A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

奇しくも直後に亡くなった「故人」への餞になってしまったが・・・・

2013-03-30 | CONCORD
The Dave Mckenna Trio Plays The Music of Harry Warren

ホテルのラウンジでよくピアノの演奏が行われている。いわゆるカクテルピアノというものだ。ソロの時も多いが、ギターやベースを入れても煩くなくBGMとして心地よい響きを提供してくれる。ポピュラーな曲が多いが、古いスタンダードも多い。

ジャズのピアニストには、このような雰囲気が得意な人がいる。Concordでおなじみのデイブマッケンナもその一人だと思う。得意の左手の魔術はベースなしでも、実にスインギーにテンポを刻む。事実、この頃マッケンナはツアーのない時は、ボストンのCopley Plaza Hotelを根城にして週6日出演していた。経営が代わってプログラムを変えたら客足が途絶えたとか。それだけマッケンナを聴きにきていた地元のファンが多かったということだろう。

そのマッケンナが作曲家Harry Warrenの作品集を取り上げたのがこのアルバム。
作曲家の作品集というのはよくある企画だ。ピアノではピーターソンの作曲家シリーズが有名だが、演奏家にとってはその作曲家への何らかの想いがあるものだ。
このアルバムは、Warrenが亡くなる一ヵ月前に作られたもの。最初から企画があったのか、それともWarrenの近況を聞いて日頃ホテルで演奏している曲からWarrenに想いをこめて作られたのかは定かではないが、結果的に発売されるときには追悼盤ということになった。

このアルバムでは、ベースとドラムを入れた通常のトリオ編成。マッケンナの洒落た雰囲気はいつものとおりだが、ラウンジでの演奏よりはきっと熱の入った演奏だと思う。ベースが入っても、マッケンナの左手は健在、最後のLulu’s Back in Townでのドライブ感は流石である。

普段あまり、作曲家の経歴などを見ることはないが、之を機に少し調べてみると、これらの曲が生まれたころのWarrenの映像もあった。



この前、紹介したBreezeが歌っていたお気に入りJeeper’s CreepersもこのWarrenの作品だった。この頃のスタンダードは思わず口ずさみたくなるような曲が多い。



演奏家の場合、亡くなるとラストレコーディングを最後に後の演奏は聴くことができない。よく若くしてこの世を去ったミュージシャンを思い浮かべ、もし今の時代生きていたらどんな演奏をしただろうか?と思うことは多い。
ところが作曲家の場合は、亡くなった後もスタンダードとなり演奏し続けられる。もちろん、その時代の解釈は加えられても、名曲というのは永遠だ。作曲家冥利に尽きるとはこのことかもしれない。

1. Nagasaki
2. 42nd Street
3. Medley
4. This Heart of Mine
5. Carnival
6. My Heart Tells Me (Should I Believe My Heart?)
7. I Only Have Eyes For You
8. The Gold Digger’s Song (We’re In The Money)
9. Lulu’s Back in Town


Dave Mckenna (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Composed By Harry Warren died September 22,1981

Produced by Carl Jefferson
Recorded by Ron Davis
Recorded at Russian Hill, San Francisco, August 1981

Originally Released on Concord CJ-174
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サドメル初来日時の置き土産は、日米の若き実力者の競演・・・・

2013-03-29 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
This is New / Eddie Daniels

今から20年以上前、パソコンが普及し始め、WindowsやAppleのマッキントッシュが世に出始めたころ、「メディアや広告がコンピューター時代になってどう変わっていくかを考えろ」というミッションを上司から受けた。先見の明のある、勉強熱心な上司で色々な教えを請うたが、このお題はあまりに大きすぎて上司も明確な答え持っていたわけではなく、仲間共々一緒になって色々悩みながら議論を重ねたのもいい思い出だ。

何とかアナログ作業の代表のような業界のワークフローをシステム化することに関しては何とか絵を描いて、実際に開発作業に着手した。しかし、メディアそのものの変化に関してはインターネットの登場まで答えは見つからなかった。

