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総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

コロナPCR検査:感度特異度論争の終焉

2020-07-12 | 師の教え
休日ですが、今回は緊急投稿します。
 
PCR検査について、この記事で感度特異度論争に終焉とさせてください。
 
まず、政府の分科会尾身先生の分類は下記。
(1)有症状者
(2)無症状者+事前確率が高い
(3)無症状者+事前確率が低い
 
このうち、(1)もともと政府は「軽症の人は検査必要なし」としていましたので、今は前進はしています。
また、(2)濃厚接触者であっても無症状の人は政府は検査必要なしの方針でしたのでこれも前進はしています。
 
今回の議論は(3)です。
 
しかし、上記の表現のうち、「事前確率が低い」は正確ではないと思います。正確には、(3)無症状者+事前確率が不明、とすべきと思います。
 
しかもこれは診断検査ではなくなり、防疫(伝播を予防するための待機が必要かの判断)のためのスクリーニング検査となります。これに関しては、対象者が感染しているかどうかではなく「感染性infectiousnessまたは伝播力transmissibility」があるかどうかと考えてみるのはいかがでしょうか。
 
基本的に咳のない無症状の人ですので、発声による感染伝播となります。この場合、鼻咽頭・唾液などの上気道中のウイルス量または排泄量(viral load or shedding)をみるPCRがゴールドスタンダード検査となります(厳密にはウイルス培養だとは思いますが、臨床的にはRT-PCR検査)。この防疫目的に限定すると「体の中のどこかの細胞内にSARS-coV-2が居て悪さをしている」というCOVID-19感染はゴールドスタンダードではないと思います。感度特異度はゴールドスタンダード検査との比較ですから、これで、「感度特異度論争」はもう終焉を迎えることができます。
 
診断と防疫は目的が異なります。
 
以上は私見ですが、世界の科学コミュニティーでは共通認識です。
 
下記JAMAインタビューでのハーバード大MGH感染症科医Walensky先生の冒頭の発言も同様意見です。https://youtu.be/aGbv5QQV6MI 
0:49頃 Sensitivity of PCR testing
 
そして、実は下記論文(Figure 1aをみてください)もそれを前提にしています。https://www.nature.com/articles/s41591-020-0869-5
 
ハーバード大Mina先生たちのモデルでは検査感度より検査頻度が防疫には有効としています(preprint)。
 
上記論文のPDFのFigure 1Cをみてください。NBA選手はフロリダのディズニーバブルで毎日PCR検査をしています。このNBA方式について、NIAID所長で米政府タスクフォースメンバーAnthony Fauci先生が絶賛している理由がわかります。
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1 コメント

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Unknown (まる)
2020-07-12 14:30:05
感染と、
感染性infectiousnessまたは伝播力transmissibility
を分けて議論されてますが、
感染せずにウイルスを伝播させることがあるのでしょうか?

体内に取り込まれていないが付着している状態を指すのであれば、
感染と同じポイントで検査できるのでしょうか?
例えば手とか見なくていいですか?

最後に感染していないということは、
ウイルスの増殖が起こっていないと理解しますが、
PCRの検出感度と合わせて考えた時に有効ですか?
サンプルに何個ウイルスが入っていたら検出できるか、
という質問になるかと思います。
PCRの再陽性の例があることから、
ある程度のウイルスが入っていないと検出できないのかなと思っています。

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