴いておりました。


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赤より紅い夢 ~ ほうずきみたいに紅い魂

2020年02月24日 12時10分24秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日は、交響アクティブNEETsのアルバム『交響アクティブNEETs 東方フィルハーモニー交響楽団1 紅』を聴いていました。
 交響アクティブNEETsは日本の生演奏同人オーケストラサークルであります。
 『交響アクティブNEETs 東方フィルハーモニー交響楽団1 紅』に収録されている曲は、東方Projectの弾幕シューティングゲーム・東方紅魔郷の曲をオーケストラバージョンにアレンジしたものであります。

 収録されているのは、
  Ⅰ.   赤より紅い夢 / ほうずきみたいに紅い魂
  Ⅱ.  ルーネイトエルフ
  Ⅲ. 上海紅茶館 ~ Chinese Tea
  Ⅳ. ヴワル魔法図書館 / ラクトガール ~ 少女密室
  Ⅴ.  メイドと血の懐中時計 / 月時計 ~ ルナ・ダイアル
  Ⅵ. ツェペシュの幼き末裔 / 亡き王女の為のセプテット
  Ⅶ. U.N.オーエンは彼女なのか?
 の全7曲です。

 格好良くて重厚で威厳があって可憐で素敵なのです。
 昨夜は繰り返し聴いておりましたよ。



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チョコレイト・ディスコ

2020年02月22日 17時49分04秒 | 曲名がタイトルの日記
 Perfumeのアルバム『GAME』 を聴いていました。
 Perfumeの通算2枚目のアルバムで、初のオリジナル・アルバムであります。

 収録されている曲は、
 1  「ポリリズム」
 2  「plastic smile」
 3  「GAME」
 4  「Baby cruising Love」
 5  「チョコレイト・ディスコ」
 6  「マカロニ」
 7  「セラミックガール」
 8  「Take me Take me」
 9  「シークレットシークレット」
 10 「Butterfly」
 11 「Twinkle Snow Powdery Snow」
 12 「Puppy love」
 の12曲であります。

 テクノポップであります。
 明るく楽しい曲調が多く楽しめました。

 昨夜は繰り返し聴いておりましたよ。


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ブラザー・オブ・マイン

2020年02月01日 21時09分08秒 | 曲名がタイトルの日記
 昨日の夜は、アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウのアルバム『閃光』を聴いていました。
 『90125』と『ビッグ・ジェネレイター』で商業的には大成功を収めたけれども音楽的な対立からジョン・アンダーソンがイエスを脱退し、イエスのかつての主要メンバーを集めて作ったバンドであるアンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウのアルバムです。

 収録されている曲は、
  1 テーマ (i)サウンド (ii)セカンド・アテンション (iii)ソウル・ウォーリアー
  2 フィスト・オブ・ファイアー
  3 ブラザー・オブ・マイン (i)ビッグ・ドリーム (ii)ナッシング・キャン・カム・ビトゥイーン・アス (iii)ロング・ロスト・ブラザー・オブ・マイン
  4 バースライト
  5 ザ・ミーティング
  6 クァルテット (i)アイ・ワナ・ラーン (ii)シー・ギヴス・ミー・ラヴ (iii)フー・ワス・ザ・ファースト (iv)アイム・アライヴ
  7 TEAKBOIS
  8 オーダー・オブ・ザ・ユニバース (i)オーダー・テーマ (ii)ロック・ギヴス・カリッジ (iii)イッツ・ソー・ハード・トゥ・グロウ (iv)ザ・ユニバース
  9 レッツ・プリテンド
 の9曲です。



 イエスではないけどイエスの音楽。
 でもイエスの音楽ではない。
 ベースのクリス・スクワイアがいないとイエスだけれどもイエスではない音楽になりますね。
 適度にポップで軽くて煌びやかで明るくてリズミカルな変拍子でメロディアスなアルバムです。

 目玉は、『ブラザー・オブ・マイン』と『オーダー・オブ・ザ・ユニバース』。
 どちらも10分前後の大作です。
 ビル・ブラッフォード、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウにベースのトニー・レヴィンと変態奏者達が超絶技巧の限りを尽くした曲にジョン・アンダーソンの透明感のあるハイトーン・ボイスのボーカルが乗って美しいアルバムとなっております。
 イエスファンには賛否が分かれるアルバムではあるのですが、私は大好きなアルバムであります。


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Neptune, the Mystic

2019年12月14日 14時46分55秒 | 曲名がタイトルの日記



 昨日の夜は、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストが作曲した組曲『惑星』を聴いておりました。

 『Mars, the Bringer of War』の「ラスボスあらわる!」感溢れる勇壮な開幕。
 『Venus, the Bringer of Peace』のゆったりとした美し調べ。
 『Mercury, the Winged Messenger』の軽やかな楽しい曲調。
 『Jupiter, the Bringer of Jollity』の威厳のある格調の高さ。
 『Saturn, the Bringer of Old Age』の神秘的などっしりとした曲調。
 『Uranus, the Magician』の少しコミカルな軽やかな調べ。
 『Neptune, the Mystic』の虚無に還っていくかのような寂しく冷たく怖く悲しく美しいラスト。

 うっとりであります。
 よいでありますよ。

 いつもは最初の『Mars, the Bringer of War』に心揺さぶられるのですが、昨日はラストの『Neptune, the Mystic』が心に染みる……。
 私、かなりメンタルが落ちているのかしらん? 
 そろそろハイテンションモードに移行したい。と思っているところなのでございます。


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