インターネットの普及に伴い、そのメディア価値のキーワードのひとつは、「オンディマンド」、そして「パーソナル化<One2One>」であった。従来のメディアの特徴である、プッシュ型の絨毯爆撃のようなマス情報拡散とは真反対に位置するインターネットの新しい情報提供の仕組みは最初から大きな可能性を持っていた。

それからすでに20年近く、両方の共存時代が思いの外長く続いている。テレビ放送のデジタルへの切り替え時に「放送と通信の融合」が再度声高に言われたが、テレビサービスの提供側はまだ過去への拘りを捨てきれないのか、まだその解を見出せていない。
しかし、生活者側はすでに個人ベースで両者を混在させた生活習慣を作り上げている。人によってネットのサービスの利用の仕方は千差万別である。さらに既存メディアの組み合わせ方となるとなおさらである。

果たしてどのような組み合わせパターンがメジャーになるか、もちろん性別、世代、地域、職業、趣味嗜好などでまったく違うと思う。どのパターンが一人勝ちという訳にはならないと思うが、メディア価値としての勝ちパターンが数年で見えてくるであろう。その時、従来のマスメディアの価値はリセットされるはずだ。

音楽の世界は、従来のメディアであるラジオとレコードの登場と普及で全盛期を迎えた。レコードはCDに代わり、セルからレンタルを経て、今では急激にダウンロード型音楽配信に変わりつつある。この流れで音楽業界自体は激変しているようだ。昔のようなマスメディアと連携した大ヒットというのは生まれにくくなって。音楽というものはマスメディアと相性がいいのかもしれない。

また、自分のような古い世代の人間は、どうしても聴くと同時に、集める、持つということにもこだわりがある。なかなかダウンロードで聴ければよいとは割り切れないでいる。息子の世代の感性とはどうも相容れないものがある。

一方で、ビジネス面で見ていると、物理的なメディアはどうしても物流が伴うので、売る側からすれば流通コスト、在庫リスクをどうしても伴う。そのために、在庫コスト、流通在庫による欠品を減らすために、デジタルの力を借りた、オンディディマンドによる個別製作という手法が開発され、印刷分野に登場した。音楽の世界にも、この手法によるオンディマンドCDなるものが存在しているが、あまり普及はしていないようだ。便利なようだが、それは何故・・・?

確かにあまり量が捌けないものは、オンディマンドベースで製作し、都度配送するほうが流通・在庫コストは少なくてすむかもしれない。しかし、小ロットでもある程度の枚数を纏めて作って一気に売ってしまった方が、トータルコストは安く済む。結果、一枚当たりのコストも安くなり、一見安くなりそうなオンディマンドの方が一枚当たりの手間とコストを考えると実際のコストは大きくなってしまう。

現在のようなデフレ時代では、オンディマンドCDが普及しない理由はここにあるのかもしれない。また、オンディマンドの良さは、「何時でも好きな時に」であるので、基本的に廃盤などはなくいつでも入手できるのがメリットであるのだが。これも中古市場がネット上にたくさんできてしまったので、探す手間は多少かかるものの、昔のように中古ショップをハシゴする必要も無くなったので新譜が廃盤になっても探すのには困らない。

結果的に、物流を伴うものでもそれをサポートするネットサービスが充実すれば、十分に太刀打ちができるということだろう。マスメディアとネットメディア、リアルサービスと
ネットサービス、いずれもどちらが良いかというのではなく、両者がミックスされ生活者の使い勝手の良いサービスに収れんしていけば、ユーザーとしてはめでたし、めでたし。

さて、前置きが長くなったが、このCDもオンディマンドCDでラインナップされている一枚。昔、ジャズ専門レーベルのはしりでもあったtaktレコードが、オンディマンドCDで復刻されているものだ。

