A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

元旦の朝は「世界は日の出を待っている」を聴いて迎えるのが定番であるが・・・

2016-01-01 | MY FAVORITE ALBUM
George Lewis and his New Orleans All Stars in Tokyo 1963

世の中全体が昔と較べて正月らしさが無くなっているが、帰省する田舎がなく、今年は子供も海外へ行ってしまった我が家は普段と変わらない朝を迎えた。それでも女房は一人早起きをして初日の出を見に出かけたようだが、自分は夜が明けてからのこのこ起き出した次第。この正月休みはゴルフや旅行の予定もなく、いつになくのんびり寝正月になりそうだ。
大晦日の夜は家にいればジョージルイスのオハイオユニオンを聴くことが多かったが、昨晩は聴かず仕舞いでそのまま撃沈。見ようと思っていた「朝生」の録画共々、結局夜が明けてから聴く事になった。

たまには定番のオハイオユニオン以外でということで、北村英治もあるが棚から見つけたのはこのアルバム、同じジョージルイスの東京でのコンサートライブのアルバムだ。
ジョージルイスは、このアルバムが録音された1963年から数年続けて来日している。全国津々浦々何十箇所もツアーをこなしたというので、それだけのファンが当時日本にいたことになる。

この時自分は中学一年、まさにジョージルイスを知ったのは翌年1964年であった。ジョージルイスのレコードを初めて買ったのもこの頃だが中学生では流石コンサートにまでは行けなかった。当時はもっぱらラジオが情報源だったが、この「世界は日出を待っている」も大晦日のラジオでは良く流れていた。

自分はこの曲はジョージルイスの、そしてトラッドジャズの定番だと思っていたが、元は1918年にカナダのアーネストセインツというピアニストが作曲した曲だそうだ。スイング時代になるといわゆる流行曲(後のスタンダード曲)が取り上げられることが多くなるが、古くニューオリンズジャズにどうしてこの曲が取り上げられるようになったか興味が湧く。



さて、このアルバムは、今は無き新宿厚生年金会館でのライブだが演奏だけでなくMCも一緒に収められている。「アレキサンダースラグタイムバンド」に始まり、「最後の聖者の行進」までほぼステージ上で演奏された順番だろう。ステージも最後に近づき、「世界は日出を待っている」そして「アイスクリーム」と続くが、会場の拍手は一段と高まる。やはり、当時会場に駆けつけたファンにとっても、この2曲はお待ちかねの定番の演奏であったのが分かる。ここでのバンジョーはエマニュエルセイルスであるが、やはりオハイオのローレンスマレロの演奏には及ばないのは仕方がない。オハイオユニオンからは10年近く経ち、ジョージルイス晩年の演奏だが、元気な演奏を録音も良い状態で聴ける一枚だ。

ジャケット解説を見返していて、油井正一の解説の中に面白い記事を見つけた。
ジョージルイスの記者会見で、「ニューオリンズの伝統的な演奏は、アンサンブルに終始することである。しかし、曲によってはソロをフィーチャーすることもあると言っていた」と始まる。
この演奏を聴くと曲によってソロが取りまわされるが、これはルイアームストロングに始まるジャズはソロをフィーチャーするという「悪影響」が、ニューオリンズの伝統を守って復活したといわれるジョージルイス達にも影響を与えている。
ニューオリンズジャズのアドリブの発生は一人のソロを残して他のメンバーが演奏を止めるブレイクから生じたもので、最初はせいぜい2小節だった。これを打ち破って自由にアドリブを展開するソリストはルイアームストロングによって初めて実現され、そのスタイルが今のジャズまで引き継がれている功績は大きいのだが・・・と続く。

今の時代は、アドリブのソロがメインで、アンサンブルやオブリガードが従になっているが、この時代のソロはアドリブではなかった。事実ジョージルイスをフィーチャーした自作曲のバガンディーブルースのソロは、どのアルバムを聴いてもアドリブではなく計算され尽くしたソロだという。

