●五感俳句075・湿感02・鈴木鷹夫・04-30
○「指組めば指が湿りぬ桜草」(鈴木鷹夫01)
季語(桜草・春)
組んだ指の湿りが感じられるようになるにはやや長い時間指を組んでいなければなりません。指を組んでしばらく考え事でもしていたのでしょうか。
○鈴木鷹夫(すずきたかお)(1928~2013)
代表句「貝の砂椀に残れり法然忌」02(→忌日祈念日)
季語(法然忌・春)
東京浅草生まれ。1954年、「鶴」に入会し→石田波郷門下となる。1962年「鶴」同人。波郷没後の71年に「沖」へ移り→能村登四郎に師事。1987年「門」を創刊主宰。『千年』で第44回俳人協会賞受賞。
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鈴木鷹夫掲載句
2012/09/30 03近くまで来たのでといふ秋桜(秋桜)〈次元・近(空間)〉
●次元俳句075・遅れる(時間)01・五味太郎・04-29
○「ふりむけばおくれてきたるゴリラかな」(五味太郎01)
季語(無季)
心象を句にしたかのようにも思えますが、忠実に体験を句にしたのかも知れません。動物園でふと背後を見てみると…。
○五味太郎(ごみたろう)
代表句「春風はけもののはらのあたたかさ」02
季語(春風・春)
1945年、東京生まれ。桑沢デザイン研究所ID科卒業。工芸デザイン、グラフィック・デザインの世界を経て、絵本を中心とした創作活動に。著書「かくしたのだあれ」「たべたのだあれ」で78年度サンケイ児童出版文化賞受賞のほか、ボローニャ国際絵本原画展等、受賞多数。翻訳も手がける。
●三色絵074・射的屋で・透次・04-28
○「射的屋で踵を浮かす春の雪」(→透次088)
季語(春の雪) →三色絵フォトチャンネルへ
射的屋では銃口を少しでも景品に近づけようと下駄から踵(きびす)を浮かせます。さらに鉄砲は片手で持ちます。射的屋のおやじはそんなことには寛容です。それでも値のはるような景品は、命中してもまるで根がはるかのように(~_~;)びくともしません。
●特集俳句074・言葉=橋03・正木浩一・04-27
○「芹つむや光あそべる橋の裏」(正木浩一01)
○季語(芹・春)
【鑑賞】:川面に遊ぶ陽光が橋の裏にてらてらと映っています。それを「光あそべる」と表現しました。まさしく春の躍るような光です。
○正木浩一(まさきこういち)(1942~1992)
○好きな一句:「散る櫻白馬暴るるごとくなり」02
○季語(櫻・春)
【Profile】:熊本市生まれ。→能村登四郎主宰の「沖」に所属、1972年9月号より「沖」に投句をはじめる。1976年「沖」新人賞。1989年に句集「槇」を上梓。その後、病を発症し、1992年に49歳で逝去。妹は俳人の→正木ゆう子。
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03闇の中鶏頭が立ち靴干され(鶏頭・三秋)〈色彩664・闇色3〉2024/9/2
●方法俳句074・不明010・深見けん二・04-26
○「生き残りたる人の影春障子」(深見けん二01)
○季語(春障子・三春)
【鑑賞】:この句が詠まれた時代背景や情景がまったくわからない場合は、まさしく「不明」の句です。春の障子に映る影は誰の影かは不明ですが、戦争などの災禍のあとの生き残りということかもしれません。
○深見けん二(ふかみけんじ)(1922~2021)
○好きな一句「一片の落花のあとの夕桜」02
○季語(夕桜・晩春)
【Profile】:福島県生まれ。1941年、→高浜虚子に師事。東大入学後、→山口青邨に師事。1947年「ホトトギス」新人会結成。1953年「夏草」同人。59年「ホトトギス」同人。1989年、個人誌「珊」創刊。1991年「花鳥来」創刊主宰。1992年、第31回俳人協会賞受賞。「日月」で第21回詩歌文学館賞受賞。2014年『菫濃く』で第48回蛇笏賞受賞。
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深見けん二掲載句
03青邨忌までのしばらく十二月(十二月・冬)〈次元・月(時間)〉2013/12/15
04人生の輝いてゐる夏帽子(夏帽子・三夏)〈次元・人生(時間)〉2018/8/10
05ガラス戸に額を当てて短き日(短き日・三冬)〈五体・額〉2018/12/11
06薄氷の吹かれて端の重なれる(薄氷・初春)〈方法464・一物2〉2020/2/6