サドメルの初来日時にメンバーとして同行した若いエディダニエルスが日野皓正と競演したもの。日野皓正クインテットのテナーは確か村岡健だったと思うが、エディダニエルスが代わりに参加したクインテット編成。テナーをメインに吹いているが、得意のクラリネットも存分に聴ける。
このエディダニエルスは、たいした実績も無くサドメルに参加したが、参加直後の1966年9月にサドメルのメンバーの同僚のサポートでファーストアルバムを吹き込んでいる。これが2枚目のリーダーアルバムになる。

このアルバムのオリジナルLPの発売が1968年11月とあったので、当時のスイングジャーナルを探してみると、このアルバムが12月号のSpot-Light Reviewに取り上げられている。並んでいるアルバムは、マイルスのMiles in the sky。そしてエルビンジョーンズのPuttin’ it together。エルビンのアルバムには、サドメルでの盟友ジョーファレルが参加している。いずれも当時の最先端グループのアルバムで、このアルバムもそれらと肩を並べる演奏ということだ。
マイルスを師としていた当時の日野皓正のプレーもいつもの荒っぽさを感じさせない良い感じのプレーだ。たまたまこの号のスイングジャーナルの裏表紙のYAMAHAの広告に日野皓正の写真が。実に若いが、確かにそれから50年近くが経っているのか・・・・・。



トラブル続きのサドメル初来日であったが、今も活躍中の日米の実力者の若き日の競演という置き土産も残してくれていた。

1. The Strut (E. Daniels)
2. Thirsty Soul (M.Kikuchi)
3. This Is New (E.Daniels)
4. Whistful Moment (R.Hanna)
5. Giant Steps J. Coltrane)
6. Why Did I Choose You(M.Leonard)

Eddie Daniels (ts,cl)
Terumasa Hino (tp)
Masabumi Kikuchi (p)
Kunimitsu Inaba (b)
Motohiko Hino (ds)

Recorded on August 4, 1968

THIS IS NEW
エディ・ダニエルズ,日野皓正,菊地雅章,日野元彦,稲葉国光
日本コロムビア
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SOMEDAYを超満員にした高瀬龍一ビッグバンドの選んだ曲は・・・・

2013-03-21 | MY FAVORITE ALBUM
“This Time By Basie / Count Basie Orchestra”

去る2月1日、トランペッターの高瀬龍一が新たなビッグバンドの旗揚げを行った。昨年プライベートなパーティーで一度やったそうだが、今回は一般公演。場所は新宿のライブハウス「サムデイ」。色々なビッグバンドにプレーヤーとして参加している高瀬だが、自分のバンドでは何をやるのかと思ったら、「本気でベイシーやります」との予告があった。
意外でもあり、楽しみだった。



当日、仕事でバタバタして開演間際に着いたら、入り口の雰囲気がいつもと違う。地下に降りると席はすでに満員、すでに立見の人も見受けられる有様。いつもは空席が目立ち、せっかくの演奏なのに・・・と思うことが多いのだが、この日は開始前から会場は熱気に包まれていた。
何とか、キッチン前のカウンターのスツールに座ることができたが、後から来る人は入り口近くで立見が出る、まさに立錐の余地のない超満員。

詳細なレポートは当日Vocalで参加した沖野ゆみさんのブログで。

メンバーは、色々なビッグバンドで見かけるいつものベテラン揃い。ベイシーサウンドに欠かせないピアノは板垣光弘、リードアルトは萱生昌樹 、リードトランペットはルイスバジェが努めていた。高瀬自身は指揮に専念でプレーをしたのは僅か1曲。
ベイシーサウンドにしてはギターが居ないのが気になったが、これは何か意味があったのか?

