「大政奉還150周年プロジェクト」って、何じゃそりゃ!
何人かの見識ある明治維新史研究者の方々が憂慮しているように、2018年の「明治維新150年」に向けて官民を挙げて歴史を利権に転換する動きが活発化しているようです。
右派政権とその支持層による、「美しい日本」のルーツが明治維新にあるというイデオロギーと、何でもいいから地域にお金を引っ張ってくることしか考えていない「街おこし」に熱心な地元民、それに協力している研究者や知識人。
これらが混合されてこういう醜悪な動きが増えてきているみたい。
そのなかでも問題なのは、某研究者の方が以下のように指摘していることです。
「(明治維新150年の動きには)一つだけ明治100年にはない特徴がありますね。100年の時には、露骨に思想が傾いた歴史家や、実際には維新史家でもなんでもない人しか賛同・協力しませんでしたが、今回は、世間ではまともな評価をうけている明治維新史家がちらほら関与していること」。
山口や鹿児島が「自分たちこそが明治維新の立役者」と思い込んで唯我独尊でやるイベントもひどいですが、会津など「朝敵」にされた側も「自分たちこそが正しかった」と、どちらも日本国家に繋がろうと競い合っている状態こそが最悪。
明治維新は批判的に検討してこそ、意味があると私は思っているんですが、みんな「明治維新って素晴らしい!」「我が地元はこのすばらしい事業にこんなに貢献した」のオンパレード。
ただし言っておきますが、有志舎は、明治維新史は学問研究としては絶対的に大事だと思っています。
そういう姿勢で「講座 明治維新」をはじめとする学術書は出していますし、今後も出していくつもりです。
しかし、ともすると「○○150年記念のシンポを本にしたい」みたいなお話も来たりします。
そういうお話は全部断ってはいますが、完全に無実だとは言い切れないので、今後はもっと心して、こういう「地域振興(街おこし)」目的で歴史を使い物にする出版の話に対峙していかないと、と思っています。