このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

人体の不思議(ホルモンの働き)

2017年01月29日 | 人体

8年前のお話になります。世界一背の高い10代の少女がタイにいました。彼女の名前はマリーさん。身長は208センチ、体重は130キロ。2009年1月にブラジルのシルヴァさん(当時206センチ)を抜き、世界一背の高いティーンエイジャー(17歳)としてギネスブックに認定されました。

 

彼女は幼いころから、自分が周囲の友達とは違い、非常に早く成長していることに気づいていたという。9歳のとき、急激な成長を心配した母に連れられ医者に行ってみると、脳に腫瘍があり神経を圧迫していると診断された。

 

この腫瘍がホルモンバランスを崩し、成長が止まらない原因になっていたのです。その後、成長を抑制するために、1本27万円もする注射を3カ月おきに打たなければなりませんでした。マリーさんの母は、「注射は娘の成長抑制にとても良く効きますが、とても高額なのです」と、我が子のためにできることはしてあげたいが経済的な問題に悩んでいる胸中を語りました。

 

身体の著しい成長は金銭的な問題だけでなく、さらなる肉体的問題をも引き起こしました。腫瘍のせいでマリーさんは視力を失いました(腫瘍が視神経を圧迫)。「成長するにつれ視力はどんどん悪くなり、今では歩くのも困難なのです。家事など母の手伝いをするようにしていますが、それすら満足にできません」と、辛い心境を語ったのです。

 

その後、2014年に日本のテレビで「世界記録に登録されたギネスホルダー」の特集で紹介されましたが、2016年8月に高血圧のため亡くなられました。お悔やみ申し上げます。享年24歳でした。

 

ホルモンのお話をする前に、もう一つの事例をご紹介します。

「サイエンスミステリー2014」という番組で、「32歳の赤ちゃん」という、とある女性が特集されました。赤ちゃんのまま歳だけを取るという難病を患っておられました。

 

その女性はブラジルに住むマリアさん。1981年生まれで、当時で32歳になります。しかし、その姿は生後9ヶ月の赤ちゃんのままでした。そこで成長が止まってしまい顔だちこそ、普通の赤ちゃんに比べて少し歳を取っているように見えますが、それでも32歳には見えないのです。

 

マリアさんの成長が生後9ヶ月で止まってしまった理由は、甲状腺ホルモンの異常によるものでした。マリアさんが患っている病気は「甲状腺ホルモン欠乏症」です。何らかの原因で体内の甲状腺ホルモンが正常に生成、分泌されず、その結果、十分な成長ができないというものでした。

 

この病気は先天性もあれば後天性もありますが、治療法も確立していて、不足している甲状腺ホルモンを投与することで改善できる病気です。しかし、彼女の家は非常に貧しく病院に行くお金もなかったそうで、親御さんは辛かったのです。マリアさんはその後、テレビ出演でこの内容が取り上げられて、世界から大きな反響があり、有名な医師が無償で治療をしてくれました。

 

治療の甲斐あってマリアさんに大きな変化がありました。ホルモン治療を続けて半年、治療を受ける前は歩くこともできず、ずっと両親に抱っこされていましたが、まだぎこちないですが歩けるようになり、ちょっとしたお手伝いなどができるようになったのです。

 

また、片言ですが少し言葉も覚えるようになり、「パパ」や「ママ」と言うようにもなったのです。

さらには体重や身長も増え、なんと成長が再び始まったのです。

 

32年間待ち続けた「パパ」と「ママ」という言葉。初めて聞いたとき、ご両親は言葉にできないほど嬉しかったと思います。実は、お母さんはマリアさんが15歳のときに亡くなりました。継母である心優しいドラさんはこう語っています。

 

「マリアの母の忘れ形見であるこの小さな人物を守り導くことが、この世に生を受けた自分に課せられた使命の一つであると実感しています。マリアは天からの授かりものなのです」。現在も両親と妹と共に、家族に見守られて生活をしています。