当然学生時代からベイシーの曲で育ったメンバー達なのでベイシーサウンドの再現はお手の物、楽しいプログラムを満喫させて貰った。会場に駆けつけたファンも多くは同じ道を一度は歩んだ仲間達のようで、満員の観客と一体となってメンバー達も嬉しそうであった。

演奏した曲目は全部で23曲。お馴染みの曲もあったが、オールドベイシーのレパートリーより比較的新しいアルバム、アレンジが多かったように思う。中でも”This Time by Basie”からの曲が何曲かあった。

ベイシーオーケストラの全盛期はいくつかあるが、Atomicバンドと呼ばれた50年代後半の一連のルーレットのアルバムの時代がやはり一番だ。60年代に入ってからは、どこのビッグバンドのレギュラー活動の維持が厳しくなって来て、いわゆるポピュラー路線をとるようになった。とはいうものの、演奏の本質が変わるのではなく、アルバム作りで時代に合わせたヒット曲を取り上げることが多くなっていたということなのだが。硬派のジャズファンからはコマーシャリズムに毒されたといわれた頃だ。

この“This Time by Basie”も、そのような時代に生まれたアルバム。レーベルはシナトラの息のかかった”Reprise“。同じ頃、エリントンオーケストラもこのレーベルに所属し、両雄が同じような企画のアルバムを競い合っていた。このアルバムで取り上げられた曲も当時のヒット曲が多い。

アレンジは、クインシージョーンズ。彼自身も翌年マーキュリーレーベルの役員に収まる直前の変身の時期。アレンジャーとしての仕事が多かった頃だが、自身のアルバム作りでもポピュラーな曲、そしてポピュラーな音作りのアルバムに変身していた。
クインシーのべイシーオーケストラへのアレンジの提供は、これが初めてではなく、全盛期のアルバムにもアレンジを提供している。以前紹介した“One More Time”も其の一枚。そのアルバムは、クインシーのオリジナル曲も多く、名作・名演として記憶に残る物であった。

さて、このアルバムが録音されてから50年近くが経とうとしている。当時のヒット曲も今から見ればすでに古いスタンダード曲の仲間入りということだ。

1. This Could Be the Start of Something Big (03:15)
2. I Left My Heart in San Francisco (02:30)
3. One Mint Julep (04:00)
4. Swingin' Shepherd Blues, The (03:13)
5. I Can't Stop Loving You (04:33)
6. Moon River (03:07)
7. Fly Me to the Moon (03:12)
8. What Kind of Fool Am I? (02:49)
9. Walk, Don't Run (02:37)
10. Nice 'N' Easy (03:15)
11. Apartment, The (Theme) (03:16)

Al Aarons (tp)
Sonny Cohn (tp)
Thad Jones (tp)
F.P.Ricard (tp)
EdwargPreston (tp)
Albert T. Grey (tb)
Benny Powell (tb)
Bill Hughes (tb)
Grover Mitchelll (tb)
Marshall Royal (as)
Eric Dixon (ts.fl)
Frank Foster (ts,flcl)
Frank Wess (ts,cl,fl)
Charlie Fowlkes (bs,flt,bcl)
Count Basie (p)
Freddie Green (g)
Buddy Catlett (b)
Sonny Payne (ds)

Quincy Jones (arr.conduct)

Recordec on January 21~24,1963 in New York City
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いつもは裏方のアレンジャーも、たまには主役で・・・・

2013-03-18 | PEPPER ADAMS
The Modern Sounds of A.K. Salim <“Pretty for The People”>

昨年ブログを中断する前、ペッパーアダムスの参加していたアルバムを紹介することが多かった。このアダムス、自分はサドメルのオーケストラですっかりお気に入りになったが、白人でありながら風貌とは似合わないマリガンとは好対照な「黒っぽい」エネルギッシュな演奏が魅力的だ。
このアダムスの場合はリーダーアルバムよりはサイドメンあるいはオーケストラの一員として参加したアルバムにも良い演奏が多く残されている。

