●方法俳句079・再発見06・櫂未知子・2012-05-31
○「いきいきと死んでゐるなり水中花」(→櫂未知子03)
季語(水中花・夏)
たしかに水中花は生物ではありません。しかしそれが水の中で揺れるとき、いきいきとした動きなのです。「生き生きと死んでいる」という水中花の再発見です。
●色彩俳句079・極彩色01・沢好摩・2012-05-30
○「ピストルを極彩色の天へ撃つ」(→沢好摩03)
季語(無季)
ごく‐さいしき【極彩色】 とは「種々の鮮やかな色を用いた濃密な彩り。また、派手でけばけばしい色彩。」(大辞泉)とあります。撃ったあとではなく、撃つ前にすでに空は極彩色なのです。
●五体俳句079・髪05・橋本多佳子・2012-05-29
○「罌粟ひらく髪の先まで寂しきとき」(→橋本多佳子03)
季語(罌粟の花・夏)
今日、5月29日は多佳子忌(1963)です。多佳子の「髪」を詠みこんだ代表句ともいえる句を挙げました。罌粟の花をみながら、寂しさは毛髪の先端まで及んでいます。
●五感俳句079・痛覚03・佐藤清美・2012-05-28
○「闇に鳥を放つ痛みや投函す」(佐藤清美01)
季語(無季)
ポストに手紙を投函するとき、ポストの闇へ鳥を放つような痛みを感じた、という句です。白い手紙が白い鳥となって羽ばたいていくかのようです。
○佐藤清美(さとうきよみ)
代表句「梯子には月を磨きに行く少年」02
季語(月・秋)
1968年生まれ。21歳のとき、「俳句空間」という雑誌に出会ったのが、俳句を始めた直接のきっかけ。主に雑誌投句。結社には所属せず。 2001年、→林桂代表の同人誌「鬣TATEGAMI」創刊に編集委員として参加、同同人。現代俳句協会会員。→林田紀音夫、→高柳重信に傾倒。
●次元俳句079・新しい(時間)01・上田五千石・2012-05-27
○「新しき道のさびしき麦の秋」(→上田五千石06)
季語(麦の秋・夏)
過去の「麦秋」の句は5句あります。
2011/06/12「→精錬所もうしろに見えて麦の秋」(→碧梧桐)
2012/05/09「→麦埃手紙の余白晴れわたる」(→恭二)
2012/05/16「→クレヨンの黄を麦秋のために折る」(→桂)
2012/05/19「→飛行機の影よぎりゆく麦の秋 」(→透次)
2012/05/26「→麦秋をたてがみ持たず抜けて行く」(透次)
新しく整備された道、麦秋の黄を背景にしてむしろ寂しく感じます。