という前提でこの演奏を聴くと、これはニューオリンズジャズの伝統を再現する創世記のジャズではなく、あくまでもアームストロングから広まったディキシーランドジャズの「悪影響」を受けたものだという。つまり、この時ジョージルイスが現役に復帰してからすでに20年以上、オリジナルの良さを残しながらも、その演奏スタイルは時代の変化を採り入れ変ってしまったということをいわんとしている。

油井正一氏は、最後に例えそうであても、「昔のままの演奏など実際上不可能なのだ・・という認識に立ち、しかし、もはや真似手さえも現れない彼らの音楽であるという視点に立てば、これらの古老の実演は感動を持って理解されるものと信じると」括っている。

プリザベーションホールという小さな小屋で地元の聴衆だけを相手に普段着で演奏しているのと、1000人を超える大観衆を相手にタキシード姿で演奏するステージでは確かに演奏する曲もスタイルも変えざるを得なかったのも現実であろう。今思えば、このステージは自らが若い頃に体験した「オリジナルニューオリンズジャズ」を多少今風に脚色して再現したショーであったのかもしれない。

事実、生き証人のプレーヤーがいなくなってしまったプリザベーションホールの今の演奏スタイルはさらに大きく変化している
。伝統を守るというのは口で言うのは簡単だが、現実は大変だし難しいという事になる。これは代時代が代わる時、何の世界においても直面する課題だ。

今の時代、素晴らしいソロに、絶妙なバッキングやオブリガードが絡むのは本来のジャズのアンサンブルの楽しさを再現しているのだろう。そしてミンガスがチャレンジしたグループでのインプロピゼーションはまさにニューオリンズスタイルの再興だったようにも思う。
ジャズの楽しさを形を変えて実現しようとチャレンジする者は今後も必ず現れるであろう。形式やサウンドは違っても、ジャズの伝統は引き継がれるということだ。
一方で、絶滅すると思われた彼らのスタイルを忠実に真似て演奏するミュージシャンもいる。油井氏の心配は杞憂であったようだ。

1. Alexander’s Ragtime Band
2. Over The Waves
3. St.Louis Blues
4. Somebody Stole My Gal
5. Just A Closer Walk With Thee
6. Wat A Freiend We Have In Jesus
7. You Rascal You
8. Burgandy Street Blues
9. Muskrat Ramble
10. St.James Infirmary
11. The World Is Waiting For The Sunrise
12. Ice Cream
13. Till We Meet Again
14. When The Saints Go Marching In

George Lewis (cl)
Punch Miller (tp)
Louis Nelson (tb)
Emanuel Sayles (bjo)
Joe Robichaux (p)
Papa John Joseph (b)
Joe Watkins (ds)

Produced by Motohiko Takawa
Engineer : Toshio Kikuta
Recorded live at Kosei-Nenkin Kaikan Hall, Tokyo on Aug.21. 1963

イン・トーキョー1963
クリエーター情報なし
キングレコード

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2 コメント

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マレロの影響 (duke)
2016-01-04 18:43:04
YAN さん、明けましておめでとうございます。

当時のジョージ・ルイスの人気が伝わってくるアルバムですね。1963年といえば小学生でした。「世界は日の出を待っている」を知ったのは中学生のときに聴いたアル・カイオラでした。その後、マレロのバンジョーを聴いたときはぶっ飛びました。これを聴いてバンジョーを始めた人、やめた人、様々です。

油井正一氏の解説は一読の価値があります。

今年もよろしくお願いします。
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後を継ぐのは日本の青木研・・・ (YAN)
2016-01-04 21:14:21
dukeさん

明けましておめでとございます。
こちらこそよろしくお願いします。

東京はポカポカ陽気ですが、札幌は如何ですか?
こちらのスキー場は雪不足が続いているようです。

バンジョーは奥が深いでようです。
クラリネットの鈴木直樹とよく一緒にやっている青木研がこの「世界を日の出を待っている」を十八番でデュオでもビッグバンドでも一年中やっています。

http://blog.goo.ne.jp/yan111949/e/85b8c9a4374b5a1ca9b9e7598d4548d4

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