一般的にリーダーアルバムだけでなくサイドメンとして参加したアルバムまで探すとなると一苦労だが、一昔前までは、ディスコグラフィーなる辞書のような本が頼りだった。
最近はネットにディスコグラフィーだけでなく、様々な情報があるので容易に探せるようになった。探し方が大分楽になったせいもあり、本のディスコグラフィーも過去の遺物になりつつあったのだが・・・。



そんな矢先に、新たにペッパーアダムスのディスコグラフィーが発刊された(もちろんアメリカでだが)。好きなミュージシャンということもあり、早速購入してみた。
500ページを超える大作だ。勿論参加した全レコーディングセッションの記録に発売されたアルバムの記録に加えて、セッションに関する後の関係者のインタビュー記事なども交えた膨大な記録だ。ファンにとっては眺めているだけでも楽しくなる物だ。

1957年秋に西海岸から一年ぶりにニューヨークに帰ってきたアダムスが、レコーディングにまずは参加したのがミンガスのグループであった。テナーのShafi hadiのデビューアルバムとなっているが、その直後の9月17日に参加したのが、このA.K. SalimのSavoyでのセッションだ。

といってもSalimはあまり馴染みのない名前だが。ガレスピーとの付き合いが長く、ガレスピーオーケストラのニューポートのライブでも彼の作品が演奏されている。ビッグバンドの名演奏の影には必ず名アレンジャーがいるものだが、このSavoyのセッションの主役はアレンジャーのSalim、名プレーヤーを従えての作品だ。

ちょうど当時はアレンジ物といえばウェストコーストジャズの全盛期、コンボ主体のハードバップも興隆を極めていた時代であったが、Salimはジャズ、ブルース、そしてラテンの味付けも加えた黒人アレンジャーとして活躍していた。ビッグバンド編成だけでなく、ビッグコンボ編成のアレンジもしていたが、このSavoyのセッションはどれもこのビッグコンボ編成。3枚のアルバムでリリースされたが、今入手できるFreshsoundの2枚組みのアルバムにはこれらがすべて収められている。
アダムスが参加したセッションは、オリジナルは“Pretty for The People”というアルバムでリリースされたものだ。



これらのSalimのSavoyのアルバムに参加しているメンバーはどれも一流揃い。このアダムスの参加したセッションにはドーハム、グリフィン、クーパーそれにケリーが加わり、アレンジと相俟ってソロが実に”eloquent”なのが特筆もの。雄弁さに加えて感銘を与えるsomethingがある。コンガのポゾの参加も一味違う。もちろんアダムスのソロも絶好調なのは言うまでもない。このような大型コンボのアレンジもついつい見逃されがちだが、巧拙があるものだ。


1. Blu-Binsky
2. R-U 1-2
3. Shirley Ray
4. Ba-Lu-Ee-Du
5. Pretty For The People
6. Takin' Care Of Business

Kenny Dorham (trumpet)
Buster Cooper (trombone)
Johnny Griffin (tenor saxophone)
Pepper Adams (baritone saxophone)
Wynton Kelly (piano)
Paul Chambers (bass)
Max Roach (drums)
Chino Pozo (congas)
A.K. Salim (arranger, director)

Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ
on September 17, 1957




THE MODERN SOUNDS OF A.K.SALIM(2CD)
クリエーター情報なし
FRESH SOUND
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こだわりのライブハウスには、やはり拘りのバンドが似合う・・・・

2013-03-16 | MY FAVORITE ALBUM
One Night Stand! / Hisakazu Noguchi The Big Band

昨年マンハッタンジャズオーケストラが出演したライブハウス「東京TUC」は知る人ぞ知るこだわりのジャズファンが多いライブハウスだ。
神田駅から東へ、昭和通を渡ると店のネオンも少なくなり、古い商業地域に入る。神田岩本町は、昔は古着の市で栄えた場所だったそうで、今でも繊維問屋が多い場所と聴く。
駅からの広い一方通行から路地に入ってこんな場所にジャズクラブなんかあるのか?という場所にある。東京ユニフォームのショールームのあるビルの地下に東京TUCがある。ライブがある日は、このショールームが出演者の控え室にもなっている。

