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日本の川はなぜ豪雨で氾濫しやすいのか?

2016年09月01日 | 日本

日本の川の水は山から海へ一気にかけ下る。世界の代表的な河川と比べると、日本の河川が急勾配なのが良くわかる。

 

日本の河川は川の長さが短く、上流から下流への勾配が急であるため、一気に海へ流れるのが特徴です。このため、いったん雨が降ると、急に増水し短時間のうちに洪水のピークになります。

 

日本の年間降雨量は世界平均の約2倍と多く、しかも、梅雨期・台風期に集中して降ります。その結果、川の水量は、例えば利根川では、洪水のときの流量は平常時の流量の何と100倍にもなります。

 

海外では、ドナウ川は4倍、ミシシッピー川は3倍であり、日本の河川は、瞬時に大洪水となって流下し、瞬時に減少する特徴があるのです。

 

ヨーロッパやアメリカの川は、全長が長く、川の勾配がゆるやかなので、上流に降った雨はゆっくりと流れてきます。それに対して、日本の川は、全長が短く、川の勾配も急なので、上流に降った雨が一気に海まで流れ出るのです。

 

例えば、メコン河は河口から1,000 kmの流路で100mの標高差にすぎないが、木曽川では、河口から200kmで標高差は800mをこえる。こうした河川の形状のため、洪水のおそれが強い一方で、無降雨期には渇水になるおそれがあるのです。

 

日本で1番長い川である信濃川は、長野県では千曲川、新潟県では信濃川と呼ばれています。長野県川上村の標高2200m地点から水がわき出ていて、367kmの流れを経て日本海にそそぎます。

 

富山県を流れる常願寺川は、源流から河口まで標高差が約3000mもあるのに対し、川の長さはわずか56kmという世界でも有数の急流な川です。明治時代、常願寺川の工事のために派遣されたオランダ人技師デ・レーケが、「これは川ではない。滝である。」と言ったと伝えられています。

 

滝のように急流だという意味で言ったのが大げさに伝わったという説もありますが、常願寺川上流の立山砂防ダム付近の川の流れを見ていますと、本当に滝のように流れているという表現が合っていると私は感じました。

 

また日本では、降水量の年変動と季節変動が大きく、その結果、河川の最大流量と最小流量の差が著しく大きい。こうした特徴を持つ日本の河川は、山地を流れる過程で土砂を削り、川の流れによって下流に運ばれてきます。その土砂が平地に流れて堆積した部分は扇の形となり、扇状地と呼ばれる地形ができます。

 

川が山肌を削り取って形成されるので、川の傾斜が急である方が土砂の供給が多く、その川の下流で扇状地が形成されやすくなります。日本の川は海外に比べて急なものが多いので日本では扇状地が多くみられます。

 

扇状地の扇央(扇状地の中腹あたり)には果樹園が多いことが特徴です。その理由は扇央では水はけが良いからです。

 

果物は植物なので水は必要ですが、必要以上に水をやると、根腐れによって木が枯れてしまったり、病気になったりします。また、与える水が少ないほど、果実の甘みが濃縮されて甘くなるような品種もあります。

 

扇状地は山から平地に川が流れる所に存在します。 周りを山に囲まれた盆地はこのような扇状地が多いのです。山梨県はぶどうなどの果物が有名です。これらは甲府盆地に多く存在する扇状地で作られています。

 

日本の河川の特徴としてもう一つ、日本には天井川が多いということです。

天井川は周囲の平地より高い所を流れる川です。そして、天井川は扇状地を流れる川など、山から流れ出る土砂が多い地域に見ることができます。

 

山から流れてくる土砂が多いと、川底にその土砂がたまります。すると川が浅くなり氾濫を起こします。それを防ぐために堤防を高く作ります。

 

さらに土砂が上流から流れてきて川底に溜まり、川が浅くなり氾濫を起こします。それを防ぐために堤防をさらに高く作ります。このようなサイクルで段々と川が高い所を流れるようになります。

 

日本の都市の大部分は、洪水時の河川水位より低いところにあり洪水の被害を受けやすいのです。

ロンドン市内ではテムズ川が市街地のいちばん低いところを流れていますが、東京では市街地よりも高いところを流れている河川が多く、洪水時には浸水による被害が大きくなりやすい状態にあります。

 

東京で一番高い天井川は、江戸川で続いて荒川、隅田川となります。

大阪で一番高い天井川は、淀川で続いて大和川となります。 

 

このような特徴がある日本の河川ですが、見逃してはならないことは水がきれいだということです。日本の河川には「山紫水明」という言葉が似合うと思います。

大陸の川は大きくて流れもゆったりとしていますが、「山紫水明」ではありません。 

 

日本の河川の水質は、洪水時を除けば川の色や濁りのおもな原因である浮流物質が少ないために、日本の河川は清く、澄んでいます。流量が多く水流が速いため、水に溶解している無機成分の濃度が低いのです。

 

「山紫水明」とは、「山は日に映えて紫色に見え、川の水は澄んで清らかであること。山や川の景色が美しいこと」とあります。

 

江戸時代の儒学者、頼山陽が、京都の鴨川沿いに草庵を建て、そこからの鴨川と東山三十六峰の眺望がすばらしいので、この書斎に「山紫水明」と名づけて以来、一般的になったということです。

 

また、海外に出るとよく分かると思いますが、日本はきれいな水に恵まれています。

水を汲みにいかなくても家の中に水道の蛇口があります。

水道の蛇口から出る水が飲めるのです。いくら使っても大丈夫。汚れたらすぐ手を洗える。

お風呂に入れる。当たり前ことと思っていることが世界では当たり前ではないのです。

 

これらは、先人の努力のおかげです。この水の恵みを大切にして、次世代に残すことが大切な責務なのです。

 

それから、2022年には高校で「地理」が必修科目になります。「河川」の知識の多くは、自然地理学で学ぶことができます。自然全般にも言えることですが、川を学び、川からの恩恵を有難くいただき、洪水や災害などのリスクを知り用心深く避ける、そうした行動ができる日本人を目指したいものです。

 

---owari---

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