今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
少し長文になりますがあしからず。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
今日の話は、「国の未来は何で決まるか?」です。
一つは、「国家ライフサイクル」で見る方法。
もしその国が、「成長期の前期」にあれば、その国はしばらく成長をつづけます。
それで、05年に出版した「ボロボロの覇権国家」の中で、「08~10年、危機が訪れるが、中国の立ち直りは早い」と書きました。
当時は、「08年の北京オリンピック、10年の上海万博の前後にバブルが崩壊し、中国経済も体制自体も崩壊する」という「中国崩壊論」が流行っていたのです。
私は、それをきっぱり否定しましたが、それは、「中国は、(当時)まだ成長期前期だ」と見ていたからです。
そして、2014年出版の「クレムリンメソッド」では、「成長期前期のインドがこれから成長しつづける」という話をしました。
あれから5年経ちましたが、予想通り順調に成長をつづけ、GDP世界6位まで上がってきました。
後5年もすると日本を追い抜き、世界3位に浮上することでしょう。
しかし、今回は「成熟期の国」の話です。
日本は1990年、成長期が終わり、成熟期に移行しました。
成熟期は、成長期と違い、高度成長など望めないのです。
では、成長できないかというとそんなことはありません。
成熟期国家アメリカは、
1980年代は、レーガン改革
1990年代は、IT革命
2000年代は、不動産バブル
2010年代は、オバマ、トランプ時代にまたがる好景気を経験しています。
だから、日本も「成熟期だから成長しない」と嘆く必要はない。
しかし、成熟期の国家と成長期の国家は、やはり違います。
成長期国家というのは、「子供の肉体の成長期」によく似ています。
子供の肉体は、極端にいえば、「何食っても」成長していくものです。
(「何食わせてもいい」という意味ではありません。)
なぜなら「成長期」だから。
「成熟期国家」というのは、「中年男性」とよく似ています。
中年男性が、毎日コカ・コーラをがぶ飲みし、ハンバーガーばかり食べていれば、肥満になり、糖尿病など困った問題が起こってくることでしょう。
酒の飲みすぎ、たばこの吸いすぎが致命傷になる可能性もある。
とにかく「成熟期の国」というのは、差がつきます。
中年男性でも、酒たばこをやらず、食べ物に気をつけ、睡眠をしっかりとり、適度に運動している人は、「え~~、若過ぎですね!」と褒められる。
一方で、毎日暴飲暴食し、運動不足、睡眠不足であれば、すごい速さで老け込むことになります。
▼国の未来は「人」で決まる
では、成熟期国家の未来は、何で決まるのでしょうか?
私は、「国民の質」によると思います。
私もいろいろな国に行きましたが、日本の次にすばらしい国と思うのはフィンランドです。
08年出版「隷属国家日本の岐路~今度は中国の天領になるのか」(ダイヤモンド社)の中で、すでにこの国を絶賛しています。
少し引用してみましょう。
<北欧にフィンランドという国があります。
携帯電話のノキアが有名ですね。
ロシアのおとなりなので、私はこの国によく行くのです。
面積は33万平方キロで、日本より少し小さい。
しかし人口はわずか500万人強しかいない。
日本とほとんど同じ広さの土地に、24分の1しか人が住んでいない。
しかしフィンランドは昨年、一人当たりのGDPで日本を抜きました。
また、世界でもっとも競争力のある国として、汚職が世界一少ない国としても知られています。
おいしい空気と美しい自然。
ロシアの道路はポイ捨てされたタバコだらけですが、フィンランドには全くありません。
フィンランド語を話せない私が困っている。
すると、頼みもしないのに人がよってきて英語で助けてくれます。
もちろん住んでいる人には、いろいろ不満もあるでしょう。
それはどこの国でも同じこと。
しかし、外国から時々くる日本人の私には、とても「美しく」「品格のある」国に思えるのです>
この本を出版してから、早11年が経ちました。
フィンランドは2018年、国連の世界幸福度ランキングで世界一になっています。
「善良な国民」を持つフィンランドは、10年経って、ますます世界のお手本国になってきました。
私は、最新刊の中で、旅にいってひどい目に会い、「二度と行きたくない」と思った国について触れました。そして、その国で革命が起こり、私は「そりゃ起こるだろう」と思い、まったく驚かなかった。
やはり、「人の質」は、その国の未来に大きな影響を与えるのでしょう。
「キレイごと」に思えるかもしれませんが、ある国の国民が善良であれば、その国の未来は明るいはずです。
もちろん、国のトップは、「善良さ」だけでは務まりません。
「大局観」も「戦略観」も必要。
必要であれば、悪魔と同盟を組む狡猾(こうかつ)さも必要です。
(アメリカは、ナチスドイツに勝つために、独裁者スターリンと同盟した。
その次、ソ連に勝つために、もう一人の最悪独裁者毛沢東と組んだ)
しかし、一般国民にそのような狡猾さは必要ありません。
「大局観」「戦略観」は持つべきですが、狡猾さは必要ありません。
「善良」で「勤勉」であれば十分です。
日本人は、本来世界一善良な民族。
しかし、この国では、「児童虐待」がなんと27年間増加しつづけています。
<児童虐待、17年度13万件=27年連続増で最多更新─厚労省時事 8/30(木) 13:06配信
全国の児童相談所が2017年度に対応した児童虐待件数は、前年度比1万1203件(9.1%)増の13万3778件(速報値)となったことが30日、厚生労働省のまとめで分かった。>
なぜ増える?
私は、新刊の中で、普通の人が善良であるためには、「余裕が必要だ」と書きました。
マザーテレサならともかく、私たち一般人は、金もない、時間もない、早朝から深夜まで働いてクタクタになっている状態で、「善良さを保つこと」は難しいのです。
日本人男性は、朝から深夜まで働いている。
それで子育てに参加できず、奥さんはクタクタになっている。
ところが、今度は、「少子化で人手不足だから、女性にも朝から晩まで働いてもらおう」とかいっている。
それで、「少子化ですが、保育園が足りません、足りません」。
いったい、どこまで「残酷」になれるのでしょうか?
私は、女性が働くことは、もちろん賛成です。
しかし、国は、「会社教」時代そのままの「残虐制度」を改めるべきですね。
「少子化が深刻だ」といいつつ、
・結婚できない(忙しすぎて)
・子供が生みにくい(忙しすぎて)
・子供を育てにくい(忙しすぎて)
制度をそのまま維持している。
だから、「真の働き方改革」が絶対必要です。
日本人は、フィンランド人同様「善良」です。
しかし、フィンランドの幸福度は世界1で、日本の幸福度は、世界54位(!)。
この違いは、為政者が、「会社中心」で物を考えているか、
「国民の幸福中心」に物事を考えているかの違いでしょう。
私は、「反日統一共同戦線」を無力化させた安倍内閣を支持していますが、内政については、
いいたいことがたくさんあります。
「ていうか、どうすれば国民に『余裕』が生まれるんだ?」
「真の働き方改革ってなんだ???」
そんな疑問を持たれた方は、こちらをご一読ください。
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---owari---
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