さほど広くないスペースにビッグバンドが入ると観客とステージは自然と一体になる。これがライブハウスでビッグバンドを聴く楽しみでもある。ここを本拠地にしているビッグバンドはいくつかあるが、今、アメリカに修行に行っている宮嶋みぎわのビッグバンドもそのひとつだ。ライブと同時にUstreamでも中継を行っていたので宮嶋ファンはここでのライブを聴いたことがある人も多いと思う。
そして、もうひとつここを拠点にしているのが、野口久和のBig bandだ。年に何回か出演しているが、いつも超満員だ。宮嶋みぎわのバンドは若いファンも多いが、この野口久和のバンドは一回り大人のファンが多い。

リーダーの野口氏は、若い頃はロック、ニューミュージック系の歌手のバックでキ―ボード&アレンジャーとして活躍していたそうだが、最近はこのビッグバンド以外でも、もっぱらジャズを演奏することが多いとか。
自分は、ひとつの世界に凝り固まっているよりも、ジャンルに拘らずオールマイティーなミュージシャンに魅力を感じる。
聞く所によれば、彼の父は有名なジャズ評論家であった野口久光氏だそうだ。久光氏自身も、本職は映画のポスターのデザイナーであり、ジャズやミュージカルのファンであったのが嵩じて評論もおこなったという筋金入りの評論家であった。当時、右も左も分からないジャズ入門者であった自分にとっては、よき先生でもあった。

子供は何だかんだといっても親の影響を受けるものだ。野口久和氏が歳をとるとともにジャズに回帰するのも納得である。昔の評論家というのはジャズの歴史にも造詣が深かったのはもちろん、野口久光氏のように他のジャンルや仕事でも一流の仕事をし、一家言を持っている人が多かったように思う。そのような親の元に育った久和氏も、そういう点では蛙の子は蛙であり、根っからのマルチプレーヤー(タレント)なのかもしれない。

このアルバムの最初の曲、“Dish Up Dish Up”は、ライブでも最初に演奏されることが多い、このバンドのオープニングナンバーだ。アップテンポでギターの小気味良いリズムで始まるベイシーライクなオリジナルだ。
まずは、この曲&演奏でこのオーケストラの性格付けがされているような気がする。他にも古い曲、それも定番のスタンダードではなく一捻りした曲、サンバやタンゴかと思えばクラシックの小品に、そしてオリジナルまで幅広く選曲されているが、アレンジはすべて野口氏自身の手によるもの、それがバンドカラーになっている。
そして次の曲はリードアルト澤田一範をフィーチャーしたバラード。このリードアルトのショーケースもバンドカラーを決めるひとつだ。エリントンのホッジスやベイシーのロイヤルのように。

もうひとつこのバンドの特徴は、他のメンバーも一流どころのベテラン揃いに加えて、専属コーラスグループ「Breeze」を従えていること。昔のビッグバンドは専属歌手やコーラスグループを持っていたのが普通だったようだが、今時では珍しい。このスインギーなコーラスとビッグバンドの相性も抜群だ。
先日、丁度バレンタインデーにこのグループはTUCに出演していたが、大人のジャズが楽しめるビッグバンド&コーラスで次回のライブが楽しみだ。

ジャズの王道を行くライブハウスには、やはり王道を行くバンドが似合う。



1. Dish Up! Dish Up (H. Noguchi)
2. Don’cah Go Away Mad (J. Mundy-I.Jacqet・A. Stillman)
3. Cradle Song (H. Noguchi)
4. Anitra’s Dance(E. Grieg)
5. The Late Late Show M. Berlin・R. Alfred)
6. Hangover Blues (H. Noguchi)
7. South Side Samba (B. Carter)
8. Youkali Tango K. Weill)
9. Jeeper’s Creepers (H. Warren・J. Mercer)
10. Along Came Betty (B. Golson)
11. In The Shade of The Orange Tree (H. Noguchi)
12. The Champ (D. Gillespie)

