●次元俳句0123・月=三月01・林徹・2013-03-31
○「妻の荷を解く三月の雪の中」『架橋(1962)』(→林徹03)
季語(三月・春)
妻からの荷を解いているということは、夫婦は離れて暮らしています。単身赴任でしょうか。雪深い場所に来ています。荷を解いて出てくるのは。妻からの春の贈り物です。
●三色絵0122・携帯の・透次・2013-03-30
「携帯の声突然に朧より」(→透次0136)
季語(朧・春) →三色絵フォトチャンネルへ
誰もいないと思っていた春の朧の暗闇から、突然声が聞こえました。しかし、人影は一人。携帯電話の通話の声です。おまけに受話器も怪しく光っています。
○特集俳句0122・酒呑俳句01=昼酒・宇佐美魚目・2013-03-29
○「昼の酒蓬は丈をのばしけり」『紅爐抄(1985)』(宇佐美魚目01)
○季語(蓬・春)
【鑑賞】:すでに蓬は山菜としての時期を過ぎ、丈を伸ばしています。野に遊びながら缶ビールでも飲んでいるのでしょうか。明るいうちの昼酒は、ほんの少しのうしろめたさが何ともいえません(#^.^#)。
○宇佐美魚目(うさみぎょもく)(1926~2018)
○好きな一句「すぐ氷る木賊(とくさ)の前のうすき水」『秋収冬蔵(1975)』02
○季語(氷り・冬)
【Profile】:愛知県名古屋市出身。1945年、→高浜虚子・→橋本鶏二に師事、→野見山朱鳥・→波多野爽波に兄事。1984年創刊の超結社の俳誌「晨」代表同人。
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宇佐美魚目掲載句
03東大寺湯屋の空ゆく落花かな(落花・晩春)〈特集221・地名3-10〉2015/04/9
04重陽や夕べには木にもどる鳥(重陽・晩秋)〈次元495・五節句(時間)3〉2020/9/9
05春分や手を吸ひにくる鯉の口(春分・仲春)〈五体640・手20〉2024/3/20
●方法俳句0122・文学題材01・尾崎紅葉・2013-03-28
○「泣いて行くウェルテルに逢ふ朧哉」『紅葉句帳(1970)』(尾崎紅葉01)
季語(朧・春)
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」の「ウェルテル」でしょう。失恋により泣きながら歩いているウェルテルに街中で出会ったというのは、春の朧のなかの幻影でしょうか。
○尾崎紅葉(おざきこうよう)(1867~1903)
代表句「夕暮や夏の柱の倚り心」02
季語(夏)
小説家。東京出身。東大和文科中退。小説家。硯友社主宰。また、むらさき吟社、秋声会など俳句結社を興して明治新派俳句の一巨峰をなした。俳句では秋声会句集『俳諧新潮』『俳句名家選』等を編んだ。
●色彩俳句0122・真赤03・内藤吐天・2013-03-27
○「牛通り過ぎてすかんぽ真赤なり」『鳴海抄(1956)』(内藤吐天01)
季語(すかんぽ・春)
「すかんぽ」は私の田舎では「スイバ」の別名で、茎を噛むと酸っぱい味がしました。多くはイタドリ(虎杖)のことをさすようです。この句では「真赤」といっていることから、まぎれもなく虎杖のことでしょう。
○内藤吐天(ないとうとてん)(1900~1976)
代表句「初蕨雨細ければさみどりに」02
季語(初蕨・春)
岐阜県大垣出身。東大薬学部卒。薬学博士。俳句は→大須賀乙字らに学び、流麗多彩巧緻な句風。「草上」「東炎」同人を経て戦後「早蕨」を創刊、主宰。このころから季題趣味を放棄し、自由詩的な作風を展開した。