 

さて、前置きが長くなりましたが、人体のホルモンの働きはとても貴重で、私たちの日常生活を陰ながら支えてくれています。そして、成長に応じてホルモンをつくり出し、成長期には1ヶ月に2~4mmのペースで身長を伸ばしていくのです。

 

女性であれば、妊娠してはじめてつくり出すホルモンもあります。この不思議な人体のホルモンはたくさんあるので、今回、全部をご紹介することはできません。今回は成長ホルモンを中心にお話したいと思います。

 

二つの成長ホルモンの働きをご紹介します。

一つは脳内にある“下垂体前葉”がつくり出している成長ホルモンで、子供から大人に成長していくために大切なホルモンです。このホルモンは肝臓や骨の先端近くにある軟骨に働きかけ、それらの場所での成長因子の産生を促します。成長因子の作用で骨が成長し、身長が伸びていくのです。

 

世界一背の高かったタイのマリーさんは、この下垂体に腫瘍ができて、腫瘍が過剰なホルモンを分泌させたために、身長が非常に高くなってしまったのです。

 

もう一つの成長ホルモンは、首のノドボトケの下にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンです。このホルモンは全身の細胞に働いてエネルギー代謝や成長発育を促進させ、骨の成長や成熟に寄与しています。

 

「32歳の赤ちゃん」と言われたブラジルのマリアさんはこの甲状腺ホルモンが欠乏していたために成長できなかったものです。

 

実はもう一つ成長ホルモンがあります。それは性ホルモン(男性ホルモン/女性ホルモン)と呼ばれているものです。思春期の時期に身長が伸びやすいのは、増加した性ホルモンが成長ホルモンの分泌を活発にするからです。

 

成長ホルモンは熟睡している間に生成されます。深く眠っていると、老化を抑える働きをもつ、このホルモンが活発に分泌されるのです。また、成長ホルモンには、肌を修復する働きや、脂肪を燃焼する効果もあります。寝ながらにして、美容もダイエットもかなえてくれ素敵なホルモンなのです。

 

食事とホルモンの関係を少しだけご紹介します。

和食は成長ホルモンの分泌に最適な食べ物と言われているのです。それはホルモンの原料である、「アミノ酸」と「コレステロール」に関係します。コレステロールは現代の食事では摂りすぎるきらいがありますので、不足する方は少ないと思います。減らした方がよい人もいるかと思います。

 

アミノ酸は日本の「和食」に多く含まれています。

現代では普段食べるものは洋食が多いので、どうしても肉食中心の食事になりがちですが、魚や野菜を多く用いた和食をうまく取り入れることで、ホルモンの分泌をアップすることができるのです。洋食だけでは十分に摂れない栄養素がたくさんあります。特にアミノ酸は「玄米」「野菜」「魚」「大豆」など和食を構成する食材に豊富に含まれているのです。

 

私たちの体は健康維持のために、ホルモンを適切に分泌させ、巧妙にコントロールしています。

ホルモンはいつも一定の濃度に保たれるものばかりでなく、リズムをもって分泌されるものもあります。たとえば、コルチゾール(皮質のホルモン)のように一日のうち朝高く、夜低いという変動するものや、成長ホルモンのように睡眠時に増加するものがあります。

 

人間のホルモン濃度は非常に低いのですが、それでも効き目は抜群なのです。例えば、あるホルモンでは、50mプールいっぱいの水にスプーン1杯程度で効果があるのです。最も薄い濃度のものでは、東京ドーム7杯分の水にスポイド1滴で効き目があるといわれているホルモンもあります。

 

もうこれは神業、いや仏業といわねばならないでしょう。私たちはこのような仏の設計図に基づいて日々、体は営んでいるのです。

 

---owari---

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本の母子手帳、途上国を救う | トップ | 高貴なる一時(ひととき) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人体」カテゴリの最新記事