All Arrangements :  Hisakazu Noguchi

野口 久和 (p.arr.)
佐々木 史郎 (tp,flh)
菊池 成浩 (tp,flh)
奥村 晶 (tp,flh)
伊勢 秀一郎 (tp,flh)
片岡 雄三 (tb)
橋本 佳明 (tb)
辻 冬樹 (tb)
秋永 岳彦 (btb)
近藤 和彦 (as,ss,fl)
澤田 一範 (as,cl)
右近 茂 (ts,cl)
高橋 康廣 (ts,fl)
竹野 昌邦 (bs,bcl)
田辺 充邦 (g)
佐瀬 正 (b)
稲垣 貴庸 (ds)

BREEZE
小菅 けいこ (Soprano)
松本 敦子 (alto)
中村 マナブ (tenor)
磯貝 たかあき (baritone)

Produced By Go Kagami
Recording Engineer : Hiroaki Sato
Recorded on Mar.11&12 2010
At Landmark Studio

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人気があるということは必ず「何か余人をもって代え難い魅力」があるものだ・・・

2013-03-11 | MY FAVORITE ALBUM
Manhattan Jazz Orchestra Plays Disney


しばらくブログの更新が滞った。
というのも、昨年夏には親の不幸もあり、その後も諸々雑事が重なりレコードやCDをゆっくり聴くこともできず、好きなゴルフにも打ち込めない日が続いた。
唯一、時間を見つけてはライブには行って憂さ晴らしはしていたが、なかなかパソコンに向かう時間もなく、また気力も失せていた。

年明けとともに、旧友との再会をきっかけに新しい仕事もスタートし、徐々に元の生活パターンを取り戻すようにはなってきているのだが・・・、生活のリズムというものは一度変わってしまうとなかなか元に戻すのが大変だ。

最近の世の中の状況は政治・経済だけでなく自然・環境も大きな転換期を迎えており、こちらも気になることは多々ある。ついついそちらに耳や目が向いてしまうことも多い最近だが、自分の今の状況にしっくりくる生活パターンとペースを早く掴みたいものだ。

さて、昨年行ったライブを思い出してみると、昨年はビッグバンドの当たり年だったかもしれない。
ベイシー、エリントンをはじめとして、ボブミンツァー、ミンガスビッグバンドも来たし、ロンカーター、VJO,そして年末にはマリアシュナイダーも初来日した。国内のビッグバンドの活動も活発だったし、ファンとしては嬉しい限りだ。

そのような中、デビットマシューズ率いるマンハッタンジャズオーケストラが夏に来日した。丁度今日で震災から2年が経ったが、一昨年も震災直後、来日を辞退するメンバーが続出する中マシューズは残ったメンバーを引き連れて来日公演を決行してくれた。日本のミュージシャンとの混成メンバーですばらしい演奏を聴かせてくれた。色々なイベントが軒並み中止になる中で、元気を与えてくれた来日だった。

前回ブログを中断した時、再開したのはこのマシューズがきっかけだったので、今回もこのマシューズから再開することにしよう。

このマシューズのバンドはクインテットにしてもオーケストラにしても日本での人気が絶大である。日本人の川島重行氏のプロデュースによって誕生し今があるので、彼が日本贔屓になるのも当然だが、それ相応にファンが多く根付いてビジネス的にも成功している。今時大きなホールを満員にできるジャズのグループは数えるほどだと思うが、マシューズの昨年のツアーも盛況だったようだ。

昨年は、ディズニーを素材としたこの新しいアルバムのプロモーションを兼ねての来日であったが、大きなホールでのコンサートが続く中、唯一小さなクラブでのライブが東京TUCであったので、自分はこれに出かけてみた。
クラブでの演奏とあってメンバーもリラックスしていたようだし、何といっても小さな会場だとPAに頼らないアコースティックなサウンドが心地よかった。東京TUCの聴衆は根っからのジャズファンが多いので、プレーヤーもやりやすいだろう。

