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主君から与えられた収入を主君のために使う石田三成

2023年09月30日 | 歴史
③今回のシリーズは、石田三成についてお伝えします。
三成は巨大な豊臣政権の実務を一手に担う、才気あふれる知的な武将です。
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奇策によって領民たちの士気を高め、みごとに結果を出した三成の手腕は、城内でもたいへん評判になったが、同時に、
「米の無駄づかいだ」
「三成は責任を取るべきだ」
という非難の声もきこえた。

それを耳にした三成は、すぐに秀吉のもとに向かった。
「お借りした米俵の代金を、お支払いいたします」
「何? あの米俵のおかげで災害を防げたのだ。別に代金はいらぬ」
「いえ、それはなりませぬ。たとえ理由はあったといえども、城の大切な食料である米を、あのように使ったのはわたしのわがままでございます。ここに、金子(きんす)も用意してまいりました。どうぞ、お受け取りください」

差し出された包みを開けてみると、かなりの金額が包まれている。
「こんな大金、どうやって用意したのだ?」
驚いて思わず目を見張った秀吉に、三成はほほえんだ。
「以前、殿から賜ったあの葦原(あしはら)を覚えでいらっしゃいますか。あそこの葦を売った代金を、こつこつと貯めでおりました。この金は、米俵のお代としてお取りください。多い分は、お詫びの気持ちも込めての利子にございます」

三成は、これまでに貯めた葦(よし)の代金を、そっくりそのまま秀吉に差し出したのである。
これには秀吉も驚いたが、三成からしてみれば、主君から与えられた収入を、主君のために使うのは当然のことだった。

以後も、
「武器や兵士を集める代金にあててほしい」
と、合戦のたびに葦代の全額を秀吉に差し出したという。
武士でありながら、商人的な経済感覚にも優れていた三成。
だが、ふだんの生活は質素で、給与や貯めた金を、自分の贅沢や虚栄のために使おうとは決してしなかった。頑(かたく)ななまでに、「清廉潔白(せいれんけっぱく)」を地でいくような男だったのである。

(『歴史小説浪漫』作家・童門冬二より抜粋)

---owari---
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