マシューズのビッグバンドは編成が通常のビッグバンドの編成と異なってサックスセクションの人数が少ないのが特徴だ。その分ホルンやチューバが加わっている。サックスセクションが木管に持ち替えたり、ホルンを加えるアレンジは時々ある。
しかし、エイトビートであろうとアップテンポであろうとこの編成を貫き通すというのはアレンジャー、マシューズとしてこの編成に強い拘りを感じる。
オーケストラのファーストアルバムともいえる”Big Band Live at the Five Spot”から続く「この編成」がマシューズサウンズの原点なのだろう。

腕利きぞろいのメンバーの中で自分が注目したのはスコットロビンソン。マルチリードプレーヤーとして有名だが、マシューズのアレンジの下支えでこの日はバスクラ一本で勝負していた。年末にはマリアシュナイダーと一緒に再度来日したが、その時はテナーでマルチ振りを発揮していた。

マシューズのオーケストラの人気の秘密はマシューズのアレンジの素晴らしさもあるが、アルバム作りにおける素材となる曲の選定にもあるだろう。有名曲を選びつつもアルバム毎にテーマを明確にしているので、アルバムが出る度にどんな風に料理をしているのか興味を惹かれる。有名な曲であればあるほどオリジナルのイメージが強くなってしまうので、そのイメージを離れてアレンジをするのは大変だと思うのだが、いつも斬新なアレンジだ。

所詮マス商品にならないジャズのアルバム作りで、売るためのマーケティングが考えているものは多くはない。しかし、このマシューズのアルバム作りは良く考えられていると思う。日本人がプロデュースするとこのような名曲アルバムの安易な企画は良くあるのだが、マシューズのアレンジの妙を含めて毎回力作が続く。結果的に長く続けることのできる企画になっている。
ディズニーの曲はジャズの世界でも取り上げられることが多いが、一連のディズニーの作品は子供たちに夢を与える作品だ。震災後、日本や福島の復興を祈って制作されたアルバムは多い。子供たちにも夢を与えるディズニーを素材に制作されたこのアルバムも印象に残る一枚になるであろう。

マシューズのピアノプレーの方は残念ながら左手一本になってしまったが、このオーケストラと一緒であればマシューズのプレーも永遠だと思う。マシューズの魅力の原点は、音楽的な面に加えて人柄とどんな苦難にもめげないという直向きさかもしれない。見習いたいものだ。今年も元気に来日するようなので、また足を運んでみよう。

1. He's A Pirate (Pirates of the Caribbean)
2. Chim Chim Cher-ee (Mary Poppins)
3. Alice In Wonderland (Alice In Wonderland)
4. Someday (The Bells of Notre Dame)
5. Beauty And The Beast (Beauty And The Beast)
6. It's Not Easy (Pete's Dragon)
7. Circle Of Life (The Lion King)
8. A Whole New World (Aladdin)

Manhattan Jazz Orchestra

David Matthews (arranger,conductor,piano)
Seneca Black (trumpet)
Michael Rodriguez (trumpet)
Scott Wendholt (trumpet)
Raul Agraz (trumpet)
Jim Pugh (trombone)
John Fedchock (trombone)
Larry Farrell (trombone)
Max Seigel (bass trombone)
John Clark (French horn)
Vincent Chancy (French horn)
Daniel Peck (tuba)
Marcus Rohas (tuba)
Chris Hunter (alto flute,alto sax,flute)
Bob Malach (flute,soprano sax,tenor sax)
Scott Robinson (baritone sax,bass clarinet,bass sax,drums,tenor sax)
Paul Nowinski (bass)
Terry Silverlight (drums)

Produced by Shigeyuki Kawashima
Recorded at Sear Sound Studio, New York, on March 27 and 28, 2012.
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